ベルリネッタボクサーの進化「フェラーリ 512 BB」(1976-1981)【名作スーパーカー型録】

フェラーリ512BBのサイドビュー

Ferrari 512 BB

フェラーリ 512 BB

 

 

365 GT4 BBのマイナーチェンジ版

 

1970年の半ばに日本で巻き起こったスーパーカーブーム。ここで紹介するフェラーリの「512 BB」「512 BBi」は、別項でその誕生と成り立ちを解説している365 GT4 BBのマイナーチェンジ版として、各々1976年、1981年に誕生したモデルだ。このBBシリーズの後、1996年にF512 Mの生産が終了すると、プロダクションモデル・ラインナップからV型12気筒ミッドシップは消滅してしまう。それはF50やエンツォ、あるいはラ フェラーリといったスペシャルモデルのみが使用する特別な存在となっただけに、その価値はテスタロッサ シリーズ(テスタロッサ → 512 TR → F512 M)と同様に貴重だ。

 

1973年から1976年にかけて生産された365 GT4 BBは、トータルで387台。この時すでにフィアット・グループにあったフェラーリにとって、この数字は生産効率を見直す必要に迫られるものにほかならなかった。その後継車となる512 BBの最も大きな特長は、搭載される180度V型12気筒DOHCエンジンの排気量を4943ccに拡大。排ガス規制の影響もあって、最高出力は前作の365 GT4 BBから20psほど低下してしまったが、低速域での扱いやすさは格段に向上している。

 

フェラーリ512BBのリヤスタイル

365 GT4 BBのマイナーチェンジ版としてデビューした512 BB。主にリヤセクションに違いが見られ、テールランプは6灯から4灯に、リヤカウルのパーテーションラインも変更、リヤオーバーハングも50mm延長されている。エキゾーストエンドも6本から4本に改められた。

 

目的は生産効率の見直しとコストダウン

 

だが実際にフェラーリにとって、このマイナーチェンジで特に重要な課題だったのは、生産効率の大幅な見直しと、使用される素材の一部を改めることにあった。表現を変えるなら、それは親会社たるフィアット流のノウハウの導入。コストダウンを目的に、これまで365 GT4 BBで使用されてきたマグネシウムなどの高価な軽量素材をアルミニウムに変更したほか、各断面のパイプを組み合わせて製作されるフレームも溶接方法の見直しによって製作時間を大幅に短縮することができた。その代償として512 BBは、365 GT4 BBから120kgほど重量が増加してしまうのだが・・・。

 

512 BBは外観からでも365 GT4 BBとの識別が可能だ。その特徴は主にリヤセクションに集中している。まずリヤオーバーハングを50mm延長。それに伴ってリヤカウルのパーテーションラインも変化した。テールランプは丸型の6灯式から4灯式に。これまでメッシュタイプだったリヤグリルもルーバータイプのものに変更されている。エキゾーストエンドも6本から4本へと変わった。

 

フェラーリ512BBのフロントスタイル

マイナーチェンジの目的は生産効率の向上と素材を見直してコストダウンを図ることにあったものの、重量は120kgも増加してしまった。

 

インジェクション化により扱いやすさを得た「512 BBi」

 

だがフェラーリは、この512 BBを市場に投じてもなお、BBシリーズの進化を止めることはなかった。すでに365 GT4 BBの段階で、フェラーリはアメリカのFMVSSに象徴される衝突安全性と、マスキー法下の排出ガス規制をクリアしていたのだが、さらにこれまでトリプルチョークキャブレターを組み合わせていた、ミッドの180度V型12気筒エンジンに、新たにボッシュ製のKジェトロニックを採用。車名も「512 BBi」と末尾にインジェクションであることを示した。これによってさらに精密なエミッションコントロールと、走行中のドライバーの快適性を追求することを狙った。

 

フェラーリ512BBiのフロントスタイル

1981年にはV型12気筒エンジンをインジェクション化し「512 BBi」として改めてデビュー。20psほどパワーダウンしたとはいえ、その反面扱いやすさを得た。

 

Kジェトロニックを組み合わせたV型12気筒エンジンは、最高出力で340psと、512 BBからさらに20psほどそのスペックは低下してしまったが、カスタマーは始動の容易性や低中速域でのフレキシビリティなど、これまでのBBシリーズでは感じられなかったドライブの容易さを味わうことが可能になった。同様の感覚はサスペンションのセッティングにも表れており、ステアリングの操作感はほかのBBシリーズと比較すると明らかに軽く、またサスペンションの動きにもラグジュアリーなフィーリングが生み出された。

 

1981年から1984年までの期間に生産された512 BBiは、トータルで1007台。そして、この成功をもってフェラーリは12気筒ベルリネッタをオールニューのテスタロッサへとフルモデルチェンジする。

 

 

【SPECIFICATIONS】

フェラーリ 512 BB

発表:1976年

エンジン:180度V型12気筒DOHC

総排気量:4943cc

圧縮比:9.2

最高出力:265kW(360ps)/6800rpm

トランスミッション:5速MT

駆動方式:RWD

乾燥重量:1400kg

最高速度:302km/h

 

フェラーリ 512 BBi

発表:1981年

エンジン:180度V型12気筒DOHC

総排気量:4943cc

圧縮比:9.2

最高出力:250kW(340ps)/6000rpm

トランスミッション:5速MT

駆動方式:RWD

乾燥重量:1499kg

最高速度:280km/h

 

 

解説/山崎元裕(Motohiro YAMAZAKI)