コネクティビティが大幅に進化! 新型スマート EQの感触をバレンシアで味わう
公開日 : 2020/02/20 17:55 最終更新日 : 2020/02/20 17:55
smart EQ
スマート EQ
時代を先駆けるマイクロ・コンパクトカーの最新型
スマートは、1994年にダイムラーが時計のスウォッチ・グループとともに都市生活におけるモビリティのあり方を再構築しようと設立した合弁会社MCC(マイクロ・コンパクト・カーAG)に端を発する。そして1998年に全長3m以下の2人乗りのシティコミューターである初代スマートを生み出した。
それから20年が経った2018年、スマートは内燃エンジンモデルの生産を終了し、電気自動車(BEV)へ一本化する方針を発表。ダイムラーの電動化ブランド「EQ」ファミリーの一員として再スタートを切ることになった。
その第一弾モデルとなる“スマート EQ”の国際試乗会がスペイン・バレンシアで行われた。スペイン第3の都市で、温暖な気候のリゾート地として有名なこの町の中心部は渋滞も多く、走るクルマの多くがA、Bセグメントのコンパクトカーだ。スマートの姿もたびたび目にする。
スマート全モデルが完全電動化を果たす
実はスマートは2007年からBEVの実証実験を開始しており、2012年には欧州でBEV版のスマート ED(エレクトリックドライブ)を使った「Car to Go」というカーシェアリングサービスを行ってきた。また日本でも2代目スマートをベースとしたスマート EDが発売されたのだか、一充電あたりの航続可能距離を重視するユーザーの多い日本市場ではビジネスとしてはそれほど振るわなかった。したがって日本には導入されていないが欧州では3代目をベースとしたスマート EDも販売されており、セールスは右肩上がりで2019年は1万8000台超を記録したという。
スマート EQは、ハードウェアとしては3代目スマート EDのマイナーチェンジ版ということになる。エクステリアの変更点は、フロントグリルを廃してエンブレムも取り除き、シンプルに“smart”のロゴのみを配したこと。BEVはエンジン冷却のための空気孔を必要としないためグリルレスのデザインを採用するモデルが多いが、スマートもそうすることで従来の内燃エンジン仕様との差別化を図っている。ヘッドライトやリヤランプは最新のフルLEDタイプがオプション設定されている。
ラインナップは2ドア、2ドアカブリオレ、5ドアの3種
インテリアの基本的な造形は内燃エンジン仕様とかわらない。ダッシュボード中央には8インチのタッチスクリーンが配置されており、ナビゲーション機能のほか、Apple CarPlayなどにも対応、また電費やバッテリーの状況などが表示される。これまで日本仕様のスマートではナビゲーションは後付けのものだったが、スマート EQ導入時にはようやくこの純正モニターが採用されるという。
ラインナップは2人乗りの「フォーツー」、そのオープントップ版の「フォーツー カブリオ」、4人乗りの「フォーフォー」の3モデル。搭載するリチウムイオンバッテリーは、フォーツー、フォーフォーともに容量17.6kWhのダイムラー傘下のアキュモーティブ社製のもので、最高出力は60kW、最大トルクは160Nm。一充電航続距離はそれぞれフォーツーが159km、フォーツーカブリオが157km、フォーフォーが153kmとなっている。

スマートフォンなどのモバイルデバイスを用いて解錠・施錠を他人とシェアできる「ready to share」や、駐車場の空き状況を確認し予約まで可能な「ready to park」など、コネクティビティが大幅に強化された。
強化されたコネクティビティが使い勝手を向上
モデルチェンジのハイライトは出力の向上ではなく、電動化に合わせてのデジタル化、コネクティビティの強化にある。スマートフォンやアップルウォッチなどのアプリを活用し、駐車位置の確認やドアロックの施錠、解錠を遠隔地から行えるほか、友人や知人を無料グループと有料グループにわけ、ドアロックの解除から支払いまでを簡単に行える「ready to share」を採用。
また、駐車場のリアルタイムの空き状況を確認し予約することができる「ready to park」など、シティコミューターとしての使い勝手を向上している。ただしこうした「ready to〜」機能が使えるのは、スペインをはじめドイツ、フランス、イタリアとスマートが普及している欧州の一部に限られている。個人間のシェアリングに関しては法整備の問題もあり、日本への導入予定はいまのところないという。
ガソリンターボと互角以上の加速性能
試乗会は、バレンシアの都心部で行われた。高速道路やワインディングではなく、渋滞する市街地を小さなボディを活かし縫うように走るコースだ。後輪駆動のスマートならではの後ろから蹴り出されるような乗り味は健在だ。床下にバッテリーを敷き詰めておりフロア剛性も高く、超ショートホイールベースながら乗り心地も悪くない。
BEVだからといって動き出しが過敏でないところもメルセデスらしいチューニングで好感がもてる。0-100km/h加速はそれぞれ11.6秒、11.9秒、12.7秒となっており、ガソリンターボモデルと互角以上の加速性能をみせる。運転の楽しさで選ぶなら断然2人乗りのフォーツーだ。
残念ながらCHAdeMO(チャデモ)は非対応
エネルギー回生に関してはアクセルオフで停止まで行ういわゆる“ワンペダル”走行はしない。これはメルセデスのEQCも同様、「できるだけガソリンエンジンモデルと変わらないドライブフィールを」というエンジニアのこだわりによるものだ。通常モードではレーダーセンサーを使用して、前走車との車間距離や坂の勾配などを測定し自動的に調整される。そしてECOモードではアクセルオフに対してより積極的に回生を行う。
充電に関しては、欧州ではオプション設定されている22kW車載充電器を使えば残量10%から80%まで40分以下で充電が可能。通常はウォールユニットか、家庭用の電源で充電することを想定している。日本の急速充電規格CHAdeMO(チャデモ)には対応しておらず、おそらく日本仕様では満充電に100Vの普通充電で9時間半、200Vで4時間半を要するという。
2シーターのスマートは今回で最後か
なぜ急速充電に対応させないのか開発者に尋ねると「スマートはあくまでシティカーであり、いろんなユースケースを想定してどこでも充電できる、そういったフレキシブルさが大切だと考えています。ですから大容量のバッテリーは搭載していませんし、急速充電器は必要ないのです」と答えた。なるほどそもそもスマートの存在意義を考えたときに、至極まっとうな有り様だろう。日本でもその割り切りができれば、通勤や通学、買い物など片道約60km圏内の往復のアシとしては十分に使える。
2019年3月、メルセデス・ベンツは中国のジーリーホールディングと50対50の対等出資でスマートブランドのEVをつくる合弁会社について発表。今年1月、正式に「スマート・オートモービル・カンパニー」が設立された。メルセデスのグローバルネットワークを使ってデザインを担当し、開発と生産は中国でジーリーが行う。2022年にはまったくの新型モデルを発表する予定という。
スマートのブランド担当者によると、これまでとはコンセプトの異なる、Bセグメントまでサイズを拡張したモデルが登場することになるようだ。そう考えると、このスマート EQが全長3m以下で2人乗りのサスティナブルなマイクロコンパクトBEVという、スマートの本懐をすべて体現した最後のモデルになるのかもしれない。
REPORT/藤野太一(Taichi FUJINO)
【SPECIFICATIONS】
スマート EQ フォーツー
ボディサイズ:全長2695 全幅1663 全高1555mm
電気モーター:同期式
最高出力:60kW(81ps)
最大トルク:160Nm
駆動方式:RWD
バッテリー:リチウムイオン
バッテリー容量:17.6kWh
最高速度:130km/h
0 – 100km/h加速:11.6秒
【問い合わせ】
メルセデスコール
TEL 0120-190-610