横浜ゴムのタイヤ勉強会に参加。知っているようで知らない“シリカ”と“静粛性能”を学ぶ

公開日 : 2020/02/29 11:55 最終更新日 : 2020/02/29 11:55

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ヨコハマタイヤ ジャーナリスト勉強会

ヨコハマタイヤ ジャーナリスト勉強会

 

“黒くて丸い”ゴム。タイヤについての一般的な理解はそのようなものだろう。もう少し理解を深めるべく、横浜ゴムによる「シリカ配合技術」と「スポンジによる空洞共鳴音の低減」についての勉強会に参加してみた。

 

ヨコハマタイヤ ジャーナリスト勉強会

クルマの最重要パーツながら、実はよく理解されていないのがタイヤ。常に最先端技術が投入され、一般への認知が追いついていないのも一因だ。今回は、ヨコハマタイヤ ジャーナリスト勉強会でタイヤについて学んできた。

 

天然と合成を使い分けるゴム

 

そもそもゴムとは、ゴムの木から採取した樹液からゴムの成分を取り出し乾燥させたものだ。これを「天然ゴム」という。もうひとつ石油からつくられた「合成ゴム」がある。天然ゴムは高強度で低発熱な特性を活かしトラックやバス用の大型タイヤに用いられ、乗用車用は主に合成ゴムで、タイヤの骨格を形成する部位に天然ゴムが使われている。

 

ゴムの特徴としては以下の3点。「やわらかい」「大きく変形する」「変形しても元に戻る」、と定義づけられているという。

 

左がカーボンブラック、右の3つがシリカ。粒子の大きさの異なるものが用意されており、タイヤの特性にあわせて配合されるという。

 

タイヤが黒いのには理由がある

 

そもそもなぜタイヤは黒いのか? それはカーボンブラック、いわゆる炭素が配合されているためだ。塗料や黒インクにも使用されるものでゴムの強度を高める役割をする。赤や青など着色することは技術的には可能だし、過去にはそうした製品もあったようだが、耐久性、耐候性、保管や物流のしやすさといった観点から黒に定着しているという。

 

そして近年、タイヤの宣伝文句として“シリカ”配合という言葉を耳にすることがある。このシリカとは、二酸化ケイ素のこと。ひらたくいえば石だ。ガラスや珪藻土などに含まれるもので、カーボンに比べて発熱量が少なく、濡れた路面や凍結路面での摩擦力が高く、湿度による硬度変化が少ないといった特徴がある。シリカは白い粉状のもので、カーボンブラックと類似の構造をしており、ゴムを補強する特性をもつことからホワイトカーボンとも呼ばれる。

 

左の白いほうが石油由来の合成ゴム、右の黒っぽいものが、ゴムの木から採取した天然ゴム。柔らかく、ベタつき、そして特有の匂いもある。

 

知っているようで知らない“シリカ”とは?

 

横浜ゴムでは1980年代にウェットグリップを高める目的としてレース用タイヤに採用したのがスタートだったという。その後、ウェットグリップだけでなく、カーボンブラックをシリカに置き換えるとゴムの変形回復が速くなり、タイヤが転がりやすくなることから低燃費タイヤに重用されることになった。そして現在は、サマータイヤもスタッドレスも、市販タイヤのほとんどにそれが使われている。

 

では、ひたすらにシリカを混ぜればよいのかといえば、そうではないという。そもそもゴムは親油性で、シリカは親水性という特性がありそのままでは混合できない。そのためシランカップリング剤を配合することによって、混ぜ合わせることが可能になるという。横浜ゴム 先行開発本部材料機能研究室室長の網野直也氏はそれを“レシピ”と呼んでいたが、同じ素材を用意しても、シェフによって味がかわるようにタイヤも繊細な技術が求められるのだという。

 

ヨコハマタイヤ ジャーナリスト勉強会、導電実験

「シリカ配合技術」のプレゼンテーションでは、横浜ゴム 先行開発本部材料機能研究室の網野直也氏による、素材の導電性を試す実験が行われた。カーボンブラックではライトが点灯するが、シリカではライトがつかない結果となった。

 

タイヤの重要な役割、放電性能

 

またタイヤは給油時の引火や電気系統への悪影響を避けるため、クルマに帯電した静電気を地面に放出する役割を求められる。カーボンブラックには導電性があり、静電気を逃がすことができるがシリカの配合量が増えるとこの機能が落ちてしまう。そこでシリカを配合するタイヤにはアースの役割を果たす導電スリットが設けられている。この技術によってよりシリカの配合量を増やすことが可能になったという。

 

ではユーザーはどうやって、グッドクックされたタイヤを選べばいいのか。それはカタログでウェット「a」グレードの表記があるタイヤを選べばよいということだった。ヨコハマでは、340サイズ以上を保有しているという。

 

ヨコハマタイヤ ジャーナリスト勉強会

タイヤの原料とその配合についてレクチャーを受けたあと、「スポンジによる空洞共鳴音の低減」について横浜ゴム 研究先行開発本部 研究開発部の池田俊之氏に話を聞いた。

 

クルマの電動化によって重要度を増す静粛性能

 

続いて、「スポンジによる空洞共鳴音の低減」について横浜ゴム 研究先行開発本部 研究開発部の池田俊之氏のプレゼンテーションが行われた。

 

そもそも空洞共鳴とは、空気で満たされている閉じられた空間があって、その寸法に応じた固有のひびきや音のことをさすという。車室内の音をはじめ、瓶の口を吹いてでる音や、ギターの音もそのひとつという。

 

ヨコハマタイヤ ジャーナリスト勉強会、スポンジによる空洞共鳴音の低減技術説明

普通の生活をしていたらまず耳にしない空洞共鳴音について学ぶ。タイヤはクルマの主たる騒音源であることが理解できた。

 

大きな騒音発生源となるタイヤ

 

クルマの場合、どこの空間に起因するか?といえば、空気で満たされたタイヤだ。それがもとで、荒れた路面などでタイヤが振動し、共鳴が起きるとそれがホイールをゆさぶり振動して、サスペンションを介して室内に入り、車内のパネルや窓ガラスを揺らして音になるという。180〜300Hzの周波数で発生し、荒れた路面を走行した時の「ホォーン」という音や、道路のジョイントを通過したときの「パカーン」という残響感のある音などが空洞共鳴音で、これを軽減するタイヤの開発が進められているという。

 

空洞共鳴音の軽減対策としてはふたつの方法が実用化されている。ひとつめは、ヘルムホルツレゾネータというもので、共鳴に共鳴をぶつけて干渉作用で吸音する方法。これは硬くつくる必要がありタイヤには不向きで、ホンダ レジェンド用のホイールに採用されている。

 

ヨコハマタイヤ ジャーナリスト勉強会、スポンジによる空洞共鳴音の低減技術説明

ヨコハマの静粛性能技術「SILENT RING」と「SILENT FOAM」はスポンジを用いたもの。これはすでに実用化され、プリウス専用のBluEarth-1 EF20(195/65R15)にも「SILENT RING」は採用されている。

 

横浜ゴムは“スポンジ”で静粛性能を高める

 

もうひとつが、スポンジを利用したもの。タイヤの内側に多孔質型のスポンジを張り付けて吸音する方法だ。柔軟性のある素材ゆえ汎用性が高い。

 

スポンジ付きタイヤは、空洞共鳴音をほとんど消失させることが可能だ。ただし、クルマによってそもそも空洞共鳴音が目立つものもあれば、目立たないものもあり、またスポンジを入れれば入れるだけ効果があるというわけではなく、サチュレーションを起こすポイントがあり、その見極めが難しいという。

 

ヨコハマでは現在、「SILENT RING」と「SILENT FOAM」という、ふたつの技術を実用化している。前者は、BluEarth-1 EF20(195/65R15)というプリウス専用のタイヤ。後者はBMW X5 M用のOEタイヤだ。今後はさらなるラインナップの拡充が期待される。

 

“黒くて丸い”ゴムは、こうして日々進化しているというわけだ。

 

 

REPORT/藤野太一(Taichi FUJINO)

PHOTO/宮門秀行(Hideyuki MIYAKADO)

 

 

【関連リンク】

・横浜ゴム公式サイト

https://www.y-yokohama.com