ポテンザの最新タイヤ「RE-71 RS」のパフォーマンスを山田弘樹がサーキットで試す
公開日 : 2020/03/13 17:55 最終更新日 : 2020/03/13 17:55
BRIDGESTONE POTENZA RE-71 RS
ブリヂストン ポテンザ RE-71 RS
コンセプトは「ストリートラジアル史上最速」
ブリヂストン最強のストリートラジアル「RE-71 RS」を、筑波サーキット コース1000で試すことができた。このタイヤはポテンザRE-71 Rの後継モデルであり、ターゲットユーザーはガレージtoサーキットでスポーツ走行を楽しむクラブマンだ。
クラブマンに最適なハイグリップ・スポーツラジアル
日本のスポーツタイヤは複雑に細分化されているが、つまりは同じポテンザでもいわゆるSタイヤである「RE-11S」、Gazoo 86レース プロフェッショナルクラスのホモロゲーションを満たす「RE-12D」や「RE-07D」とは、その性格が異なる。
もちろんRE-71 RSで参戦可能なホビーレースや競技もあるが、それも含めて愛車でサーキット走行を楽しむユーザーに向けた、最もハイグリップなスポーツラジアルとなっている。
そんなRE-71 RSが目指したのは、当然ながら前作を上回るグリップ性能だ。しかしこれと共に私が興味を持ったのは、その耐摩耗性能を従来から約5%向上させたことだった。
ちなみに私はRE-71 Rを、これまで何度もサーキットで試している。その性能は現在発売されているスポーツラジアルの中で間違いなくトップランクというものだが、それと同時に「ものすごく減りが早いタイヤ」という評判もユーザーから聞いていた。
クラブマンにとってタイヤライフはラップタイムと同じくらい大切な要素だけに、今回の短い試乗ではロングライフ性能を見極められないにしても、これがどのように改善されたのかを知ることは、重要だと考えたのである。

RE-71 RSにはハイグリップポリマーを配合したトレッドゴムが採用され、パタン及び形状の最適を行うことで、RE-71 Rと比較してドライコースでの最速ラップは2.0%短縮し、摩耗寿命比較では5%の向上を実現している。
より柔らかく路面に食い込むハイグリップポリマーを採用
さてRE-71 RSでまず大きく進化したのは、そのコンパウンド性能だ。具体的にはより柔らかく、路面に食い込むハイグリップポリマーがそのトレッド面に投入されたという。
さらにパターンも刷新され、ツラ構えが大きく変わった。具体的には2本の太い主溝をよりイン側へと配置し、アウト側ブロックの剛性を向上。その他の溝も低角度な「ローアングルグルーブ」を用いることで、排水性とブロック剛性の両立という背反要素をバランスさせている。
とりわけ注目したいのは、タイヤの形だ。RE-71 RSはいわゆる「プロファイル」までもが、左右非対称となっているのである。
ちなみに前作RE-71 Rは、荷重が掛かるアウト側ブロックをスクエアなショルダー形状としている。対してRE-71 RSは、各トレッドゾーン毎の形状を最適化して、アウト側へいく程になだらかなラウンド形状を採用する。
その目的は、コーナリング時における接地面積の向上(6%)と、接地圧分布の均一化だ。クルマがロールした際にショルダーだけでなく、タイヤ全体で支えることによってグリップ力だけでなく耐摩耗性をも向上させようとしたわけである。
従来モデルのRE-71 Rと新モデルRE-71 RSを比較試乗
果たしてその効果はどうだったのか? 当日はクスコがライトチューンしたトヨタ 86(自然吸気)で新旧の差を試すことができた。RE-71 Rは個人的にも非常にハイバランスなタイヤだと認識している。そして今回の試乗でも、その印象に変わりはなかった。トヨタ 86程度の車重やコーナリングG、そしてパワーであれば、コース1000でタイヤが負けてしまうような状況は、ほとんどない。
当日は最初の走行枠で、1コーナーがまだ少しだけウェット路面だった。よってターンインからアクセルオンにかけての長い区間(ここは中速の複合コーナーなのだ)はやや慎重にアプローチしたが、RE-71 Rを履いたクスコ 86は進入でも姿勢を乱さなかった。高いボトムスピードを保ちながらのパワーオンでは若干のオーバーステアを誘発したものの、それもすぐにグリップを回復して次のコーナーへと姿勢を整えた。
ヘアピン、インフィールドの複合コーナー、最終セクション。ターンインでの手応えは常にしっかりしており、切り込んでもグリップが途切れない。そしてクリップからは躊躇なく、アクセルを全開にできる。弱アンダーステアに仕立てられたマシンのキャラクターからしても、その運転は申し訳ないくらいイージーだった。これ以上グリップが高くなる必要があるのだろうか? と心配になるほど、RE-71 Rはバランスのよいタイヤだ。
こうして刻んだタイムは、42秒623がベスト。筑波コース1000を走るアマチュアドライバーのタイムとしてこれはなかなかに優秀だと思う。
RE-71 RSに履き替えただけでタイムは0.858秒アップ
続いて本命のRE-71 RSの試乗に移る。RE-71 Rと同じ方法で、まっさらなタイヤの様子を探る。第一印象としては、プレゼン通りかなりゴムが柔らかく、その手応えはもっちりとしていた。
アウトラップを含め2周を数え、アタックに入る。1コーナーのブレーキングではグリップ力の高さを瞬間的に感じ取れた。タイヤ交換の間も他車が走行していたため、レコードラインが乾いてきたとも言えるが、アクセルを踏んでもリヤタイヤは滑る気配さえない。むしろプッシュアンダーステアが少し強いくらいだ。
このグリップ力を把握して、ヘアピンではRE-71 Rよりもレイトブレーキング。ここでもRE-71 RSは要求にがっちり応えて、車速を一気に落とす。まだそこには余裕があるようにすら感じられた。
インフィールドの複合コーナーは“待ち”の区間だが、ここでもRE-71 RSは高めの旋回Gを保ち続けた。S字セクションではアウト側、ブレーキングポイントではイン側縁石に乗り上っても、跳ねることなくしなやかにこれを通過した。最終コーナーだけややアンダーステアが強く感じられたが、回り込めてしまえばあとはアクセルを全開にするだけでいい。
その結果はなんと、41秒765の好タイム。ちなみにオフィシャルのタイム向上幅は旧作比で2%だから、0.858秒のアップは路面状況によるものが大きいと思う。とはいえこうなると欲が出てくるもので、翌周からはよりそのブレーキングポイントを奥目に取ってタイムを稼ごうとするのだが、結論から言えばタイムを更新することはできなかった。
ファーストラップでピークを刻むが落ち幅は少ない
ファーストアタックでピークを刻むのは、タイヤ的には正しい。ただ走るほどに慣れていくアマチュアにとってこの性格は少しシビアか。そのタイムは計測2周目が41秒871、計測3周目が41秒881と、落ち幅も驚くほど少ない。タイヤ自体は非常に扱いやすく穏やかな性格なのだが、まだ私にはその勘所がつかめなかった。
RE-71 RSで唯一気になったことは、RE-71 Rに比べ初期の手応えが柔らかいこと。そしてピークグリップの立ち上がりが、やや遅く感じられることだ。だからこれを素早く立ち上げるために、私はハンドルをこじらせてしまった。その結果中央リブはたった5周で醜く削れてしまった。これではブリヂストンが偏摩耗を防ごうとした技術も台無しである。ただアマチュアドライバーはこの傾向が強いから、やはりもう少しだけショルダーブロックは張り出した方がよいのではないかと思う。
ちなみにその傾向は、より車両重量が軽いスイフトスポーツだと軽減し、こじらずにそのグリップを引き出すことができた。しかしそのタイムはRE-71 Rが42秒038、RE-71 RSが42秒030と、肝心なタイム差をはっきり引き出すことができなかった。

展開サイズは、275/30R19(税込8万3160円)から155/60R13(税込1万3640円)まで全63サイズ(19インチ:10サイズ/18インチ:16サイズ/17インチ:10サイズ/16インチ:11サイズ/15インチ:10サイズ/14インチ:4サイズ/13インチ:2サイズ)。
RE-71 Rより確実にタイムアップするRE-71 RS
トヨタ 86のフィーリングで言えば、現状だともう少しサスペンション剛性を上げてCPを素早く引き出すか、オーバーステアよりのバランスにして旋回状態に入りたい。当日は不特定多数のドライバーが乗ることもあり、マシンがより安定した車両バランスになっていたが、ラウンドショルダーの良さを活かすためのセッティングはもっと先にあると感じられた。また215/45R17という純正サイズではなく、もっとタイヤ幅を広げることも有効だろう。
そしてこうした試行錯誤こそが、このタイヤの醍醐味であるとも思った。RE-71 RSは間違いなく前作RE-71 Rよりもタイムが出る。その能力を最大限に引き出す走り方やセッティングを追い求めることこそが、運転技術の向上につながり、ひいてはドライビングプレジャーとなるのである。
REPORT/山田弘樹(Kouki YAMADA)
PHOTO/市 健治(Kenji ICHI)
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