伝統の最終章「ベントレー ミュルザンヌ」を渡辺慎太郎が味わう【PR】

公開日 : 2020/04/05 17:55 最終更新日 : 2020/07/06 11:51

BENTLEY MULSANNE SPEED

ベントレー ミュルザンヌ スピード

 

 

ベントレーの原点はモータースポーツ

 

いまでこそ、ベントレーといえばロールス・ロイスと双璧をなす至高のブランドとして広く知られているが、その歴史を辿ってみると原点はモータースポーツにある。

 

創業者のウォルター・オーウェン・ベントレーは9人兄弟の末っ子として1888年にこの世に生を受けた。子供の頃から蒸気機関車の、特にスチームエンジンに興味を持ち、鉄道会社へ就職。エンジニアとしてさまざまな経験を積むうちに自動車への関心を高めていった。1912年には兄とフランス製自動車の輸入代理店へ転職、1919年になるとロンドン市内に自らの自動車メーカー『ベントレー・モータース』を立ち上げる。

 

創業当時の彼の哲学は「速く、高品質で、クラストップのクルマを作る」という極めてシンプルなものだった。そして7年の間に5回もル・マン24時間レースで優勝を果たすことになる。当時のル・マンは純粋に速さを競うというよりも、自動車メーカーが自社のプロダクトをテストする機会として捉えられていた。彼がル・マンへの参戦を積極的に行ったのも、自らが掲げた哲学を実証するためでもあった。同時に「長く、速く、そして快適に走れる性能を有するクルマこそ、我々の作るべき商品である」と確信した。

 

ベントレーミュルザンヌ スピードのレブカウンター

ミュルザンヌの特徴を物語るエンジン回転計。1時の位置からスタートするのが特徴で、ドライバーズカーであることを主張する。

 

以来、ベントレーはいつの時代においても“上質な高性能グランドツアラー”としての素性を持ち、マーケットからもそれがベントレーの魅力として評価され認知もされるようになっていった。グランドツアラーの主役はドライバーであり、「ロールス・ロイスは後席に、ベントレーは運転席に座るクルマ」と言われたように、あくまでもドライバーズカーであるというのも、ベントレーのこだわりのひとつとして確立したのである。

 

「ミュルザンヌ」とはもともとフランスの地名で、ル・マンのサルトサーキットのユノディエールと呼ばれる直線の後の直角コーナーに付けられた名称でもある。前述のようにル・マンと歴史的関わりの深いベントレーは1980年代にこの「ミュルザンヌ」を冠したモデルを製造販売していたことがあったが、現行のミュルザンヌはアルナージの後継車的モデルとして2009年に発表、翌年から販売が開始された。発表時からベントレーのフラッグシップモデルとしてブランドイメージの牽引役を務めてきたものの、この度生産中止が決まり、フライングスパーにその任を譲ることになった。

 

ベントレーミュルザンヌ スピードのサイドビュー

デザインも伝統を継承するミュルザンヌ。縦置きエンジン、後輪駆動であることをエクステリアからも感じさせる。無論、その造り込みは秀逸。クラフツマンシップの為せる技が活きている。

 

様式美がふんだんに盛り込まれたスタイリング

 

ミュルザンヌのボディは全長5570mm、全幅1925mm、全高1530mm(いずれも車検証値)で、物理的に堂々たるサイズを誇っているけれど、静かに佇むその個体が発するオーラには、サイズ感をはるかに上回る圧倒的重厚感のようなものが含まれていて、「ボディが大きい」よりも「威風堂々」たる印象のほうが強い。そう感じるのは、ミュルザンヌのエクステリアデザインやボディパネル類の生産技術の高さによるものだろう。

 

フロントはショートオーバーハング、リヤはロングオーバーハングというデザインモチーフは、セダン/クーペの伝統的作法のひとつで、ベントレーはミュルザンヌに限らず基本的にこれをいまでも守っている。エンジンが縦置きで後輪駆動のFRであることを示す(モデルによっては全輪駆動)だけでなく、真横から見たときにフロントのショートオーバーハングはいまにも走り出しそうな躍動感を、リヤのロングオーバーハングは安定感をそれぞれ表現しており、特に昔の“高級車”と呼ばれるクルマはおおむねこのデザイン手法を採り入れていた。

 

ベントレーミュルザンヌ スピードのフロントスタイル

ベントレーのお家芸“スーパーフォーミング”という機械加工技術で製作されるフロントフェンダー。ほぼ垂直に伸びたボンネットとエッジの効いたフェンダーラインが織りなす美しさもまたミュルザンヌならではだ。

 

最近のクルマのようにボンネットを大きくスラントさせず、ほぼ水平のまま直立するラジエターグリルへと続けるフロント部や、天地方向に長さのあるテールランプなど、いわゆる様式美がふんだんに盛り込まれたスタイリングは寺院や城郭などに通じるところがある。それが威風堂々たる雰囲気を醸し出しているのではないかと推測できる。

 

ミュルザンヌのフロントフェンダーには“スーパーフォーミング”と呼ばれる機械加工技術が用いられている。これは基本的にアルミ素材に特化した成型方法で、約500度に熱したアルミ板に空気の圧力をかけて加工する。塑性変形することで鍛造に匹敵する強固な組織構造が得られるとともに、鍛造よりも複雑で細かい成型が可能となる。昔なら熟練作業員が型に合わせて叩き出していた作業と同等の仕上がり品質を創出できる技術で、エッジの効いたフェンダーラインの美しさにその成果が見てとれる。

 

ベントレーミュルザンヌ スピードのコクピット

上品で格調高い雰囲気が魅力のコクピット。磨き込まれた鏡面仕上げのウッドパネルなどにより、厳格な空気に包まれる。

 

厳格な空気に包まれたインテリア

 

センターコンソールを中心に左右対称のダッシュボードデザインはベントレーの流儀のひとつ。最近のクルマにしては機械式スイッチがずいぶんたくさんあるものの、整然とレイアウトされているので機能性や使い勝手に大きな支障はない。クロームメッキの装飾の配置は絶妙だ。使うべきところに適切な分量が振り分けられていて、だから“ゴテゴテ・ギラギラ”した印象はなく、むしろ上品で格調高い。各部ステッチもまた、不自然な位置ではなく然るべき場所に然るべき糸の太さと間隔でしつらえられている。

 

試乗車のウッドパネルはピアノブラックで、触れるのが憚られるくらい磨き込まれた鏡面仕上げとなっていた。総じてミュルザンヌの室内は、まるでやんごとない方のご自宅の応接間にでも通されたような荘厳な空気に包まれている。

 

ベントレーミュルザンヌ スピードの並走シーン

あくまでもジェントルな走りに徹するミュルザンヌ。エンジン回転数が2000rpmを上回ることなど皆無に等しい。それでも力強く静かに速い。

 

ジェントルで力強く静かに速い

 

ミュルザンヌの乗り味は、そんなエクステリアやインテリアのイメージとピタリ合っている。乗り心地は単純に快適というだけでなく上質だし、セオリーに従った丁寧な運転をすれば3トン弱の重量と5m超のボディを持て余すことなく操れて、それに対するクルマの反応は極めて従順だ。アクセルペダルの踏力とストロークのセッティングの妙により、1000Nmを超えるトルクでも加速は決して荒々しくなく、あくまでもジェントルで力強く静かに速い。日本の交通状況下ではエンジン回転数が2000rpmを上回ることはほとんどなく、1500rpm付近でほとんどの場面は事足りてしまう。

 

ステアリングやペダルのわずかな動きも見逃さず、ドライバーの要望に次々ときちんと応えてくれる様は、さながら優秀な執事のようでもある。そしてつくづく、このクルマの特等席はやっぱりドライバーズシートなんだなと実感する。

 

ミュルザンヌ生産中止の理由のひとつにはこの6.75リッターのV8ツインターボエンジンの存続の難しさがあるとも言われている。時代の変化に対応するべく数々の最新技術が投入されてきたとはいえ、この“Lシリーズ”は起源を遡れば1959年に登場したユニットである。こうした由緒ある自動車製品が終焉を迎えるのはいまの時代において仕方のないことかもしれないが、次世代へと襷を繋げることでベントレーはこの先も走り続けていくだろう。歴史の糸というものは、得てしてそういう宿命的決断の繰り返しによって連綿と紡がれていくのである。

 

 

【SPECIFICATIONS】

ベントレー ミュルザンヌ スピード

全長×全幅×全高:5575×1925×1530mm

ホイールベース:3270mm

車両重量:2770kg

エンジン:V型8気筒OHVツインターボ

総排気量:6752cc

最高出力:395kW(537ps)/4000rpm

最大トルク:1100Nm/1750rpm

トランスミッション:8速AT

駆動方式:後輪駆動

燃料タンク容量:96リットル

トランク容量:443リットル

タイヤサイズ:前後265/40ZR21

最高速度:305km/h

0 – 100km/h加速:4.9秒

車両本体価格:4022万1000円(税込)

 

 

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