アルピーヌ A110Sを筑波サーキットで全開アタック! 山田弘樹がそのポテンシャルを試す【動画レポート】

公開日 : 2020/04/06 17:55 最終更新日 : 2020/04/08 16:30

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アルピーヌ A110Sを筑波サーキットで試す、走行シーン

Alpine A110S

アルピーヌ A110S

 

 

エンスー絶賛のA110をさらに昇華したA110S

 

アルピーヌ A110が現在高い評価を受けているのは、伝説となったその名前を背負う以上にその走りが素晴らしいからである。

 

A110の構成は、ルノー メガーヌR.S.のパワーユニットを流用した横置きミッドシップ。しかしアルミ製シャシーを軸としたボディの軽さとルノー・スポール仕込みの巧みなシャシーセッティングによって、幅広い層のドライバーが適度な刺激を感じながらそのハンドリングを楽しめるスポーツカーに仕上がっている。

 

アルピーヌ A110Sを筑波サーキットで試す、走行シーン

アルピーヌブランドからリリースされたミッドシップスポーツA110。定評のあるファン・トゥ・ドライブなA110の魅力をさらにアップさせたA110Sを筑波サーキットで試す。

 

なおかつそこにはロータス エリーゼのようなスパルタンさとは無縁の日常性を持ち合わせている。だからこそA110は、多くのジャーナリストやエンスージアストたちから支持を得ているのだと私は思う。

 

そんなアルピーヌ A110に昨年末、ハイパワーバージョンとおぼしき“S”が登場した。果たして40psのゲインを得たA110Sは、スタンダードモデルのウェルバランスを崩さずにその魅力を底上げできたのか?

 

その疑問に応えるかのように、ルノー・ジャポンはスタンダードモデルとSの比較試乗会を筑波サーキットで開催してくれた。

 

アルピーヌ A110Sを筑波サーキットで試す、走行シーン

A110のボディには96%アルミニウム素材を採用。A110リネージュで車重は1130kg、A110ピュアとA110Sは1110kgの軽量さを誇る。

 

スタンダードモデルでも光るサーキットでの実力

 

比較試乗は、A110(PURE)とA110Sをそれぞれ先導車付きの特設コースで走らせるところから始まった。普段は使わないバイクシケインと、バックストレートでのパイロンスラローム及びダブルレーンチェンジでハンドリングの違いを試し、2周目には30km/hからのバックストレート加速を行うという手の込んだメニューだ。

 

ここでまず私は、スタンダードモデルのハンドリングに心が躍った。

 

ちなみに、筆者がA110をサーキットで走らせるのはこれが初めてだった。しかしながらそのサスペンションは一般公道と変わらず柔軟に路面を捉え続け、そのボディはひらりと旋回姿勢を作り出した。確かに高荷重領域でのロール量はワインディングよりも多く、そのロールスピードも数段早い。それでもクルマと対話している実感は相変わらずかそれ以上に高く、このまま先導車を追い抜きたい衝動に駆られた。A110が織りなす“じわり”と“ひらり”は、やはりかけがえのないキャラクターだ。

 

アルピーヌ A110Sを筑波サーキットで試す、走行シーン

搭載する1.8リッター直列4気筒ターボエンジンは最高出力292ps/6420rpm、最大トルク320Nm/2000-6420rpmを発生。トランスミッションは7速DCTを組み合わせる。

 

40psのエクストラだけではない”S”の魅力

 

しかしながらそそくさと乗り換えたA110Sは、さらなる高揚感を私に与えてくれた。驚いたのはピットレーンを軽く走らせただけで、その違いを感じ取れたことだった。ちなみにA110Sの出力は、数字だけでいうとスタンダードモデルの252ps/6000rpmから、292ps/6420rpmとなっている。実に40psものパワーアップである。

 

その出力向上は、エンジン内部に手を付けずブーストアップ(+0.4bar)のみで達成されている。よってその出力特性はA110の性能曲線をなぞるようにパワーが引き出されており、トルクに至ってはトップエンドの領域が約1500rpm引き延ばされただけ。つまり高回転領域にのみその違いが発揮されるはずなのだが、実際に運転すると低速域からその蹴り出しが素早く、サウンドもどことなく野太くなっているように感じたのである。

 

アルピーヌ A110Sを筑波サーキットで試す、山田弘樹氏のドライブシーン

足まわりはA110からグレードアップが成される。スプリングレートは30Nmから47Nmへ向上し、スタビライザーレートも前が17Nmから25Nmへ、後が10Nmから15Nmへ高められた。

 

足まわりのグレードアップは1.5倍増しのイメージ

 

その理由のひとつは、フットワークの磨き上げによるものだと思う。

 

サスペンションはスプリングレートの向上(30Nmから47Nmへ)に対してダンパー剛性もマッチングさせており(数値は未公開)、ルノー・スポールの十八番であるハイドロバンプストッパーも専用チューニング。そしてスタビライザーレートまでもが前後で高められた(前17Nmから25Nmへ、後10Nmから15Nmへ)。A110に対してその足まわりは、おおよそ1.5割増しというイメージである。

 

なおかつその車高は約4mm低められ、わずかながらも低重心化が図られた。そして装着タイヤであるミシュラン パイロットスポーツ4は、S専用のチューニングでグリップを引き上げている。正確に言うとタイヤに関しては、A110とA110Sでコンセプトが異なる。前者はピークグリップよりもコントロール性を重視しているのに対し、後者は操作に正確性を与える仕様となっているのだという。つまり相対的にグリップが高くなり、トラクション性能も上がっているわけだ。

 

アルピーヌ A110Sを筑波サーキットで試す、走行シーン

最高速度は260km/h、0-100km/h加速は4.4秒をカタログスペックに計上。A110Sではスタンダードモデルより高回転での伸びが感じられる。

 

7速のギヤを使いきった加速感が秀逸

 

そんなA110Sを走らせると、確かに手応え感が高い。操舵に対してスッとロールを促すA110の特徴的な身のこなしは、ダンピングが効いたほどよい踏ん張り感に取って変わり、バイクシケインの回り込んだ旋回やパイロンスラロームではロールの収まりが早い。かといってガチガチではないのが、やっぱりアルピーヌである。

 

バックストレッチでの加速は、やはりA110Sの方がわずかに野太いサウンドを奏でている気がした。なおかつ序盤は蹴り出しの良さが、そして後半からは高回転での伸びが加わり、7速EDCのギヤをフルに使いきった加速がとても気持ち良い。

 

最終コーナーアプローチまでの速度差はA110が170km/h後半で、A110Sが180km/hを僅かに超えたあたり。数字では僅かな差だが、こうしたクローズドコースだとやはり、扱える範囲では速い方が楽しい。ちなみに両者のパワーウェイトレシオは、A110が4.3kg/psであるのに対して、A110Sが3.8kg/psである。

 

アルピーヌ A110Sを筑波サーキットで試す、走行シーン

コーナーでの挙動はリヤヘビーのミッドシップらしいものだが、ルノー・スポールによるセッティングによって穏やかでコントローラブルな特性をみせる。

 

ミッドシップだが挙動は穏やかでコントローラブル

 

最後はA110Sを、アウト/インラップ含め3周で走らせた。

 

1コーナーやふたつのヘアピンで感じたのは、フルブレーキング時の安定感。その際ダンパーはグッと荷重を受け止めながら沈み込み、ブレーキリリースからハンドルをきるとフロントタイヤがきちんと押しつけられている様子が手の平に伝わってくる。205幅から215幅へと細かくサイズアップされたタイヤの踏ん張りや、バイマテリアルとなったブレーキローターの制動力も効いている。またリヤの伸びもほどよく規制されており、ターンインでも姿勢が暴れない。

 

対して中・高速コーナーではA110というクルマの素性が少し垣間見えた。ダンロップコーナーでのほどよい巻き込みは、僅かにリヤヘビーな車体がもたらす慣性重量の影響。そしてアクセルを合わせると流れが穏やかに収まるのも、ミッドシップならではの特性である。そしてその流れ出しが比較的穏やかなのはセッティングの妙だといえる。ルノー・スポールは重心の高い横置きモジュールの慣性を本当にうまく抑え、かつ利用していると思う。またこうした状況だと2ペダルは左足ブレーキが使え、アクセルを素早くシンクロできるのもいい。

 

アルピーヌ A110Sを筑波サーキットで試す、走行シーン

ESC(横滑り防止装置)によって高速領域は安定指向に振られており、アマチュアドライバーでも安心して踏んでいけるように煮詰められている。

 

ルノー・スポールによるサジ加減が絶妙なコーナリング

 

逆に80Rのような高速コーナーではほんの僅かにフロントのグリップ感が希薄だと感じた。よってダンロップの切り返しからアクセルを開けることができず、ややもどかしい。しかしここで応答性を高め過ぎることはリスクにも繋がる。このサジ加減こそはルノー・スポールの判断なのだろう、アマチュアドライバーが「少し怖いな・・・」と感じる高速領域は、安定方向へと振っているように思われた。

 

そしてこれがもう少し曲率の大きな最終コーナーになると絶妙にバランスした。マネージメントはトラックモードで走らせたが、ターンインでの僅かなオーバーステアを抑えきることなく、しかし最低限のスタビリティはESC(横滑り防止装置)で確保しながら高いスピードを保ってこれをクリアしたのだった。

 

ヘアピンのように曲率が大きなコーナーでオーバーステアを出すとアクセルを大きく絞ってしまう傾向が見られたものの、最終コーナーのようなパーシャルスロットル領域だとこのESCは実にうまく働いてくれる。

 

アルピーヌ A110Sを筑波サーキットで試す、走行シーン

ルノーは、「A110が操る楽しさを追い求めたモデル」であるのに対し、「A110Sは操作に対する精度を上げた」仕様だとコメント。サーキットではもちろん、日常領域でも楽しめるスポーツモデルだ。

 

より走りにこだわるユーザーに向けた1台

 

短い試乗ではあったけれど、こうした状況から判断するとA110Sはより走りにこだわるユーザーに向けた一台であると感じた。ちなみにルノーは、A110が操る楽しさを追い求めたモデルであるのに対し、A110Sは「操作に対する精度を上げた」仕様だとコメントしている。わかりやすく言えばその進化は、ポルシェ 718ケイマンのSがGTSになったイメージだろうか。まだA110Sで一般道やワインディングを走らせたわけではないが、つまりは決してトラック専用モデルではない。

 

そしてもしこれ以上の領域、さしずめケイマンGT4のようなレーシングスポーツをA110に求めるなら、足まわりはもちろん空力に対してもグランドエフェクト以外にもっと手を入れていかねばならないだろう。

 

とはいえA110Sは現状でも素晴らしいポテンシャルを持っている。聞けばそのアライメントは今回の出力アップに対してリヤにトーインをA110より多めに付けており、こうした部分を見直すだけでもその動きは大きく変わるはず。また自分好みの足まわりで熟成させていくのもクラブマンとしての楽しみだと思う。派手なバンパーやウイングを付けないことはA110Sの大きな魅力のひとつだ。メガーヌR.S.トロフィーの300psより僅かに落としたその最高出力が、A110Sのキャラクターを無言で物語っていると私は思う。

 

 

REPORT/山田弘樹(Kouki YAMADA)

PHOTO/小林邦寿(Kunihisa KOBAYASHI)

 

 

【SPECIFACATIONS】

アルピーヌ A110S

ボディサイズ:全長4205 全幅1800 全高1250mm

ホイールベース:2420mm

車両重量:1110kg(※グリ トネール マットのみ1120kg)

エンジン:直列4気筒DOHC16バルブ+ターボ

総排気量:1798cc

最高出力:215kW(292ps)/6420rpm

最大トルク:320Nm/2000-6420rpm

トランスミッション:7速DCT

駆動方式:RWD

サスペンション形式:前後ダブルウィッシュボーン

ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク

ディスク径:前後320mm

タイヤサイズ:前215/40R18 後245/40R18

最高速度:260km/h

0-100km/h加速:4.4秒

車両本体価格(税込):899万円(※グリ トネール マット:939万円)

 

 

【問い合わせ】

アルピーヌ コール

TEL 0800-1238-110

 

 

【関連リンク】

・アルピーヌ・ジャポン公式サイト

https://www.alpinecars.jp