メルセデス・ベンツ Gクラスの歴史を100枚の写真で辿る。「ゲレンデヴァーゲン」が愛され続ける理由とは

公開日 : 2020/04/10 17:55 最終更新日 : 2020/04/10 17:55


1979年に撮影されたW460のオープントップ仕様イメージ

Mercedes-Benz G-Class

メルセデス・ベンツ Gクラス

 

 

年間2万台生産される本格オフローダー

 

ゲレンデヴァーゲン。大地のクルマという簡潔に過ぎる名前を与えられた本格オフローダーは1979年2月にワールドプレミアされた。のちにモデル名こそGクラスとなるものの、そのプロポーションをほとんど変えぬまま40年近くにわたり世界中を駆け回ってきた。

 

発表時、企画部門はGクラスの販売台数について「年間1万台を上回ることはないだろう」と読んでいた。しかし近年、グラーツで1年に生産されるGクラスはおよそ2万台を数えている。

 

歴代Gクラスの集合カットイメージ

2018年に登場した現行モデルを中央に、歴代Gクラスが集合。40年間、変わらぬムードを継承してきたことが分かる。

 

二人三脚で走り始めたプロジェクト

 

1969年夏、ダイムラー・ベンツAGとオーストリアのシュタイア・ダイムラー・プフAGは協業の可能性についての議論を開始した。当時メルセデス・ベンツはウニモグを、プフはハフリンガーやピンツガウアーを有していた。ちなみにハフリンガーとピンツガウアーは馬の品種名に由来する。

 

両社がオフロードモデルの開発に向かって実際に船をこぎ出したのは1971年。その翌年秋には、ダイムラー・ベンツのDr. ヨアヒム・ツァーンCEOとシュタイア・ダイムラー・プフのDr. カール・ラブスの間で基本的合意が交わされている。開発チームのヘッドにはシュタイア・ダイムラー・プフのチーフ・エンジニア、エーリヒ・レドヴィンカが指名された。

 

1975年に撮影された“オープントップ クロスカントリー ビークル”の2台集合イメージ

1975年に撮影された“オープントップ クロスカントリー ビークル”のショートホイールベース及びロングホイールベースモデル。社内向け資料「メルセデス・ベンツ クロスカントリーカー。技術説明」より。

 

40年間“G”を作り続けるグラーツ工場

 

開発は急ピッチで進められた。最初の木型モデルは1973年4月に完成し、1974年にはプロトタイプによる公道テストを実施。1975年に作成された社内向け資料にはすでに市販モデルに近い設計概要が明記されており、デザイナーやエンジニアがいかに大車輪でプロジェクトに臨んでいたかが分かる。最終的なスタイリングを形づくったのはブルーノ・サッコ率いるメルセデス・ベンツのデザイン部門である。

 

1974年4月時点の社内用資料イメージ

1974年4月時点の社内向け資料。左側にオープントップ、右側にタープ仕様が描かれている。

 

生産はグラーツのトンドルフにある工場で行われた。2018年に登場した最新Gクラス(463型)も変わらずこの場所で作られている。エンジンやアクスル、ステアリングシステム、トランスミッション、大型のプレス加工品はメルセデス・ベンツから納入され、他の様々な部品もドイツ各所からグラーツへと運ばれることになった。

 

量産開始は1979年2月。1977年にダイムラー・ベンツとシュタイア・ダイムラー・プフで興した合弁会社「Gelandefahrzeug Gesellschaft(ゲレンデファールツォイグ ゲゼルシャフト(GfG)」が主導した。

 

2018年1月14日に行われた新型Gクラスのワールドプレミアの様子

2018年1月14日、デトロイトショーで行われた新型Gクラスのワールドプレミア。会場では初代Gクラスたる1979年製280GE(W460)が樹脂の中に閉じ込められたインスタレーションを披露した。琥珀の中に眠る古代の昆虫を思わせる、Gクラスのヘリテージを強く訴えかける作品だった。

 

Gクラスの出発点、W460

 

比較的簡素なインテリアと、見るべきテクノロジーを満載して日常で使えるオフロード車として初代Gクラス、W460が発表された。多用途性とロバスト性に優れたラダーフレーム構造とリジッドアクスルを採用し、センターデフを備えた全輪駆動が標準で、フロント及びリヤデフはオプションとしての設定だった(1985年からは全車標準)。

 

ディーゼルエンジン搭載の240 GD及び300 GD、ガソリンエンジン搭載の230 G及び280 GEをラインナップ。ホイールベースは2400mmと2850mmの2バージョン、ボディタイプはオープン/クローズド/パネルバンを取り揃えた。W460の電圧は12Vだが、軍用に供されたW461には24Vを搭載。CKD(コンプリート ノックダウン)生産向けにはW462の型式が与えられた。

 

ジャッキー・イクスとクロード・ブラッスールの駆るW260イメージ

1983年、ジャッキー・イクスとクロード・ブラッスールは280 GE(W460)でパリ-ダカールラリーで勝利した。

 

カタチは変えず、中身は前進

 

以降、Gクラスは基本を継承しながらも着実な進歩を重ねていった。前述のとおり1985年からはフロント/センター/リヤのデフロック機構を全車に搭載。280 GEと300 GDから導入したパワーステアリングも1987年からは標準装備としている。1986年には230 GEにオプションとして三元触媒コンバーターを導入。1990年に登場したW463にはABSを装着し、全輪駆動システムをそれまでのオンデマンド式からパーマネント式に変更している。2001年からはトラクションコントロール「4ETS」、スタビリティコントロール「ESP」、ブレーキアシスト「BAS」といった電子制御システムを全車に採用した。

 

インテリアでは、前席に独立式のレカロシートを1981年にオプション設定。1990年になると、W463のインテリアにウッドパネルが登場している。

 

ヨハネ・パウロ2世と教皇専用車“パパモビル”イメージ

ヨハネ・パウロ2世と230 Gベースの教皇専用車、通称“パパモビル”。登録ナンバーは「SCV 7」。SCVはラテン語「Status Civitatis Vaticanae(バチカン市国)」の頭文字。

 

オフロードからアスファルトの王者へ

 

よりパワフルでラグジュアリーなGクラスを望む顧客向けに8気筒、さらには12気筒のエンジンを搭載したモデルも誕生。1993年にV8エンジンを積んだ500 GEが小量生産され、1998年にはトップレンジモデルとしてG 500が君臨することになった。ちなみに正式にGクラスと呼ばれるようになったのは1993年以降であり、グレード名も他の乗用車と同じく「アルファベット+三桁数字」に変更されている。

 

Gクラスが都会の王者となるきっかけを作ったのが、W463のトップレンジとして1999年に登場したAMGのG 55だろう。以来、2004年の G 55や2012年のG 63及びG 65、2013年のG 63 6×6、そして現行モデルのメルセデスAMG G 63に至るまで、AMGのバッジをまとったGクラスはハイパフォーマンスオフローダーを象徴する存在として君臨し続けている。

 

1989年から2014年にGクラスで世界を巡ったグンター・ホルトルフ氏と愛車の300 GD“オットー”イメージ

1989年から2014年にGクラスで世界を巡ったグンター・ホルトルフ氏と愛車の300 GD“オットー”。写真は2005年にインドで撮影されたもの。

 

“スーパーカー”やショーファードリブンにも挑む

 

孤高のオフローダーたるGクラスだが、なかでもかなり特殊といえるバリエーションも生まれている。たとえば2015年に登場したG 500 4×4 スクエアードはなにもかもが型破りだった。“よじ登る”ほどの高さに据えられた運転席に、ひとつのホイールにつき2本備えたスプリング/ダンパー、カーボン製のオーバーフェンダーに邦貨で3510万円というプライスタグ。いわば「オフロード界のスーパーカー」と呼べる代物である。

 

2017年に撮影されたメルセデス-マイバッハ G650 ランドレーのリヤシートイメージ

2017年に撮影されたメルセデスマイバッハ G 650 ランドレー。99台のみが限定生産された。前席と後席を仕切るガラスパテーションはスイッチひとつで透明度を切り替えられる。

 

また、2017年にはメルセデスマイバッハ G 650 ランドレーがわずか99台のみ限定生産された。「ランドレー」はフロントシート部分を屋根付き、リヤシート以降をオープントップとしたボディタイプを指し、主に1940年代までの高級ショーファードリブンカーに見られる。Gクラスのランドレーは電動ソフトトップを備え、前後席を仕切るガラス製電動パーテーションも装備。もちろんキャビンには最上級の内装材とクラフトマンシップが惜しみなく与えられ、マイバッハならではのゴージャスな雰囲気に満ちている。

 

2018年5月に量産をスタートした現行Gクラス。マグナシュタイヤーの工場イメージ

マグナシュタイヤーの工場で2018年5月に量産を開始した現行Gクラス。

 

GクラスがGクラスであるために

 

2018年、Gクラスは実質「史上初めてのフルモデルチェンジ」を実施。従来型から流用した部品はドアハンドルやスペアタイヤカバー、サンバイザーなどわずかな部分に留まるが、コードネームはW463を継承した。

 

まごうかたなきGクラスとしてのスタイルやムードは頑なに守りつつ、安全性能や快適性、環境性能を現代基準にアップデート。ウィンドウには伝統的な板ガラスを採用しつつも、フロントウィンドウのみわずかに曲面を付け(=空力、風切り音対策)、フロントフェンダー上部にそびえるターンシグナルもは衝撃を加えると下に落ちる仕様(=歩行者保護)とするなど、「GクラスがGクラスであるために」気の遠くなるような工夫が盛り込まれている。

 

2018年に撮影されたメルセデス-AMG G 63のフロントイメージ

2018年に撮影されたメルセデスAMG G 63。現行モデルのフラッグシップだ。

 

2019年、Gクラスは前年を60%以上も上回る3万4912台を販売した。「年間1万台を上回ることはない」と思われていたクルマは想定を3倍以上も超えるオーダーをこなし、40年を経てなお世界中で広く愛され続けている。