ポルシェが自宅で楽しめる趣味講座をスタート、第1回目は「自動車をカッコよく撮影する方法」

公開日 : 2020/04/16 11:55 最終更新日 : 2020/04/20 11:44

プロのフォトグラファーが写真テクニックを指南

 

ポルシェ・ニュースルームは、新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大を阻止するために自宅待機を続ける読者に向けて、新たなシリーズを立ち上げた。マスタークラスには毎回プロの講師が登場し、ロックダウン中でも自宅で自動車に関するクリエイティブなスキルを身につけられるようになっている。

 

マスタークラスのチームは、スタイル・ポルシェのトップを務めるミヒャエル・マウアーから、トップインフルエンサーのリチャード・ティッパーまで、自動車業界で最もクリエイティブで才能溢れる人材が集められた。このシリーズ立ち上げの目的は、外出制限を守り自宅にいながらも、自動車ファンが自動車の写真、デザイン、アート、さらにはドライビングなど、さまざまな分野のスキルを磨くことができるガイドを作成することにある。

 

第1回目のテーマは「写真」。プロフェッショナルフォトグラファーのリチャード・パードンが登場し、自動車写真について詳しい講義を行う。彼はTAGホイヤー・ポルシェ・フォーミュラEチームのオフィシャルフォトグラファーを務めている人物だ。彼が撮影した写真は、これまでに何度も世界的に有名な雑誌の表紙を飾っている。

 

今回、パードンはカメラ機材、編集アプリ、光の使い方、シャッタースピード、構図などについて解説を行う。また、自分が撮った写真に関してはハッシュタグ「#GetCreativeWithPorsche」を付けてSNSで公開することで、ファン同士が作品を共有できるだけでなく、パードンが写真に関するアドバイスも行うという。

 

パードンがまず言いたいことは、「高い機材は必要ではない」ということだ。

 

ニール・ジャニと自撮りするリチャード・パードン

ニール・ジャニと自撮りするリチャード・パードン。豪華な機材を使わなくても、スマートフォンに搭載されているカメラを使うことで、ちょっとした瞬間を逃さず撮影することができる。また、アプリを使ってその場で画像を編集できるのも、スマホの利点のひとつだ。

 

ベストなカメラ機材とアプリは何?

 

「高価なカメラ機材は必要ありません。多くの人はカメラを搭載したスマートフォンや携帯電話を持っていますよね。私はむしろ、スマートフォンで撮った写真の方がクリエイティブだと思うことがよくあります。レンズ、絞り、シャッタースピードなどの選択肢が多すぎるのは、かえって負担になります。アレコレと考えているうちにベストな瞬間を逃す可能性があります。スマートフォンであれば、いつでもすぐに撮影することができますから」

 

「この数年、スマートフォンのカメラは飛躍的な進化を遂げています。確かにスマートフォンで撮った画像を巨大看板のサイズに拡大することはできないかもしれませんが、SNSで公開するのであれば一番適している機材です。そして撮影した画像をさらに素晴らしく変えることができる、何千ものカメラアプリがあります」

 

「私自身がよく使っているのは『Lightroom』。これはカメラで撮った写真をスマートフォンに送信したり、その場で編集したりするのに非常に便利です。基本的にスマートフォン用アプリもPC用と同じ機能を持っていますが、一部編集作業に制限があるので注意が必要です。『VSCO』はフィルターアプリです。簡単に画像補正を行うことができます。スマートフォンで撮影した画像の色味を調整するお気に入りのアプリですね」

 

「そして『Unfold』は、インスタグラム用ストーリーのレイアウトを作成できるアプリです。 私のインスタグラムアカウント(@richardpardon)は、私自身の作品の“ギャラリー”でもあります。一方、1日限定でアップされるストーリーは、私にとって自由に投稿できる“逃げ場”のようなものです(笑)。それこそ、フォーミュラEが行われるレースウイークには、1日に10~15ストーリーを投稿することがあります」

 

リチャード・パードンがポルシェをテーマに撮影した作品

走行するクルマの写真を撮影する場合、最も重要になるのがシャッタースピードだ。早くすることでカチリと止まった絵を作ることができるし、シャッタースピードを遅らせることで風景などをぶらし、動きを付けることができる。

 

クルマを止めるか動かすか、鍵はシャッタースピード

 

「シャッタースピードとは、カメラ内部のシャッターが開いている時間になります。1/ 8000秒から30分まであります。シャッターが開いている間に光が差し込み画像が露出します。動いているクルマを撮影する場合、シャッタースピードを変更するとことで雰囲気が大きく変わります。最近のカメラにはすべてシャッタースピードを調整できるモードが付いていますから、高速でシャッターを切れば画面をカッチリと止めることができますし、シャッタースピードを下げればブレたり残像を残したりと動きのある効果を付けられます」

 

「静止画像を撮影する場合、速いシャッタースピード(1/500以上)を使用します。 これによって動きがフリーズし、よりクリアな画像になります。画像に動きを付けたりクルマが目の前を通り過ぎる状況を伝えたい場合は、遅いシャッタースピード(1/250~1/30)が必要です。その際、移動するクルマを追いながら撮影(流し撮り)することになるので、これには少し練習が必要でしょう」

 

「基本的にはカメラを動かしながら被写体を追っていきます。カメラの動きがクルマに合っていると感じたらシャッターを切って下さい。練習すれば、より遅いシャッタースピードで撮影することができます。残念ながら魔法の公式はありません。クルマの動きを理解するにはやはり練習です」

 

「雑誌やメーカーの広告では、クルマ同士の“引っ張り”だったり“追っかけ”ショットをよく目にします。これは撮影用のクルマを使用して、被写体となるクルマと一緒に走行しながら撮影します。ここでも同じ原理、シャッタースピードにより止めたり、動きをつけたりできます。そして、2台のクルマが同じタイミングで移動することが重要です。シャッターを開けば路面に動きが出て、さらに運が良く2台が同じ速度、同じカーブを描いて移動していると、シャープさが増した写真が撮れるでしょう」

 

「流し撮りでも、引っ張り・追っかけでも、やはりシャッターを切り続けることが重要です。限られた瞬間を狙うのではなく、ひたすら多く切り続けることがポイントですね」

 

リチャード・パードンがポルシェをテーマに撮影した作品

光と影を効果的に使うことで、写真にストーリーを与えることができる。パードンは逆光により、影に語らせる手法をよく使っているという。

 

写真にストーリーを与える、光と影の効果

 

「自動車デザイナーは、私たちが当たり前だと思っているフォルムや線を作り上げるために、数え切れないほどの時間を費やしています。正式発表前にメーカーからニューモデルの撮影を依頼されることは、我々に与えられた真の特権と言えるかもしれません。その場合、多くの人にとって初めて目にする写真になりますから、照明を使用して可能な限りデザインを正確に伝えることが重要になります」

 

「自然の摂理で光は上方向(太陽)から差します。基本となるのは、クルマに対して高い角度から照明を当てることになります。そして、光に付随するものとして影があります。影はストーリーを語るものです。光がどこから来たのか、それがどれだけ高いか、低いか、そしてどれだけ遠くにあったか・・・。クルマの形状を光や影によって変えることができるなんて、本当にすごいことですよ」

 

「私の写真スタイルは逆光で撮影すること。 太陽や光の当たる方向にシャッターを切るのが好きなのです。影がカメラに向かってくることで、物語をより伝える効果があります。また、フレアも私のお気に入りの効果のひとつですね。でも、素敵な光をみつけるためには英国を離れなければならないんですが・・・(笑)」

 

リチャード・パードンがポルシェをテーマに撮影した作品

写真において、見せたい被写体をどこに配置するのか、構図は非常に大切なポイントとなる。素材感の異なるものを入れたり、色味を加えることで写真に深い奥行きを持たせることができる。

 

被写体に目を向けさせるために視点を変えた構図をつくる

 

「私にとって写真がエキサイティングなことのひとつに、自分の目を通した世界を紹介できることです。ふたりの写真家に同じものを撮影するように依頼した場合でも、結果は絶対に異なります。 同じ写真はふたつとありません。誰かに『自分の作品で最も気に入っているものは?』と聞かれれば、次に撮影する写真と答えているほどです」

 

「今回、より絵に力のある写真を撮影するのに役立つテクニックをいくつか紹介します。まず写真全体を囲う“枠”を想像して被写体を最適な位置に配置し、街灯などの気を散らす要素を取り除きます。重要なのは視聴者の目を被写体に向けることです」

 

「次に低い位置から撮影するのか、高い位置から撮影するのかを検討してください。例えばポルシェ 911 GT3の撮影はフェンダーを強調するために低い位置から行うのが定石です。対象の奥や手前になにか要素を追加すると、奥行きを持たせることができます。手前に木の葉を入れて色を加えてみたり、岩を置くことで異なる素材感を入れてみてはどうでしょう?」

 

「私自身の作品のお気に入りのいくつかは、通常ではあり得ない角度から撮られたものです。自分の頭の高さからシャッターを切るのではなく、例えば何かに登って高さを作ってみたり、可能ならばドローンを使ってみるのも面白いかもしれません」

 

リチャード・パードンがポルシェをテーマに撮影した作品

長時間に及ぶ撮影では、同じ場所が舞台でも異なる表情を写真に写し出すことができる。パードンが撮影した718スパイダーの夜間撮影では、テールライトを効果的に使って光の動きを可視化している。

 

時間の経過により異なる表情を見せる写真

 

「例えば耐久レースの撮影であれば日の出から日没まで、そして夜中まで写真を撮る機会があります。つまり同じ景色でも光などにより違った顔を見せてくれます」

 

「多くの場合、美しい斜光のある夜明けと夕暮れが写真を撮るのに最適な時間です。でも暗闇では、文字通り光の中で被写体を見せることができます。シャッターを開くことでセンサー(またはフィルム)に光の移動を焼き付けることができるのです。暗い夜間では、日中では考えられないほどシャッタースピードは長くなります」

 

「2019年の終わり、英国で発表されるポルシェ 718スパイダーの撮影を雑誌の『EVO』から依頼されました。ロケ地はヨーロッパ最大の照明設備のない森林地帯、キルダーフォレストです。この特集では、星空の下での718スパイダーのドライブがテーマでした」

 

「シャッタースピードを1/30秒に設定し、テールライトを使用して道路に“ペイント”しました。写真を見ていただければ分かるように、『ライトトレイル』という光の動きを可視化することができます。さらに、シャッターが開いている時間が長いほど、より多くの光(この場合は星からの光)が画面に残されるのです」

 

「また、カメラが三脚に固定されているのであれば、照明機材を使うこともあります。高価なフラッシュライトのようなものでなく、一定光量を照らすトーチライトのようなものでも使えます。このように長時間シャッターを開けながらライトによってボディを照らす手法を『ライトペインティング』といいます」

 

撮影した写真は「#GetCreativeWithPorsche」を付けてアップを!

 

「このテーマに合わせて、ポルシェ・ニュースルームの公式インスタグラム(@Porsche_Newsroom)には、撮影に関するヒントをたくさんアップしました」

 

「そして、何かを撮影したならば、ハッシュタグ『#GetCreativeWithPorsche』を付けてSNSで共有してください。できる限り私からのフィードバックをお送りします。いろいろトライしながら、楽しんで創造力を膨らませましょう。家から出られないからといって、この世界がどんな様子なのか、伝えられないわけではないのですから」