ブガッティ ディーヴォ、コーチビルディングの伝統を復活させてデリバリーがスタート

公開日 : 2020/04/30 17:55 最終更新日 : 2020/04/30 17:55


ブガッティ ディーヴォの走行シーン

Bugatti Divo

ブガッティ ディーヴォ

 

 

2018年の発表から2年を経てカスタマーの元へ

 

ブガッティが2018年に発表したスペシャルモデル「ディーヴォ」は、明確な個性を持ち限られた台数が製造される、それまでとは一線を画したハンドリング性能を備えたハイパースポーツだ。その価格は500万ユーロ、販売台数は40台のみとなる。発表から2年間の開発期間を経て、少量限定生産の最初の車両がいよいよオーナーのもとへとデリバリーされることになった。

 

ブガッティのステファン・ヴィンケルマン社長は、ディーヴォについて以下のようのコメントした。

 

「ディーヴォにおいて、ブガッティは長く忘れられていたコーチビルディングの伝統を復活させました。この限定かつ非常に高性能なハイパースポーツは独自の特徴を持っています。つまり最高速度ではなく、俊敏性やコーナリング特性が強化されているのです。ディーヴォはブガッティ・ファンのコレクションには欠かせない1台になりました」

 

ブガッティ ディーヴォのインテリア

ディーヴォのインテリア。ブガッティが現在製造するシロンをベースにしながらも、完全にオリジナルのボディスタイルが与えられたディーヴォ。その開発は2018年にスタートした。

 

シロンをベースにした全く別物のハイパースポーツ

 

今、ディーヴォのストーリーはいよいよ最終段階へと進んだと言えるだろう。ブガッティの限定モデル・プロジェクトマネージャーを務めるピエール・ロンメルファンガーが、どのようなきっかけでディーヴォのプロジェクトがスタートしたのか説明してくれた。

 

「2018年初め、ブガッティのトップに就任したステファン・ヴィンケルマンが率いる最初のプロジェクトとして、スポーツ性能に優れた車種の開発が決まりました。もちろん長い議論が繰り広げられましたが、何よりもカスタマーの声に耳を傾けました。その意見の多くが、コーナーリング性能に特化した機敏な車種を望んでいたのです。それがディーヴォとして形になりました」

 

ブガッティがディーヴォの開発に際して設定した目標は、シロンをベースにしながらも全く別物のハイパースポーツを完成させることだった。快適性を犠牲にすることなく、よりスポーティかつ俊敏なコーナリングを実現するように開発されたが、それはブガッティにとっても大きな挑戦だった。

 

数ヵ月以内に初期のデザインモデルが作成され、フランス・モルスハイムで選ばれたシロンのオーナーに対する1対1の内覧会が行われている。

 

「ディーヴォを購入したすべてのお客様はシロンも所有しています。ブランドが何を求めているのか、そして何をしたいのか理解していただいている、まさに真のブガッティ・エンスージアストです。お客様はディーヴォのスポーティなアプローチを即座に理解し、プロジェクトをサポートしてくれました」と、ヴィンケルマンは振り返る。

 

カスタマーからの反応は圧倒的なものとなった。40台の限定生産分は即座にソールドアウトし、間もなくそれぞれのオーナーの元へとデリバリーされる。

 

ブガッティ ディーヴォの走行シーン

搭載されるパワーユニットはシロンと同じ8.0リッターW型16気筒だが、シャシーセッティングは専用に開発。ニュルブルクリンクのノルドシュライフェなど各地のサーキットを舞台に徹底的に鍛え上げられた。

 

ノルドシュライフェで磨かれた走行性能

 

ディーヴォに搭載されるのは、ブガッティの象徴的なパワーユニットである8.0リッターW型16気筒エンジン。最高出力1500ps・最大トルク1600Nmを発揮し、最高速380km/h、0-100km加速は2.4秒を誇る。

 

このパフォーマンスに到達するまで、開発チームは大きな課題を乗り越えてきた。大規模なコンピューターシミュレーションを経て完成した最初のプロトタイプは約1年後に最初の走行テストを敢行。シミュレーションの段階で得られたセッティングデータを活用し、実際の走行によってダンパー、ステアリングなどの細かいパラメーターの微調整が行われている。

 

ハンドリングを煮詰めるために、テストトラック、各地のワインディングロード、さらにはニュルブルクリンク・ノルドシュライフェなどのサーキットでディーヴォは走行を繰り返した。EB/モーターウェイ/ハンドリングの3つのドライブモードに関する厳しいテストは5000kmにも及んだという。この過程でセットアップを何度も調整し、すべてのパラメーターが完全に一致して究極の俊敏性が追求された。

 

ブガッティのシャシーテストのトップを務める、ラース・フィッシャーは開発状況を次のように振り返った。

 

「試行錯誤は常に厳しいものです。ディーヴォに関しては実走テストの段階でセットアップをさらに洗練させることができました。どんなに細かい変更に関してもチームで議論され、チェックとフォローアップが繰り返されたことをよく覚えています。すべての開発スタッフが満足したときのみ、次の段階に進んだのです」

 

ブガッティ ディーヴォのテールフィンに取り付けられた温度計

ブガッティ ディーヴォのテールフィンに取り付けられた温度計。ビッグパワーが特徴に挙げられることの多いブガッティのハイパースポーツだが、ディーヴォはコーナリング性能に特化して開発が進められた。最高速は380km/hに抑えられたが、ナルドのテクニカルセンターにおけるラップタイムはシロンを8秒も上回っている。

 

最高速度は380km/hに抑えてコーナリング性能に特化

 

シロンから35kgの軽量化、ダウンフォースの増加、よりダイレクトなシャシーセットアップを行い、ディーヴォはシロンを大きく上回る俊敏性を実現した。セットアップの変更は前後キャンバー角の変更、硬めのスプリングの採用、フロント志向バランスセッティングなど多岐にわたる。そしてハンドリングが重視された結果、ディーヴォの最高速度は400km/hを超えることなく、380km/hに制限された。

 

軽量化を最大限に活用し、さらにリヤウイングの大型化やエアロダイナミクスの見直しを実施したことでダウンフォースレベルは大幅に増加。シロンと比較して90kgもダウンフォースが追加されており、最高速度の380km/hに達する際にはこれが456kgにも及ぶという。さらにコーナリング時の最大横方向加速度は1.6Gを達成。この結果、南イタリアのナルド・テクニカルセンターにおけるラップタイムは、シロンより8秒も速いタイムを記録している。

 

「シロンとディーヴォは、どちらもパワフルなW16エンジンを搭載していますが、ドライビング特性は完全に別物です。特にワインディングロードの走行時にその違いを強く感じるでしょう。ダイレクトなステアリングと強力なダウンフォースにより、コーナーをよりハイスピードかつ確実にドライブすることができます」と、フィッシャーは付け加えた。

 

ブガッティ ディーヴォのリヤセクション

このディーヴォにおいて、ブガッティは同じシャシーながらも異なるコーチビルダーによって1台限りの車両が作られていた「コーチビルディング」の伝統を復活させた。

 

自動車のオートクチュール「コーチビルディング」の伝統

 

このディーヴォにおいて、ブガッティはコーチビルディングの伝統を復活させた。ヴィンケルマン社長はコーチビルディングへの回帰について以下のようにコメントする。

 

「そもそも“コーチ”という言葉は馬車を意味します。そしてコーチビルディングとは、ファッション業界におけるオートクチュール(注文服)に相当するものです。コーチビルディングではそれぞれのカスタマーの好みに合わせて、個別に誂えられたクルマを製造します。ディーヴォはこの伝統的な価値観を完全に具現化したのです」

 

コーチビルディングは歴史のなかで忘れ去られた伝統となっていた。約100年前、多くの自動車メーカーは究極の美的基準を要求する顧客に様々な選択肢を提供していた。当時の高級車ブランドは、高級車をよりステージアップさせる技術を競っていたである。

 

顧客はボディが架装されていないシャシーを自動車メーカーから購入し、別のコーチビルダーによる個性的なボディを選択する自由が与えられていた。つまり1台限りの車両がいくつも誕生していた。

 

ガングロフ(Gangloff)、ウェイマン(Weymann)、ウェインバーガー(Weinberger)などのコーチビルダーがブガッティ製シャシーに専用のボディを架装した。さらにブガッティ タイプ57を購入したカスタマーは、ステルヴィオ、アラビス、ギャリビエ、ヴァントゥー、アトランテなど、さまざまなブガッティ内製のボディをオーダーすることもできた。

 

ブガッティ ディーヴォのオイルキャップ

ブガッティ ディーヴォのオイルキャップ。1920年代から1930年代にかけてブガッティのワークスドライバーとして活躍したフランス人レーシングドライバー、アルベルト・ディーヴォからその名が採られている。

 

名レーサー「アルベルト・ディーヴォ」にちなんだネーミング

 

デザインはシロンから大きく変更されながらも、一目でブガッティと分かるスタイルを採用。ディレクターのアキム・アンシャイト率いるブガッティのデザインチームは、空力や冷却効率を最大限に高めながらコーナリング性能を向上させるデザインを妥協なく突き詰めている。

 

最後にディーヴォのネーミングの由来が、ヴェイロンやシロンと同様にブガッティにちなんだレーシングドライバーから採られたことも記しておこう。フランス出身のアルベルト・ディーヴォは、レーシングドライバーとしてだけでなく航空機のパイロットとしても活躍。1920年代から1930年代にかけてブガッティのワークスドライバーを務め、1928年と1929年にタルガフローリオで勝利を手にしている。