フォルクスワーゲン史上、最も空力に優れた「ARVW」から現代に繋がる風を操る技術

公開日 : 2020/05/13 11:55 最終更新日 : 2020/05/13 11:55


フォルクスワーゲン ARVWのフロントイメージ

40年前に誕生した空力実験車両

 

燃費、騒音、走行安定性などあらゆる要件に影響をおよぼす空力性能は自動車開発における重要課題のひとつ。空気抵抗をひたすらに減らすだけでなく、ダウンフォースを効果的に獲得するなど、各自動車メーカーは何十年にもわたり「風を操る」研究を続けてきた。

 

1980年、フォルクスワーゲンのエアロダイナミクス研究部門は先進的な空力実験車を製作している。シングルシーターの細長いボディに大きな社名ロゴを配したそのプロトタイプを「ARVW」という。

 

フォルクスワーゲン ARVWのドア開イメージ

全高33インチ(約838mm)、全幅43.3インチ(約1100mm)という低く細長い空力実験車「ARVW」。ドライバーの背後に直6ターボを積み後輪を駆動するRRだ。

 

全高84cm、全幅110cmの狭小ボディ

 

1970年代のオイルショックに端を発した社会的な流れに乗るように、ARVWは空力性能と軽量構造の実験車両として誕生した。その2点を追求すれば日常的なパワーであっても高速スピードを生み出せるはずだ、と。

 

最初の挑戦は、できる限り最小のボディにドライバーとパワートレイン、4輪のタイヤをなんとか詰め込むことだった。結果、全高33インチ(約838mm)、全幅43.3インチ(約1100mm)という寸法の滑らかな車体が完成。ホイールを完全にパネルで覆い、アンダーボディはフラット化し、高速域での安定性を高めるべく可動式のフィンも装着した。

 

フォルクスワーゲン ARVWのサイドビュー

イタリア・ナルドのテストコースで、1980年10月にタイムアタックを実施。最終的に225mph(約362.1km/h)を叩き出した。

 

リヤエンジン・リヤ駆動の軽量構造マシン

 

フレームはアルミニウム、ボディはファイバーグラスとカーボンを組み合わせた軽量構造。177hpの2.4リッター直6ターボをドライバーの背後に搭載し、後輪をチェーン駆動する。

 

ターボチャージャー専用の水冷機構を設けることで空冷用ベントを最小限に抑える一方で、ノーズ部分に設けたメインのエアインテークからはラジエーターから車体上部の出口までスムーズに空気が流れる構造とした。Cd値は0.15と、量産モデルとは比べものにならない数字を達成していた。

 

VWリッターカーコンセプトをドライブするDr. フェルディナント・ピエヒイメージ

ARVWの面影は、2002年に公開した1リッターカーコンセプトに継承されていく。1リッターで100km走行することを目標にした低燃費コンセプトを推進したのは当時のVW取締役会長、Dr. フェルディナント・ピエヒ。

 

ナルドのテストトラックで362.1km/hを達成

 

1980年10月、フォルクスワーゲンは少数精鋭のエンジニアとトップクラスのフォーミュラづかいであるレーシングドライバーを伴い、イタリア・ナルドのテストコースへ遠征。ARVWの性能評価を実施した。

 

最初の1時間でARVWは221mph(約355.67km/h)を記録。最終的な速度は225mph(約362.1km/h)に到達し、ふたつのカテゴリーで世界記録を樹立している。

 

フォルクスワーゲン XL1 リヤビュー

2013年に登場したディーゼルプラグインハイブリッド「XL1」は欧州市場のみで限定販売された。

 

ARVWの面影は20年後、2002年に同社が公開した1リッターカーコンセプトに継承されていく。1リッターで100km走行することを目標にした低燃費コンセプトを推進したのは当時のフォルクスワーゲン取締役会長、Dr. フェルディナント・ピエヒだった。そのコンセプトは2013年にディーゼル・プラグインハイブリッドの「XL1」として花開き、いよいよ量産モデルとして公道を走った。

 

空力性能は、航続距離がものを言うEV時代には重要度をさらに増していくだろう。ARVW、そしてXL1で培った「風を操る」技術は、今後フォルクスワーゲンの電気自動車ファミリー「ID」シリーズで大輪の花を咲かせるかもしれない。