ロールス・ロイス ファントムの車内に咲く世界にひとつだけの薔薇
公開日 : 2020/05/15 11:55 最終更新日 : 2020/05/15 11:55
Rolls-Royce Rose Phantom
ロールス・ロイス ローズ ファントム
ロールス・ロイスのために作られた薔薇
英国グッドウッドのロールス・ロイス本社には薔薇園がある。そこに咲く「ファントム ローズ」はロールス・ロイスのためだけに作られた品種で、世界中のどこを探しても他に見つけることはできない。英国で100年以上薔薇の生産・育種を続けてきたハークネス・ローゼス社のブリーダー、フィリップ・ハークネスがロールス・ロイスに捧げたもので、本社の中庭で大事に育てられている。
ファントム ローズはクリームがかった白い薔薇で、50枚の豊かな花弁がふっくらと開いて素晴らしい香りをふりまく。ハークネスが「英国の薔薇のお手本」と評するファントム ローズの開発には8年の時を要したという。彼は言う。
「薔薇はあらゆる方法で人を虜にします。まさしく美そのものであり、ふくよかな香りや花弁の優しい肌触り、棘の傷みなどが感性を刺激するのです。我々の心に直接語りかけ、愛そのものを体現し、素晴らしい詩にも現れます。たったひとつの花がどうしてここまでのものを我々にもたらすのでしょう。たった一輪の薔薇の花の中に、汚れのない気高さと自然の多様性を見つけていただけるはずです」
工場のガラス越しに見える薔薇園
薔薇の“開発”を依頼したロールス・ロイスのビスポーク・デザイナー、シーナ-マリア・エグルも語っている。
「ファントム ローズは、ロールス・ロイスのエレガンスと魅力、そして泰然たる構えを体現するものでなければなりませんでした。結果、極めて純粋でデリケートであり、かつ豊かな花弁をもつ白い花が誕生しました。繊細でありながら確固たる存在感があり、魅力的な香りと寒冷期を持ちこたえる強さも兼ね備えています」
ファントム ローズは、建築家ニコラス・グリムショウが設計した美しい生産工場の隣りに設けられた専用の花壇で育てられている。ロールス・ロイスのスタッフは、仕事の傍らに壁一面の広大なガラスの向こうで咲き誇る薔薇の姿を眺めることができるのである。
ファントムの車内に嵌め込まれた陶磁の薔薇
世界でひとつだけの薔薇「ファントム ローズ」でキャビン一面を彩った、世界に1台だけのファントムがある。花を愛する顧客のオーダーにより、2017年に誕生したビスポーク車両だ。
ダッシュボードに嵌め込まれた一枚ガラスの中には、ファントム ローズの大輪が咲き乱れている。製作を手掛けたのは南ドイツ・バイエルンの陶磁器メーカー。欧州随一の格式と伝統をもつニンフェンベルク窯である。
世界にひとつだけの花が咲く世界に1台のクルマ
つぼみから二分咲き、五分咲き、七分咲き、満開に至るまで、それぞれの状態を徹底的に調査した上で、ファントム ローズは最高品質の磁器として生まれ変わった。もちろんすべて手作業で製作され、完成までに3ヵ月かかったという。
さらに、コーチドアのトリムやルーフ一面は数百万のステッチによる薔薇の刺繍で覆われている。まさしく世界にひとつだけの薔薇が車内に咲いた、世界に1台だけの「ローズ ファントム」である。
ロールス・ロイスのビスポーク・デザイナーであるユアン・ハセラルは説明する。
「薔薇園が満開になった時の美しさといったら、それはもう素晴らしいものです。限りある美しさを湛えた満開の薔薇を前にして抱く畏敬の想い。それと同じ情動を得られるようなクルマを生み出して欲しいと依頼されたのです」