ポルシェの自宅で楽しめる趣味講座 第4回「LEGOで有名なシーンを再現してみよう!」

公開日 : 2020/05/24 11:55 最終更新日 : 2020/05/24 11:55

自宅にいながらポルシェの象徴的な一場面を撮影

 

ポルシェは、新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大を阻止するために自宅待機を続ける読者に向けて、趣味講座「#GetCreativeWithPorsche」を展開中。この講座には毎回その道のプロが登場し、ロックダウン中でも自宅で自動車に関するクリエイティブなスキルを身につけられるようになっている。
 
自動車フォトグラファーのドミニク・フレイザー(Dominic Fraser)は、渡航制限により海外取材が不可能な状況下で、いかにして自分のお気にいりのクルマを撮影するかを考えたという。今回の講座テーマは、そんなフレイザーが考え出したLEGOを使っての撮影術だ。

 

917Kの撮影風景、手前は引っ張り用LEGO

世界中の自動車メーカーとコラボレーションし、実車さながらのリアリティを追求したLEGOのシリーズ「スピード・チャンピオン」。ポルシェだけでなく、フェラーリやランボルギーニ、ニッサンなども発売されている。写真は917Kの撮影風景、手前は“引っ張り撮影”用LEGO。

 

LEGOスピード・チャンピオン・シリーズをちょっと借りて・・・

 

イギリスを代表する自動車フォトグラファーのフレイザーは、コロナ危機以前は世界中を飛び回って撮影を行っていた。しかし、思うように撮影することが困難な現在、自宅内で自身のクリエイティビティを発揮することはできないか・・・知恵を絞った。そんな時、彼の目に入ったのは子どもたちが組み立てたLEGOブロックだった。こうして彼がインスタグラム(@_fraser73)にアップした一連のシリーズが始まったという。

 

「家の中にカメラ機材があふれているのに何もできません。私は何か作品を生み出したいのに、それができないことにフラストレーションを感じていることに気がつきました」

 

「そのままゴロゴロしているのではなく、LEGOの『スピードチャンピオン(Speed Champions)』シリーズのクルマたちを使って、モータースポーツ史でお気に入りのイメージを再現してみることにしました。最初はアウディ クワトロから始めました。そして、象徴的なシーンや車種がたくさんあるポルシェも取り上げてみようと思ったのです」

 

LEGOを撮影するドミニク・フレイザー

1991年から自動車フォトグラファーとして、世界中を飛び回ってきたフレイザー。実車よりも小さなLEGOを使っての撮影は、これまでにないクリエイティビティを発揮する機会になったという。

 

LEGOだからこそ実現できたクリエイティビティ

 

1991年に自動車の撮影を始めて以来、フレイザーはポルシェ・ファンを自認している。そのきっかけはラリー界のレジェンドであり、ポルシェのブランドアンバサダーを務めるヴァルター・ロールの影響が大きかったという。

 

「オシャースレーベン・サーキットでポルシェ 964のレース仕様を撮影している時、急遽インカーカットが必要になりました。ヴァルターはふたつ返事でサーキットをドライブしてくれましたが、そのスピードとエキゾーストノートの記憶は私の脳に刻まれています。とてつもなくハードな撮影でしたが(笑)、『この男は、真の伝説だ』と思ったことをよく覚えています」

 

今回、LEGOのポルシェ・モデルを使って、いくつかのシーンが撮影された。悪天候や交通事情、クルマのトラブルなどからは無縁であるものの、LEGOでの撮影にはいくつかの困難に見舞われたようだ。

 

「撮影では技術的な問題がいくつか生じました。とにかく自分が思っているイメージを、いかに可視化するかが鍵です。これから実車を撮影する際にも、このプロセスはきっと役立ってくれるはず。そして慣れ親しんでいる実車の撮影よりも、よりコンセプチュアルなプロセスを踏んでいることが面白かったですね」

 

ポルシェ 919ハイブリッドのピット風景

この写真では、ピットインした919 ハイブリッドを再現した。実際はスタンドとピットレーンの間にトラックが存在するが、LEGOではあえてスタンドを手前に持ってきている。太陽を模して上から当てられたライトも効果的。

 

ポルシェ 919 ハイブリッドのピット風景

 

「象徴的なシーンを再現したいと思ったら、ディテールをじっくり研究して実際に何が見えているかを考える必要があります。そうやってじっくり観察してみると、通常の写真では脳がどれだけイメージの隙間を埋めているかに驚くでしょう。でも、LEGOではそれが通用しません」

 

「ピットガレージに横付けされた919 ハイブリッドのイメージを再現するためには、撮影の技術的な側面だけでなく何を撮ろうとしているのか細かく考えなければなりませんでした。LEGOではピットの向こうにメインストレートはありませんが、グランドスタンドを入れ込むことができます」

 

「LEGOではグランドスタンドを近づけて焦点距離を調整する必要がありました。実際の撮影ではグランドスタンドをぼかすことができますし、写真を見ている人の脳は想像でギャップを埋めることになります。でも、LEGOでは小さなプラスチックのピースでその隙間を埋めなければならないのです。カメラのフレーム内であるべき姿に見えるよう、クルマやミニフィグ(人形)を配置する必要がありました。シーンがリアルに見えるようにするためには、とにかくアレコレと置いてみる試行錯誤が必要です」

 

「今回の写真は太陽がフレームの上部から覗いているのを真似てライトを配置しました。実際の撮影では、写真家はその瞬間に集中しているだけなのであまり影響はありませんが、実際のシーンを作り出すのであればこの効果は大きな違いをもたらすのが分かるはずです」

 

グッドウッドの森林ステージを疾走する917K

フォトショップで“ブレ”の効果を付け足したように見えるこの写真だが、実は917Kを引っ張る撮影用車両を製作(もちろんLEGO、上の写真参照)。ヒモでつないで、実際に引っ張りの撮影を行っている。

 

グッドウッドの森林ステージを疾走する917K

 

「このイメージを再現するため最初にしたことは、セット全体にリアリティを持たせることでした。グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードのスタートラインはあまりにも象徴的です。シーンを構成するディテールを忠実に再現することを心がけました。藁のバリア、ゼブラ模様のスタートゲートを組み立てるだけで、グッドウッドの雰囲気が一瞬にして醸し出されているでしょう?」

 

「本業で学んだ技術を応用して、LEGOでクルマ対クルマの“引っ張り”ショットを撮影する手法を編み出しました。このブレは、遅いシャッタースピードと917Kの前を走る“撮影車両”によるものです。ピントを合わせるため私は917Kとカメラカーの間にヒモを結び、2台が完全に同じスピードで走れるようにしたんです」

 

「そして撮影後に編集ソフトで2台をつないでいるヒモを消しています。これは私が唯一行なった“フォトショップ”作業です(笑)。正直、この写真にはかなり満足しています。現実とは違って何枚もの写真を組み合わせて撮影したものはなく、特別な編集効果も使っていないのですから!」

 

ジャンプする930ターボのバックショット

ボディカラーこそ異なるものの、完璧に構図を再現した930ターボのバックショット。リアリティを追求するために、実際に砂を撒いて埃を立てている。

 

ジャンプする930ターボのバックショット

 

「アメリカのコメディドラマ『隣のサインフェルド』の壁に貼られていた写真として有名な、ジェフ・ズワートが撮影した象徴的な930ターボを再現しました。この写真をよく見ると、ジャンプの際にダストを立ち上げていることが分かります。LEGOでもこのディテールを見せたいと思ったのは、私の再現写真がよりリアルになるからです。そこでLEGOのフロアベースに砂をふりかけてから、カメラのセンサーブロワーを使って空気中に埃を立てました」

 

「この写真の最後の仕掛けはホイールです。現実にクルマがジャンプするとサスペンションが下がるため、車輪がアーチから落ちてしまいます。でもLEGOにはスプリングやダンパーがないので、車輪の位置を低く見せるためクルマにふたつ目のダミーフロアを取り付けました。あとはクルマを紐で吊るしてカメラのシャッターを押すだけです」

 

最後にフレイザーはとっておきのアドバイスを贈ってくれた。

 

「もし自宅で撮影にトライしてみたいと思ったら、ピンセットを使って丁寧にLEGOのステッカーを貼ることをお勧めします。適当に貼ってはいけません(笑)。時間はかかりますが、正確な位置にステッカーを貼ることによるリアリティ効果は抜群ですよ」