究極のコーナリングマシン「ブガッティ シロン ピュール スポール」をセットアップ担当エンジニアが語る

公開日 : 2020/06/14 17:55 最終更新日 : 2020/06/14 17:55


ビルスター・ベルクでテストが繰り返されたブガッティ シロン ピュール スポール

Bugatti Chiron Pur Sport

ブガッティ シロン ピュール スポール

 

 

マシンの限界レベルを探るテストセッション

 

リヤエンドがわずかにブレークアウトし、ドリフトへとタイヤが軋み始める。ブガッティのシャシーセットアップ担当エンジニアのスヴェン・ボーンホルストは素早く反応し、カウンターステアをあててアクセルを踏み続けた。彼はドリフト中、ずっと笑顔を浮かべていた。

 

ボーンホルストはサーキットドライブを楽しんでいるのではないく、ハンドリングに関する限界レベルのテストを続けていた。彼の仕事は「シロン ピュール スポール」の改良を続け、シャシー、ステアリングの反応、サスペンションをさらに細かくチューニングすることだ。

 

彼らが調整しているそれぞれのパラメーターは非常に細かく、ひとつひとつはほとんど感知することができないレベルだ。しかし、完成した暁には完璧なドライビング体験をドライバーに提供することになる。

 

ビルスター・ベルクでテストが繰り返されたブガッティ シロン ピュール スポール

新型コロナウイルスによるロックダウン後に行われたセッティングテストの場に選ばれたのが、NATO(北大西洋条約機構)の弾薬庫施設から改修されたドイツのビルスター・ベルクだった。

 

テクニカルなビルスター・ベルクで鍛えたシャシー

 

新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大により、数週間にわたるロックダウンを余儀なくされたことで、ボーンホルストを含む開発チームは5月末にようやくドイツのテストトラック、ビルスター・ベルク(Bilster Berg)において、シロン ピュール スポールのステアリングを握ることができた。

 

「今回走行したビルスター・ベルクのコースは、独自の地形的な形状を持っています。そのため難易度が高く、高い集中力が要求されます。様々なアングルのコーナー、高速区間と低速区間、激しい高低差を含む非常にテクニカルなテストトラックです。我々シャシー開発者にとっては、まさに挑戦の場と言えるでしょうね」

 

ボーンホルストの指摘どおり、ビルスター・ベルクはアップダウンのあるコースのため、特にサスペンションには様々な負荷が掛かる。ドライブトレインやセーフティデバイスのテスト・調整には理想的な条件が揃っているのだ。エンジニアはシロン ピュール スポールを厳しい条件下で追い込むことにより、「どこに限界があるのか」を試すことができる。

 

シロン ピュール スポールのセッティングを担当したスヴェン・ボーンホルスト

ブガッティのシャシーセットアップ担当エンジニアのスヴェン・ボーンホルストは、シロン ピュール スポールを「血管にガソリンが流れているすべての人のために開発されたマシン」と例えた。

 

血管にガソリンが流れているドライバーのために開発

 

経験豊富なドライバーに向けて新たに導入されたドライビングモード「ESC-Sport+」では、ESC(横滑防止装置)が介入することなく、リヤを振り回したドライブを楽しむことができる。シロン ピュール スポールは、スピードではなくコーナリング性能に特化したハイパースポーツとして誕生する。

 

「一切の妥協を廃したスポーティでハードなシャシーセットアップ、グリップレベルを大幅に向上させたソフトコンパウンドタイヤ、15%クロスレシオ化されたギヤボックスの組み合わせにより、シロン ピュール スポールはどのようなコーナーでも安全かつ、稲妻のようなスピードで駆け抜けることができます。ステアリングを握っていると、アドレナリンが体内を流れるような、信じられないような感覚を得られますよ」

 

「これは純粋にドライバーのためのクルマです。そう、血管にガソリンが流れているすべての人のために開発されたと言っても過言ではありません。一度、コクピットに身を収めれば、二度と外に出たくなくなるはずです(笑)」と、ボーンホルストはその仕上がりを自画自賛した。

 

ビルスター・ベルクでテストが繰り返されたブガッティ シロン ピュール スポール

ブガッティのテストチームは、全長4207mのビルスター・ベルクを繰り返し走行することで、あらゆる局面でも抜群のコーナリング性能を発揮するセッティングを完成させた。

 

妥協を排した全員が納得するセッティング

 

ブガッティは通常、イタリア・ナルドのハンドリングトラックやニュルブルクリンク・ノルドシュライフェなど、より長いコースでテストを行ってきた。しかし、ボーンホルストは全長4207mのビルスター・ベルクに居心地の良さを感じたという。

 

「今では、ビルスター・ベルクをどのように走ればいいのか、完全に把握しています。シロン ピュール スポールは正確無比なハンドリング性能を持っているので、サーキット特性に慣れるのも簡単でした。我々はラップタイム向上を開発目標には掲げていません。過酷な状況でも完璧なハンドリングを実現したかったのです。このクルマであれば、どんなタイトなハンドリングコースでもトレースするようにドライブできるでしょう」

 

テストチームはビルスター・ベルクでの走行を続け、ピットでデータを解析した。

 

「シャシーのセットアップはステアリングを握った私だけでなく、他のチームメンバーも満足させなければなりません。シロン ピュール スポールは、私たちチーム全員が納得して初めて完璧なセットアップが決まったのです。最終的な結果はチームの努力の賜物です」

 

ビルスター・ベルクでテストが繰り返されたブガッティ シロン ピュール スポール

「最高速」や「ラップタイム」といった数値的な目標ではなく、シロン ピュール スポールはコーナリングにおける正確無比なハンドリング性能を突き詰めた。

 

これまでのブガッティになかったコンセプトで登場

 

精力的なテストセッションの結果、シロン ピュール スポールは、これまでのブガッティにはなかった“コーナリングマシン”という、全く新しいコンセプトを持ってリリースされることになった。

 

「シロン ピュール スポールはダイナミックなドライビングを楽しむ、すべてのお客様の情熱に火をつけるでしょう。この新しいモデルは物理的な限界レベルまで、コーナーを最大限まで活用することができるのですから」

 

特にレーシングトラックで最高のドライビングプレジャーを提供するシロン ピュール スポールの価格は300万ユーロ。現在、60台限定で受注がスタートしており、その製造は2020年後半から開始される。