時計とクルマを乗りこなすWatch Driving!「ニッポンの叡智! GT-Rとグランドセイコー:後編」

公開日 : 2020/06/22 17:55 最終更新日 : 2020/06/22 17:55

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ウォッチ・ドライビング第3回、GT-R&グランドセイコー実践編

NISSAN GT-R × GRAND SEIKO

 

クルマと時計の「乗りこなし」術を実践

 

クルマと時計、それぞれのインプレッションを通してその親和性を解き明かしていく「ウォッチ・ドライブ」。時計評論家の広田雅将さんは、本企画前編でグランドセイコー スプリングドライブをニッサン GT-Rにたとえた。もしまだ未見の方がいらしたら、まずは本記事末の【関連記事】から前編を御覧いただきたい。

 

後編となる今回は、広田雅将さんと時計師である佐藤 努さんと共にGT-Rのステアリングを実際に握り、同時にグランドセイコー スプリングドライブを腕にはめて“ドライブ”。共にニッポンの匠の手による精緻なメカニズムが世界的な評価を得ているプロダクトだが、果たして事前に予想したような親和性や共通項はあるのだろうか?

 

ウオッチ・ドライビング第3回、山田氏&広田氏&佐藤氏

ニッサン GT-R NISMOを囲み意見を語りあう、写真左からモータージャーナリストの山田弘樹氏、『クロノス』編集長で時計評論家の広田雅将氏、ゼンマイワークスの代表を務める時計師の佐藤 努氏。

 

ニッサン GT-R NISMOの第一印象

 

モータージャーナリスト・山田弘樹(以下、山田):今回はいよいよニッサン GT-Rの最高峰モデル「NISMO」をドライブするわけですが。まず乗り込む前から広田さんは、まじまじとクルマを見つめていましたね? やはりディティールを見つめることが、まずは基本ですか?

 

ウオッチ・ドライビング第3回、広田雅将氏

GT-R NISMOのカーボンパーツに着目し、そのクオリティを絶賛した広田雅将氏。

 

時計評論家・広田雅将(以下、広田):そうですね。特に今回はNISMOということもあって、カーボンパーツのクオリティに注目しました。これは素晴らしいですね。そして各部のチリも、ピシッと合っている。素材が変わるところでの色合わせだけは、少し惜しい気がします。

 

山田:グランドセイコー スプリングドライブで、このカーボンに相当する部分はどこですか?

 

広田:セラミックスの外装パーツでしょう。

 

ウオッチ・ドライビング第3回、佐藤 努氏

時計師として全国の時計愛好家から絶大な支持を得ている佐藤 努氏は、GT-R NISMOの迫力あるスタイリングに眼を見張る。

 

山田:カーボンに対してセラミックスは、ちょっと弱くありませんか?

 

広田:セイコーがカーボン素材に対して積極的じゃないのは、まだその耐久性を信頼しきっていないからです。でも、ブレスならカーボンにするのはありですね。

 

時計師・佐藤 努(以下、佐藤):確かにGT-R NISMOの外観は、迫力ありますね。乗るとどうなのか、緊張するけど楽しみ!

 

山田:ではさっそく走らせましょう。

 

ウオッチ・ドライビング第3回、GT-R ニスモ走行シーン

GT-R NISMOがスペックシートに掲げる動力パフォーマンスは、最高出力600ps/最大トルク652Nm。6速DCTを介してパワーを4輪に伝える。

 

600psが弾け鮮烈な印象を与えたGT-R NISMO

 

──プロの立場として、ふたりを交互に乗せて、まず筆者がニッサン GT-Rをドライブする。クローズドエリアとして許される範囲での試乗となったが、その印象は予想以上に強烈だったようだ。

 

山田:実際にGT-R NISMOは、どうですか?

 

佐藤:はっ・・・速い!

 

広田:むちゃくちゃ速いです(汗)

 

ウォッチ・ドライビング第3回、GT-R ニスモ走行シーン

本来、600psのパワーアウトプットをもつ車両であれば雨天時にアクセルを強く踏むのは憚られるが、GT-R NISMOはハードウェットをものともしない安定感を披露。アテーサE-TSの本領を発揮した。

 

──雨のワインディング、ゼロ発進加速でそのパワーを一瞬だけ解き放ったニッサン GT-R NISMOは、スタートで後輪を僅かにスキッドさせたあと、フロントにトルクをスプリットさせて安定領域へと入った。

 

これこそがコーナーでの高い自由度と、脱出時の加速を両立するFRベース4WD、アテーサE-TSのキャラクターだ。若かりし頃、老舗チューニングショップで働いた経験を持ち、現在も直6時代のBMW 130iを愛車とする佐藤さんは、FIA-GT3由来のタービンを持つVR38DETTの吹け上がりに驚きを隠さなかった。

 

ウオッチ・ドライビング第3回、佐藤 努氏

ストレートでのスピード感とコーナーでの安定感に驚きを隠さない佐藤氏。ただし「走りの質感」はやや乏しいと評価する。

 

佐藤:確かにこのエンジン、すごいですね。

 

山田:スプリングドライブと同じで、このV6ツインターボも匠と呼ばれる職人がひとつずつ手組みしているんですよ。

 

佐藤:そしてコーナーでの安定感も抜群ですね。ただすごく速いんですけれど、運転しながらその質感を楽しむ感じが少ないなぁ・・・。もう自分も“飛ばす”年齢ではないので(笑)、スポーツカーにはそうした部分を多く求めてしまいます。

 

ウオッチ・ドライビング第3回、広田雅将氏

アマチュアでも手に負える高性能、良好な取り回しに高評価を与え、それはグランドセイコー スプリングドライブにも共通すると語る広田氏。

 

山田:GT-Rの歴史はまさに、速さの歴史ですからね。広田さんはどう思われました?

 

広田:ただただ圧倒されました・・・。でも、この高性能を自分のようなアマチュアでも味わえるところは、やっぱり素晴らしい。あと“なり”はでかくても、取り回しが非常によいですね。そんなところも本当に、グランドセイコー スプリングドライブに似ていると思います。

 

ウオッチ・ドライビング第3回、GT-R ニスモのフロントスタイル

CFRPパーツを内外装に多用し高剛性と軽量化を両立するGT-R NISMO。他にもセラミックブレーキローターやチタン合金製マフラーなど多彩な素材を使用する。

 

スポーツカーの性能と、質感

 

──時計のプロフェッショナルであるふたりはニッサン GT-Rの“ドライブ”を体験し、スポーツカーと高級時計それぞれの在り方を改めて実感し考察を語る。

 

佐藤:ただ敢えて言えば、こうして高性能車や高性能時計が、人にすり寄っていくのはどうなのかな? という疑問もあります。

 

山田:核心を突いてきましたね!

 

佐藤:敢えて言えば、です(笑)。たとえば高級なクロノグラフって、計測ボタンやリセットボタンの感触なんかも、非常に滑らかに作られているんですね。そしてそれは、単に軽いというのともまた違う、非常に繊細で質感の高いタッチなんです。ただし時計の扱い方を知らないと、壊してしまう恐れがあります。

 

ウォッチ・ドライビング第3回、GT−R ニスモのエンジン

搭載するエンジンは3.9リッターV型6気筒DOHCツインターボ(NISMO専用VR38型)。新開発のIHI製NISMO専用GT3タービンを採用する。

 

広田:セイコーがコラムホイールを抑える規制バネを硬めて、パチパチとした操作感にしたのは、まずオンとオフを明瞭にしたかったから。そして確かにそれは、誰にでも扱えて、壊れないようにするためだとも言えますね。

 

山田:つまりちゃんとわかってる人が扱う前提で作れば、時計もクルマも、その質感をもっと高められるのではないか、と言うこと?

 

佐藤:そう。時計師の立場から言うと、170万円もする時計であれば、それを手にする側も高い時計を扱っているんだという意識を持つべきじゃないかな? って思うんです。そうすればもっと、質感を高められる。クルマも同じです。これがスカイライン400Rだったら、万人向けでもいいんです。でもそれがGT-Rで、しかもNISMOの名前が付くのだとしたら、もっと尖っていて欲しい。誰にでも扱えるようなクルマじゃないって理解して楽しめば、それでいいんじゃないかな? その方が、絶対に面白くなると思うのですが。

 

ウォッチ・ドライビング第3回、GT−R ニスモのエンジン

エンジンを組んだ職人の名前が刻まれた「Handbuilt by 匠」のプレートが誇らしげにエンジンルーム内に輝く。手作業で組まれるプロダクトは高級時計にも通じる。

 

山田:でもクルマは時計と違って、そこに命が関わりますらから。やっぱりフェラーリ F40のようなクルマは、もう出てこない気がする。また、マクラーレンやフェラーリといった超ハイエンドなスポーツカーは、低重心でワイドトレッド&ロングホイールベースな車体がある。さらに最新の電子制御によって、乗り心地や質感の高さを保ったままオーバー700psを実現することができます。馬で言えばサラブレッドですよね。

 

対してGT-Rは専用プラットフォームとはいえ、スカイラインにルーツを持つツーリングカーボディですから、質感を楽しむサラブレッド性はない。あのパワーで高い重心を支えるには、やっぱりある程度は足まわりの硬さ(剛性)も必要です。ただGT-Rの場合は、その硬さや無骨さがある種のキャラクターになっています。そして600psに対する安全性の高さが、常用域では誰にでも乗れる乗りやすさにつながっている部分はあると思いますよ。

 

佐藤:なるほど!

 

ウォッチ・ドライビング第3回、GT−R ニスモのインテリア

習熟の差を厭わず万人にハイレベルのドライビングを提供できるのもGT-Rの大きな特徴のひとつ。扱いやすい各操作系と手厚いドライバーサポートは数多あるスポーツカーの中でも随一。

 

広田:セイコーも実用時計の技術を突き詰めてきたメーカーですから、見栄えよりも性能やマージンを重視する傾向は強いです。ただ徐々にではありますが、セイコーもエクスクルーシブな質感を高める試行錯誤を始めています。

 

山田:まさにGT-Rが、イヤーモデルごとに洗練されてきた経緯と同じですね。

 

佐藤:シースルーバックから見えるコラムホイールなんかも、そういうことなんでしょうね。技術だけで言えば十分カムでいけるはずですから。

 

山田:時計ビギナーのボクなんかはまさに、コラムホイールだ!って嬉しくなりました(笑)。

 

ウォッチ・ドライビング第3回、GT-R&グランドセイコー実践編イメージ

クルマと時計の共通点を探り、各々の“ドライビング”を実践していく本企画では、ニッサン GT-R NISMOとグランドセイコー スプリングドライブを同じステージで考察した。

 

時計の性能と、質感

 

──グランドセイコー スプリングドライブ(ブラックセラミックス コレクション SBGC223)を“ドライブ”するにあたり、撮影現場でブレスが腕にフィットするよう、佐藤さんに調整していただいた。

 

クルマならシートのフィット感が大事だが、時計もブレスのフィット感がすごく大切なことを痛感する。こんなところにもクルマと時計の共通項があって面白い。

 

ウォッチ・ドライビング第3回、山田弘樹氏

クルマではシートを自分の体に合わせてフィットさせることが大事であるように、時計もブレスをしっかり調整することが大事だと再認識した山田氏。

 

広田:山田さんはグランドセイコー スプリングドライブを腕にはめてみて何を感じましたか?」

 

山田:ここまでの勉強を踏まえると、確かに垂直クラッチで分厚くなったボディはGT-Rの様に無骨だし、その重心も高いのかな? と感じました(笑)。でもブレスをきちんと合わせると、時計がピタッと腕に巻き付く感じがありますよ。慣れてくると重さもあまり感じないですね。

 

佐藤:だからボクが今回呼ばれたのかな。現場でのサイズ合わせは特別ですよ?(笑)

 

ウォッチ・ドライビング第3回、グランドセイコー ブラックセラミックス コレクション SBGC223の盤面

グランドセイコー ブラックセラミックス コレクション SBGC223。機械式時計のようにぜんまいをパワーソースとしながら、水晶振動子からの信号で精度を制御するクォーツ式時計の特性をもつセイコー独自の「スプリングドライブ」を搭載する。

 

広田:GT-Rで言うところの高性能さをグランドセイコー スプリングドライブで表すなら、針飛びなくストップウォッチ機能を使えることがまずひとつ。そしてかなりの姿勢差でも、時間が狂わないところに相当します。高性能すなわち高精度ですね。そしてこれを量産ムーブメントで実現したからこそ、分厚くなってしまったわけですが。それでもブレスによって、きちんとホールド性は高められていますよね。

 

山田:ではこの時計を専用ムーブメントにしたら、もっと薄くなった可能性はある?

 

広田:できたと思います。でも、値段もグッと上がります。

 

ウォッチ・ドライビング第3回、グランドセイコー ブラックセラミックス コレクション SBGC223のリューズ

加工が難しいセラミックスのケース全面に鏡面仕上げを施し様々な表情を見せる多面体フォルムに仕立てた。ブレスにはブライトチタンとセラミックスの異素材を組み合わせて高級感を演出している。

 

山田:この精度にしてこの価格というところも、お互いそっくりなんですね。ただそうした時計の高精度さは、ボクのような素人にはわかりにくい気もします。GT-Rであれば単純に速い! と思えるけれど。

 

広田:単純に「時間が狂わないじゃん!」と思って頂ければいいですよ。

 

山田:そんな単純なことでいいんだ!?

 

ウォッチ・ドライビング第3回、グランドセイコー ブラックセラミックス コレクション SBGC223のケースバック

キャリバー9R86は高いスペース効率と抵抗の少なさが特徴の「垂直クラッチ」を用いる。パワーを必要とするクロノグラフには最適なシステムのひとつだ。

 

両プロダクトともに日本人的な実直さが感じられる

 

佐藤:普段使いができて誰が使っても壊れないし高性能、非常に日本人的な実直さが感じられるプロダクト。そして、わかってる人が使っても納得できる部分が沢山ある。そういう意味で本当にこのふたつはドンピシャですね。次にこれくらいマッチングできる時計とクルマを用意するのって、大変じゃない?(笑)。

 

山田:すべては広田さんの選択眼に掛かっています!

 

広田:それは大変なことになりましたね(汗)。

 

 

TEXT/山田弘樹(Kouki YAMADA)
INSTRUCTOR/広田雅将(Masayuki HIROTA/Chronos-Japan 編集長)
COOPERATION/佐藤 努(Tsutomu SATOH/ZENMAIWORKS)、日産自動車、セイコーウオッチ
PHOTO/降旗俊明(Toshiaki FURIHATA)

 

 

【試乗車両】

ニッサン GT-R NISMO:車両本体価格 2420万円(税込)

 

 

【試着時計】

グランドセイコー ブラックセラミックス コレクション SBGC223:本体価格 170万5000円(税込)

 

 

【問い合わせ】
日産自動車お客様相談室
TEL 0120-315-232

 

セイコーウオッチ グランドセイコー
TEL 0120-302-617

 

 

【関連記事】
・時計とクルマを乗りこなす“Watch Driving!”「ニッポンの叡智! GT-Rとグランドセイコー:前編」

 

 

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