フィアット パンダ誕生から40周年。偉大なる小型車が歩んできた歴史を振り返る

公開日 : 2020/06/25 11:55 最終更新日 : 2020/06/25 11:55

Fiat Panda

フィアット パンダ

 

 

イタル・デザインがコンセプト段階から参画

 

ルービックキューブが空前のヒットを巻き起こし、『スターウォーズ 帝国の逆襲』公開で劇場がパンク、ジョン・レノンがこの世を去り、日本の自動車生産台数が世界一になった1980年。第二次オイルショックの動揺が世界経済に不穏な影を落とすなか、一台の新型車が登場している。

 

初代フィアット パンダ リヤビュー

全長3.38mのボクシーなボディは合理性を追求。交換を容易にするべく、フロントウインドウに至るまで平面ガラスを使用。ボディ周囲は大きなバンパーで覆った。

 

フィアット・パンダ。イル・マエストロ、ジョルジェット・ジウジアーロが描いた潔いくらいにシンプルな輪郭に、簡素で丈夫で整備性に優れたメカニズムと広大な空間を詰め込んだ3ドアのハッチバックは、「La grande utilitaria(偉大なる小型車)」というキャッチコピーとともに誕生した。

 

開発段階で与えられたコードネームは「ゼロ」。ジウジアーロ率いるイタル・デザインがコンセプト立案より参画、全長3.38mのボクシーで合理的で広大かつ経済的な3ドアの傑作小型FWD車を生み出した。

 

初代フィアット パンダのインストゥルメントパネルイメージ

計器類を左側に、エアコンやライトのスイッチを右側にまとめ、ひとつの箱に収めたユニークなインストゥルメントパネルに注目。ダッシュボード下の円筒には灰皿を装備し、左右へ自在に動かせるようになっていた。

 

ハンモックタイプのシートはウォッシャブル

 

フロントウインドウを含めて全周に平面ガラスを採用し、ボディはどこもかしこもひたすらフラット。そこに樹脂製バンパーをぐるっと巻きつけ、ちょっとした傷にもへこたれない耐久性を与えている。

 

室内は大人5人を余裕で飲み込み、パイプの上に布地を張ったハンモックタイプのシートは洗濯も可能。ひとつの箱の中にメーターパネルやエアコン、ライトのスイッチを整然と盛り付けたインストゥルメントパネル、円筒状のパッドにくくりつけた可動式の灰皿など、ユニークなプロダクトデザインも唯一無二のものだった。

 

初代フィアット パンダ 4×4のフロントイメージ

初代パンダには、オーストリアのシュタイア・プフ社と共同開発したオフロード仕様「4×4」も登場した。

 

4×4のオフロード仕様も誕生

 

最小限のコストで最大限のユーティリティと洒脱さを実現した初代パンダは、瞬く間にイタリアのベストセラーに。ベーシックカーのアイコンとして、現在もそこかしこを元気に駆け回っている。

 

心臓部に積んだ903ccの空力2気筒は500(チンクェチェント)用ユニットの改良型で30hpを発生。もうひとつ、45hpを発揮する903ccの4気筒は127の流用だった。

 

初代フィアット パンダ Elettraのフロントイメージ

初代パンダには、後部座席の代わりにバッテリーを積み込んだ2座のEV仕様「Elettra」も存在した。

 

大ヒット作となったパンダには派生モデルも続々誕生している。オーストリアのシュタイア・プフ社と共同開発したオフロード仕様「4×4」。後席の代わりにバッテリーを搭載したEV仕様「Elettra」も存在した。

 

1986年にはマイナーチェンジを実施。リヤサスをリーフリジッドからトーションビームへ変更し、三角窓も廃止。以降、前期は「シリーズ1(セリエ1)」、後期が「シリーズ2(セリエ2)」と呼び分けられた初代パンダは、じつに2003年までの23年間にわたり生産され続けた。

 

2代目フィアット パンダのフロントイメージ

初代の美点を受け継ぎながら、機能面を大幅にアップデートした2代目パンダ。2004年の欧州COTY(カー オブ ザ イヤー)を受賞した。

 

「はたらくクルマ」としても広く活躍

 

2003年に登場した2代目パンダは、クラストップの広大なキャビンスペースを誇るトールタイプの5ドアハッチバックへ。このプラットフォームはのちに現行500や3代目ランチア イプシロン、2代目フォード Kaも共用している。54hpの1.1リッターと60hpの1.2リッターをラインナップし、5速MTに加えて後者にはシーケンシャルトランスミッション仕様も設定した。

 

2代目フィアット パンダ 100HPのフロント走行イメージ

2代目パンダに追加されたスポーツ仕様「100HP」。確かな骨格や素性の良さを活かし、キビキビと快活な走りを実現していた。

 

電動パワステやフロントエアバック、電動フロントウインドウ、集中ドアロックなどの現代的機構や、スカイドームと名付けた大きなサンルーフなども用意。機能面を一気にモダナイズする一方で、シンプルで経済的な機構や軽量な構造、頑丈で堅牢な作りはそのまま受け継ぎ、個人所有はもちろん、警察や郵便局などのビジネスシーンでも幅広く活躍した。

 

2代目フィアット パンダのダカールラリーイメージ

2代目フィアット パンダはその頑強な作りと強力な収納力、整備性の良さを活かしてダカールラリーにも出場した。

 

ダカールラリーにも出場した4×4

 

2005年には初代で好評だった「4×4」が復活。その翌年には100hpの1.4リッターエンジンを押し込んだスポーティな「100HP」も登場している。

 

タフな4×4仕様は2代目にもラインナップされ、2007年にはダカールラリーにも出場。ミキ・ビアシオンとブルーノ・サビーが乗ったマシンは105hpの1.3リッター“マルチジェット”ディーゼルターボに6速MTを搭載、ビスカスカップリングやデフロックを備えた4輪駆動機構を採用していた。パンダの広大なキャビンはショベルやスペアタイヤ、クルー用飲料や専用機器の数々を悠々飲み込んだという。

 

3代目フィアット パンダのフロントイメージ

3代目フィアット パンダは2011年に誕生。車高が機械式駐車場にも入る車高1550mmまで下がったのは、日本市場には嬉しいニュースだった。

 

パンダという名前がこのクルマに相応しい理由

 

現行パンダは2011年に誕生。ベーシックカーのひとつのカタチを作り上げたパンダは、守るべきものを知っていた。シルエットを優先しタイトで窮屈なキャビンのクルマが増える中、サイドウインドウをほぼ直角に立てたスタイル、広大なグラスエリア、ことさらに寝かさないAピラーを堅持。高い着座姿勢とあいまって、室内はすこぶる開放的で明るくストレスレスだった。

 

875ccの2気筒“ツインエア”ターボエンジンを2ペダルMTでパタパタ響かせつつ自然にロールするボディを運んでいくと、長年連れ添った相棒のようにパンダが身体に馴染んでいく感覚に見舞われる。「もっと速く走れ」と背中を押すのではなく、「まあのんびり行こうや」と肩を叩いてくれる。そんなクルマは現代に珍しい。

 

3代目フィアット パンダ ハイブリッド

2020年にはマイルドハイブリッド仕様のパンダ クロスも欧州で登場。電動化の未来にもパンダが生き続けていけるよう、今後も様々な挑戦が続けられるはずだ。

 

ところでパンダという車名は「Empanda」という女神に由来するらしい。彼女はローマ神話に登場する神で、遠方からやってきた旅行者へパンや食べ物を与えてもてなしたという。人々を温かく受け入れ慈しんだ女神の名は、たしかにこのクルマに相応しい。40年間で750万台。パンダはそれだけ多くのドライバーの相棒として、自由な移動を助け続けてきたのだから。