ポルシェ911 SCのサファリラリー仕様でドリフトダンスを楽しむ男、 ジム・グッドレット【動画】

公開日 : 2020/06/27 17:55 最終更新日 : 2020/06/27 17:55

グラベルロードを疾走するポルシェ911 SC

Porsche 911 SC

ポルシェ911 SC

 

 

ポルシェ911 SCで披露する“スライドウェイ”

 

「スライドウェイ(Slideways)」は、ジム・グッドレットがお気に入りのドライビングスタイルだ。彼はラリー仕様の「ポルシェ911 SC」を巧みに操り、華麗なドリフトを披露する。年代物のモデルだがそのパワフルなスピードに誰もが魅了される。

 

話を聞くだけでも、雷に打たれたような衝撃を受けることがある。たとえ自宅のデスクの前に座っていても、まるでそのストーリーの中に飛び込んだような気分になるのだ。

 

ジム・グッドレットに招かれた我々は、当初ジョージア州サバンナのオフロードコースで、彼のサファリ仕様を施した1978年製911 SCの助手席に乗り込み、その最高のドライビングを体験するはずだった。すでにフライトは予約されていたが、その時に新型コロナウイルス(COVID-19)の危機が訪れていた。

 

ポルシェ911 SCのオーナー、ジム・グッドレット

当初、ポルシェの公式マガジン「クリストフォーラス」では、ジム・グッドレットの自宅を訪れ、彼の911 SCでのドリフトを取材する予定になっていた。

 

新型コロナウイルスの影響でビデオインタビューに

 

この状況であれば、仕方がない。プランBに切り替えよう。つまり、ビデオチャットである。だが、オフィスのデスク前に座って画面を見ながら、どうやって情熱の深さを体感すればいいのだろうか・・・。

 

ジム・グッドレットと回線を繋げば、すぐにそれが理解できるだろう。画面越しに映る彼の笑顔は、モニターの明るさを落とす必要があるほどに輝きを放っている。そして、彼はカメラを切り替えて、誇らしげにデスクの下に置かれたトレーニングマシン「トレッドミル」を見せてくれた。

 

「オフィスで1日に13〜32kmほど走ってますよ(笑)」と、グッドレットは誇らしげに笑った。

 

「モータースポーツの醍醐味はなんだと思いますか? 私は1962年生まれですが、反射神経とスタミナを維持するためにカートも楽しんでいます。自分の半分くらいの年齢の若者たちと対戦しているんです」

 

「若い彼らは信じられないほど体力もあるし、鍛えられています。こうやってトレッドミルでトレーニングすることで、911 SCでオフロードを走る時や、全開のカートでドリフトする時に必要なスタミナをつけてくれるんです」

 

グッドレットはこの走行モードを「スライドウェイ」と呼んでいる。

 

「コントロールされたクラッシュのように見えますが、10時間耐久カートレースでは500回以上行われています。最高に楽しいんですよ!」

 

グラベルロードを疾走するポルシェ911 SC

1970年代後半にWRCで活躍したポルシェ911 SCを駆り、グッドレットはアパラチア山脈の大自然を縦横無尽に駆け巡る。その様子は下記の動画からも確認できる。

 

アパラチア山脈の大自然に響く空冷ボクサーサウンド

 

グッドレットが運転する911 SCのコ・ドライバーシートに座れば、彼の才能を理解できるだろう。スタッカートを刻むようなリズム感溢れるドライビング。生き生きとしていて刺激的で、予想外のアクションに満ちている。轟音を響かせる空冷ボクサーエンジンが、グラベルロードを捉えた911 SCの内部で鼓動を打っているようだ。

 

森の角を全速力で進み、グッドレットがインターコムごしに「大丈夫か」と叫んだとしても、あなたは笑顔でこう答えるだろう。「なぜ、そんなことを聞くんだ!」と。

 

ジム・グッドレットは、これまでアパラチア山脈の大自然を舞台に、何千kmもの距離を911 SCで走ってきた。アスファルトの上ではけして味わうことのできない、激しいグラベルロードだ。彼の危険と背中合わせのドライビングスタイルは、ビデオチャットでも十分伝わってくる。そしてこうして話している間にも、彼はトレッドミルで7km走ったという。

 

グッドレットがオフロードでどんなダンスを「魅せる」のか、それは心に焼き付くような写真や、迫力満点の動画作品からも十分伝わってくる。専門的にキュレーションされた、美術館に展示されていてもおかしくないアート作品の趣を持つ。

 

ジム・グッドレットのサファリ仕様のポルシェ911 SC

大学卒業直後、たまたま試乗したポルシェ930に魅了されたグッドレットは、50歳の時に初めてのポルシェとして1984年式の911ターボを購入する。そしてその3年後には、今もドリフトを楽しむ911 SCを手に入れた。

 

グッドレットの夢を形にしたポルシェ911 SC

 

大学を卒業したばかりのグッドレットは、ヒューストンのポルシェ・ディーラーを訪れた。ガールフレンドを感動させたいと思っていた彼は、デートの一環としてポルシェ930に試乗させてもらうことにした。そのディーラーは、高額なプライスタグが掲げられていた新車のポルシェを(グッドレットが購入する余裕などないことを知っていたはずだが)気にせずキーを貸してくれた。

 

この時、けして死なない情熱の炎が灯った。それから数十年後、50歳になったグッドレットはスレートブルーメタリックの1984年製911ターボを購入した。そう、930が最初のポルシェになったのだ。

 

その28日後、ポルシェ911 RSRのリメイクモデルがグッドレットの目に留まり、グッドレットは再びそのチャンスを掴む。チューブラーフレーム、グラスファイバー製ボディ、車重約900kgの911は、“競走馬”として彼のガレージに加わった。

 

さらに、その3年後に手に入れた911 SCは、グッドレットが長年夢の中で思い描いていた理想を体現したようだった。彼はカメラに顔を近づけて、力強く言った。

 

「想像力ではカバーできないことがひとつだけあります。このクルマが放つ喜びを、その目で見て欲しいのです。どれだけ爆発的な生きるエネルギーに溢れているのか。これほど練られていながら、どこまでも繊細な存在なのか。シンプルなのに複雑なのか・・・。ポルシェは夢のようなものです。それが現実になると、突然他のすべてのものが青白く見えてくる」

 

オンラインインタビューを終えて、グッドレットは笑顔でカメラに手を振る。そして、スクリーンはオフになった。彼のドリフトダンスをこの目で見るのは、次の楽しみにとっておくとしよう。