アルピーヌ A110がラリーに参戦! そのポテンシャルを現地フランスからレポート

公開日 : 2020/06/28 11:55 最終更新日 : 2020/06/28 11:55

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Alpine A110

アルピーヌ A110

 

 

FIA R-GT規定でラリーデビュー

 

1973年に設立された世界ラリー選手権(WRC)の初代マニュファクチャラータイトルを獲得したのがアルピーヌ ルノーだったことは意外と知られていないと思う。フィアット アバルト124やフォード エスコート RS1600とのバトルを制したのはA110だった。

 

「アルピーヌ」という名前からして、A110が活躍する場はサーキットではなくラリーだ!と信じてやまない筆者は、ワンメイクレース用のA110カップやGT4バージョンが発表されたという知らせを聞くたびに「違う、そうじゃない!」と悔し涙を流していたのだけど、ラリー仕様のテストが開始されたとの知らせを聞きひと安心。FIAのR-GT規定で製作されテストが続けられていたA110ラリー。ひょんなことから、その実戦デビューの場に立ち会えることになり、急遽フランスへと旅立った。

 

アルピーヌ A110がラリーに参戦、アルピーヌ A110ラリー仕様のレースシーン

大きなリヤウイングが目立つ以外は市販車とそう変わらないスタイリング。ベースのA110がそれだけ完成度が高いことを物語っている。

 

A110が参戦した「FIA R-GT」とは?

 

ここでFIA R-GT規定を簡単に説明すると、2輪駆動の2シーターで主な参戦車種はポルシェ911 GT3やアバルト 124ラリー。変わり種ではロータス エキシージやアストンマーティン V8ヴァンテージなんて車種も。WRCやヨーロッパ選手権(ERC)と併催する形でR-GTカップは開催されている。

 

また、ヨーロッパ各国の国内選手権にもR-GTクラスは設定されているが、格上のクラスと車両価格が変わらないこともあってR-GTクラスの台数は多くない。最近はポルシェ911とアバルト 124の2車種しか見ることができないけれど、アルピーヌ A110が登場したことで勢力図に変化があるかもしれない。

 

アルピーヌ A110がラリーに参戦、フランソワ・デルクール選手

最近はゲストドライバーとしてラリーへ参戦のほか、テレビのレポーターも務めるフランソワ・デルクール。

 

デルクールを擁した初陣はフランス選手権の開幕戦

 

シャルル・ド・ゴール空港からレンタカーで約2時間半。ドーバー海峡にほど近いTouquet周辺で開催されるフランス選手権の開幕戦「Rallye Le Touquet」がA110ラリーのデビューステージ。ちなみに、フランスはターマックとグラベルで選手権がわかれていて、Touquetはターマック選手権の開幕戦。

 

A110のステアリングを託されたのは、かつてフォードやプジョーなどで活躍したフランス人ドライバー、フランソワ・デルクール。R-GTクラスでの経験が豊富なデルクールはA110のテストにも参加していて、実戦デビューにはうってつけのドライバーだ。現場のオペレーションを担当するのは「Team FJ」で、主にフランス選手権に参戦している名門チームとなる。今回はA110の他にシトロエン C3 R5も参戦している。

 

アルピーヌ A110がラリーに参戦、アルピーヌ A110ラリー仕様のレースシーン

SSのスタート前はじっくり車両を観察できるチャンス。老若男女問わずA110の周りに人が集まっていたのが印象的。

 

今どきの主流から外れたクーペスタイルが新鮮

 

木曜のシェイクダウンの最中に到着した筆者は、挨拶もそこそこにまずはA110を観察。外観は大きなリヤウイングが目立つ以外は市販車とほぼ変わらないが、車内を覗くとラリー車らしくフル溶接のロールケージがまず目立つ。

 

もとが2シータークーペ、しかもミッドシップの狭い車内なので、ハッチバックがベースの今時のラリー車と違ってスペアタイヤやクルーのヘルメットを置くスペースが見当たらない。スペアタイヤはフロントボンネット内、ヘルメットはエンジン後方のラゲッジスペースに効率よく収められていた。シェイクダウンはギャラリーも観戦できるので多くの人が詰めかけ、A110の周囲には常に人垣ができるほどの注目度だった。

 

アルピーヌ A110がラリーに参戦、アルピーヌ A110ラリー仕様のレースシーン

コーナーでは後輪駆動ということで派手なアクションを期待しがちだけど、いまどきのラリー車は地味にそして素早く立ち上がる。

 

悪天候ながら終始安定したペースで走る

 

金曜と土曜で開催されるラリーは、Touquetの中心街をスタートして周辺の丘陵地帯や集落に設定されたスペシャルステージ(SS)へと向かう。コンパクトにまとまったラリーだけど、SS総距離は205.56kmにも及ぶ。ときおり晴れ間が覗くもののめまぐるしく変わる天候にも関わらず、ステージには大勢のギャラリーが集った。こんなところにもヨーロッパでのラリー人気と地域に根付いた文化を感じられた。

 

中でもギャラリーの目当てはやはりA110とデルクール。スタートやフィニッシュでは常に多くのギャラリーに囲まれていたのが印象的だ。デビュー戦ということもあってか終始抑え気味のペースのデルクールだが、ウェットの滑りやすい路面をトラクションコントロールを駆使しながら効率よくコーナーを立ち上がる様子は、いかにもいまどきのラリー車の挙動。ミッドシップの後輪駆動ということで、派手な動きを期待するカメラマン(筆者)的には「映えない・・・」ので若干残念ではあった。

 

アルピーヌ A110がラリーに参戦、アルピーヌ A110ラリー仕様のレースシーン

総合11位でフィニッシュ。若かりし頃は荒くれ者なイメージのデルクールだったけど、今やすっかりジェントルマン。

 

デルクールは「期待が持てる完成度」と太鼓判

 

難しいコンディションでのデビュー戦だったA110だが、さすがはベテランのデルクール。終わってみれば総合11位でフィニッシュ。貴重なデータを残すことができた。

 

フィニッシュ後にデルクール本人に印象を聞くと「R-GT車両の中だとこのA110がベストだね。とにかくハンドリングが素晴らしい」とコメント。FIA R-GTカップ初代王者にして数多くのR-GT車両での実戦経験を持つデルクールの言葉だけに、A110の完成度には期待が持てそうだ。

 

アルピーヌ A110がラリーに参戦、アルピーヌ A110ラリー仕様のレースシーン

ハッチバックモデルベースが多いラリー車の中にあって、クーペスタイルのA110は異彩を放つ。

 

WRC日本ラウンドにも参戦可能!

 

ここ日本でも11月に愛知・岐阜でラリージャパンが開催を予定している。実はこのラリーにA110で参戦することも可能なのだ。Team FJは日本に行く気満々だった。車両のレンタルはもちろん、サービスもチームに全てお任せできる。

 

もちろん費用はそれなりにかかるけど、最新のラリー車でWRCに参戦できることを考えれば決して高くはない価格だろう。もしその気があれば、参戦後にA110を買い取ることも可能だ。日本のラリーでA110が走るなんて、想像しただけでもワクワクしませんか?

 

 

PHOTO&REPORT/山本佳吾(Keigo YAMAMOTO)