ランボルギーニ ウラカン EVO RWD & マクラーレン 720Sを試乗! ミッドシップの神髄を味わう

公開日 : 2020/07/05 17:55 最終更新日 : 2020/07/05 17:55

AUTHOR :

Lamborghini Huracan EVO RWD ✕ McLaren 720S

ランボルギーニ ウラカン EVO RDD ✕ マクラーレン 720S

 

 

ミッドシップスポーツ、似て非なる味

 

自動車は生まれ故郷の風土や文化の影響を不可避的に受けるもの。ではミッドシップ後輪駆動の場合はどうか? ランボルギーニ・ウラカンEVO RWDとマクラーレン720Sに乗って考えてみた。

 

ランボルギーニといえばイタリアはサンタアガタ・ボロネーゼの生まれ。イタリア人の気質について訊ねれば誰もが情熱的と答えるだろう。ランボルギーニもその例に漏れず極めて情熱的なスーパースポーツカーを造り続けてきたが、ただ情熱の勢いだけに身を任せて突っ走ってきたわけではない。イタリア北部で生まれ育った人々は、われわれが勝手に作り上げたイメージとは異なり、情熱的でありながらも極めて理知的で勤勉。しかも堅実な考え方をする人が少なくない。そしてそうした志向というかある種のパーソナリティがランボルギーニのクルマ造りにも間違いなく息づいている。

 

HuracanEVO_720S、ウラカン EVO RWD走行シーン

5.2リッターのV10はボア✕ストローク:84.5✕92.8mmのロングストローク。現在では貴重なNAエンジンのフィールは官能的だ。0-100km/h加速はAWDより0.4秒遅い3.3秒。

 

軽い身のこなしを見せるウラカン EVO RWD

 

ワインディングロードでウラカン EVO RWDを走らせると軽快な身のこなしに驚かされるだろう。そうした印象は、実は操舵力が軽いステアリングが中心的な役割を果たしているように思うのだが、それに加えてダンパーよりはスプリングが優っていると感じる足まわりや、超高回転型自然吸気V10の鋭いレスポンスなどがこれに拍車をかけているのは間違いないところ。そしてこの軽快感が時間の進み具合を微妙に早くするかのような効果を生み出し、これが脳を強く刺激してドライバーを一種の興奮状態に導いていく。

 

だから、ウラカンでコーナーを攻めていると、どんどんペースを速めたくなる。このとき、ドライバーの脳内にはドーパミンのようなものが湧きだし、全身がうちひしがれるような深い悦びに包まれる。ちょっと危険な匂いも漂うが、こんなときはむしろ五感が研ぎ澄まされて、かすかな異変にも素早く気づいて正確に対処できるような気がする。

 

もっとも、操舵力が軽くてダンパーよりもスプリングが勝った足まわりと聞くと、個人的な経験から接地感の薄いハンドリングを想像してしまう。この種のスポーツカーはステアリング特性が神経質で、路面のちょっとした変化でもタイヤのグリップが抜けてどこかに飛んでいってしまいそうな不安がつきまとうのだが、ウラカンにその傾向は皆無。フロントはグイグイ入っていくのにリヤが破綻する気配は一切見られないので、ドライバーは常に安心して狙ったラインをトレースできる。この軽快感とスタビリティのバツグンのバランスが、ウラカン EVO RWDの第一の魅力といっていいだろう。

 

HuracanEVO_720S

EVOになってからセンターコンソールに大型モニターが備えられた。撮影車はカーボンフレームの軽量スポーツシートを装備。

 

EVO 4WDと同じサスペンションセッテイングを確認

 

思い起こしてみれば、EVOに進化する前のウラカン RWDは、4WDモデルよりもサスペンションを柔らかめにすることで大きな荷重移動を生み出し、これを用いてステアリング特性を自在にコントロールできるシャシーに仕上げられていた。ところが、EVO RWDのサスペンションはEVO 4WDと同じ設定だという。実は、この試乗車はオドメーターがまだ700kmほどを指しているときに一度テストしたことがあるのだが、そのときは足まわりが馴染んでいなかったせいか、EVO 4WDよりむしろ硬いセッティングだと感じた。それが3000kmを超えた今回は、なるほどEVO 4WDと同じ仕様と思えるまで足まわりの馴染みが進んでいた。

 

EVO RWDのサスペンションを4WDと同じ設定にしたことについて、ランボルギーニのエンジニアは「RWDの持つファン・トゥ・ドライブを引き出すため、RWDの効率を高めるサスペンション・セッティングの改良に取り組んだ結果」と説明する。実は、EVO 4WDの国際試乗会では、ダンパーの改良により路面の細かい振幅に対する追随性が改善されたとの説明を受けていた。こうした努力によりウラカン EVOはロードホールディング性を改善。おかげでRWDでも610psを受け止められるスタビリティの高いシャシーが完成したのだろう。

 

HuracanEVO_720S、ランボルギーニ ウラカン EVO RWDのリヤスタイル

シンプルな固定式リヤスポイラーを装備するウラカン EVO。ボディ同色のディフューザーはRWD専用のデザインとなる。

 

高いスタビリティが走る悦びをもたらす

 

では、スタビリティの優れたEVO RWDのファン・トゥ・ドライブとはなにか? 前述したとおり、EVO RWDでコーナーを攻めてもリヤがスライドする気配は微塵も見られない。けれども、限界に近づくにつれ、スロットルペダルのオン・オフでステアリング特性を微調整できるようになる。これを利用すれば舵角を一定に保ったまま走行ラインをイン側に移すこともアウト側に逸らすことも可能。つまり、四肢を使ってウラカンを操ることができるのだ。

 

しかも、この種のハンドリングを持つ多くのスポーツカーと違ってウラカン EVOは基本となるスタビリティが際立って高いので、路面の不整によって進路が乱されたりグリップが瞬間的に抜けることがない。このため、絶大なる安心感に支えられながら、「スロットルワークでコーナーを駆け抜ける悦び」を味わえる。つまり、極めて理性的な側面と情熱的な側面の両方をウラカン EVO RWDは備えているのだ。まるで、情熱的でありながら理知的で勤勉なイタリア北部の人たちのように・・・。

 

HuracanEVO_720S、マクラーレン 720S走行シーン

軽量・高剛性を実現するカーボンモノコックが、マクラーレン 720Sが発揮するスーパースポーツの名に恥じないパフォーマンスを支える。

 

マクラーレン 720Sの乗り味はとにかく「ピュア」

 

では、イギリス人はどのような人々か? 「そんなの一概にいえない」というのが正解だろうが、よくいわれるunderstatement(控えめ)は多くのイギリス人に共通した気質だろう。そして控えめ、遠慮があるから、自分が思うところはあまりストレートに表に出さない。これが、イギリス人特有のアイロニーを強く含んだジョークに結びついているのだが、その実、とても純朴でピュアな人が多いというのが私なりの分析。また、革新と伝統が混在するのもイギリスらしさの一部。あれほど伝統を重んじる国でパンク・ロックが生まれたことが、その何よりの証明のように思う。

 

マクラーレンに乗って真っ先に感じるのは、とにかくピュアということ。彼らは理論(より正確にいえば物理)を重んじ、それに反したことは決してしない。マクラーレンはすべてのモデルにカーボンモノコックを用いているが、これは軽量・高剛性がスポーツカーの数少ない絶対的真理であるから。彼らがV8ターボエンジンを使い続けるのも、それが軽量コンパクトで高出力を得るのにもっとも有利だからに違いない。

 

HuracanEVO_720S

最高出力720ps/最大トルク770Nmを発生する4.0リッターV8ツインターボエンジンを採用。最高速度341km/h、0-100km/h加速は2.9秒を誇る。

 

2WDとは思えぬほど優れたトラクション性能

 

各コンポーネントのレイアウトも極めて理論に忠実。できるだけ低く、できるだけ重心に近い位置に重量物を寄せるのは彼らがF1で実践してきた手法そのもの。であればこそ、最高のスタビリティとアジリティを生み出すことができるのだ。

 

こうして造り上げられた720Sは、720psものパワーをリヤの2輪だけで路面に伝えていることが信じられないほどトラクション性能に優れていて、しかも意のままに操れる。加えてマクラーレン独自のプロアクティブ・シャシー・コントロールIIは圧倒的なフラット感とおそるべきハーシュネスの軽さを実現。想像を超えた快適性をもたらしてくれる。それは理論を徹底的に磨き上げ、技術に対してピュアであり続けたマクラーレンらしいキャラクターにほかならない。また、基本に忠実でありながらもカーボンコンポジットやプロアクティブ・シャシー・コントロールIIのようにアバンギャルドなテクノロジーを多用する点は、革新と伝統が共存するイギリスらしいスタイルといえる。

 

HuracanEVO_720S、マクラーレン 720Sのリヤスタイル走行シーン

背後に搭載されるV8ツインターボエンジンは、ごく一部しかその姿を見ることはできない。エンジンの存在をことさらに強調しないのはイタリアンブランドと違うところだ。

 

一方で、私がマクラーレンで常々感心するのが、ステアリングを握っていて常にクールでいられる点。もちろん、720Sを操っていても高揚感は得られるが、それはクルマが発する刺激と心が共振して生まれるというよりは、優れたハードウェアに触れていることへの悦びをきっかけとしたもので、感性よりは知性で司られた感情のように思う。

 

いずれにせよ、プレミアムカーに比べるとこのクラスは実に個性が明確。2台の後輪駆動ミットシップスーパースポーツからも、それぞれが生まれた国の風土や文化が存分に味わえるといって間違いない。

 

 

REPORT/大谷達也(Tatsuya OTANI)
PHOTO/市 健治(Kenji ICHI)

 

 

【SPECIFICATIONS】
ランボルギーニ・ウラカンEVO RWD

ボディスペック:全長4520 全幅1933 全高1165mm
ホイールベース:2620mm
車両乾燥重量:1389kg
エンジンタイプ:V型10気筒DOHC
総排気量:5204cc
最高出力:449kW(610ps)/8000rpm
最大トルク:560Nm(57.1kgm)/6500rpm
トランスミッション:7速DCT
駆動方式:RWD
サスペンション:前後ダブルウイッシュボーン
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤ&ホイール:前245/35ZR19 後305/35ZR19
最高速度:325km/h
0-100km/h加速:3.3秒
車両本体価格:2653万9635円

 

マクラーレン720S

ボディスペック:全長4543 全幅1930 全高1196mm
ホイールベース:2670mm
車両乾燥重量:1419kg
エンジンタイプ:V型8気筒DOHCツインターボ
総排気量:3994cc
最高出力:537kW(720ps)/7500rpm
最大トルク:770Nm(78.5kgm)/5500rpm
トランスミッション:7速DCT
駆動方式:RWD
サスペンション:前後ダブルウイッシュボーン
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク(カーボンコンポジット)
タイヤ&ホイール:前245/35ZR19 後305/30R20
最高速度:341km/h
0-100km/h加速:2.9秒
車両本体価格:3530万円

 

 

【問い合わせ】
ランボルギーニ カスタマーセンター
TEL 0120-988-889

 

マクラーレン東京
TEL 03-6438-1963

 

マクラーレン麻布
TEL 03-3446-0555

 

マクラーレン大阪
TEL 06-6121-8821

 

マクラーレン名古屋
TEL 052-528-5855

 

マクラーレン福岡
TEL 092-611-8899

 

 

【関連リンク】

・ランボルギーニ公式サイト

https://www.lamborghini.com/jp

 

・マクラーレン公式サイト

https://cars.mclaren.com/jp-ja

 

 

【掲載雑誌】

GENROQ 2020年 8月号