3世代目ベントレー コンチネンタルGT海外試乗:前編。山崎元裕が感じたスポーツGTの本質とは?【Playback GENROQ 2018】

公開日 : 2020/07/19 17:55 最終更新日 : 2020/07/19 18:58

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CONTINENTAL GT

BENTLEY CONTINENTAL GT

ベントレー コンチネンタルGT

 

 

新たなる定義──3代目に与えられた“スポーツGT”の本質を探る

 

2003年のデビューから今作で3代目へと進化を果たしたコンチネンタルGT。ベントレーの意欲作となるだけに最新技術をふんだんに用いられているのが話題だ。しかも、そのコンセプトは“スポーツGT”としている。果たしてその真意とは? 国際試乗会に招かれた2名のジャーナリスト、山崎元裕氏と大谷達也氏の証言を前・後編に分けて紹介する。

 

3世代目ベントレー コンチネンタルGT海外試乗記:前編、フロントスタイル

これまでの基本的なコンセプトを継承しつつ全体のデザインはブラッシュアップされ、中でもロングノーズ&ショートデッキの傾向が強められたことが印象的。フロントアクスルの位置は先代より前方に135mm移動している。

 

山崎元裕「まさにドラマティックな進化! 感動に溢れる最新技術による恩恵だ」

 

2003年にデビューしたコンチネンタルGTが、その後のベントレーに如何に大きな成功を導いたのかは、それから二世代に渡り全世界で6万6000台以上が販売されたという事実からも明らかだ。そのコンチネンタルGTがサード・ジェネレーションへと進化し、世界初公開されたのは、昨年秋に開催されたフランクフルト・ショーでのこと。さらに美しく、そして最先端のエンジニアリングとともに誕生した新型コンチネンタルGT。そのステアリングを握るチャンスが、ようやく我々にも与えられた。

 

新型コンチネンタルGTのボディは、これまでの基本的なコンセプトを継承しつつも、さらに魅力的なデザインとなった。とりわけ印象的なのはロングノーズ&ショートデッキの傾向が強められていることで、これには前作からフロントアクスルの位置が前方に135mm移動したことも大きく影響している。コンチネンタルの始祖でもある、1950年代に生産されたRタイプ・コンチネンタルにインスピレーションを得たリヤフェンダーの造形も、新型に継承された伝統的な造形。ベントレー独自のアルミニウム成型技術(スーパーフォーミング)によって、彫刻的な美しさが演出されていることも見逃せない。

 

だがそれ以上の驚きは、キャビンへと身を委ねた時に訪れた。ベントレーのプロダクトといえば、これまでも世界最高水準のクオリティやクラフツマンシップを感じさせるのが常だったが、新型コンチネンタルGTのキャビンは、まさにそれらをベントレー自身が再定義したかのような感動的なフィニッシュであった。キャビンのスペースは当然ながら前席優先のデザインだが、リヤのプラス2シートでも十分な実用性が感じられるのは嬉しい。ラゲッジルームにも機内持ち込みが可能なサイズのスーツケースを重ねることなく、余裕を持って2個積み込むことが可能だ。2ドアのグランドツアラーとして、新型コンチネンタルGTは、確かな機能性をもつモデルであるということの一例だろう。

 

3世代目ベントレー コンチネンタルGT海外試乗記:前編、エンジン

6リッターW型12気筒ツインターボエンジンはその内容を改められたことにより、最高出力は635ps、最大トルクは900Nmへと向上した。可変シリンダーシステムやスタート・ストップ機能も搭載され、今作より8速DCTにしたことでパワフルながらも低燃費を実現している。

 

「W型12気筒ツインターボは十分なトルクでスムーズに加速する」

 

エンジンのスタートボタンをプッシュすると、フロントに搭載される6リッターのW型12気筒ツインターボエンジンがスムーズに始動した。それと同時にセンターコンソールの最上部にレイアウトされる、これも新型コンチネンタルGTで採用された新装備、ローテーションディスプレイが静かに回転し、デジタルMMIディスプレイが姿を現した。スマートフォンのように直感的な操作が可能なこのディスプレイは、ドライブ中には、まさに情報や操作の中枢として機能するものだが、さらにスイッチ操作で、アナログ3連メーターを選択することもできる。この時に表示されるのは外気温、コンパス、クロノメーター。ちなみにこの状態でリバースギヤにシフトすれば、ローテーションディスプレイは瞬時に回転し、デジタルMMIディスプレイでリヤビューカメラの映像を確認できる。

 

シフトレバーの手前にあるドライブモードのセレクトスイッチで、まずは最もスタンダードなセッティングとなるB(ベントレー)モードを選択してアクセルペダルを踏み込む。W型12気筒ツインターボエンジンの最高出力&最大トルクは635ps&900Nmという数字だが、ほとんどタイムラグを感じさせないツインターボシステムは、フルにアクセルペダルを踏み込ませることなく、2244kgという重量をスムーズに加速させるに十分なトルクを発揮する。組み合わせられるトランスミッションが新たにデュアルクラッチ式の8速となったことも新型では技術的なトピックスだが、このトランスミッションのシフト制御も実に滑らかで高級感がある。Bモード、あるいはさらに快適性を重視したコンフォートモードでは、シフト時のショックもほとんど感じることはない。実に素晴らしい制御である。

 

3チャンバー式のエアサスペンション、そして48Vのコントロールシステムによるアンチロールバー制御を実行されるベントレー・ダイナミック・ライドなど、こちらも最新のスペックとなるサスペンションが演出する乗り心地も感動的だ。前方に路面のギャップを見つけ、それから想像する動きに備えても実際にキャビンへと伝わるショックは拍子抜けするほどに小さい。試乗車には標準となる21インチサイズのタイヤが装着されていたが、その重量感を意識させられることは少ない。これならばオプションの22インチタイヤも抵抗なく受け入れられそうだ。

 

3世代目ベントレー コンチネンタルGT海外試乗記:前編、インテリア

今作より8速DCTにしたことでパワフルながらも低燃費を実現。シフトレバー手前のドライブモードセレクトスイッチ「B」はスタンダードなセッティングの“ベントレー”モードを示す。

 

「前作よりもさらに魅力的なハンドリングが実現された」

 

魅力的なワインディングロードに迎え入れられたので、ドライブモードをスポーツにセットして、再びアクセルペダルに力を込める。前作では、シリーズ途中でW12モデルに加えてV8モデルを設定。それによってグランドツアラーとスポーツカーというキャラクターの違いを同じコンチネンタルGTで表現してみせたベントレーだが、この新型はどうか。それはこの両方のキャラクターを、きわめて高い次元で両立させたモデルだったと報告するべきだろう。

 

前作よりもさらに魅力的なハンドリングが実現できた理由は何か。その代表的なものは、W12エンジンがよりコンパクトな設計となったこと、そして前でも触れたフロントアクスルを前方に移動したことの相乗効果で、前後重量配分が55対45へとさらに最適化されたことだ。そしてフルタイム4WDのシステムが、この新型では後輪駆動を主体に、必要時にスポーツモードでは最大17%までをフロントに伝達する内容に変更されたことなどだろう。前作の最終進化型ともいえるスーパースポーツから継承されたトルクベクタリング機能の効果も絶大だ。ボディの大きさを感じさせずに、さらに積極的なターンインとナチュラルなコーナリングを楽しませてくれる。それは今後、多くのカスタマーから高く支持されることは確実なところだ。

 

電動パワーアシストステアリングを採用したことで装備が可能となった最新世代の運転支援システム、そしてシリンダ・オン・デマンドや惰性走行をも可能にしていることなど、新型コンチネンタルGTには、まだまだ多くの技術的なトピックスがある。フルモデルチェンジによるコンチネンタルGTの進化は、まさにドラマティックで、そしてさまざまな感動に満ち溢れたなものだ。試乗を終えた今、そう報告することに一切の抵抗を感じることはない。

 

3世代目ベントレー コンチネンタルGT海外試乗記:前編、インテリア

インストゥルメントパネルは、ドライバー重視で完全デジタル化された。視認性の良さもさることながらセンター部にナビ画面を表示できるなど多彩な機能を併せ持つ。もちろん、センターコンソールのレイアウトなども刷新、ダイヤル部などに施されたダイヤモンドローレット加工によってラグジュアリーの極みをも思わせる。

 

「ドアを開けた瞬間から直感的に理解できるラグジュアリー」

 

今回、開催された新型コンチネンタルGTの国際試乗会では、インテリアデザイン・チームを率いるロムラス・ロスト氏と話す機会があった。新型コンチネンタルGTにとって、エクステリア以上に斬新な進化を遂げたのがインテリアであることは、実際にその仕上がりを目にした者なら誰もがそれを認めるところだろう。ロスト氏はそれを“世界最高峰のインテリア”と評し、またベントレーが考えるラグジュアリーとは、カスタマーが望むものすべてを最高のクオリティで提供することを意味すると説明してくれた。

 

新型コンチネンタルGTが如何にラグジュアリーなグランドツアラーであるのかは、ドアを開けた瞬間から直感的に理解できるだろう。そのドアにはどのポジションでもホールドを可能にする「インフィニット・チェックアーム」が組み合わされ、絶妙な操作感を生み出すと同時に、ドアの動くスピードをダンパーでコントロールしている。その優雅な動きは、これからキャビンで味わうだろう、至福の時間を予感させる。

 

インテリアでまず特徴的なのは、伝統的なウイングデザインを継承しているものの、そのウイングはダッシュボードの下から流麗に左右のドアへと連続するものに改められている。それによって左右方向の広がりが強調され、またダッシュボードのフェイシアも上下で異なる素材を選択可能としたことで、より多彩な雰囲気が演出されるようになった。

 

3世代目ベントレー コンチネンタルGT海外試乗記:前編、インテリア

これがコート・ド・ジュネーブ。熟練した職人による高度な技術が用いられるだけに、その仕上がりは絶品。まさに小さな芸術品である。

 

「熟練した職人によって加工された、小さな芸術品である」

 

シートは2タイプが用意され、標準では12ウェイの、オプションでは20ウェイの調節ができる。この新型シートの発泡体に用いられる化学物質は特別に開発されたもので、使用されるパートに応じて硬度は個々に調節されている。空気圧で作動するボルスターは、コーナリング中にドライバーをサイドからサポートするために有効に機能するが、開発時にはその機能によってレザー素材がしわにならないようシステムが設計されたという。ちなみにこのボルスターはエンジンオフと同時に収縮し、乗降性に悪影響を与えることはない。

 

これまでにはなかった新たな加工技術が採用されているのも新型コンチネンタルGTのインテリアでは大きなトピックスだ。ベントレー伝統のブルズアイベントを始め、ロータリースイッチやメーターのベゼルには、オプションで「ダイヤモンドローレット」加工を施すことが可能。これは断面を美しくひし形模様にカットすることで、独特な美しさとともに操作性を向上させる技術。センターコンソールのフィニッシュにも新たに「コート・ド・ジュネーブ」という技法がオプション設定されたが、これは高級機械式腕時計装飾に着想を得たもの。厚さがわずかに0.6mmというアルミニウム素材を使用し、それを左右方向に機械加工して線状の縞模様を刻む。縞の幅は5mmで、高さは0.5mm。それはもちろん熟練した職人によって加工された、小さな芸術品でもある。

 

3世代目ベントレー コンチネンタルGT海外試乗記:前編、インテリア

ステッチと刺繍によって演出されるダイヤモンド・イン・ダイヤモンド。これも熟練した職人の手によるものだ。

 

「新しいキルトデザインも見どころのひとつだ」

 

「ダイヤモンド・イン・ダイヤモンド」とネーミングされた、新しいキルトデザインも採用された。ステッチと刺繍によって美しく描かれるこのキルトは、ひとつのダイヤモンド模様を生み出すために712個ものステッチを必要とするもの。ベントレーによれば、1台の新型コンチネンタルGTのインテリアを完成するためのステッチは、トータルで31万675個。北欧で飼育された雄牛9頭分の、1mm厚レザーを縫いつけるための糸の長さは、何と2.8kmもの長さになるという。それぞれのレザーパネルの裏側には、それを製作した職人の名前が刻まれる。

 

ウッドパネルも同様に最高の品質を誇るもので、最終的には0.1mmの公差を実現するまで職人による細かい調整が行われるという。1台分に必要なウッドパネルは面積にして10平方メートル。すべてのパネルを製作するには9時間を必要とし、またセンターコンソール上に装備される「ローテーションディスプレイ」に、それを美しく貼り込むには、実に2時間もの時間が費やされるということだ。

 

そのローテーションディスプレイは、エンジンオフ時にはウッド面が、走行時にはデジタルディスプレイ、あるいはアナログ3連メーター面をキャビンに向けることが可能。デジタルディスプレイに使用される、12.3インチサイズの超高精細デジタルMMIディスプレイには、ナビゲーションとメディア、そしてテレフォンなどのように、ホーム画面に最大3つのウインドウを表示できる。デジタル化されたメーター、そしてテクノロジーオプションパックの「ツーリングスペシフィケーション」を選ぶと装備されるヘッドアップディスプレイの視認性も抜群。新型コンチネンタルGTでは、ほかに「シティスペシフィケーション」も設定され、同時選択も可能となっている。

 

3世代目ベントレー コンチネンタルGT海外試乗記:前編、走行シーン

山崎元裕氏は3世代目のコンチネンタルGTについて「グランドツーリングとしての性格はそのままに、さらにスポーティな感覚が走りの中に生み出されていたこと」が印象的だと語る。

 

「ライバルはズバリ“DB11”のみ! 私はベントレーに利があると思う」

 

新型コンチネンタルGTにとって直接のライバルとして最も強く意識しなければならないのは、やはりアストンマーティンのDB11ということになるだろう。ちなみにDB11が正式発表されたのは2016年春に開催されたジュネーブ・ショーでのこと。それからDB11のモデルラインナップはさらに拡充され、V8モデルやオープン仕様のヴォランテ、そしてつい先日はAMRブランドから、ハイパフォーマンス仕様のDB11 AMRもリリースされるに至っているのは周知のとおりだ。

 

新型コンチネンタルGTも、これからラインナップが徐々に多彩なものになっていくのは確実なところ。前作、すなわち第二世代のコンチネンタルGTでのプロセスが繰り返されるとするのならば、コンバーチブルやV8モデルが出揃うことになるはずだから、将来的にはDB11との戦いはさらに熾烈になる。

 

今回、新型コンチネンタルGTをドライブして、まず印象的だったのはグランドツーリングとしての性格はそのままに、さらにスポーティな感覚が走りの中に生み出されていたことだった。技術的に考察すれば、それは最新世代のW12エンジンのコンパクトな設計や、ベントレーとしては初採用となる8速DCTからなるパワーユニットの優秀さ。あるいは後輪駆動主体型へとコンセプトが変更された4WDシステム等々の相乗効果によるものだ。エクステリアデザインがよりシャープでスタイリッシュなフィニッシュに進化したように、直線での速さのみならず、積極的にハンドリングを楽しもうとさせる軽快さを新たに得た新型コンチネンタルGTは、走りにおいてはもちろんわずかではあるが後発モデルとしての利があるように思えた。

 

ラグジュアリーへのこだわりがさらに徹底されたこともこれまで以上に新型コンチネンタルGTのカスタマーを導く大きな理由となるだろう。伝統的なスタイルや技法を継承するだけではなく、そこに新しい発想や技術を導入することで、新型車としての魅力を強くアピールする。アストンマーティンもDB11では、伝統と革新が巧みに融合した演出をカスタマーに提案しており、新型コンチネンタルGTとDB11を見比べるのに飽きることはない。どちらのデザインを好むかは、エクステリアと同様に完全にカスタマーの好みだ。

 

ベントレーはこの新型コンチネンタルGTで、ラグジュアリーグランドツアラーのハイエンドというものを再定義してみせた。0-100km/h加速の3.7秒、そして最高速の333km/hは、いずれもDB11のV12モデルを超越しているが、あたかもそれに直接対抗するかのように誕生した最新のハイパフォーマンス仕様、DB11 AMRのスペックシートには、同タイムの0-100km/h加速と、334km/hという最高速が掲げられている。これまでの例から考えるのならば、ベントレーも将来的にはより高性能なスペックのW12モデルを投じてくるのは確実だろう。新型コンチネンタルGTとDB11、ラグジュアリーグランドツアラーの世界において、この両車のライバル関係は、これからも常に刺激的なものであり続ける。

 

 

REPORT/山崎元裕(Motohiro YAMAZAKI)

PHOTO/BENTLEY MOTORS

 

 

【SPECIFICATIONS】
ベントレー コンチネンタルGT

ボディサイズ:全長4850 全幅1954 全高1405mm
ホイールベース:2851mm
車両重量:2244kg
エンジン:W型12気筒DOHCツインターボ
総排気量:5950cc
ボア×ストローク:84×89.5mm
圧縮比:10.5
最高出力:467kW(635ps)/6000rpm
最大トルク:900Nm(91.8kgm)/1350-4500rpm
トランスミッション:8速DCT
駆動方式:AWD
サスペンション形式:前ダブルウイッシュボーン 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ:前265/40ZR21 後305/35ZR21
最高速度:333km/h
0-100km/h加速:3.7秒
CO2排出量:278g/km
車両本体価格:2568万円(税込)

 

 

※GENROQ 2018年 7月号の記事を再構成。記事内容及びデータはすべて発行当時のものです。

 

 

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