4駆のポルシェ911、考察。本当に楽しい911の駆動方式は何か?:後編【Playback GENROQ 2016】

公開日 : 2020/08/03 17:56 最終更新日 : 2020/08/03 17:56

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ポルシェ911 カレラ4Sの走行シーン

PORSCHE 911 TURBO CABRIOLET × TARGA 4S × CARRERA 4S × CARRERA S

ポルシェ911ターボ カブリオレ×タルガ 4S×カレラ 4S×カレラ S

 

 

ポルシェ911の4駆と2駆を比較試乗

 

今やポルシェの4WDモデルはリヤ駆動車と比べ、その支持率は上回っている。高性能化が著しいポルシェにとってもパワーを活かすのに好都合だろう。しかもパワートレインの熟成も進化の幅を広げ、さらに安定感は増している。そこで911ターボ カブリオレの日本上陸を機に、911ターボ、カレラ4S&タルガ4Sを題材にして、ジャーナリストの大谷達也にその効果と特徴を考察してもらうことにした。(後編)

 

ポルシェ911 タルガ4Sの走行シーン

911ターボ カブリオレをワインディングで試乗し「爆発的なパワーがあっても剛性感の高いボディと4WDのおかげでコーナリングフォームは安定しきっている」と評価する大谷達也氏。写真はタルガ 4S試乗のひとコマ。

 

「思い切って攻められるカレラ4S!! タイヤの限界をしっかり引き出せる」

 

翌日、私は911ターボ カブリオレでワインディングロードを駆け巡っていた。爆発的なパワーがあっても剛性感の高いボディと4WDのおかげでコーナリングフォームは安定しきっている。しかし、ペースを上げていくと、私の第六感が何かを呟き始めた。その原因は、クーペでは感じられなかった微妙な振動が時たま伝わってくることにあるようだ。おそらくクーペとはボディの振動特性が異なるのだろう。それを私の第六感が危険信号として受け取るため、クーペのように安心して攻められなかったのである。

 

いやいや、そこまで求めるのは欲張りすぎというもの。すでに都内では甘美な時間を過ごし、ワインディングロードでもスポーツ走行を満喫したではないか・・・。そんなことを回想しながら走るうち、心のなかで響く危険信号はいつしか小さくなっていった。どうやら信頼関係を築くまでに少し時間がかかっただけのようだ。私は気を取り直し、次のエイペックスを目指してステアリングを切り込んでいった。

 

カレラとカレラ4の違いに言及する前に報告しておきたいのが、タイプ991 IIで見られた“S”の進化である。正直、私はSが苦手だった。スタンダードのカレラよりもステアリング・レスポンスとコーナリング性能が向上しているのは認める。ロールが少なくなった分、コーナリング時の安心感が強まったというのも理解できる。それでも、あのがさつな乗り心地には納得がいかなかった。

 

ポルシェ911 タルガ4Sのインテリア

911カレラシリーズには7速PDKと7速MTの双方がラインナップされる。確実な速さを手に入れたいならPDKだが、MTの“稲妻シフト”も捨て難い魅力がある(タルガは7速PDKのみ)。

 

「タイプ991ⅡのSモデルは間違いなく“買い”である」

 

ハードなサスペンションゆえ荒れた路面では瞬間的に接地性が薄れることがあり、これが不安感をあおった。これだったら、しなやかな足まわりでなめるように路面に追従するスタンダードなカレラのほうが高いスタビリティが得られてずっといい。確かにカレラのロールとピッチングは小さくないが、ステア特性の変化をボディの動きとともに体感できるのはむしろ好ましいとさえ思う。そしてカレラを越えるパフォーマンスが欲しいなら、ターボかGT3を狙うべき。そうそう、遅れて登場したGTSも忘れることができない。そう考えていたのだ。

 

しかし、新しい“S”はまったく違う。かつてのように路面からの入力に反発する素振りは微塵も見せず、どんなに荒れていても接地性が薄れる瞬間がない。結果として乗り心地も見違えるように改善された。ひょっとしてダンパーの質が劇的に向上したのではないか? タイプ991ⅡのSは間違いなく“買い”である。

 

そろそろ本論であるカレラSとカレラ4Sの話題に移ろう。まず、カレラSでワインディングロードを走る。私はタイプ991になってステアリング・ゲインは一層高くなり、レスポンスはさらに鋭くなったと理解しているが、タイプ991Ⅱでもこの傾向はまったく不変。その基本はリヤのグリップが圧倒的に高いことにあるのだろうが、このため抜群の軽快感をこのうえない安心感とともに味わうことができる。

 

ポルシェ911 カレラSの走行シーン

ポルシェ911の4駆と2駆を比較するため911 カレラSを試乗の場に持ち込んだ。4SとSはともに最高出力420ps/最大トルク500Nmを発生する3.0リッター水平対向6気筒ツインターボをを積むが、4Sは4WDシステムを採用するため、Sより車重は50kg嵩む。

 

「カレラ 4Sのほうがより速くコーナーを駆け抜けられる」

 

カレラ4Sに乗り換えても基本的な性格は変わらない。ターンイン時のシャープさがわずかに失われたような気もするが、少なくとも前輪に駆動力が与えられることがその理由ではないはず。なぜなら、油圧式多板クラッチを電子制御する4WD機構ゆえ、コーナーの入り口ではフロントにほとんどトルクが分配されないからだ。もしもカレラSとの違いがあるとすれば、それは前輪を駆動するメカニズムの重量に起因するものだろう。ちなみにカレラ4SはカレラSより50kg重い。

 

一方、4WDゆえに生み出されたカレラ4Sのメリットであれば、自信を持って指摘することができる。限界的なペースでコーナリングしているとき、カレラSではフロントが“ピクッ、ピクッ”と神経質そうにアウトに逃げようとすることがあるが、カレラ4Sではまったくそれが感じられない。たとえて言えば、荒れた海を走るボートがまるで揺れることなく、一直線に港を目指していくような安定感が得られるのだ。

 

では、より速くコーナーを駆け抜けられるのはどちらか? 少なくとも私程度のスキルであれば、カレラ4Sのほうが思い切って攻められる。もしもグリップの前後バランスがせわしなく上下する折れ線グラフのように変化していたら、タイヤの持つ性能をギリギリまで引き出すのは難しい。瞬間的に現れるピークを避け、安定したグリップが得られるスピード域までペースを落としたくなるからだ。しかし、カレラ4Sではグラフがギザギザにならず、その平均値をとったかのように滑らかな曲線を描く。そして鋭いピークが訪れないがゆえに、全体的なペースを引き上げることができるのだ。

 

ポルシェ911 タルガ4Sの走行シーン

「タルガは間違いなくクーペに近い(振動)特性を得ている。このためコーナリング中の安心感はクーペ並み」と、大谷達也氏は認識を新たにしたという。

 

「スポーツドライビングのパートナーとして選びたくなるのはカレラ4S」

 

楽しいのはどちらか? 瞬間瞬間で変化するステア特性を感じ取りながら、神経を張り詰めるようにしてコーナーを攻めるカレラSのドライビングにももちろん楽しさはある。けれどもタイヤの限界性能をしっかり引き出せるカレラ4Sの走りは、私にこのうえない達成感をもたらしてくれる。どちらを選択するかは人ぞれぞれだが、スポーツドライビングのパートナーとして選びたくなるのはカレラ4Sのほうである。

 

最後にタルガ4Sについてひと言だけ。以前、試乗したときは60km/h以上で耳を圧するようなドラミングが発生し、とてもオープンドライビングを楽しみたいとは思えなかったが、なんのことはない、サイドウインドウを下ろせばこの現象は嘘のように収まる。それよりも魅力的と感じたのがカブリオレの項で触れたボディの振動特性で、タルガは間違いなくクーペに近い特性を得ている。このためコーナリング中の安心感はクーペ並み。ジェット戦闘機のキャノピーを思わせるリヤウインドウのデザインもユニークだ。タルガが根強い人気を誇っている理由をようやく理解できた次第である。

 

 

REPORT/大谷達也(Tatsuya OTANI)
PHOTO/篠原晃一(Koichi SHINOHARA)

 

 

【SPECIFICATIONS】

ポルシェ911ターボ カブリオレ

ボディサイズ:全長4507 全幅1880 全高1294mm
ホイールベース:2450mm
トレッド:前1541 後1590mm
車両重量:1655kg
エンジン:水平対向6気筒DOHCツインターボ
総排気量:3800cc
ボア×ストローク:102×77.5mm
圧縮比:9.8
最高出力:397kW(540ps)/6400rpm
最大トルク:710Nm(72.4kgm)/2250-4000rpm
トランスミッション:7速DCT
サスペンション形式:前マクファーソンストラット 後マルチリンク
駆動方式:AWD
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
ディスク径:前380×34 後380×30mm
タイヤサイズ(リム径):前245/35ZR20(9J) 後305/30ZR20(11.5J)
最高速度:320km/h
0-100km/h:3.1秒
0-200km/h:10.9秒
CO2排出量:216g/km
燃料消費率:9.3リッター/100km
車両本体価格:2502万円

 

ポルシェ911 カレラ4S

ボディサイズ:全長4499 全幅1852 全高1298mm
ホイールベース:2450mm
トレッド:前1543 後1558mm
車両重量:MT1490 PDK1510kg
車両総重量:MT1950 PDK1965kg
エンジンタイプ:水平対向6気筒DOHC24バルブ+ツインターボ
総排気量:2981cc
ボア×ストローク:91×76.4mm
圧縮比:10.1
最高出力:309kW(420ps)/6500rpm
最大トルク:500Nm(51.0kgm)/1700-5000rpm
トランスミッション:7速MT/7速PDK
駆動方式:AWD
ステアリング形式:パワーアシスト付きラック&ピニオン
サスペンション:前マクファーソンストラット 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
キャリパー:前6ピストン対向式アルミニウム製モノブロック 後4ピストン対向式アルミニウム製モノブロック
ディスク径:前350×34 後330×28mm
タイヤサイズ(リム径):前245/35ZR20(8.5J) 後305/30ZR20(11.5J)
最高速度:MT305 PDK303km/h
0-100km/h加速:MT4.2 PDK4.0秒
0-100km/h:PDK スポーツ・プラスモード時3.8秒
燃料消費率:MT8.9 PDK7.9リッター/100km
CO2排出量:MT204 PDK180g/km
車両本体価格(税込):MT1647 PDK1712.1万円

 

ポルシェ911 カレラS

ボディサイズ:全長4499 全幅1808 全高1302mm
ホイールベース:2450mm
トレッド:前1543 後1518mm
車両重量:MT1440 PDK1460kg
車両総重量:MT1900 PDK1915kg
エンジンタイプ 水平対向6気筒DOHC24バルブ+ツインターボ
総排気量:2981cc
ボア×ストローク:91×76.4mm
圧縮比 10.1
最高出力:309kW(420ps)/6500rpm
最大トルク:500Nm(51.0kgm)/1700-5000rpm
トランスミッション:7速MT/7速PDK
駆動方式:RWD
ステアリング形式:パワーアシスト付きラック&ピニオン
サスペンション:前マクファーソンストラット 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
キャリパー:前6ピストン対向式アルミニウム製モノブロック 後4ピストン対向式アルミニウム製モノブロック
ディスク径:前350×34 後330×28mm
タイヤサイズ(リム径):前245/35ZR20(8.5J) 後305/30ZR20(11.5J)
最高速度:MT308 PDK306km/h
0-100km/h加速:MT4.3 PDK4.1秒
0-100km/h:PDK スポーツ・プラスモード時3.9秒
燃料消費率:MT8.7 PDK7.7リッター/100km
CO2排出量:MT199 PDK174g/km
車両本体価格(税込):MT1519 PDK1584.1万円

 

ポルシェ911 タルガ4S(7速PDKのみ)

ボディサイズ:全長4491 全幅1852 全高1289mm
ホイールベース:2450mm
トレッド:前1538 後1552mm
車両重量:MT/PDK1575kg
車両総重量:MT/PDK1980kg
エンジンタイプ:水平対向6気筒DOHC24バルブ+ツインターボ
総排気量:2981cc
ボア×ストローク:91×76.4mm
圧縮比:10.1
最高出力:309kW(420ps)/6500rpm
最大トルク:500Nm(51.0kgm)/1700-5000rpm
トランスミッション:7速PDK
駆動方式:AWD
ステアリング形式:パワーアシスト付きラック&ピニオン
サスペンション:前マクファーソンストラット 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
キャリパー:前6ピストン対向式アルミニウム製モノブロック 後4ピストン対向式アルミニウム製モノブロック
ディスク径:前350×34 後330×28mm
タイヤサイズ(リム径):前245/35ZR20(8.5J) 後305/30ZR20(11.5J)
最高速度:MT/PDK294km/h
0-100km/h加速:MT/PDK4.6秒
0-100km/h:PDK スポーツ・プラスモード時4.4秒
燃料消費率:MT/PDK9.2リッター/100km
CO2排出量:MT/PDK214g/km
車両本体価格(税込):MT/PDK1913万円

 

 

 

※GENROQ 2016年 8月号の記事を再構成。記事内容及びデータはすべて発行当時のものです。

 

 

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【関連リンク】

GENROQ  2016年 8月号 電子版

※雑誌版は販売終了