ランボルギーニ ミウラ誕生から半世紀。イタリアでの試乗を通じてヒストリーを振り返る:後編【Playback GENROQ 2016】

公開日 : 2020/08/07 17:56 最終更新日 : 2020/08/17 15:29

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ランボルギーニ ミウラ P400の走行シーン

Lamborghini Miura

ランボルギーニ ミウラ

 

 

北イタリアのワインディングをミウラ SVで駆ける

 

ランボルギーニの歴史を語るうえで必ず名作として挙がる“ミウラ”。そのミウラが今年生誕50周年を迎え、多くのイベントが開催されている。今回レポートするのは、ザ・イタリアン・ジョブ・リローデッドという、劇中でミウラが走行したワインディングを舞台に開催されたもの。ジャーナリストの山崎元裕氏が、ミウラへの想いを抱きドライブする。(後編)

 

ランボルギーニ ミウラ P400をドライブする山崎元裕氏

今や価格高騰が止まらない希少かつ人気のミウラだけに慎重なドライブを心掛けたという山崎元裕氏は「ワインディングロードで試乗車のSVは、常に安定した姿勢でのコーナリングを披露してくれた」と印象を語る。

 

「今もなお感動的な造形の美しさ。その走りを通じて歴史を振り返る」

 

今回のメディアイベントに用意された個体は、S/N:4644のSと、S/N:5092のSV。どちらをドライブするかは自由だというので、ワイド化されたリヤフェンダーやヘッドランプ周りのまつ毛がなくなるなど、ミウラ・シリーズの中でも独特なアピアランスを持つSVをチョイスして、サンベルナール峠を目指すことにした。

 

現代のスーパースポーツと比較すると、ミウラのボディはずいぶんコンパクトに見える。そしてやはり感動的なのは、その造形の美しさだ。スーパーカーの始祖がこのミウラであるとするのならば、それから半世紀にわたってスーパーカーは進化を続けてきたことになるが、はたしてミウラを超越する美しさを持つモデルはどれだけ誕生しただろうか。

 

2シーターのキャビンも実にスパルタンで機能的なデザインだ。鮮やかなイエローのボディカラーとは対照的にブラックで統一されたキャビンは、それだけでもこれから体験する走りへの期待を大きく高めてくれる。ドライブをスタートする前にコクピットドリルが行われるという話だったが、実際にはそれさえもなかった。つまりは安全のために道路も封鎖されているのだから安心してそのパフォーマンスを制約なく楽しめということなのだろう。

 

助手席に誰かが座ることもなく、完全にひとりの空間となったミウラのコクピット・・・。もちろんミウラをドライブするのはこれが初めてではないが、ランボルギーニが最近新たに設立したクラシックカー部門のポロ・ストリコが調査したところによれば、ここ10年間でミウラの市場価格は10倍にも高騰したという。実際に世界のオークションシーンを見てもその高騰ぶりには驚きを隠せない。それゆえ、一切の制約がないからとはいえ、いきなりアクセルペダルを全開にするほどの勇気はない。

 

ランボルギーニ ミウラ P400と山崎元裕氏

山崎元裕氏曰く「ミウラを操ることは、まさにスポーツという言葉から想像する通り」で、ドライブにはタフネスさが求められる。

 

「ミウラの運転はドライバーにもそれなりのタフネスさが求められる」

 

まずは慎重にミウラというミッドシップスポーツのキャラクターを探りながらコーナーをクリアしていく。ミッドから伝わるV型12気筒エンジンのメカニカルサウンド、あるいはキャブレターの吸気音は、しばらく味わっていなかっただけに官能的であるとともに懐かしさを感じさせるものだった。5速MTの動きにも十分な剛性感があり、かつ節度感のあるシフトゲートをもつからシフトミスの可能性は限りなく低い。時折、“カチャカチャ”という金属音を耳にしながら、いつしかスムーズなシフトも楽しめるようになった。

 

ミウラの最終型たるSVでは、エンジンの性能アップに対応してサスペンションにも強化が図られている。ワイドサイズのタイヤなどはその象徴的な例ともいえるのだが、確かにワインディングロードで試乗車のSVは、常に安定した姿勢でのコーナリングを披露してくれた。ステアリングを始め、パワーアシストの類とは無縁のミウラだが、それが逆に正確なインフォメーションをドライバーに伝え、そして逆にドライバーの意思に忠実な反応を見せてくれる理由となっている。

 

V型12気筒エンジンを横置きミッドシップするがゆえに限界域での挙動が唐突に過ぎるという話はミウラの走りを語る時にはよく聞くことだが、今回のドライブでは幸運にもそのようなシチュエーションに直面することはなかった。だがミウラを操ることは、まさにスポーツという言葉から想像する通り。ドライバーにもそれなりのタフネスさが求められる。『ザ・イタリアン・ジョブ』でのシーンのように、優雅にその走りを楽しめるようになるまでには、それなりの経験というものが必要だ。

 

このミウラを起点にランボルギーニはV型12気筒エンジンをミッドに搭載する2シータースポーツをいつの時代も主力商品としてきた。横置きミッドシップという手法はこのミウラのみで終わってしまったが、後継車のクンタッチでは縦置きミッドシップを実現するための、これもまたきわめて斬新なエンジニアリングをダラーラがランボルギーニを去った後にエンジニアリング部門を統括、さらにフェルッチオに代わってランボルギーニ社を実質的にオーガナイズしたスタンツァーニが実現している。そのシステムは、この後のディアブロ、ムルシエラゴにまで継承されていくのだ。

 

レストアされたミウラSV

ランボルギーニは先日、新たにクラシックカー部門の「ポロ・ストリコ」を社内に組織した。レストアやメンテナンス、あるいは認証などを行うこの部門が最初にフルレストアを行ったのが、このミウラ SV。きわめて初期に製作されたこのモデルには、それまでのSとSVの両方のディテールが混在している。

 

「ミウラの走りはスパルタンであると同時にシンプルさを強く印象づける」

 

そして現在のランボルギーニが生産するフラッグシップはカーボンモノコックを採用するアヴェンタドール。V型12気筒エンジンを縦置きミッドシップするという点ではこれまでのモデルと変わらないものの、スタンツァーニの独創的なパワーユニット&レイアウトから遂に最新のエンジニアリングへと進化を果たした。時代は大きく変わったのである。

 

ミウラの生誕50周年というアニバーサリーイヤーは、ランボルギーニがこれまで刻んできた歴史をもう一度振り返る絶好のチャンスとなるのかもしれない。現代のスーパースポーツに慣れた身には、ミウラの走りはスパルタンであると同時にシンプルさを強く印象づけるものだった。ここからランボルギーニはどのように進化していったのか。それを振り返りながらミウラをドライブするのは、まさに至福の時間だった。

 

 

REPORT/山崎元裕(Motohiro YAMAZAKI)
PHOTO/Automobili Lamborghini S.p.A.

 

 

【SPECIFICATIONS】

ランボルギーニ ミウラ P400

ボディサイズ:全長4390 全幅1780 全高1100mm
ホイールベース:2505mm
車両重量:1317kg
エンジン:V型12気筒DOHC24バルブ
総排気量:3929cc
最高出力:287kW(385ps)/7850rpm
最大トルク:400Nm(40.8kgm)/5750rpm
トランスミッション:5速MT
駆動方式:RWD
サスペンション形式:前後ダブルウイッシュボーン
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ:前後205/70VR15

 

 

※GENROQ 2016年 8月号の記事を再構成。記事内容及びデータはすべて発行当時のものです。

 

 

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GENROQ  2016年 8月号 電子版

※雑誌版は販売終了