ソニーが作ったクルマ「VISION-S」を体験! 清水和夫が感じた「まっ白なキャンバス」の可能性とは【動画】

公開日 : 2020/08/09 06:30 最終更新日 : 2020/08/17 15:14


ソニー VISION-Sと清水和夫のイメージ

Sony VISION-S

ソニー VISION-S

 

 

“オールソニー”のテクノロジーを総動員した「VISION-S」

 

ソニーが初めて作る自動運転EV「VISION-S」。その試作車が日本へ上陸し、ジャーナリスト・清水和夫が同乗体験した。さっそく現場からのレポートを速報でお届けする。助手席試乗の様子は動画で確認されたい。

 

ソニー VISION-Sのフロントイメージ

クラウンより全長は短いのにメルセデス・ベンツSクラスに比肩するホイールベースを実現できたのは、EVの利点を存分に活かした結果だろう。ショーファーとしても通用する車内空間を導き出していると清水和夫は語る。

 

あのソニーがクルマを作る

 

第二次世界大戦終戦の翌年、1946年5月。日本橋に従業員およそ20人の小さな会社が誕生した。東京通信工業株式会社。現在のソニーである。

 

資本金19万円の株式会社は、1950年に日本初のテープレコーダーを販売する。以降、トランジスタラジオや小型テレビ、ビデオレコーダー、ウォークマンなど革新的なプロダクトを続々導入。現在ではデジカメ、PC、ロボット、金融から通信、センサーまでを扱う巨大テクノロジー企業となった。

 

その多彩なテクノロジーを駆使してクルマを作ったらどうなるのか。その答えが、2020年1月にラスベガスで開かれたCES(家電見本市)で発表した自動運転EVコンセプト「VISION-S」だ。あのソニーがクルマを作る──衝撃のニュースが世界中のメディアを駆け巡ったのも記憶に新しい。

 

ソニー VISION-Sのフロントイメージ

VISION-Sは2020年1月のCES発表後、オーストリア・グラーツの開発拠点へ移送。マグナ シュタイヤーなどパートナー各社と開発を進めてきた。

 

VISION-Sの実車が日本へやってきた

 

この度、そのVISION-Sの試作車が日本へ上陸。2020年8月7日に清水和夫が東京・品川のソニー本社で助手席同乗の機会を得た。試乗コースは本社敷地内のクローズド環境、かつ助手席での同乗走行ではあったものの、その「まったく新しい空間」は十分に驚きに足るものだったという。

 

様々なセンサー技術やインフォテインメント技術、AR(拡張現実)やホログラフィー、空間認識技術、オーディオ技術など、“オールソニー”のテクノロジーを総動員した「VISION-S」。ボディディメンションは全長4895mm、全幅1900mm、全高1450mm、ホイールベースは3000mm。全長はクラウンより短いが、ホイールベースはSクラス並みだ。一見した清水曰く、「ショーファーでも使えそうなサイズ感」。

 

室内レイアウトは2+2の4座で、車両重量は2350kg。前後に配置した200kWのモーターで駆動するAWD方式を採る。最高速度240km/h、0-100km/h加速4.8秒を目標数値に掲げている。

 

ソニー VISION-Sのフェイシアイメージ

合計33個のセンサーを駆使してレベル2+相当の運転支援機構を実現するVISION-S。乗員のコンディションをモニタリングする機能も搭載する。ルームミラーやサイドミラーはオールデジタルだ。

 

合計33個のセンサーでクルマを“包む”

 

Safety Cocoon(安全な繭)を標榜するVISION-Sは、カメラ、レーダー、ライダー、ソナー、ToFセンサー(光などの反射時間を測定するセンサーで、すでにスマートフォンで実用化)など、合計33個のセンサーでクルマ全体を“包みこんでいる”のが特徴だ。デザインテーマも「OVAL(楕円、卵形)」とし、ボディの輪郭からディスプレイの形状まで、全体に流れるような円を多用している。

 

ダッシュボード全体を占めるのはパノラミックスクリーンと呼ぶ高精細ディスプレイ。PCのマルチディスプレイのように、センター部分と助手席前方に投影する映像をドラッグで相互移動することもできる。さらに、ソニー自慢の「360 リアリティ オーディオ」は驚くような音響空間を作り出すし、5GネットワークやOTA、クラウドを活用してあらゆるデータや製品同士のシームレスな連携を実現する。

 

ソニー VISION-Sの後席空間イメージ

VISION-Sの開発ポイントは3つ。センサー類の知見を活かした「安心・安全」、得意のAV技術を応用した「エンタテインメント」、そして「クルマとITの融合」だ。目指すは疾走するエンタテインメント空間である。

 

ソニーがクルマを自作する本当の理由

 

清水がデザイン担当の方に聞いたなかで、特に印象に残った言葉があるという。

 

「やってみないと分からない」

 

センサーだけを作っていても、自動車がどういうものなのかは見えてこない。自分たちが作ってみてはじめて自動車というものが理解できる。そうすれば、自分たちの得意なものがどう活かせるかも分かってくるだろう、と。

 

清水は、ソニーは今回「まっ白なキャンバスに絵を描いた」のだと語る。過去のしがらみもなければ、成功譚も失敗体験もない。センサーをはじめとした認識技術、オーディオ・ビジュアル、そしてITソフトウェアといった今の自分たちのテクノロジーを使った「もし」で、キャンバスをどんどん埋めていったらどんな世界が広がっていくのか。VISION-Sはその世界の入口を体験させてくれるクルマなのだと。

 

ソニー VISION-Sのシートイメージ

東京・品川のソニー本社に登場した自動運転EVコンセプト「VISION-S」を助手席で同乗体験した清水和夫は、「21世紀に生まれるべくして生まれるクルマ」と印象を語った。

 

「まごうことなきクルマ好き」が内部にいる!

 

清水は言う。

 

「ソニーはITとエンターテインメント企業だが、自動車を自分たちで作っていない。自作することで、デジタル技術の可能性を見出すのが狙いだと思う。ということで、彼らが自動車メーカーになることはないと考える」。 しかしその一方で、「テスラとソニーが組んだら、と想像すると複雑な心境にもなる」とも述べた。

 

“自由闊達にして愉快なる理想工場”、ソニー。彼らが21世紀に生まれるべくして生まれるクルマを作ろうとしていること。こういうクルマが日本から出てきたこと。それこそが個人的には嬉しいのだと言う清水は、最後にこう締めくくった。

 

「そういえばあのアップルを創業したステーブ・ジョブズ氏はソニーの製品に憧れて、しばしば秋葉原を散策していたという。ソニーが目指してきた夢工房は、もはや夢物語ではなく、いよいよ自動運転の領域で、活躍できる日が訪れそうだ。そのファーストステップとして、ソニーは2020年中にVISION-Sの公道実証実験をスタートする意向である。面白かったのはドリルホールの大きなブレーキローターと対向キャリパーがホイールの隙間から見えたこと。ソニーの開発関係者にはまぎれもなく、クルマ好きがいるに違いない」

 

 

REPORT/清水和夫(Kazuo SHIMIZU)

PHOTO/本田技研工業、StartYourEngines