ニッポンが誇る3台のスポーツカー、その実力をサーキットで測る:前編【Playback GENROQ 2017】

公開日 : 2020/08/10 17:55 最終更新日 : 2020/08/17 14:47

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レクサス LC500、ニッサン GT-R、ホンダ NSXの集合写真

LEXUS LC500 × HONDA NSX × NISSAN GT-R

レクサス LC500 × ホンダ NSX × ニッサン GT-R

 

 

富士スピードウェイで3台の限界性能を測る

 

TNGAの最高峰であるGA-Lプラットフォームを採用したレクサス渾身のラグジュアリークーペ・LC500を、ついにサーキットでテストするチャンスを得た。迎え撃つのは熟成に次ぐ熟成を重ね、デビューから10年目を迎えるGT-Rと3モーター・ハイブリッドシステムのスーパースポーツNSXの2台だ。日本が誇る3モデルの限界性能を清水和夫と佐藤久実が引き出した。

 

モータージャーナリストの清水和夫氏

「GT-RとNSXが登場した黄金期に深く関わることができ、その経験が今までの自動車人生に大きな影響を与えてくれた」と語る清水和夫氏。清水氏にとって今回国産スポーツカー揃い踏みの試乗は感慨深いものだった。

 

清水和夫「ニッポンの高性能スポーツ3台をFSWでテストできる歓び・・・」

 

「ボクらはあの日を忘れない」。ホンダ NSXとニッサン GT-R、レクサス LS(セルシオ)が揃ってデビューした1990年は和製スポーツカーと高級車が華々しくデビューした年だった。その時の感動は今でも鮮明に記憶している。特に印象的なのはGT-RとNSXだ。

 

GT-Rは国内専用モデルだったが、海外の自動車専門家の間でもその性能が話題となっていた。NSXも凄かった。専用工場まで作ったリアルスポーツカーは、世界中のファンにホンダスピリットを植え付けた。私は幸運にもGT-RとNSXが登場した黄金期に深く関わることができ、その経験が今までの自動車人生に大きな影響を与えてくれた。だから、あの日のことは決して忘れない。

 

しかし2000年代中頃になると環境や安全基準が厳しくなり、ホンダやトヨタはスポーツカーの生産を中止した。それから月日が流れ、2007年にR35GT-R、2016年に二代目NSXが復活し、そして2017年レクサスLCがデビューし、日本の3大メーカーのスポーツカーが揃い踏みとなった。私は25年分のお正月が一度に来たようなお祝い気分で、3台の和製スーパースポーツを試しにFSWを訪れた。とはいっても本誌定番の限界域のテストとは異なり、スポーツ走行枠でハイスピードを試す程度の走りに徹する。公道では出せないスピード域の走りをチェックするためだ。

 

レクサス LC500の走行シーン

5.0リッター自然給気のV8エンジンに10速ATを組み合わせて後輪を駆動するレクサス LC500。コンベンショナルなスポーツカーの作法に則ってドライブする楽しさを演出する。

 

「LC500が積む絶滅危惧種になりそうな自然吸気のV8はとにかく楽しい」

 

レクサスLC500は既に欧州のサーキットや国内でも試乗してきた。LCにはV8エンジンとハイブリッドがラインナップされるが、今回はアドレナリンがより出そうなV8を試した。試乗車はスピードリミッターを解除したので、ストレートのトップスピードはメーター読みで240km/hは出ていた。さらにストレートが長ければ300km/hに達しそうだ。

 

新開発の10速ATは小気味よくシフトできる。自然吸気の5リッターV8はスロットルレスポンスが鋭く、ターボエンジンよりも気持ちよくエンジンが回る。「グオーン」というV8の雄たけびが懐かしい。絶滅危惧種になりそうな自然吸気のV8はとにかく楽しいのだ。

 

レクサス LC500のエンジン

チタン製吸排気バルブや鍛造クランクシャフトの採用で高レスポンスと大トルクを実現した5.0リッターV8自然吸気エンジン。組み合わせられるトランスミッションは世界最速レベルの変速を実現した10速ATだ。

 

「エンジンは古典的だが、シャシー性能はアバンギャルドといえる」

 

LC500にはリヤステアが備わっているので、その安定性に文句はない。200km/hでも急な車線変更ができそうだ。難易度の高い旧Aコーナーから100Rはどうか。Aコーナーでステアリングを切り込んだ時の舵の効きがやや鈍く感じられたが、これはリヤステアが安定性を高めているからだ。次の100RはLC500のために作られたコーナーのように思えた。100Rの出口はきつく絞られているので、多くのクルマはハンドルを切り増しすることで、リヤが流れ気味になりやすい。だがLC500はリヤステアのおかげで、スロットルオフ時にタックインが出ず、リヤが安定していた。V8とFRという組み合わせは、オーソドックスなパッケージだが、ハイテクの恩恵で、終始安定して走れる。エンジンは古典的だが、シャシー性能はアバンギャルドといえる。

 

ドライバーと燃料を合わせると2t近い重量にも関わらず、ブレーキの効きも良い。数ラップしても熱による性能低下は見られなかった。だだひとつ、トランスミッションの油温が上昇し、安全のためにエンジン出力がセーブされることがあった。これはシステムを保護するための措置なので納得だ。LC500はサーキットを走ることをあまり想定していないが、快適に優雅に走ることができたのは意外な発見だった。

 

ホンダ NSXの走行シーン

ホンダ 独自のSPORT HYBRID SH-AWDを採用するNSX。フロントにツインモーターシステムを搭載し、トルクベクタリングを実現する。

 

「NSXのモーターはすべて走りのために使われている」

 

次にNSXを試した。二代目NSXは3モーター・ハイブリッドとして昨年登場した。普通のハイブリッドカーと異なるのは燃費のためのハイブリッドではなく、すべては走りのためにモーターが使われていること。エンジンとモーターの出力を合算すると600ps近い。

 

リアルスポーツカーからスーパースポーツに昇華した新型NSXをFSWで走らせるのは初めての体験だ。NSXのパワートレインは9速DCT+モーター、フロントには左右独立したモーターを配備する4WDシステムとなる。フロントのモーターは左右で独立制御するので、トルクベクタリング機能も備わる。

 

ホンダ NSXのエンジン

75度のバンク角を実現したコンパクト&低重心の3.5リッターV6ツインターボに3基のモーターを組み合わせる。システム最高出力/最大トルクは581ps/646Nmとなる。組み合わせられるトランスミッションは9速DCTだ。

 

「加速力は911ターボに匹敵する」

 

加速力は911ターボに匹敵する。FSWのトップスピードは260km/hを超えていた。200km/hを超えるとモーターのご利益はあまり感じられないが、V6ツインターボのパワーで空気の壁をグイグイと押して加速する。気になったのはカーボンコンポジットブレーキのリニアリティ。どの程度の踏力で、どのくらい効くのか分かりにくかった。特に思い切り強く踏み込むと、初期のパッドの喰いつきとペダルタッチに違和感を覚えた。

 

NSXのAコーナーの走りは褒められるものだ。速い操舵に対する応答性が素晴らしい。急ハンドルを切っても、フロントタイヤがスキール音を鳴らす前にコーナリングが終わっている。だが100Rは課題がある。リヤが流れたときにカウンターステアを切ると、舵の方向にハイサイドを起こしやすい。乗りこなしづらい要素もあるが、“悪妻”との付き合い方を模索するのも楽しい。

 

ニッサン GT-Rの走行シーン

3台の中でもっともモデルライフが長く熟成の域に入っているGT-R。「今回はプレミアムエディションだったが、サスがソフトすぎることもなく、パワーとブレーキとハンドリングのバランスが見事だ」と高評価を得た。

 

「GT-Rは既に熟成の域に達しているので走りやすい」

 

最後はGT-Rだ。登場から10年目となり、既に熟成の域に達しているので走りやすい。ニュルブルクリンクで徹底的に鍛えられているから、FSWのスピード域でも違和感はない。今回はプレミアムエディションだったが、サスがソフトすぎることもなく、パワーとブレーキとハンドリングのバランスが見事だ。限界まで攻めこんでも扱いやすい。

 

ニッサン GT-Rのエンジン

2017年モデルはブーストアップのほか、GT-R NISMOからのフィードバックである気筒別点火時期制御を採用している。これにより最高出力は570ps、最大トルクは637Nmに進化を果たした。

 

「オーソドックスな4WDだが、人間の感覚に最もマッチしていた」

 

3.8リッターツインターボと7速DCTは最良のパワートレインだろう。トップスピードは270km/hに達する。今回の3台の中で最速だ。このエンジンは6000rpmを超えても加速が衰えない。Aコーナーではターンイン後、すぐにスロットルを踏み込んで加速してみると、アンダーステア気味だが、ラインを正確にトレースすることができた。

 

100Rも走りやすい。コーナー途中でスロットルを戻すと軽いタックインが出てアンダーを解消できる。GT-Rの弱点はタイトコーナーだ。ニュルで開発するとどうしても低速コーナーが苦手となりやすい。クリッピングポイントを奥にとり、4WD+ターボのトラクションを活かして鋭く加速するのがベストだ。オーソドックスな4WDだが、人間の感覚に最もマッチしていた。

 

 

REPORT/清水和夫(Kazuo SHIMIZU)
PHOTO/篠原晃一(Koichi SHINOHARA)

 

 

【SPECIFICATIONS】

レクサス LC500 Sパッケージ

ボディスペック:全長4770 全幅1920 全高1345mm
ホイールベース:2870mm
車両重量:1960kg
エンジンタイプ:V型8気筒DOHC
総排気量:4968cc
圧縮比:12.3
最高出力:351kW(477ps)/7100rpm
最大トルク:540Nm(55.1kgm)/4800rpm
トランスミッション:10速AT
駆動方式:RWD
ステアリング形式:パワーアシスト付きラック&ピニオン
サスペンション:前マルチリンク 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤ&ホイール:前245/40RF21 後275/35RF21
燃料消費率(JC08モード):7.8km/L
車両本体価格:1400万円

 

ホンダ NSX

ボディスペック:全長4490 全幅1940 全高1215mm
ホイールベース:2630mm
車両重量:1780kg
エンジンタイプ:V型6気筒DOHCツインターボ+3モーター
総排気量:3492cc
圧縮比:10
最高出力:427kW(581ps)※
最大トルク:646Nm(65.9kgm)※
トランスミッション:9速DCT
駆動方式:AWD
ステアリング形式:パワーアシスト付きラック&ピニオン
サスペンション:前ダブルウイッシュボーン 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤ&ホイール:前245/35ZR19 後305/30ZR20
燃料消費率(JC08モード):12.4km/L
車両本体価格:2370万円
※電気モーターの出力を含むシステム出力

 

ニッサン GT-R プレミアムエディション

ボディスペック:全長4710 全幅1895 全高1370mm
ホイールベース:2780mm
車両重量:1770kg
エンジンタイプ:V型6気筒DOHCツインターボ
総排気量:3799cc
圧縮比:9
最高出力:419kW(570ps)/6800rpm
最大トルク:637Nm(65.0kgm)/3300-5800rpm
トランスミッション:6速DCT
駆動方式:AWD
ステアリング形式:パワーアシスト付きラック&ピニオン
サスペンション:前ダブルウイッシュボーン 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤ&ホイール:前255/40ZRF20 後285/35ZRF20
燃料消費率(JC08モード):8.6km/L
車両本体価格:1170万504円

 

 

※GENROQ 2017年 8月号の記事を再構成。記事内容及びデータはすべて発行当時のものです。

 

 

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【関連リンク】

GENROQ  2017年 8月号 電子版

※雑誌版は販売終了