ニッポンが誇る3台のスポーツカー、その実力をサーキットで測る:後編【Playback GENROQ 2017】

公開日 : 2020/08/10 17:56 最終更新日 : 2020/08/17 14:44

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ニッサン GT-Rの走行シーン

LEXUS LC500 × HONDA NSX × NISSAN GT-R

レクサス LC500 × ホンダ NSX × ニッサン GT-R

 

 

3車3様のパフォーマンスを検証

 

TNGAの最高峰であるGA-Lプラットフォームを採用したレクサス渾身のラグジュアリークーペ・LC500を、ついにサーキットでテストするチャンスを得た。迎え撃つのは熟成に次ぐ熟成を重ね、デビューから10年目を迎えるGT-Rと3モーター・ハイブリッドシステムのスーパースポーツNSXの2台だ。日本が誇る3モデルの限界性能を清水和夫と佐藤久実が引き出した。

 

モータージャーナリストの佐藤久実氏

モータージャーナリストとしてはもちろん、現役レーサーとしても活躍している佐藤久実氏。3台の国産スポーツカーをサーキットで試乗する機会は待ち望んでいたものだった。

 

佐藤久実「LC Fが待ち遠しくなるLC500の素性の良さ。熟成のGT-Rは日本の誇りだ」

 

日本ブランドのハイパフォーマンス・モデルのみが集結し、サーキットでその実力を試す。この企画ができること自体を嬉しく思う。久しく和製スポーツカー不在の時代が続いていたのだから。正直、このセグメントは、販売台数としては大きく貢献しないだろうが、メーカーの技術の結晶でありブランドイメージを牽引するフラッグシップとして、その役割は大きいと思う。

 

さて、今回の試乗は、富士スピードウェイ本コースにおいて、通常のスポーツ走行枠で行われた。

 

レクサス LC500の走行シーン

ピュアスポーツではなくラグジュアリー寄りのLC500をサーキットに持ち込んで違和感を感じつつ「何と言っても、V8自然吸気エンジンならではの加速が気持ち良い」と素性の良さを再確認する佐藤久実氏。

 

「V8自然吸気エンジンならではの加速が気持ち良いLC500」

 

まずは、レクサスLC500。今、一番注目されているクルマと言っても過言ではないだろう。実際、公道試乗した際には、痛いほどに通行人の視線を感じた。

 

サーキットに持ち込んでもオーラを放ち続ける。とはいえ、LC500は「ラグジュアリー・クーペ」であり、リアルスポーツカーとは謳っていない。レーシングギアを装備して室内に乗り込むも、レーシングな気分でテンションが上がるというより、そのラグジュアリーな内装に改めて目をやり、惚れ惚れするという、何とも複雑な心境だった。

 

ストレートエンドに近い、1コーナー手前のパナソニックゲートでの速度は約245km/h。正直、速さは他の2台に譲るが十分に速い。そして、何と言っても、V8自然吸気エンジンならではの加速が気持ち良い。滑らかな加速フィールや回転の上昇、そして重厚感のある咆哮など、過渡的な特性を味わえる。

 

レクサス LC500のインテリア

レクサスが認定するTAKUMIドライバーが走り込みを重ねて開発したステアリングは手のひらのグリップ感やフィット感に優れる。表皮一体発泡工法を採用したスポーツシートはデザイン性とサポート性を両立させた逸品だ。

 

「素性の良さは感じさせながらも、サーキットでさえ限りなく優雅な挙動」

 

一方、コーナーでは重さを感じ、動きもゆったりしている。クルマなりにゆっくり操作してあげれば動きは素直だが、レーシングな気分で先走るとアンダーステアでイラッとする羽目になる。もっとも、アクセルを踏み込めばテールスライドしながらのコーナリングも可能だが。

 

素性の良さは感じさせながらも、サーキットでさえ限りなく優雅な挙動。ある意味予想通りの操縦性だった。何故なら、レクサスには「F」モデルが存在するから。サーキットで楽しむなら本命はこちらだろう。ラグジュアリーさを損なわず、無駄を削ぎ落とした走り味の「LC500F」の登場が今から待ち遠しい。と同時に、ハイブリッドモデルの実力も試してみたいと思った。

 

ホンダ NSXの走行シーン

これまではNSXとの意思疎通が図りにくいと感じていた佐藤久実氏だが、サーキットでの試乗によって少し距離が縮まったと言う。しかし「NSXは絶対にカウンターを当ててはいけない」と、その特殊な操作性を指摘する。

 

「NSXは4WDと思えないほどのリヤのトリッキーさに驚く」

 

次はホンダNSX。日本ブランドではあるが、厳密には、アメリカ産の帰国子女扱いとなる。このクルマもすでに何度か試乗済み。そして、残念ながら、どうも意思疎通が図りにくいというのが従来までの印象。相変わらず異次元の操縦性だが、実は今回、ほんのちょっとだけ近づけた気がする。

 

モーターならではのフラットな加速は、一般道では“速さ”として実感しづらかったが、サーキットで走ると速い!! ストレートエンド、1コーナー手前のパナソニックゲートで270km/h弱まで到達した。

 

そして、ブレーキングからのターンイン。回頭性は悪くないが、それ以上に、4WDと思えないほどのリヤのトリッキーさに驚く。さらに、ここからが異次元なのだ。如実に挙動が表れるのが、旋回時間の長い100R。リヤがスキッドすれば瞬間的にカウンターステアを当てるというのは考えるまでもなく反射的な操作として行うが、NSXは絶対にカウンターを当ててはいけないのだ。カウンターを当てるとクルマの制御と重なり、ヨーを打ち消しあうどころか、ステアした方に急激に向きを変えてしまう。

 

ホンダ NSXのインテリア

Aピラーの断面を小さくし、ステアリング上部を平たくしたことでコーナリング時の優れた視界確保に成功。セミアニリンレザー+アルカンターラのシートは、ややアップライトなドライビングポジションなのが気になる。

 

「キャタピラーのような動きでスッとクルマが旋回する」

 

しかし、カウンターを我慢するのはドライバーの意に反すことで、意識しないと難しい。しかも、リヤの動きとして、ヨーが出ているだけか、リヤタイヤが滑っているのか、その境が掴みづらい。若干の怖さと違和感を覚えながらもここで我慢すると、次の瞬間、キャタピラーのような動きでスッとクルマが旋回する。なるほど、ホンダの言う「ニュー・スポーツ・エクスペリエンス」とはこのことか! と漸く実感。

 

確かに斬新な感覚。しかし、この動きも刹那的で長くは続かない。やがてフロントタイヤが滑り出し、そして唐突な挙動でリヤの動きが止められる。電子制御系は限りなくオフの設定としてあったが、おそらくはVSAが作動しているのだろう。4WDの制御にしてはあまりに唐突すぎると感じた。

 

このキャタピラー感覚コーナリングがもっとドライバーの操作や体感に近い違和感のないものとなれば、まさに新世代スポーツカーとして堂々と語れるかもしれない。今後の熟成を期待したい!

 

ニッサン GT-Rの走行シーン

「古典的ではあるが、ドライバーの操作通りにクルマが動いてくれる安心感が圧倒的に高く、走り味にも深みがある」と、国産スポーツカー不在の中で孤軍奮闘してきたGT-Rを称える。

 

「GT-Rの印象をひと言で言うなら、10年の熟成だ」

 

そして、最後はニッサンGT-R。

 

サーキットで走るなら当然、トラックエディションでしょ、という意見もあるだろう。しかし、ラグジュアリークーペのLC500、ワインディングが本籍のNSXとのバランスを考え、今回は敢えてプレミアムエディションでの試乗となった。

 

GT-Rの印象をひと言で言うなら、10年の熟成だ。ある意味、古典的ではあるが、ドライバーの操作通りにクルマが動いてくれる安心感が圧倒的に高く、走り味にも深みがある。アンダーステアもオーバーステアも4輪ドリフトもできる。それもこれも、ドライバーの操作次第だ。

 

1コーナー手前のパナソニックゲートでは、270km/hを超えていた。速さも3台中、トップである。NSXよりさらに数km/hトップスピードでも勝る。

 

ニッサン GT-Rのインテリア

スイッチ類を絞り込むことで、快適な操作性を追求したインパネを採用する。コンソールにはカーボンを採用し、スポーティな雰囲気を演出。分厚いサイドサポートによりスポーツ走行時のホールド性とロングライブ時の快適性を両立したシートは秀逸だ。

 

「それぞれに個性豊かな和製ハイパフォーマンス・モデル」

 

一方、GT-Rに感じた安心感は熟成に拠る所もあるが、やはり4WDであることが大きい。特にプレミアムエディションなので、プッシュアンダーが出るシーンもあった。おそらくトラックエディションならもっとソリッドなコーナリングが可能だろう。だが上手くコントロールすれば、旋回の立ち上がりから路面を蹴飛ばすようにトラクションを発揮する。あるいは、タイトコーナーでアクセルを踏み急ぎ、かなりのドリフトアングルがついても、そこからグイグイと車体を引っ張り、姿勢を立て直しつつ前に押し進めてくれる。そんな懐の深さが安心感に繋がっているのだろう。ドライバーの操作通りということは、ミスも見逃してはくれないが、リカバリーのチャンスも多分に与えてくれるのだ。

 

それぞれに個性豊かな和製ハイパフォーマンス・モデル達だった。多少、立ち位置の違いがあるにしても、今後も良きライバルとして磨きをかけて育てて頂きたい。

 

 

REPORT/佐藤久実(Kumi SATO)
PHOTO/篠原晃一(Koichi SHINOHARA)

 

 

【SPECIFICATIONS】

レクサス LC500 Sパッケージ

ボディスペック:全長4770 全幅1920 全高1345mm
ホイールベース:2870mm
車両重量:1960kg
エンジンタイプ:V型8気筒DOHC
総排気量:4968cc
圧縮比:12.3
最高出力:351kW(477ps)/7100rpm
最大トルク:540Nm(55.1kgm)/4800rpm
トランスミッション:10速AT
駆動方式:RWD
ステアリング形式:パワーアシスト付きラック&ピニオン
サスペンション:前マルチリンク 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤ&ホイール:前245/40RF21 後275/35RF21
燃料消費率(JC08モード):7.8km/L
車両本体価格:1400万円

 

ホンダ NSX

ボディスペック:全長4490 全幅1940 全高1215mm
ホイールベース:2630mm
車両重量:1780kg
エンジンタイプ:V型6気筒DOHCツインターボ+3モーター
総排気量:3492cc
圧縮比:10
最高出力:427kW(581ps)※
最大トルク:646Nm(65.9kgm)※
トランスミッション:9速DCT
駆動方式:AWD
ステアリング形式:パワーアシスト付きラック&ピニオン
サスペンション:前ダブルウイッシュボーン 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤ&ホイール:前245/35ZR19 後305/30ZR20
燃料消費率(JC08モード):12.4km/L
車両本体価格:2370万円
※電気モーターの出力を含むシステム出力

 

ニッサン GT-R プレミアムエディション

ボディスペック:全長4710 全幅1895 全高1370mm
ホイールベース:2780mm
車両重量:1770kg
エンジンタイプ:V型6気筒DOHCツインターボ
総排気量:3799cc
圧縮比:9
最高出力:419kW(570ps)/6800rpm
最大トルク:637Nm(65.0kgm)/3300-5800rpm
トランスミッション:6速DCT
駆動方式:AWD
ステアリング形式:パワーアシスト付きラック&ピニオン
サスペンション:前ダブルウイッシュボーン 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤ&ホイール:前255/40ZRF20 後285/35ZRF20
燃料消費率(JC08モード):8.6km/L
車両本体価格:1170万504円

 

 

※GENROQ 2017年 8月号の記事を再構成。記事内容及びデータはすべて発行当時のものです。

 

 

【関連記事】

・ニッポンが誇る3台のスポーツカー、その実力をサーキットで測る:前編【Playback GENROQ 2017】

 

 

【関連リンク】

GENROQ  2017年 8月号 電子版

※雑誌版は販売終了