新型レクサス LCのオープン仕様は「V8を聴くための動くシアタールーム」。 渡辺慎太郎が国内初試乗!

公開日 : 2020/08/13 17:55 最終更新日 : 2020/08/17 14:37


レクサス LC500 コンバーチブルの俯瞰目フロントイメージ

Lexus LC500 / LC500 Convertible

レクサス LC500/LC500 コンバーチブル

 

 

とかくデザインは難しい

 

クルマのスタイリングの好き嫌いには良いも悪いもなくて、人それぞれの趣向によるものである。生理的に嫌いとか直感的に好きとかはその人の経験やセンスや感覚が導き出す意見だから、それについて何人もとやかく言うものではないと思っている。そうはいっても、老若男女や国籍を問わず「美しい」「格好いい」と多くの人が同じ想いを共有するスタイリングがあるのも事実で、デザインというのはなかなか難しい。

 

自分なんかは着る物やインテリアなどデザインに関するセンスが全然ないと自負しているから、デザインが機能性を邪魔している場合を除いて、スタイリングについて言及することはほとんどない。だから「いいなあ」と思うクルマがあったとしても心の中で静かに思うに留めている。下手に口に出して「え?なんであんなのが好きなの?」とか「へー変わってるね」とか、大きなお世話を焼いて欲しくないからだ。そんなふうに心に秘めたクルマが何台かあって、その1台がレクサス LCである。

 

レクサスLC500h クーペとレクサス LC500 コンバーチブルの2台イメージ

アメリカのデザインスタジオ「CALTY」による大胆なデザインと、日本の繊細な感性が混じり合って感性したLCの佇まい。コンバーチブルには、エレガントなシルエットを崩さないソフトトップを採用した。

 

アメリカの発想力と日本の流儀の合わせ技

 

レクサス LCのデザインに好感を持つ方は思いのほか多くてちょっと安心する。アメリカのキャルティが手掛けたデザイン・コンセプトを日本のデザイナーとエンジニアが可能な限り忠実に量産車へ再現したこのクルマは、自由な発想のアメリカと緻密で丁寧な仕事が得意な日本のシナジー効果で誕生した賜物である。

 

実際、かつてここまでデザインが世界中で高い評価を受けた日本車の記憶が自分にはない。発売から3年が経過したいまでも、たまに街でLCを見かけると思わず目で追ってしまい、なんだか少し嬉しくなる。一方でなんとなく疎ましく思う格好のクルマもある。クルマのデザインは人の心を揺さぶるのだ。

 

レクサス LC500 コンバーチブルのサイドビュー。ルーフ開

クーペ登場の段階からLCのオープン仕様の追加投入は噂されていたが、遅れること3年、満を持しての登場とあいなった。外板色11色、幌2色、内装色3色で、合計44通りの組み合わせをラインナップする。

 

遅れてやってきたオープンモデル

 

レクサス LCにコンバーチブルが加わることは2019年に発表されていたが、ようやく実車に試乗する機会がやってきた。LC コンバーチブルと同時にLCの改良版も発表されたので、今回はクーペとコンバーチブルの両方を試すことになる。

 

LCのデビューは2017年なので、コンバーチブルの追加に3年というのはちょっと長すぎるかもしれない。ポルシェ911はフルモデルチェンジするとだいたい半年後にはコンバーチブルが追加される。いろんなプロダクトがもの凄い速さでどんどん刷新されたり機能やラインナップが拡充される現代において、3年とはずいぶん悠長である。

 

コンバーチブルを追加するかどうかの判断で迷ったのか、あるいは設計か開発か、どの部分で時間を食ったのかは分からないけれど、もっと早く追加するべきだったと個人的には思う。なぜならコンバーチブルもクーペに負けず劣らずのスタイリングで、商品力は高いと感じていたからだ。

 

レクサス LC500 コンバーチブルのサイドビュー。ルーフ閉

レクサス基準の静粛性を確保するべく、4層構造のソフトトップを採用。骨格や素材の張り具合まで細かく検証し、ルーフラインの美しさを作り込んだという。

 

開けても閉めても絵になるように

 

ルーフはハードトップではなくソフトトップを選択している。幌を使うと骨組みが外側に浮き出てスタイリッシュに見えない場合もあるが、LCではその部分にこだわったという。クローズ時はなめらかな張りのあるシルエットとし、幌を支える構成部品の存在がほとんど感じられない。また、ルーフの後端をなるべく後ろに下げることで、クローズ時にはファストバックに似たフォルムを形成したという。

 

オープン時にはルーフの収納部分がどうしても膨らんでしまい、リュックサックを背負っているような形状になりがちだが、幌のたたみ方を工夫するなどしてルーフハッチを可能な限り下げ、トランクリッドとスムーズに繋げている。ルーフを開けても閉めても、クーペからのイメージをまったく崩さないデザインが成立している。

 

レクサス LC500 コンバーチブルの俯瞰目リヤビュー

ソフトトップの開閉シークエンスは全自動。センターコンソールのスイッチを操作すれば15秒で完了する。50km/h以下なら走行中でも開閉が可能。

 

重量配分に見る芸の細かさ

 

ソフトトップは全自動で、センターコンソールのパッド内に配置されたスイッチで開閉する。開閉に要する時間は約15秒、約50km/hまでなら走行中でも操作が可能となっている。システムは油圧式。油圧式だと、油圧ポンプやシリンダーなど比較的重量のある補機類が必要となるが、これらをホイールベースの内側の低いところに置くことで(ヨー慣性モーメントの低減)、操縦性に悪影響を与えないよう配慮している。

 

またコンバーチブルはルーフが動くので、オープンとクローズで前後重量配分が微妙に異なり、それが運動性能に響く場合もある。LC コンバーチブルではフレームにマグネシウムとアルミを使い重量の軽減を図っている。幌は4層構造で、布材3層+吸音材の構成。なお、ソフトトップの生産はMAGNAが請け負い、LC コンバーチブルの生産はクーペと同じ元町工場で行われる。

 

レクサス LC500 コンバーチブルのコクピットイメージ

座面部のヒーター範囲を広げたり、液晶メーターに反射を抑えるコーティングを施すなど、オープントップモデルなればこその気遣いを随所に採用している。

 

ルーフの開閉に応じて空調が自動制御

 

レクサスらしいと思うのは、コンバーチブル専用に施された細かい装備や機能の数々である。ヘッドレストに内蔵されたネックヒーターはいまやコンバーチブルでは当たり前の装備だが、シートヒーターはクーペよりもクッション部のヒーターの範囲をわざわざ広げている。

 

クーペではルーフ部分に仕込んでいるアクティブノイズコントロールのマイクはヘッドレストに移動しているし、液晶メーターには自然光の反射を抑えるために特殊なコーティングを施工した。セミアニリンの本革シートはヘッドレストにエンボス加工を、ショルダー部にキルティング意匠を採用、専用のベルトガイドも装備している。もちろん、エアコンはオードモードを選択しておけばルーフの開閉状況に応じた空調制御をしてくれる。こうした配慮はまさに日本のおもてなしの真骨頂である。

 

レクサス LC500 コンバーチブルのボディ構造イメージ

十分なボディ剛性を確保するための施策も抜かりがない。ボディを覗き込むと、各部に補強材が仕込まれているのが分かった。

 

クーペが先か、オープンが先か

 

当然のことながら、ボディ剛性確保のための対策も至る所に見られる。ピラーの根元部にクーペのボルト締結に加えてガゼットをアーク溶接し、ブレース(いわゆる支え棒)はアンダーフロアのフロント/センター/リヤのみならず、リヤのバルクヘッド部分にサスペンションのてっぺん左右をつなぐタワーブレース、その下へさらにV字のブレースを装着している。

 

クーペとコンバーチブルのボディを持つモデルは、要件の厳しいコンバーチブルのボディを先に設計して後からクーペを作る手法が最近では一般的になりつつある。LC コンバーチブルのボディ補強を見ると、クーペ開発当初にコンバーチブルは企画されていなかったのではないか? と邪推してしまうが、いずれにせよボディ剛性確保のために妥協せず徹底的にやった痕跡はうかがえる。ちなみに、クーペからの車両重量増は約100kg。ソフトトップを採用していることを考慮すると、やはりボディ補強による重量増加が効いているようである。

 

レクサス LC500 コンバーチブルのフロント走行イメージ

サーキット試乗で改めて浮き彫りになったのが、「ゆったりと、しかし素速く走る」ことのできるLCならではのキャラクター。

 

まるで頑丈なバスタブ

 

今回の試乗の舞台はサーキットと一般道である。まずはコンバーチブルのルーフをオープンにしてサーキットの周回を重ねてみたところ、ボディ剛性に不安はまったく見当たらない。進入速度の速いコーナーでブレーキングからターンインして再加速の直後にまたブレーキングからターンインというような、連続的にボディにある程度の負荷がかかるような場面でも、ボディがよじれるとか操舵応答遅れが発生するとか切り返すと揺り戻しがあるとか、ボディ剛性の不十分なコンバーチブルに見られる現象も確認できなかった。頑丈なバスタブにでも浸かっているような気分である。

 

LCは“スポーツカー”ではないので、操縦性がナーバスだったり爆発的な加速力に見舞われるなど、扱いに少々手を焼くなんてことはない。それでもサーキット走行をそれなりにこなせる運動性能を備えている点が特徴だ。

 

ボディ剛性が上がればサスペンションはよりよく動いて本来の仕事を真っ当できるようになる。ドライブモードをスポーツS+にすると電子制御式ダンパーの減衰力が高くなり、ばね上の動きを抑えにかかるものの、そもそもそれほど大きくばね上は動いていないから、途端に乗り心地が悪くなったりもしない。“ゆったり速く走れる”という印象は、コンバーチブルでもクーペでもまったく同じであった。

 

レクサス LC500 コンバーチブルのリヤ走行イメージ

V8の歌を全身に浴びながらクルージングできるのがLC500 コンバーチブル最大の魅力。その意味で、パワートレインを潔くV8一本に絞ったのは正解だったように思える。

 

乗って実感した「V8のみ」の正しさ

 

LC コンバーチブルのパワートレインは自然吸気のV8のみで、ハイブリッドは用意されていない。この決断は正しかったと思う。なぜならこのV8のサウンドをより楽しむには屋根のないコンバーチブルがうってつけだからである。

 

おそらく日本車の中ではいまもっとも官能的な音を奏でるV8は、クーペだと主に後方からその旋律が聞こえてくるものの、屋根を開け放った途端に360度に近い臨場感で身体に降り注いでくる。もちろん、顔を撫でる外の空気も気持ちいいけれど、LC コンバーチブルはエンジン音を聞くためにルーフを開けたくなるクルマである。

 

レクサス LC500 コンバーチブルのラゲージコンパートメントイメージ

コンバーチブルがV8だけラインナップする理由のもうひとつは、ラゲッジルームの容量だろう。ルーフを開けていても、意外なほど実用的な使い勝手が用意されている。

 

そしてもうひとつ、V8を選択してよかった理由がある。それはトランクルーム容量だ。LCのハイブリッドは後席の後ろにリチウムイオンバッテリーを積んでいるため、トランク容量がV8よりも小さい。ところがコンバーチブルは、リチウムイオンバッテリーが入る部分にうまくルーフを収めることに成功したので、ハイブリッドとほぼ同等のトランクスペースが確保できたのである。

 

意地悪な見方をすれば、「ということは要するにハイブリッドだとルーフの収納スペースが作れないからV8だけになったのか」とも言えなくはないけれど、もしハイブリッドのコンバーチブルが登場していたとしても、満足度はV8の半分以下に違いない。LC コンバーチブルはV8のライブ演奏を聴くための動くシアタールームのような存在なのである。

 

レクサス LC500 コンバーチブルのウィンドウディフレクターイメージ

風の巻き込み対策も2重に設ける万全ぶり。リヤシート上を覆うように設置するメッシュ状のウィンドディフレクターはディーラーオプション。

 

風の巻き込みを7割削減する仕掛け

 

室内への風の巻き込みには2段階の対策が講じられている。ひとつは、後席の間に設けられた透明の樹脂パネル。60km/h時で前席乗員の顔まわりの風を約20%軽減できるという。もうひとつは、後席の上に被せるよう装着するメッシュのウィンドスクリーン(ディーラーオプション)。これなら100km/h走行時で同約70%軽減できるそうだ。

 

どちらも効果のほどはほぼ額面通りで、髪がぐしゃぐしゃになったり室内での会話がままならないこともなかった。当日は猛暑日で、オープンにして信号でつかまると8月のうだる空気が身体にまとわりつくものの、走り出せば一気に空気が入れ替わり、直射日光の鋭い日差しを外からの心地よい風が和らげてくれた。

 

レクサス LC500h クーペのフロント走行イメージ

クーペの方も、年次改良を経て着実に進化を続けている。2020年モデルでは、軽量部材の採用やパーツの中空化などにより車両重量やばね下重量の軽減を図った。

 

年々着実に進化するクーペ

 

レクサスはいわゆるイヤーモデル制をとっているので、毎年どこかに改良の手が加えられている。2017年にデビューしたクーペも、2018年にステアリングサポートをアルミダイキャスト化するとともに新構造のダンパーを採用、2019年にリヤのバンパーリーンフォースの締結剛性の向上などを行ってきた。

 

そして2020年の今回は、もっとも大がかりな改善となった。まずは軽量化。LCは重量が比較的重く、それが操縦性や乗り心地に悪さをしていた。そこでサスペンションロワアームのアルミ化、スタビライザーの中空化とサイズ変更、コイルスプリングの材質変更、ホイールの軽量化、エアコンのコンプレッサーの小型化などにより、車両重量とばね下質量の低減を図った。デビュー時の車両重量と比較するとおおむね10kgのダイエットに成功している。

 

ばね下が軽くなれば乗り心地に有利に働き、さらにダンパーの制御変更とバウンドストッパーの初期ばね特性の変更により、路面のアンジュレーションにもより細やかに対応できるようになったという。さらに、電子制御式ダンパーのAVSとパワステ(EPS)の制御変更、ロール剛性配分変更、LDH(後輪操舵を含む前後輪協調制御システム)の制御変更などは主に操縦性に、10速ATのシフトプログラムの変更とハイブリッドのモーターアシスト増幅と変速マップの変更は主に動力性能や駆動力特性に効いているそうだ。

 

レクサス LC500 クーペのリヤ走行イメージ

レクサスのフラッグシップクーペ/コンバーチブルとして君臨するLC。エクステリアのデザイン、そして走りの質感ともに、ブランド内でも異質の存在感を放っている。

 

クルマの声が聞こえる

 

資料に書かれている効能は確かにきちんと実車に反映されていた。旋回中の小さく無駄な動きはずいぶんと減っているし、乗り心地もよくなっている。ボディとシャシーがしっかりと締結された“塊感”のようなものを以前よりも感じるようになったのも嬉しい。いろんなところがしっかりした分、気になるところが浮き出てきたのも事実。例えば、ばね下は軽くなったはずなのに、特にリヤのバルクヘッドから後方に質量を感じるようになった。ステアリングはレスポンス自体悪くないものの、切り始めのステアリングフィールが若干ボヤッとしていた。

 

レクサスLCは対話ができるクルマである。今後さらに熟成を重ねれば、もっとクリアにクルマの声が聞こえるようになるに違いないし、レクサス全車がそういうふうになってくれればいいと思っている。

 

 

REPORT/渡辺慎太郎(Shintaro WATANABE)

 

 

【SPECIFICATION】

レクサス LC500 コンバーチブル

ボディサイズ:全長4770 全幅1920 全高1350mm

ホイールベース:2870mm

トレッド:前1630 後1635mm

車両重量:2050kg

エンジン:V型8気筒DOHC

総排気量:4968cc

最高出力:351kW(477ps)/7100rpm

最大トルク:540Nm/4800rpm

トランスミッション:10速AT

駆動方式:RWD

サスペンション形式:前マルチリンク 後マルチリンク

ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク

タイヤサイズ:前245/45R20 後275/40R20

 

レクサス LC500 クーペ

ボディサイズ:全長4770 全幅1920 全高1345mm

ホイールベース:2870mm

トレッド:前1630 後1635mm

車両重量:1930kg

エンジン:V型8気筒DOHC

総排気量:4968cc

最高出力:351kW(477ps)/7100rpm

最大トルク:540Nm/4800rpm

トランスミッション:10速AT

駆動方式:RWD

サスペンション形式:前マルチリンク 後マルチリンク

ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク

タイヤサイズ:前245/45R20 後275/40R20

 

レクサス LC500h クーペ

ボディサイズ:全長4770 全幅1920 全高1345mm

ホイールベース:2870mm

トレッド:前1630 後1635mm

車両重量:1990kg

エンジン:V型6気筒DOHC

総排気量:3456cc

最高出力:220kW(299ps)/6600rpm

最大トルク:356Nm/5100rpm

モーター最高出力:132kW(180ps)

モーター最大トルク:300Nm

システム最高出力:264kW(359ps)

トランスミッション:電気式無段変速機

駆動方式:RWD

サスペンション形式:前マルチリンク 後マルチリンク

ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク

タイヤサイズ:前245/45R20 後275/40R20

 

【車両本体価格(税込み)】

LC500 コンバーチブル:1500万円

LC500 コンバーチブル 特別仕様車“Structural Blue”:1650万円

LC500 クーペ:1350万円

LC500h クーペ:1400 万円

 

 

【問い合わせ】

レクサス インフォメーションディスク

TEL 0800-500-5577

 

 

【関連リンク】

・レクサス 公式サイト

http://www.lexus.jp