V8フェラーリの最高傑作! フェラーリ 488ピスタを聖地・フィオラーノでテスト 【Playback GENROQ 2018】

公開日 : 2020/08/17 17:55 最終更新日 : 2020/08/17 17:55

AUTHOR :

フェラーリ 488ピスタの走行シーン

Ferrari 488Pista

フェラーリ 488ピスタ

 

 

スペチアーレに込められる跳ね馬の執念

 

488チャレンジや488GTEなど、モータースポーツ専用マシンの技術が注入された488ピスタ。V8ツインターボ・ミッドシップをさらなる高みへ昇華させたスペチアーレモデルはまさに「史上最速・最高のV8フェラーリ」と呼ぶにふさわしい実力を見せつけてくれた。GENROQ編集長の永田が聖地・マラネッロから報告する。

 

フェラーリ 488ピスタの走行シーン

3.9リッターV型8気筒ツインターボを搭載する488ピスタは、最高出力720ps/最大トルク770Nmを発生。最高速度は340km/hに達し、0-100km/h加速は僅か2.85秒に過ぎない。

 

「アマチュアでも臆することはない。この高性能は誰にでも開かれている」

 

F1との関わりを紐解いてみるまでもなく、フェラーリとモータースポーツは切っても切れない関係だ。モータースポーツをやらなければ、フェラーリの存在意義はない、と言ってもいいくらいだろう。そしてモータースポーツで培ったテクノロジーやノウハウを市販モデルに注入する、それがフェラーリの社是である。もちろんモデルによってその程度の差はあるが・・・。

 

488ピスタは、そんなフェラーリ哲学のもと、生まれたモデルだと言える。ラインナップの中でも最もピュアなスポーツマシンという位置付けのV8ミッドシップモデルは、過去にもモータースポーツのテクノロジーを大幅に取り入れたスペチアーレモデルを発表してきた。2003年の360チャレンジストラダーレ、2007年の430スクーデリア、そして2013年の458スペチアーレ。それらのいずれもがモデルライフのフィナーレを飾る存在として送り出されたことを考えると、488もこのピスタが出たことでいよいよ最後が近づいてきたということになる。

 

488ピスタには、488チャレンジと488GTEのテクノロジーが投入されている。いずれも488GTBをベースとしたレーシングマシンで、前者はお馴染みのワンメイクシリーズ、フェラーリ・チャレンジ用のマシン、後者はFIA世界耐久選手権のGTEカテゴリーのためのマシンである。488GTEは17年にドライバーとマニュファクチャラーズの両タイトルを獲得、特にマニュファクチャラーズタイトルは6シーズンで5回も獲得という強さを誇る。サーキットで鍛えられた488のノウハウを注入した最強の488。ピスタ(サーキット)の名が与えられたことからも、フェラーリの気合いの入れようがわかるというものである。

 

フェラーリ 488ピスタのフロントスタイル

優れたエアロダイナミクスは488ピスタの大きな特徴だ。フロントのSダクトとフロントバンパーだけで、488GTBに対して増大したダウンフォース量の41%を稼ぎだしている。

 

「スペチアーレモデルに対するこだわりは、もはや執念と呼ぶべき」

 

488GTBからの変更点は多岐に渡る。まず見た目ですぐにわかるのがエアロダイナミクスだ。フロントバンパー下部から取り入れたエアをボンネットから排出するフェラーリ特許のSダクトをはじめ、独特の形状となるフロント&リヤバンパー、大型化されたリヤスポイラー、もちろんアンダーボディ形状も見直され、ダウンフォース量は488GTB比で20%も向上している。

 

エンジンは新設計のインテーク、リフト量を1mm増やしたIN/EXカム、チタン製として43%の軽量化を果たしたコンロッド、488チャレンジ用に開発したターボチャージャー・スピードセンサー、強化ピストン、インコネル製の等長エキマニ、クランクシャフト、フライホイール、そしてシリンダーライナーも新設計で軽量化を図るなど、488GTB用に対して実に50%が新設計されているという。

 

フェラーリ 488ピスタのエンジン

V8ツインターボは大きく改良された。IN/EXバルブやカムはリフト量を1mmアップ、ピストンとシリンダーヘッドは燃焼室の圧力負荷が10%増大しても耐えられるように強化。さらにチタン製コンロッドの採用、クランクシャフトと軽量フライホイールなどで慣性を17%低減している。

 

「パワーウエイトレシオは実に1.78kg/psという驚異的な数字を実現」

 

軽量化もポイントだ。フロントフードや前後バンパー、リヤスポイラー、インテーク・プレナム、シートをカーボン製とし、リチウムイオンバッテリーを採用するなど、あらゆる箇所で軽量化を徹底。その結果パワーウエイトレシオは実に1.78kg/ps(488GTBは2.13kg/ps)という驚異的な数字を実現している。なんとオプションでカーボン製ホイールも用意されているのだ。このホイールはばね下重量を40%も削減できるという。

 

他にも488チャレンジ譲りのレーシングブレーキ、フロントの冷却レイアウトの改善、サイドスリップを予測してブレーキに介入、直感的な操作を可能とするFDE(フェラーリ・ダイナミック・エンハンサー)の採用など、その変更点はとてもここでは書ききれない。普通に考えたら十分すぎる性能を持つ488にさらにここまで手を加えるとは、スペチアーレモデルに対するフェラーリのこだわりは、もはや執念と呼ぶべきかもしれない。

 

フェラーリ 488ピスタの走行シーン

ターボチャージャーのスピードセンサーは488チャレンジ用を、さらにインコネル製の等長エキマニ採用など、488に搭載されているものから実に50%の部品が新設計されている。エンジンのみで488GTBから18kgの軽量化も実現した。

 

「これほど繊細なレスポンスのターボエンジンは、他にないのではないか」

 

最初の試乗ステージはフィオラーノだ。フェラリスタにとっての聖地、F1マシンから市販車まで、フェラーリのクルマはすべてここで徹底的に鍛え上げられる。

 

4点式ハーネスを締め上げ、右パドルを引いてからコースイン。1コーナーに向かって加速をしていく段階では488GTBとの差異をそれほど感じることはなかったが、コーナー手前でブレーキを踏み、シフトダウンをしてステアリングを右に切った瞬間、その軽快さに驚いた。488GTBも相当に軽快なのだが、488ピスタは明らかにクルマのサイズが小さくなったかのような感覚である。スピードを上げて中速コーナーを抜けると、その印象はさらに強まる。ステアリングは決して過敏ではない。だが切った量に合わせて、まるで身体の一部であるかのように向きを変えるのだ。

 

そして驚くべきはエンジンのレスポンスだ。立ち上がりでアクセルを踏むとタコメーターは瞬時に跳ね上がり、8000rpmまで一気に到達する。それでもパワー感がまったく衰えないのでまだまだ回せそうな気もするが、ステアリングに組み込まれたインジケーターがシフトアップを促す。すかさずパドルを引いてアクセルを踏みつけると、その直後にもうステアリングのインジケーターが点灯しているのだ。もはや息つく暇もない。そしてアクセルの僅かな動きに対するエンジンの反応の素晴らしさにも驚く。これほど繊細なレスポンスを示すターボエンジンは、他にないのではないか。

 

フェラーリ 488ピスタの走行シーン

足元にはカーボン製ホイールをオプション設定。アルミ製に比べて40%の軽量化を実現している。ブレーキはカーボンコンポジットとなる。タイヤはミシュランと共同開発したパイロットスポーツカップ2だ。

 

「超高速域での安定感も秀逸だ。路面に張り付くような感覚を示す」

 

超高速域での安定感も秀逸だ。路面にピッタリと張り付くような感覚で、ストレートはもちろん、高速コーナーでもクルマは驚くほど安定しているので、不安感はまるでない。おそらく300km/hを超えるような速度となっても、安心してドライブできるだろう。この高速スタビリティの高さ、そして確実にスピードを殺してくれる強力なブレーキにより、488ピスタは安心してサーキットを楽しめるクルマとなっている。ミシュランとフェラーリが共同開発したパイロットスポーツカップ2も素晴らしい。グリップの状況をリニアに感じられるので、スロットルの微調整が容易だ。

 

マネッティーノをRACEモードに切り替えると、エンジンの反応はさらにダイナミックになり、こちらのアドレナリンもさらに湧き出す。E-Diff、F1-Trac、そしてフェラーリ・ダイナミック・エンハンサーなどのビークル・ダイナミクス・システムはバージョン6となったSSC6が統合制御する。それは完全に黒子に徹し、何かが介入するような違和感をドライバーに与えることはないが、ヘアピンでステアリングを切り込み、アクセルを開けていくとクルマの挙動が手に取るようにわかり、狙ったラインをたやすく乗せられるのはこのSSC6の恩恵だろう。タイトなコーナーでも実にコントローラブルだし、トラクションのかかり方も完璧だ。アマチュアのドライバーでも臆することはない。488ピスタの高性能は誰にでも開かれている。

 

フェラーリ 488ピスタの走行シーン

サーキットを離れマラネッロのストリートを走った永田編集長は「オーディオやエアコンなどはフル装備。買い物のアシにすることだって十分に可能だ」と高評価を与える。

 

「扱いやすく、高度な要求にも応える。まさに史上最高のV8フェラーリだ」

 

次はマラネッロ近郊のストリートへとノーズを向けた。モータースポーツ直系のロードカーとなると一般道では不快なこともあるのでは、と考えてしまうかもしれないが、ここでも488ピスタは素晴らしい柔軟性を見せた。乗り心地が驚くほど良いのである。イタリアの道は荒れた部分も多く、あちこちに速度を落とさせるためのカマボコ状の起伏があったりする。このような場所を通過するときでも、ガツン、というようなショックはほとんどない。フィオラーノでも乗り心地がいいな、と感じたがそれは路面がキレイなサーキットだからだろう、と思っていたのだ。しかもこの時ストリートで試乗した車両はアルミホイールを履いていた(フィオラーノ試乗車はカーボンホイールを装着)から、これがより軽量なカーボンホイールだったらさらに乗り心地は良くなるかもしれない。

 

ただ、タイヤが巻き上げる砂利などがインナーフェンダーを叩くノイズは488GTBよりも大きいようだ。これは軽量化とのトレードオフだろう。もうひとつ、街中を走って気づいたのは大型のリヤスポイラーによってルームミラーの視界が狭められていることだ。バックモニターも備わるし、実用上の問題はあまりないのかもしれないが、可変式スポイラーであれば良かったかも・・・そうすると重量が増えてしまうか。

 

しかし気になるのはその程度。アルカンターラとカーボン、レザーで仕上げられたインテリアは豪華だし、もちろんオーディオやエアコンなどはフル装備。買い物のアシにすることだって十分に可能だ。

 

フェラーリ 488ピスタのフロントスタイル

「少し右足に力を込めるだけで十分なトルクが生み出されるのは、間違いなくターボエンジンの恩恵だろう。それでいてレスポンスはNA並みなのだから、文句のつけようがない」と絶賛。永田編集長は史上最高のV8フェラーリと評した。

 

「488ピスタは非常に扱いやすく、その速さを誰でも享受できる」

 

60〜80km/hくらいで流れる郊外路、そしてワインディングでの488ピスタはまた格別だ。オートモードで普通に走っているとギヤはどんどんシフトアップされてすぐに7速に入ってしまうが、2000rpmくらいでもエンジンは意外にも扱いやすく、また少し右足に力を込めるだけで十分なトルクが生み出されるのは、間違いなくターボエンジンの恩恵だろう。それでいてレスポンスはNA並みなのだから、文句のつけようがない。

 

スペチアーレモデル、しかもピスタという名前からして、高度なスキルを持ったドライバーとサーキットに特化したモデルだろうと考えてしまうかもしれないが、488ピスタは非常に扱いやすく、その速さを誰でも享受することができる。そしてレーシングドライバーがサーキットを攻めれば、その高度な要求にも完璧に応えて、フィオラーノを488GTBより2秒も速いラップタイムで駆け抜ける。

 

これを史上最高のV8フェラーリと呼ばずして、何と呼ぼう。

 

 

REPORT/永田元輔(Gensuke NAGATA)
PHOTO/Ferrari S.p.A.

 

 

【SPECIFICATIONS】

フェラーリ 488ピスタ

ボディサイズ:全長4605 全幅1975 全高1206mm
ホイールベース:2650mm
車両重量:1385kg
エンジン:V型8気筒DOHCツインターボ
総排気量:3902cc
最高出力:530kW(720ps)/8000rpm
最大トルク:770Nm(78.5kgm)/3000rpm
トランスミッション:7速DCT
駆動方式:RWD
サスペンション形式:前ダブルウイッシュボーン 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク(カーボンコンポジット)
タイヤサイズ(リム幅):前245/35ZR20(9J) 後305/30ZR20(11J)
最高速度:340km/h
0-100km/h加速:2.85秒
0-200km/h加速:7.6秒
燃料消費率:11.5リッター/100km
CO2排出量:263g/km
車両本体価格:3940万円

 

 

※GENROQ 2018年 8月号の記事を再構成。記事内容及びデータはすべて発行当時のものです。

 

 

【関連リンク】

GENROQ  2018年 8月号 電子版

※雑誌版は販売終了