新型ランドローバー ディフェンダー vs ジープ ラングラー! 永遠のライバルの対局を渡辺慎太郎はどう見たか

公開日 : 2020/08/28 11:55 最終更新日 : 2020/08/28 11:55


ランドローバー ディフェンダーおよびジープ ラングラーの2台フロントイメージ

Land Rover Defender 110 / Jeep Wrangler Unlimited Rubicon

ランドローバー ディフェンダー 110/ジープ ラングラー アンリミテッド ルビコン

 

 

僕がジープを一番最初に買った理由

 

この話をするとたいていの人はキョトンとするから積極的に口には出さないのだけれど、社会人になって自分で稼いだお金で最初に買ったクルマはジープ ラングラーだった。“ラングラー”と呼ぶようになった四角いヘッドライトの初代モデル(YJ)で、ボディは2ドアのソフトトップ、パワートレインは4.2リッターの直列6気筒ガソリンエンジン+5速のマニュアルトランスミッションである。どちらかと言えばインドア系と思われていた自分のイメージと、アウトドア感満載のジープ ラングラーがどうにも結びつかないようで、当時はもちろんいまでも「なんでジープ??」とよく聞かれる。

 

自分は根っからクルマ好きだったわけではなく、クルマよりも雑誌の編集という仕事に興味があってこの世界に足を踏み入れた。だから当初はクルマのこともよく分からなかったので、クルマ選びに自動車雑誌の編集者らしいセンスやうんちくも持ち合わせていない。ラングラーを選んだ理由は明解で、その当時の輸入車の中で1番安いオープンカーだったからである。そもそも、ラングラーをSUVではなくオープンカーだと信じている時点で自動車雑誌編集者としてはアウトだと思うけれど、20代前半の能天気な小僧はとにかく“ガイシャ”の“オープンカー”に乗ってみたかったのだ。

 

ランドローバー ディフェンダーおよびジープ ラングラーの2台フロント正面イメージ

ランドローバー ディフェンダーとジープ ラングラー。オフローダーの象徴という重責を担ってきた両車は永遠のライバルともいえる存在。タフで無骨でヘビーデューティーなSUVの両雄は、2020年にどんな対局を見せるのか。

 

ジープとランドローバーという永遠のライバル

 

ソフトトップの脱着はえらく難儀で、何度もやってようやく慣れても外すのは10分、付けるのは15分(冬場はソフトトップが硬くなるので20分)かかり、毎回必ず指を怪我した。それでもドアの上半分まで外せる開放感は抜群に気持ちよかった。ある時、信号待ちをしていたら、前のクルマが間違えてギヤをリバースに入れてさがってきて追突されたことがあったけれど、彼の日産車(車名は忘れた)は後部がぐっしゃり潰れたのに、こっちはバンパーにちょっとだけ跡が残ったくらいだった。結局本格的なオフロード走行は一度もしなかったが、ラングラーの強靱ぶりは身を持って体験した。

 

いまではSUVの定義がなんとも曖昧だけれど、昔はSUVと言えばオフロード性能もきちんと備えた4輪駆動モデルを指していた。当時だと日本車ならランクルやサファリ、パジェロやビッグホーン、輸入車ならジープやランドローバー、あるいはメルセデスのゲレンデヴァーゲンあたりがそれに該当した。中でもジープとランドローバーは、歴史と伝統にも裏打ちされた老舗の4輪駆動専門メーカーとしての地位を確立していた。似たような生い立ちのメーカーなので、ジープとランドローバーは何かにつけて比較される機会が多い。

 

ランドローバー ディフェンダーおよびジープ ラングラーの2台フロントイメージ

新型ディフェンダーは従来のラダーフレームに決別して最新のモノコックボディを手に入れた。対するジープ ラングラーは様式美ともいえるレシピを忠実に継承している。

 

ディフェンダーはランドローバーの同義語

 

だから今回もランドローバーの最新モデルであるディフェンダーが日本上陸したので、ジープのディフェンダー的ポジションにいるラングラーを引っ張り出して比べてみようと考えるのは自然のことだ。でも実際に乗り比べたら、両車はあまりにも違いすぎて、もはやライバルとは言えない気さえしてきた。それもこれも、ディフェンダーの変貌ぶりが想像をはるかに上回るものだったからだ。

 

そもそもディフェンダーとはランドローバーそのものだった。“ディフェンダー”という車名は1990年に“ディスカバリー”が誕生した際に命名されたもので、それ以前は“ランドローバー シリーズ 1(1948年)”“ランドローバー シリーズ 2(1958年)”“ランドローバー シリーズ 3(1971年)”と呼ばれていた。要するに、いにしえのランドローバーと言えば自動的にディフェンダー(の前身)のことを指す同義語のような存在だったのである。

 

従来型のディフェンダーは庶民の足としてだけではなく、商用車としても広く愛されたモデルで、シングルキャブやダブルキャブのピックアップ、荷室に窓を設けないハードトップ(商用バン)など、多彩なボディバリエーションを有していた。シャシーはもちろんラダーフレームで、前後ともにリジッドアクスルを採用。快適性よりも機能性や耐久性に重きが置かれた設計となっていた。つまり日常的に使うにはいくつかの我慢を強いられるクルマではあったけれど、男子(の一部)というのは機能を追求した道具に惹かれる生き物でもあり、その無骨でタフな乗り味が長きにわたってディフェンダーの魅力にもなっていた。

 

ランドローバー ディフェンダーおよびジープ ラングラーの2台フロント走行イメージ

モノコックとなっても、ボディのねじり剛性は従来比の3倍にアップしているという新型ディフェンダー。モダンなSUVへと進化しても、その本質たる本格オフローダーとしてのドグマは固守している。

 

モノコック化でもねじり剛性は3倍にアップ

 

ディフェンダーを名乗るようになってから初めてのフルモデルチェンジは、まさに劇的な変貌である。名前以外はすべて生まれ変わったと言っても過言ではないだろう。その際たるものがアーキテクチャの刷新である。ついにラダーフレームに別れを告げて、“D7x”と呼ぶ現時点ではディフェンダー専用のモノコックボディを採用している。

 

ラダーフレームの有用性や耐久性に関しては、何よりもランドローバーがもっとも熟知しているはず。それを手放すのは大英断だったと想像できるが、「前よりもヤワになったな」と言われることだけは絶対に避けなければならないと考えたに違いない。そうならないよう、ランドローバーは社内の耐久試験基準をあえて強化し、試験回数も増やし、結果としてモノコックにしてラダーフレームの3倍のねじり剛性を達成したという。

 

ラダーフレームを捨てたのは、ラダーフレーム以上のアーキテクチャが開発できたからなのだろう。なお、モノコックボディに合わせてサスペンションもリジッドから独立懸架に変更され、フロントはダブルウィッシュボーン、リヤはマルチリンクに改められている。

 

ランドローバー ディフェンダーおよびジープ ラングラーの2台サイドイメージ

今回テストできたディフェンダーはロングホイールベース+5ドアの「110」。視界がよく見切りのよいボディのおかげで取り回し性は良いものの、都心で扱うには堂々たるボディサイズが気になることもあった。

 

終始気になった「恰幅」の良さ

 

スタイリングには従来型の面影があちらこちらにチラホラと見受けられる。ルーフサイドのウインドウや極端に短い前後のオーバーハング、丸形のヘッドライトなどがそれに該当するが、たまたま旧型と見比べる機会があったのであらためて眺めてみたらずいぶんと違って見えた。その理由のひとつは、おそらくボディの全幅:全高比だと考えている。旧型は道なき道でも進めるよう、全幅は可能な限り絞っていて、正面から見ると縦長に見えるが、新型は全幅が広く正面からみると横長に近い台形に見える。これが、両車の雰囲気を異なるものにしてるのではないかと思った。そして新型の全幅こそがこのクルマの留意点でもある。

 

日本仕様の全幅は1995mmとなっているが、実際にはもっと幅広く感じる。本国仕様だと全幅は2008mm、ミラー展開時は2105mmとなっていて、この数値のほうが感覚的には腑に落ちる。とにかく、外から見ている時も運転している時も、終始気になるのは全幅だった。もし購入を本気で考えているのであれば、車庫とクルマの数値だけで判断せず、できればちゃんと駐車できるかどうかを事前に確認しておいたほうがいいかもしれない。駐車はできてもドアが開かない可能性もある。

 

また、このクルマ(110)はホイールベースが3mを超えるし、全長も5mを超える。つまり相当大きなボディゆえ、自宅の駐車スペースのみならず、そこまでのアプローチや切り返しができるかどうかも考慮するべきだろう。

 

ランドローバー ディフェンダーのフロント走行イメージ

高速から低速走行まで、滑らかに駆け回るディフェンダーの足は圧巻。完成度の高い上質な走りは、アスファルトから荒れ地までほとんどほつれを見せることがない。

 

ひたすら快適なエアサスの乗り心地

 

なぜゆえにここまで生活感溢れる駐車場問題について言及したかといえば、サイズを除けば新型ディフェンダーの完成度は極めて高く、久しぶりに「もしコイツを買うとなると・・・」などという妄想が膨らんでしまったからだ。

 

外観に散りばめられた旧型のモチーフからこのクルマがディフェンダーであることは分かるけれど、乗るとまったくの別物である。その最たるものが快適性であり、それを司っているのがエアサスだ。ショートボディの「90」ではオプション、ロングボディの「110(ワンテン)」では標準装備となるエアサスペンションはもちろん車高調節機能を有しているが、乗り心地への貢献度が半端ない。

 

そもそも重量がそこそこあって(2280kg)ホイールベースも長いので、ある程度の乗り心地は自動的に担保されるものの、マイルドで優しい乗り心地にはちょっとびっくりする。速度や路面の依存度も低いので、どんな場面でもほぼ同じような乗り心地を提供する点も評価に値するだろう。

 

ランドローバー ディフェンダーおよびジープ ラングラーの2台リヤイメージ

両車のホームグラウンドともいえる未舗装路では、「これならどんな場所にもいけるかも」という頼もしさをいずれも覗かせた。まさしく老舗の本領発揮といえる。

 

オフロードもワインディングも達者

 

忘れてはいけないのが、このクルマが比類なきオフロード性能も備えているという事実である。乗用車ベースのなんちゃってSUVならオンロードでの快適性が高くても理解できるが、どちらかといえばヘビーデューティな部類に属する足まわりでこのオンロードでの乗り心地は見事だし、レンジローバーやディスカバリーでの経験と実績を持つランドローバーならではの味付けである。

 

加えてこのエアサスはハンドリングでも実にいい仕事をする。全高も重心も高いSUVは、どうしてもばね上が大きく動きがちで、これを抑えようとスタビライザーなんかを付けてしまうと今度はオフロードでのサスペンションの動きに制約が出てしまう。これを空気ばね+電子制御式ダンパーを巧みに制御することで両立させている。

 

コーナーの進入で制動をかけるとピッチング方向の動きが発生するが、リヤからフロントへの荷重移動はとてもスムーズで、ターンインでは前後のロール剛性のバランスがしっかりとチェックされていて、旋回中は安定的なコーナリングフォームを形成する。この時、4輪には適切なトラクションがかかっているので接地感もよく、コーナリングスピードは想像以上に速い。SUVによく見られる、ばね上とばね下が別々に動くようなことはまったくなく、呆気ないほどスラスラとコーナーをクリアしていく。ランドローバーのエアサス仕様はどれも似たような乗り味をしているが、なんとなくディフェンダーのそれはソリッドな後味があって好感が持てた。

 

ランドローバー ディフェンダーのフェイシアイメージ

内外装のデザインは、いかにもモダンになった新型ディフェンダー。しかし助手席前のダッシュボード部分には頑強なバルクヘッドがむき出しになっているなど、ヘビーデューティなムードが上手に演出されている。

 

ディフェンダーの挑戦的バーゲンプライス

 

パワートレインは現時点で2.0リッターの直列4気筒ターボ+8速ATのみ。約2.3トンのボディを300ps/400Nmでまかないきれるのかと思ったが、これが想像以上によく走るのである。おそらくギヤ比のセッティングとシフトプログラムが巧妙なため、エンジンのおいしいところを上手に使っているような印象を受けた。発進時のもたつきもなければ、高速道路での追い越し時のじれったさもほとんど感じられない。日常域では十分な動力性能だった。もしこれに今後ディーゼルが追加導入されたら、そちらのほうがより活発に動いてランニングコストもよくなり、このクルマの最強の組み合わせとなる可能性は否めない。

 

とにかく、新型ディフェンダーは(巨大なボディの取り回しを除けば)乗り心地/操縦性/動力性能に関してイヤなところがほとんどなかった。その上、このクルマにはあとふたつ、魅力的な商品力がある。新型ディフェンダーのカタログには、実に多彩なオプションやさまざまな仕様が紹介されていて、見ているだけでもワクワクしてくる。これがひとつ目。

 

もうひとつは価格である。ボディはショート(2ドア)とロング(4ドア)の2種類があって、それぞれ「90」と「110」と呼ばれるが、90の車両本体価格は499万円から、「110」は589万円からという、競合のドイツ車と比べるとバーゲンプライスのような挑戦的設定なのだ。ドイツ車が高すぎるとも言えるけれど、「頑張ればどうにかなるかも」という期待を抱かせてくれる身近な感じがフレンドリーで嬉しい。

 

ジープ ラングラーのフロントイメージ

ぐっと都会的に洗練された香りになったディフェンダーに対し、ラングラーは土の匂いを強烈に残したまま。オフロードではいまだ永遠のライバルだが、まとう空気感が違う。

 

変わらぬラングラーという様式美

 

すっかりモダンなクルマに生まれ変わってしまったディフェンダーと比べると、ジープ ラングラーはさすがにちょっと分が悪い。しかしラダーフレームにリジッドアクスルという伝統をいまでも愚直に踏襲しながらも、乗り心地はそれこそ自分が所有していたラングラーと比較したら雲泥の差くらいよくなっている。日常の足として使っても、大きな不満はないだろう。それでいて、昔ながらのタフで無骨な道具感はしっかりと残っている。

 

ランドローバー ディフェンダーおよびジープ ラングラーの2台リヤイメージ

先進の装備と洗練の走りを手に入れたディフェンダーと、古典的な道具感を着実に磨きあげてきたジープ。永遠の好敵手は、良い意味でまったく違う進化を見せつける。

 

正直に言えば、旧型のディフェンダーに惚れ込んだ人たちが新型を魅力的に感じるかどうかは甚だ疑問である。同じなのは名前とエクステリアの一部の雰囲気だけで、あとはまったく別のクルマになってしまったからだ。ひょっとするといまの彼らにとってはむしろラングラーのほうが親近感を持つかもしれない。

 

 

REPORT/渡辺慎太郎(Shintaro WATANABE)

PHOTO/森山良雄(Yoshio MORIYAMA)

 

 

【SPECIFICATIONS】

ディフェンダー 110 HSE

ボディサイズ:全長5018(スペアタイヤ含む) 全幅2008 全高1967mm

ホイールベース:3022mm

車両重量:2186kg(5シート)

エンジン:直列4気筒DOHCターボ

総排気量:1997cc

ボア×ストローク:83.0×92.2mm

最高出力:221kW(300ps)/5500rpm

最大トルク:400Nm/1500-4000rpm

トランスミッション:8速AT

サスペンション:前ダブルウィッシュボーン 後マルチリンク

駆動方式:AWD

車両価格:732万円(税込)

 

ジープ ラングラー アンリミテッド ルビコン

ボディサイズ:全長4870 全幅1895 全高1850mm

ホイールベース:3010mm

トレッド:前後1600mm

最低地上高:200mm

車両重量:2050kg

エンジン:V型6気筒DOHC

総排気量:3604cc

ボア×ストローク:96.0×83.0mm

最高出力:209kW(284ps)/6400rpm

最大トルク:347Nm/4100rpm

トランスミッション:8速AT

駆動方式:4WD(選択式)

ステアリング形式:電動油圧式パワーステアリング

サスペンション形式:前後コイルリジッド

ブレーキ:前ベンチレーテッドディスク 後ディスク

タイヤサイズ:前後LT255/75R17

車両本体価格:588万6000円(税込)

 

 

【問い合わせ】

ランドローバーコール

TEL 0120-18-5568

 

ジープ フリーコール

TEL 0120-712-812

 

 

【関連リンク】

・ランドローバー公式サイト

https://www.landrover.co.jp/

 

・ジープ公式サイト

https://www.jeep-japan.com/