狂気のコンセプトカー「セストエレメント」(2010)【ランボルギーニ ヒストリー】

公開日 : 2020/09/05 17:55 最終更新日 : 2020/09/05 17:55

AUTHOR :

ランボルギーニ セストエレメントの走行シーン

Lamborghini Sesto Elemento

ランボルギーニ セストエレメント

 

 

「第6元素」を車名に頂くスーパーライトウェイトモデル

 

2010年のパリ・サロンで、ランボルギーニは1台のコンセプトカーを発表した。V型10気筒エンジンをミッドに搭載することや、そのボディシルエットから、ベースが2003年に誕生し、ランボルギーニにとって史上最大のヒット作となったガヤルドであることは容易に想像できたところなのだが、実際にその詳細を知ると、それがガヤルドからの進化型などと評するのみでは物足りない、まさに狂気のコンセプトカーであることが徐々に明らかになっていった。「セストエレメント」、すなわち「第6元素」とネーミングされたこのモデルは、はたして何を追求し、そして何を成し得たコンセプトカーなのだろうか。

 

ランボルギーニ セストエレメントのフロントスタイル

2010年のパリ・サロンで発表されたランボルギーニのコンセプトカー「セストエレメント」。ガヤルドをベースに徹底した軽量化策を施し世界中のエンスージアストを驚かした。

 

先進のCFRPテクノロジーを惜しみなく投入

 

第6元素がC=炭素であることを知れば、その答えはおおむね明らかになる。セストエレメントは、ランボルギーニがスーパーカーの生産とともに、現在では世界のリーディング・カンパニーのひとつになった炭素繊維の製造技術を駆使して製作した、超軽量コンセプトカーだ。ランボルギーニとカーボン技術の関係は古く、カウンタック時代にはすでにその進化のためにカーボン素材の導入も検討されていたというから、それが現在におけるランボルギーニのコア技術のひとつとなったのも十分に理解できるところだ。

 

最近では日本の三菱レイヨンと炭素繊維の共同開発に基本合意したほか、アメリカのマサチューセッツ工科大学とは炭素繊維ボディをスーパーキャパシタとして使用することで、瞬時に大量のエネルギーを放出する技術を研究するなど、その方向性も年々多様化している。

 

ランボルギーニ セストエレメントのリヤスタイル

セストエレメントは後期型ガヤルドに採用されていた5.2リッターV型10気筒エンジンを搭載。1トンを切る車重999kgは、まさに小排気量ライトウェイトスポーツに伍する驚異的なものだった。

 

車重999kg、パワーウェイトレシオは1.75kg/psを達成

 

セストエレメントには、2010年の段階でランボルギーニが持っていた炭素繊維製造技術が惜しみなく導入されている。複雑なデザインを短時間で1ピース製造する鍛造加工技術、プリプレグ技術、そして炭素繊維の編み込み技術。それらの先進的な、そしてまた熟成の極まった技術を用いてセストエレメントは完成されていった。

 

結果的にセストエレメントが実現したウェイトは、後期型のガヤルドと同様に5204ccのV型10気筒自然吸気エンジンを570hpの最高出力で搭載し、またそのエンジンやサスペンションなどをマウントするリヤサブフレームをアルミニウム製とするなど、オールカーボンではなくとも999kgを達成。それから計算されるパワーウェイトレシオは1.75kg/psと驚異的な数字になる。

 

ランボルギーニ セストエレメントのシート

徹底した軽量化はインテリアにも及ぶ。ダッシュボードの省略、カーボンフレームのシートなど随所に施された策によって類を見ない大排気量ライトウェイトスポーツが誕生した。

 

随所にカーボン素材を施して得た驚異的な軽量性能

 

インテリアのフィニッシュも、セストエレメントのコンセプトに合わせて、ガヤルドから大胆にその姿を変化させている。ダッシュボードは廃止され、左右のシートもカーボンフレームを採用した独自のものに。アクセントカラーにオレンジに近いレッドを用いることで、マットなカーボン素材に包まれるコクピットに華やかさとともに独特な緊張感を演出している。

 

それはエンジンフード上のヘキサゴン型のダクトも、そしてまたブレーキキャリパーも同様だ。0-100km/h加速で2.5秒、最高速度では300km/h超(プレスリリースによる)を誇るセストエレメントは、デビュー時のインフォメーションではあくまでもコンセプトカーであると説明されたが、市場ではそのセールスを望む声が強かった。結局ランボルギーニはそれをサーキット走行専用車として20台限定で販売することを決断したのだった。

 

ランボルギーニ セストエレメントの走行シーン

セストエレメントの誕生後、ランボルギーニのプロダクトは積極的にカーボン素材を用いた軽量化を推進していく。新世代ランボルギーニの方向性を決定づけたモデルとして語り継ぐべき存在だ。

 

新世代ランボルギーニの指標を決定づけたマイルストーン

 

ランボルギーニが、このセストエレメント以降、ニューモデルの開発コンセプトを大きく変化させてきたことは、カスタマーには良く知られているところだ。軽量化技術はさらに積極的にプロダクションモデルに導入され、最高速はもちろん世界の第一線にある数字を可能としながら、同時にコーナリングや加速の楽しみをカスタマーに強く訴える。

 

軽さはそれを実現するために最も重要な性能なのだ。はたして現行モデルのウラカンでは、このセストエレメントのような、過激で狂気さえ感じるストイックなモデルは誕生するだろうか。もちろん世界中のファンは、それが現実になる日を待ち望んでいることは言うまでもない。

 

 

【SPECIFICATIONS】

ランボルギーニ セストエレメント

発表:2010年

エンジン:90度V型10気筒DOHC(4バルブ)

総排気量:5204cc

圧縮比:ー

最高出力:419kW(570hp)/8000rpm

最大トルク:540Nm/6500rpm

トランスミッション:6速セミAT Eギア

駆動方式:AWD

車両重量:999kg

0-100km/h加速:2.5秒

最高速度:300km/hオーバー

 

 

解説/山崎元裕(Motohiro YAMAZAKI)