EVタイプの新型SUV「ID.4」発表目前! EV世界の王者を狙うフォルクスワーゲンの戦略に小川フミオが迫る

公開日 : 2020/09/19 17:55 最終更新日 : 2020/09/19 17:55


フォルクスワーゲン ID.4のフロントイメージ

EVの世界を制するのは誰だ

 

フォルクスワーゲンAGは、まもなく発表する新型EV「ID.4」とともに電気自動車の戦略をオンラインで発表。これから、フォルクスワーゲン・ブランドを含めた同グループが、EVの世界で覇権を握っていく意気込みを示した。

 

「Media-Call」と題されたオンラインでのプレゼンテーション。ここでフォルクスワーゲンは、フォルクスワーゲン初のBEV(バッテリー駆動の電気自動車)となる「ID.4(アイディーフォー)」の一部を紹介し(詳細は近々の正式発表を待たなくてはならない)、電気自動車をめぐる世界戦略を語ったのだった。

 

VWのラルフ・ブランドシュテッターCEOイメージ

筆者がとくに注目したのが、ラルフ・ブランドシュテッターCEOによる「電気自動車とSUVはともにフォルクスワーゲンにとってもっとも重要」という発言。

 

SUVと電気自動車という二本柱

 

おもしろかったのは、「電気自動車とSUVはともにフォルクスワーゲンにとってもっとも重要」という、フォルクスワーゲンのCEOであるラルフ・ブランドシュテッター氏の発言だ。

 

「SUVの人気は衰えることを知りません。視界のよさ、安全性、そして快適性という特徴ゆえ、大きな市場である米国と中国で、乗用車でもっとも人気の高いセグメントになっています」

 

フォルクスワーゲンのEVイメージ

フォルクスワーゲンは環境問題の改善に対する答えのひとつとして、Eモビリティを強力に推進している。

 

フォルクスワーゲンがEモビリティに注力する理由

 

フォルクスワーゲンでは、いわゆる「パリ協定」」(2015年12月にフランスのパリで開催された第21回国連気候変動枠組条約締約国会議=COP21において採択された、2020年以降の温室効果ガス排出削減等のための国際的枠組み)を遵守したクルマづくりを意識しているという。

 

フォルクスワーゲンが、彼らの言葉でいう「Eモビリティ」に力を入れるのもそのため。同時に、欧州でクルマの販売をつつがなく続けるためには、欧州委員会の規制をクリアする必要がある。

 

フォルクスワーゲン・ツビカウ工場イメージ

ID.4を生産するフォルクスワーゲンのツビカウ工場。フォルクスワーゲンはドイツ、フランス、スイス、オーストリアの水力発電所から電力を購入し、生産工場のカーボンニュートラル化を進めている。

 

一気に厳しくなった排ガス規制

 

2020年9月17日、欧州委員会は新たに、排ガス中に含まれるCO2の量の引き下げを勧告した。欧州委員会のホームページによると、2050年までに、1990年のレベルから「少なくとも(欧州委員会)」55%に引き下げる必要がある。これまでは40%だったものが、いきなり厳しさを増したのだ。

 

こうした動き(規制がどんどん強まる)は、世界中の自動車メーカーが意識するところであった。いちはやく対応したのが、「2025年までにゼロエミッション(排ガス中に有害成分ゼロ)カンパニーになる(ブランドシュテッター氏)」と表明したフォルクスワーゲンである。

 

VWのEモビリティ担当役員のトマス・ウルブリヒイメージ

Eモビリティ担当役員のトマス・ウルブリヒは、100%内燃機関で走るクルマは2040年頃に終わるのではないか、と推測している。

 

100%内燃機関のクルマが消える日は

 

「2040年あたりが、100%内燃機関で走るクルマの終わりかもしれません」と、オンラインで登場した、Eモビリティ担当役員のトマス・ウルブリヒ氏は語っている。

 

「SUVのなかでもいま売れ線は比較的コンパクトなサイズのモデルです。そこで、BEVであり、かつ扱いやすいサイズのSUVであるID.4は、顧客が求めているものを備えている点において、必ず成功すると確信しています」(ウルブリヒ氏)

 

VW ID.4のコクピットイメージ

ID.4には3種類のバッテリー容量をラインナップする。航続距離は520kmという。

 

バッテリー容量は3タイプ用意

 

同社のBEV用のプラットフォーム(基本になるシャシー)である「MEB」を使用するID.4は、さきに登場してまもなく販売が開始される「ID.3」ともつながる、クリーンなサーフェスをもったボディスタイリングが特徴だ。

 

オンラインでの質疑応答のなかであきらかになったのは3種類のバッテリー容量が用意されることで、航続距離は520kmと語られた。もうひとつの特徴は、フォルクスワーゲンにとって、初の世界戦略BEVだということ。

 

VWのツビカウ工場イメージ

2019年11月よりID.3(写真)を生産しているツビカウ工場。

 

ID.4は独米中の3拠点で生産

 

太陽光発電を中心としたグリーンエネルギーで稼働するドイツ・ザクセン州のツビカウ工場をはじめ、アメリカ合衆国と中国にも生産拠点が置かれる。スケールメリットによるコストダウン、それによる低価格販売、というのがマーケティング面のメリットだろう。

 

もうひとつ、世界3拠点で生産する背景には、さきの米中貿易摩擦が継続あるいは熾烈化した際のリスクヘッジがある。このところ、各国の自動車メーカーは、車種によって生産拠点を分けてきた。たとえば大型SUVはアメリカあるいはメキシコの工場で作り、中国へと輸入する戦略をとっていた。逆もある。しかし貿易摩擦が起こればたちゆかなくなる。

 

VW ID.4のリヤビュー

ID.3やID.4のベースとなっているEV専用プラットフォーム「MEB」は、2025年までに75モデルへ展開していくという。

 

MEBはあと5年で75車種に展開

 

フォルクスワーゲンでは、2024年までに110億ユーロ(約1兆3660億円)という膨大な額を、Eモビリティのために投資するという。「2025年までに年150万台のBEVを販売する体制をとります。ID.4はその3分の1を受け持つ計画です」とブランドシュテッター氏。

 

このあと、「よりスポーティ」とブランドシュテッター氏が明かしてくれた「ID.5」が2021年に発表される予定だ。小型の「ID.2」の開発も進行中。さらにフォルクスワーゲン・グループとして、「シュコダ エンヤク」「アウディ Q4 e-tron」そして、セアトのサブブランドから出る「クプラ エルボルン」の名があげられた。

 

グループ全体としては、2025年までにMEBプラットフォームを使ったモデルの数が75にのぼるそうだ。しかもフォードがMEBを使い、6000台のBEVの生産する計画が発表されている。「(ほかのメーカーとの)コラボレーションもありえます」とブランドシュテッター氏が言ったように、フォルクスワーゲンはBEVの世界を大きく拡げようとしているのだ。そこに注目したい。

 

 

REPORT/小川フミオ(Fumio OGAWA)