アストンマーティン DBXを国内初試乗! 渡辺慎太郎が唸った「意外な乗り味」とは 【前編】
公開日 : 2020/09/24 17:55 最終更新日 : 2020/10/09 10:41
Aston Martin DBX
アストンマーティン DBX
最新ハイエンドSUV、DBXを国内初試乗
アストンマーティンが挑む初のSUV、DBX。その量産仕様がいよいよ日本へ上陸した。白紙の状態から作り上げた渾身の一作は、はたしてどのような走りを見せるのか。早速、自動車ジャーナリスト・渡辺慎太郎が国内公道へとDBXを連れ出した。(前編/後編)
感覚的にはずっと小さく、軽い
初見のクルマと対峙するときには、基本的にある程度の予習をしてから挑むのだけれど、たまに時間の都合で資料に目を通せなかったり、あえて予備知識を入れないまま試乗することもある。アストンマーティン DBXは事前に資料も頂戴していたし、それを読み込む時間もあったものの、なんとなく真っ新な状態で相対することにした。
予習をせずに試乗をする場合、運転しながらボディサイズや重量なんかを予想するようにしている。こんな仕事をやり始めて30年も経ってしまったので、それを大きく外すことはほとんどないのだけれど、DBXに関してはことごとく外してしまった。こちらの見立てでは、全幅は1950mm、全長は5m以下、ホイールベースは2800mm、車両重量は2トンちょうどくらい。
ところが資料によると全幅が1998mm、全長が5039mm、ホイールベースが3060mm、車両重量は2245kg(車検証では2310kg)、全高は1680mmだった。要するに、運転しながら伝わってきた感覚よりも、実車はずっと大きく重かったのである。ここまで大きく外したのは正直ちょっとショックであり、ついに自分も焼きが回ったかとうなだれたものの、ここまで見事に騙してくれたDBXの乗り味にますます興味津々となった。
まずはボディサイズありき
ボディサイズを他車と比べてみるとマセラティ レヴァンテがDBXにかなり近く、全長5000mm、全幅1985mm、全高1680mm、ホイールベース3005mmとなる。DBXに乗り込む前に、当然のことながら外観を眺めているわけで、その印象でもレヴァンテより小さかったし、たまたま拝借していたメルセデスのGクラスのほうが大きいと信じて疑わなかったが、実際には全高以外すべてDBXのほうが大きかった。
資料には「小さく見えるようにした」というような記述はいっさい見当たらず、むしろ居住性や乗降性やラゲッジルーム容量(632リットルはクラス最大)といったSUVとしての快適性や機能性を考慮したディメンションになっていることが強調されていた。
スポーツカーのような走りを目指すなら、ホイールベースは短くしたいしボディはできるだけコンパクトに収めたいし重量は1gでも軽くしたいだろう。しかしDBXの場合は、まずはボディサイズありきで、ここからいかにしてアストンマーティンらしい乗り味を構築していくか、という開発プロセスだったように想像する。
能力を最大限に引き出すための“体幹”
どちらかと言えば厳しい設計要件にもかかわらず、それでもここまでの完成度に到達できた理由のひとつは、まったく新しいプラットフォームの採用だろう。人間の身体でも、まずは体幹自体を鍛えないと、部分的に筋肉量を増やしてもあまり意味がないように、クルマの基本性能のボトムアップを図るには、クルマの体幹的役割を果たす理想的なプラットフォームが必要不可欠である。
DBXのボディの剛性感はかなり高く、それは例えば運転中に路面から大きな入力が入ったときなどに実感できる。オールアルミのモノコックボディがひとつの塊となって微動だにせず、そこに付けられた前後のサスペンションがしっかりと仕事をしている様が伝わってくる。SUVなのでオフロード走行も想定した強靱なボディ設計になっているのだろうけれど、それがオンロードではサスペンション能力を十二分に発揮できる土台となっている。
前後輪及び後輪左右のトルクを可変制御
アストンマーティンにとっては初となるSUVなので、プラットフォーム以外にも新しいアイテムがいくつも新開発/初導入されている。4輪駆動システムもそのひとつ。アクティブトランスファーケースと呼ばれるセンターデフは9速ATのギヤボックスの後ろに配置され、ここから前方と後方へプロペラシャフト(カーボン製)が伸びて前輪と後輪を駆動する。
電子制御油圧式でクラッチの圧着率により前後の駆動力配分を可変、通常は前後47:53とし、状況によってはリヤに最大100%の駆動力を配分してFRのようなトラクション性能が可能となる。リヤのディファレンシャルも電子制御式で、必要に応じて後輪左右へトルクを配分する。
48Vで稼働するアクティブスタビ
サスペンション形式はフロントがダブルウィッシュボーン、リヤがマルチリンクで、ここに電子制御式ダンパーとトリプルチャンバーを備えた空気ばねを組み合わせたエアサスペンションが装備された。これにより、車高は最大45mm上昇、最大50mm下降できるそうだ。
さらに“eARC(エレクトリック アンチ ロール コントロール)”と呼ばれる機構を備えているが、これはいわゆるアクティブスタビライザーで、アクチュエーターを使って左右のスタビライザーを捩ってロール量を最適化する。結果としてDB11と同等レベルの前後ロール剛性を確保したという。なおeARCは反応速度を上げるために、12Vを昇圧して48Vで作動するようになっている。

フード下にフロントミッドマウントするエンジンは、DB11やヴァンテージに搭載する、4.0リッターV型8気筒ツインターボユニット。最高出力が550ps/6500rpm、最大トルクは700Nm/2200〜5000rpm。
ヴァンテージやDB11と同じV8を搭載
エンジンは3982ccのV型8気筒ツインターボ。最高出力は550ps/6500rpmだが最大トルクは700Nmで、これを2200rpmから5000rpmというクラストップレベルの幅広い回転域で発生する。
このV8はヴァンテージやDB11と基本的に同じメルセデスAMG製のユニットではあるものの、ターボチャージャを改良したりシリンダーの点火順序と圧縮比を変更したりインタークーラーを刷新するなど、DBXというクルマのキャラクターに合わせた改変が施されている。
9速ATはメルセデスの9G-TRONICだが、もちろんシフトスケジュールはDBX用に書き換えられている。メーカー公表のパフォーマンスデータは0-100km/h加速が4.5秒、最高速度が291km/hである。
DBXに採用した多くの「新開発」と「初導入」は、果たして公道でどのような効果をもたらすのだろうか。
(後編に続く)
REPORT/渡辺慎太郎(Shintaro WATANABE)
【SPECIFICATIONS】
アストンマーティン DBX
ボディサイズ:全長5039 全幅1998 全高1680mm
ホイールベース:3060mm
車両重量:2245kg
地上高:190 – 235mm
エンジン:V型8気筒DOHCツインターボ
総排気量:3982cc
ボア×ストローク:83×92mm
圧縮比:8.6
最高出力:405kW(550ps)/6500rpm
最大トルク:700Nm/2200 – 5000rpm
トランスミッション:9速AT
駆動方式:AWD
サスペンション形式:前ダブルウィッシュボーン 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
ディスク径:前410 後390mm
タイヤサイズ:前 285/40YR22 後325/35YR22
最高速度:291km/h
0-100km/h加速:4.5秒
CO2排出量(NEDC):269g/km
燃料消費量(WLTP):14.32L/100km
車両本体価格:2299万5000円(税込)
【問い合わせ】
アストンマーティン ジャパン
TEL 03-5797-7281
【関連リンク】
・アストンマーティン 公式サイト
https://www.astonmartin.com/ja
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