ハイエンドSUVの勢力図を塗り替える完成度! 待望のアストンマーティン DBXを詳細レポート

公開日 : 2020/09/26 17:55 最終更新日 : 2020/09/29 15:30

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アストンマーティン DBXの走行シーン

Aston Martin DBX

アストンマーティン DBX

 

 

「SUVに仕立てられたスポーツカー」の実力とは!?

 

100年を超えるアストンマーティンの歴史の中でも、初めてのSUVとなるDBXが日本に上陸した。ダイナミックなデザインのボディと550psのV8エンジンが生み出すパフォーマンスはどんな感動を我々に与えてくれるのか。島下泰久が検証する。

 

アストンマーティン DBXのサイドビュー

ボディディメンションは、サイズは全長5039×全幅1998×全高1680mm、ホイールベース3060mm。車両重量2245kgと堂々たる体躯を誇る。

 

「アストンマーティンの本気とプライドを見せつける1台だ」

 

昨今のプレミアムカー市場の状況からしてみれば、アストンマーティンのSUV進出というニュースには、最初からまったく違和感を抱くことはなかった。しかしながら、彼らがこの新しいSUVのために新プラットフォームを開発し、しかもそれを生産するための工場まで建ててしまったことにはさすがに驚いた。内容にしても販売ボリュームにしても、アストンマーティンがどれだけ本気でSUVにコミットしようとしているのか、ここでハッキリ知らしめられたと言っていい。そんな注目作、アストンマーティン DBXの日本での試乗が、いよいよ実現した。

 

デザインは今年の東京オートサロンでも展示されていたので初見ではなかったが、外界で改めて眺めるその姿は、存在感抜群だ。サイズは全長5039mm×全幅1998mm×全高1680mmという堂々たるもの。大きなグリルを戴くギュッと絞り込まれたノーズセクション、ヴァンテージのイメージを踏襲するダックテール的に処理されたテールゲートとそこにビルトインされたテールランプといったディテールも特徴的だし、何と言ってもマッシヴな下半身に対してキャビンがギュッと絞り込まれたプロポーションが、得も言われぬ迫力を醸し出している。

 

まさに“スポーツカー的に仕立てられたSUV”ではなく“SUVに仕立てられたスポーツカー”。思わず浮かんだそんなフレーズだが、それは単なる言葉遊びではなく、DBXというクルマの全身を貫く要素だったと、実際に走らせてみても深く感じることになったのだった。

 

アストンマーティン DBXのインテリア

ダッシュボードとセンターコンソールを明確に分けたインパネデザイン。ブリッジスタイルのセンターコンソールは下部がトレーとなっている。

 

「伝統に固執するのではなく、新しい表現が常に志向されるインテリア」

 

サッシュレスとされたドアは、このブランドの伝統である斜め上方に開くスワンウイングタイプを踏襲している。リヤドアも同様で、わざわざダンパーを仕込んで整った角度での開閉を実現。前後とも開けるとラインがぴたりと揃い、何とも美しい。

 

インテリアの造形、そしてクオリティはいつものアストンマーティン。凝っているのに煩雑感にはならないバランスは相変わらず見事だ。複雑な曲面の部分にも、そしてピラーやルーフにもレザーが張り巡らされているが、何と試乗車の室内はインストゥルメントパネルやドアトリムの下半分などにフェルトがあしらわれていた。最初は面食らったが、この風合いは見るほどに悪くない。伝統に固執するのではなく、新しい表現が常に志向されているわけである。

 

ダッシュボード中央のスタートボタンを押してエンジンを始動する。メーターパネルはデジタル化されているが、左に速度計、右に反時計回りの回転計を置く“いつもの”レイアウトは踏襲されており、配色のトーンも含めて妙に派手にはされていないのが好ましい。

 

このメーターを含む電子装備系は、表示内容からしてメルセデスAMGからの供給だろう。DBXは全車速対応、ステアリングアシスト付きのACCなどブランド初の先進運転支援システム搭載だから、これらはセットに違いない。これも共通のワイパー/ライトのレバーともども、扱いやすさはピカイチ。しかしながら自宅ガレージにメルセデスAMGのモデルも並んでいるという人は、ちょっと味気なく思うかもしれない。

 

アストンマーティン DBXのフロントシート

サイズの大きなシートは疲労も最小限。リヤシートもさすがの広さだ。広大な面積の電動シェード付きパノラマガラスサンルーフを装備する。

 

「数メートル走っただけで確信したこれは正真正銘のアストンマーティンだ」

 

ドライビングポジションは適度な囲まれ感も嬉しい。DB11用がベースというシートは、もう少しクッション性があっても良さそうだ。リヤシートも広さは十分以上で、やや高めの着座位置、そして標準装備の大面積のガラスルーフのおかげで開放感は素晴らしい。荷室は通常時630リットルという大容量で、まさしくSUV的にアクティブに使う人からも、不満の声は出ないだろう。

 

ボタン式セレクターでDレンジを選んで、いよいよ発進する。それこそ数メートル走っただけで確信したのは、これは正真正銘のアストンマーティンだということだった。

 

惚れ惚れしたのは、滑らかで緻密なステアリングフィール。路面をそのまま手でなぞるような・・・という手触りをSUVで、そして4WDでしっかり実現している。レシオも適度にクイックで、軽やかな身のこなしに頬が緩む。

 

3チャンバー式エアスプリング、48V電装系による電子制御スタビライザーなどを備えたサスペンションにも唸らされた。絶対的なストローク量はさほど大きくはなさそうだが、その中で質高く動き、カドの取れたライドコンフォートを実現している。姿勢変化は最低限で、上屋が動きすぎるようなことはない。良い意味でSUVの匂いは薄く、もう少しダイレクトなスポーツカー的なタッチの乗り味と表現できそうだ。

 

アストンマーティン DBXのエンジン

メルセデスAMGのエンジニアリングによるV8ツインターボエンジンは550ps/700Nmを発揮。Vバンク内側にタービンを配置する。車重2245kgの巨躯を0-100km/h加速4.5秒で引っ張る。

 

「まさに上質なスポーツカーのタッチ、アストンマーティンのテイスト」

 

4.0リッターV型8気筒ツインターボユニットは最高出力550ps、最大トルク700Nmを発生する。低速域からあふれるほどにトルキー、そして弾けるようにレスポンスして、乾いたサウンドも相まって渋滞の中ですらも小気味良さを味わえる。

 

速度を上げても好印象は変わらない。乗り心地はフラットでクルージングは安楽。9速ATのおかげもあり100km/h巡航中のエンジン回転数は1500rpmを下回るほど低いが、それでもエンジンは心地よい唸りを常に耳に響かせていて、それがまた気分を昂ぶらせる。

 

デフォルトのGTモードからSPORT+に切り替えると、エグゾーストサウンドが猛獣が目が覚めたかのように野太く変わり、レスポンスもより鋭くなり、サスペンションもハードな設定に切り替わる。とは言え乗り心地は極端には悪化せず、カチッと引き締められるという感じ。まさに上質なスポーツカーのタッチ、アストンマーティンのテイストだ。

 

アストンマーティン DBXの走行シーン

筆者をして「DBXはブームに乗って造っただけのSUVなどではなく、アストンマーティンのプレミアムスポーツカーブランドとしての本気、プライドをこれでもかと見せつける1台に仕上がっていた」と述懐。ハイエンドSUVのベンチマークとの最高評価を与えた。

 

「このセグメントのベンチマークともなり得る存在だと断言できる」

 

それでいてコーナーに入れば、余計な姿勢変化を意識させることなく操舵に忠実にノーズが反応し、これぞニュートラルステアという姿勢で切れ味鋭く駆け抜けることができる。お世辞抜きにSUVであることも、5mを超える全長も忘れられるスポーツカーの走りには、誰もが驚愕し、破顔すること必至だ。そういえば、目線が高いなというぐらいで・・・。

 

パワートレインも素晴らしい。過給ユニットとは思わせないほどのリニアなレスポンスは踏み込むほどにますます冴え渡り、爽快な加速を楽しめる。“爽快な”と書いたのは、単に呆れるほど速いのではなく、回転の上昇に伴ってエンジンの音色が変化していき、パワーもじわり高まっていく、そういう味わいがあるから。正直、供給元のメルセデスAMGのどのモデルより、ドライバーズカーの心臓としての味わいは濃い。

 

それにしても衝撃的だった。DBXはブームに乗って造っただけのSUVなどではなく、アストンマーティンのプレミアムスポーツカーブランドとしての本気、プライドをこれでもかと見せつける1台に仕上がっていた。まさに“スポーツカー的に仕立てられたSUV”ではなく、“SUVのように仕立てられたスポーツカー”。このセグメントのベンチマークともなり得る存在だと断言できる。

 

もちろん、一番には新規ユーザーへのリーチ、市場の拡大こそが大いに期待されているクルマである。しかしながら、きっとこのブランドの生粋のファンだという人も、このDBXには文句なしの称賛を贈るに違いない。

 

 

REPORT/島下泰久(Yasuhisa SHIMASHITA)
PHOTO/篠原晃一(Koichi SHINOHARA)

 

 

【SPECIFICATIONS】

アストンマーティン DBX

ボディサイズ:全長5039 全幅1998 全高1680mm
ホイールベース:3060mm
車両重量:2245kg
エンジン:V型8気筒DOHCツインターボ
総排気量:3982cc
最高出力:405kW(550ps)/6500rpm
最大トルク:700Nm(71.4kgm)/2200-5000rpm
トランスミッション:9速AT
駆動方式:AWD
サスペンション形式:前ダブルウイッシュボーン 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ:前285/40YR22 後325/35YR22
0-100km/h加速:4.5秒
最高速度:291km/h
価格:2299万5000円

 

 

【問い合わせ】
アストンマーティン・ジャパン・リミテッド
TEL 03-5797-7281

 

 

【関連リンク】

・アストンマーティン 公式サイト
http://www.asutonmartin.com/ja

 

 

 

【掲載雑誌】

・GENROQ 2020年11月号