ニッポンの至宝。トヨタ センチュリーが徹底する「おもてなし」性能 【Playback GENROQ 2018】

公開日 : 2020/10/21 17:55 最終更新日 : 2020/10/21 17:55

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トヨタ センチュリーのリヤスタイル

TOYOTA CENTURY

トヨタ センチュリー

 

 

限られたオーナーのみに開かれた孤高の存在

 

1967年、豊田佐吉の生誕100周年を記念して生まれたトヨタ・センチュリー。以来、日本を代表するショーファーカーとして各界のVIPから愛されてきた。そのセンチュリーが、21年ぶりにフルモデルチェンジを果たした。ハイブリッド化され、快適性に磨きをかけた日本の至宝の実力を確かめる。

 

トヨタ センチュリーのフロントセクション

ボディディメンションは全長5335×全幅1930×全高1505mm、ホイールベース3090mmと、世界中のハイエンドサルーンに伍する体躯を誇るトヨタ センチュリー。21年振りのフルモデルチェンジではハイブリッドシステムを搭載した。

 

「圧倒的な静粛性と快適な乗り心地、進化したセンチュリーは日本の至宝だ」

 

先代50系のデビュー時から数えると、実に21年ぶりのフルモデルチェンジとなる60系新型センチュリー。普通のクルマであればこの間、4〜5回の完全刷新を受けていてもおかしくない。デザイントレンドの変化、そしてそれ以上に厄介な衝突安全にまつわる法規対応と、その原型を脅かす要素は幾らもあれど、まずはよく変わらずセンチュリーらしさが一目瞭然で伝わるデザインに仕上げてくれたものだと感心する。

 

厳密にいえばボディの厚みに対してリヤ側のノッチ長やオーバーハングがやや短く優美さを損なっているように感じなくもない。さらにいえばサイドやバンパーのスカート部も樹脂処理となるなど残念なところもある。が、そこは今日的なクルマの法的要件とそれにまつわる骨格構成を鑑みればやむを得ないところだ。

 

そのぶん・・・というわけでもないが、7層コートの間に3回の水研ぎを挟み、最後はバフ掛けで鏡面処理を加えるという塗装は唖然とするほどの輝きをみせている。それはもはや漆器に劣らぬレベルで、これに敵う自動車は他にないというのが正直な印象だ。開発担当者曰く、センチュリーのオーナーはクルマを降りた場でボディへの映り込みを見ながら軽く身だしなみを確認する人が多いそうで、クォーターピラーはことさら入念に磨き上げているという。

 

トヨタ センチュリーのリヤシート

前席の間には後席乗員のために11.6インチのリヤエンターテインメントシステムを搭載している。

 

「音振動要素にはハードもソフトも徹底的にチューニングが加えられている」

 

主賓の乗降時の所作に配慮して、前席と後席とでサイドシルの高さを違えているという独特のボディ構造や引き上げ型のドアインナーオープナー、Bピラーの内側に密かに配された靴べら入れなど、センチュリーらしいディテールは新型でも散見できる。その一方でウインドウスイッチはドアアームレスト側に置き換えられたり、後席可動部の操作系などは液晶パネルにひとまとめにされたりと、時代の変化に合わせて改めたディテールも多い。

 

座面クッションの中に5つのコイルを仕込み、最適な沈み込み量と姿勢、そして乗降しやすさの両立を図ったという新型センチュリーの後席の掛け心地は表面部の柔らかさで体を包み込むところなど、部分的にはファントムと似たところがある。表皮的にはウールファブリックよりも本革のほうがベンチレーター用にパンチングを施したぶん一段柔らかなタッチだ。新型LSのLアニリンに相当する革は自動車用としては異例に繊細ななめしが施されているが、ウールの肌触りこそがセンチュリーに相応しいという意向もよくわかる。その選択は悩ましいところだ。

 

新型センチュリーのアーキテクチャーは先代LS600hLのそれがベースとなっている。10年以上に渡る熟成と信頼から採用された側面も大きいが、一番に挙げられるのはセンチュリーに期待される静かさや滑らかさはV8でなければ叶えられないという物理的理由だ。そして音振動要素をシンプルに束ねるドライブトレインのFR化を筆頭に、ハードもソフトも徹底的にチューニングが加えられている。

 

トヨタ センチュリーの走行シーン

搭載する5.0リッターV型8気筒エンジンは最高出力381ps/最大トルク510Nmを発生。これに最高出力224ps/最大トルク300Nmの電気モーターを組み合わせる。車重は2.4トンに迫らんとする重量車だが、JC08モード燃費は13.6km/Lを計上する。

 

「ドライブフィールはトヨタのハイブリッドシステムの中でも群を抜いている」

 

果たしてどこまで化けたのか・・・といえば、まず低中速域での乗り心地はお見事の一言に尽きる。交差点付近にできる細かな凹凸の連続や劣化による舗装の荒れ、橋脚の目地段差など、ありとあらゆる外乱がタイヤとサスとでシュッと丸め取られ、後席には微かにトントンというサスの作動音が伝わるくらいなものだ。この速度域ではハイブリッドのEVモードが多用されるため、パワートレイン側はほぼ無音ということになるが、それにも負けぬメカ&ウインドウノイズのレベルの低さは特筆に値する。そこから高速域に至ると乗り心地的には大きなうねりやギャップなどで車体の上下動がやや大きくなり、わずかにお釣り的なバウンドを感じる時もある。が、これはクルマ好きであれば旧き良き時代のショーファードリブンの乗り味と重ねて納得することも十分できるものだ。

 

運転席に乗り換えてまず思ったのは、後席からは見えない位置のスイッチ類の煩雑さや、細かな仕上げの粗さだった。2つの仕立てを重ねて構成されるウッドパネルの美麗さに対して、ラップされたロワーダッシュボードのステッチ孔の無粋さなどは、そこがいくら運転手の仕事席とはいえ勿体なく思える。操作系の薄青な夜間照明色も過剰な映り込みを嫌ったのかもしれないが、やはり大衆的なイメージがつきまとう。

 

一方で、ドライブフィールは文句のつけようがない。常速域での加減速時、速度の調整や維持のしやすさはトヨタのハイブリッドシステムの中でも群を抜いている。ほぼ回生ブレーキが働くEVモードでも、制動時のブレーキタッチ、そして微妙な減速や停止寸前のGの抜きやすさなど、相当入念に調律を繰り返しただろうことが伝わってくる。

 

トヨタ センチュリーの走行シーン

本杢を使いながらも極めてシンプルにデザインされたコクピット。各スイッチ類は機能性を重視して整然と並んでいるのが印象的だ。新型センチュリーはもちろんADASも充実している。

 

「センチュリーのスタンスは日本のエスタブリッシュメントが大事にする価値観そのもの」

 

ハンドリングも先代とは次元が違う。乗員への配慮もあってかロールの抑制感はやや強いが、前後ピッチやグリップバランスも綺麗に整えられており、タイトな曲率の続く首都高のような場所でも取り回しに臆することはない。しかし車両の性格を鑑みれば、これはLSの性格を受け継いでの余技のようなものと捉えるべきだろう。あくまでセンチュリーの主賓は後席の主である。

 

決して悪目立ちせず、あくまで控えめに、でも確実にやんごとなきものであり続ける。

 

センチュリーのスタンスは、海外の同業他社からみれば理解し難いものかもしれない。でも半世紀以上に渡ってセンチュリーが追求し、代弁してきたものは、すなわち日本のエスタブリッシュメントが大事にする価値観そのものなのだと思う。

 

 

REPORT/渡辺敏史(Toshifumi WATANABE)
PHOTO/小林邦寿(Kunihisa KOBAYASHI)

 

 

【SPECIFICATIONS】

トヨタ・センチュリー

ボディサイズ:全長5335 全幅1930 全高1505mm
ホイールベース:3090mm
トレッド:前後1615mm
車両重量:2370kg
エンジン:V型8気筒DOHC
総排気量:4968cc
最高出力:280kW(381ps)/6200rpm
最大トルク:510Nm(52.0kgm)/4000rpm
モーター最高出力:165kW(224ps)
モーター最大トルク:300Nm(30.6kgm)
トランスミッション:電気式無段変速機
駆動方式:RWD
サスペンション形式:前後マルチルリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ(リム幅):前後225/55R18(7.5J)
燃料消費率(JC08モード):13.6km/L
車両本体価格:1960万円

 

 

※GENROQ 2018年 10月号の記事を再構成。記事内容及びデータはすべて発行当時のものです。

 

 

【関連リンク】

・GENROQ  2018年 10月号 電子版

※雑誌版は販売終了