フェラーリ×ランボルギーニ×ポルシェの多気筒NAエンジンを清水和夫が一気乗り! 【動画】

公開日 : 2020/10/27 17:55 最終更新日 : 2020/10/28 10:05

AUTHOR :

フェラーリ812スーパーファストの走行シーン

Ferrari 812 Superfast × Lamborghini Huracan EVO RWD Spyder × Porsche 718 Cayman GT4

フェラーリ 812スーパーファスト × ランボルギーニ ウラカン EVO RWD スパイダー × ポルシェ718ケイマンGT4

 

 

絶滅危惧種のNA多気筒・大排気量車を清水和夫が熱く語る

 

より速く、より力強く。スーパースポーツモデルの自然吸気(NA)エンジンの進化は、多気筒・大排気量化を施策としてきた。しかし時代の趨勢は、燃費性能と持続可能性に優れた過給機付きエンジンへとシフトしている。NAの多気筒・大排気量車は今や絶滅危惧種とも呼ばれ、世のエンスージアストはやきもきしていることだろう。

 

果たしてNA多気筒・大排気量車の行く末はどうなるのか? 『GENROQ』にて対談コラム「KAZ BAR」を連載する清水和夫と渡辺敏史の両モータージャーナリストが、フェラーリ、ランボルギーニ、ポルシェを代表するNA多気筒・大排気量車を箱根で試乗。野外出張版の「KAZ BAR」をGENROQ Webにて展開する。(清水和夫編/渡辺敏史編

 

フェラーリ812スーパーファストのエンジン

6.5リッターV型12気筒DOHC48バルブ、自然吸気エンジンをフロントベイに搭載するフェラーリ812スーパーファスト。精緻にして強力なパワーアウトプットを誇る名機だ。

 

「ピストンが多いほどエンジンは高性能だと思い知らされた」

 

むかし、ホンダのF1に乗ったことがあった。研究所が作ったプロトタイプだったが、エンジンはバリバリの自然吸気のV12。気持ちよく1万8000rpmまで回るエンジンに圧倒された。パワーだけではなく、その回転の滑らかさと吹き上がりのシャープさに感動したのだ。やはりピストンが多いほどエンジンは高性能だと思い知らされた。

 

最近のF1は、ル・マン24時間のレギュレーションと同様に電動化したエンジンが搭載されている。熱までエネルギーとして回収する入念な取り組みだ。速さと燃費の両面を追求する理想的なシステムだと、主宰者は考えている。だから、F1もル・マンの環境問題を考慮して取り組んでいる。

 

一方、私のレースキャリアではターボが多い。グループA時代のフォード シエラ コスワースは2.0リッターターボで550ps。大きなタービンで空気をたくさんシリンダーに注入するので、ターボが効くとドカンとパワーがでてくる。ターボが効かないと、タクシーより遅い。その扱いは難しかった。同じグループAでも、ニッサンR32GT-Rは2.6リッターの排気量があるので、ドッカンパワーではなかった。しかし、フロントヘビーな重量配分のためか、曲がりにくい操縦性に苦労した。

 

当時の燃費はだいたいリッター2km。条件が悪いと2kmを下回る。ちなみにホンダから聞いた話では、第二期黄金期のF1でホンダは1.5リッターターボをチョイスしたが、自然吸気の3.0リッターか1.5リッターのターボか検討し、結果的には自然吸気が総合的にターボに負けてしまったという。そのあたりから、速さと燃費を両立するにはターボが有利だと考えるようになってきた。

 

フェラーリ812スーパーファストのインテリア

絶対性能で比較すれば、NAはもはや効率や出力の面で過給機に敵わない。しかしスーパースポーツという特殊な世界では時に理屈より感性が優先される。何よりも「その気」にさせることが重要で、812スーパーファストの贅を尽くしたインテリアの設えもそのひとつだ。

 

「速さと燃費の両立では自然吸気は勝ち目がない」

 

しかし、その十数年後は全く異なるソリューションが誕生した。F1エンジンにモーターを組み合わせるハイブリットだ。モーターで運動エネルギーを電気で回収するので、燃費がよくなることはプリウスが証明している。さらに最近はエンジンが放つ熱を回収して電気で貯める仕組みも利用される。無駄なエネルギーを棄てないという考えだ。

 

今のF1と同じ速さのエンジンをモーターもターボもない自然吸気で得ることは不可能ではないが、燃費まで考慮すると、自然吸気エンジンでは限界があるだろう。つまり、速さと燃費の両立では自然吸気は勝ち目がない。それが自然吸気大排気量車が絶滅危惧種に指定された所以である。

 

その意味では今回のGENROQの企画はタイムリーだった。カリフォルニア州知事は「2035年以降はエンジン車は作ってはいけません」的な法案(まだ案ですよ)を打ち立てた。大統領選で民主党が勝ち、トランプ氏が負けると、この話しは真実味がでてくる。なにせ1970年初頭に世界中の自動車メーカーが「無理」というマスキー法を制定した州なので、半世紀すぎた2020年に、非エンジン車の話しがでてきても不思議ではない。

 

フェラーリ812スーパーファストの走行シーン

最高出力800ps/最大トルク718Nmを絞り出し、最高速度は340km/h、0-100km/h加速2.9秒を誇る812スーパーファスト。そしてV12らしい振動の無さ、甲高いエキゾーストノートに心惹かれる。

 

「このエンジンに跳ね馬のすべてが集約されていると言っても過言ではない」

 

絶滅危惧種の筆頭番付はフェラーリのV12だ。速さと燃費ではハイブリットやターボに敵わないことは周知の事実であるが、しかし気持ちよさでは誰にも負けない。このエンジンを抱いて一緒に布団に入りたいくらいだ。それではなにがV12を最高のエンジンにしているのだろう? それはV12が誇る振動ゼロに近い完全バランスの洗練さにある。

 

フェラーリのV12は、他のV12をガラクタにするほど(言い過ぎかも・・・)、洗練されている。フェラーリにとってそれは最大の価値であり、このエンジンに跳ね馬のすべてが集約されていると言っても過言ではない。

 

V12に関してはトヨタがセンチリーロイヤルで市販したことがあった。そのときのV12はまるでEVのように静かで振動がなかった。あまりにも音と振動がないので、かえってV12の楽しさが失われていた。エンジンには適度の音が必要なのだ。

 

ランボルギーニ ウラカン EVO RWD スパイダーの走行シーン

ランボルギーニ ウラカン EVO RWD スパイダーは5.2リッターV型10気筒、もちろんNAエンジンを搭載。フェラーリとは対照的にワイルドな乗り味を提供する。スパイダーボディだけにオープン時にはエンジンサウンドを直接堪能できる。

 

「洗練とは対照的に獰猛なランボルギーニのV10エンジン」

 

絶滅危惧種の筆頭番付の二番目は、ランボルギーニ ガヤルドのV10だろう。フェラーリのV12とは対照的で、洗練とは対照的に獰猛なエンジンだ。これはV10の振動特性をうまく活かした手法である。アウディ由来のV10もガヤルドに搭載されるとますます威勢がよい。

 

同じV10でも、ポルシェの場合はむしろ逆である。V10とは思えないほどの洗練された音振動特性を持っている。究極はフェラーリのV12だが、V10でもお料理次第なのだ。さらにV10といえば、レクサスのLFAが記憶に新しい。ニュル24時間レースにも参戦したことがあるので、レクサスのV10の完成度は非常に高かった。このエンジンはヤマハ製だった。

 

世には出なかったが、ホンダもV10のNSXを開発していた。LFAと同じくフロントにV10を搭載するが、GT-RのようなAWDのスーパーカーだった。トヨタもホンダも自然吸気のV10を開発していたのである。

 

ポルシェ718ケイマンGT4の走行シーン

ポルシェは伝統の水平対向エンジンにNAを残している。718ケイマンGT4は4.0リッターのボクサー6をミッドに搭載し、最高出力420hp/最大トルク420Nmを発生。

 

「ポルシェのフラット6は生きながらえるかもしれない」

 

絶滅危惧種の筆頭番付の三番目はポルシェのフラット6。もっとも、このエンジンは必ずしも絶滅危惧種とは断言し難くて、実用性もあるし燃費も悪くないから、しばらくは生きながらえるかもしれない。今回テストした718ケイマンGT4は911GT3のエンジンと同じボア&ストロークだが、許容回転数が異なるから中身は別物と考えるべき。718ケイマンはリヤがストラット式サスだから、GT3と同じエンジンを与えてもシャシーの限界がきてしまうから、出力とシャシーのバランスが大切だと考えているポルシェはあえてそうしたのだ。もっとも、GT3のエンジンはかなりのコスト高だから・・・とも想像できるが。

 

さて、フラット6は直列6気筒と同じく、二次振動がない高級なエンジンだ。ポルシェが使うとパワーが気になるものの、振動特性はすばらしい。メルセデスやBMWから見ると、喉から手が出るくらい欲しいエンジンなのだ。水平対向エンジンは4気筒でも、向き合うピストンが振動を打ち消しあうので振動では有利だ。現在、自動車用の水平対向エンジンを量産しているのは、ポルシェとSUBARUくらいなものだ。

 

エンジンはターボやモーターを使うと、まるで「バイ〇〇〇」を飲んだようにパワーアップ可能だが、自然吸気エンジンは自律的に空気を吸うのでエンジンの本質が問われる。技術的には基本中の基本と言えよう。

 

個人的にフェラーリのV12はいつか所有してみたいという思いが消えない。時折、中古車サイトを見てはため息をついている。

 

 

 

REPORT/清水和夫(Kazuo SHIMIZU)

PHOTO/篠原晃一(Koichi SINOHARA)

 

 

【SPECIFICATIONS】

フェラーリ812スーパーファスト

ボディサイズ:全長4657×全幅1971×全高1276mm

ホイールベース:2720mm

車両乾燥重量:1575㎏

エンジン:V型12気筒DOHC48バルブ

総排気量:6496cc

最高出力:588kW(800ps)/8500rpm

最大トルク:718Nm(73.2㎏m)/7000rpm

トランスミッション:7速DCT

駆動方式:RWD

サスペンション形式:前後ダブルウイッシュボーン

ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク

タイヤサイズ(リム幅):前275/35ZR20(10J) 後315/35ZR20(11.5J)

最高速度:340km/h

0-100km/h加速:2.9秒

車両本体価格(税込):4128万円

 

ランボルギーニ ウラカン EVO RWD スパイダー

ボディサイズ:全長4520 全幅1933 全高1180mm
ホイールベース:2620mm
車両乾燥重量:1509kg
エンジン:V型10気筒DOHC
総排気量:5204cc
最高出力:449kW(610ps)/8000rpm
最大トルク:560Nm(57.1kgm)/6500rpm
トランスミッション:7速DCT
駆動方式:RWD
サスペンション:前後ダブルウイッシュボーン
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤ&ホイール:前245/35ZR19 後305/35ZR19
最高速度:324km/h
0-100km/h加速:3.5秒

車両本体価格(税込):2919万3599円

 

【SPECIFICATIONS】

ポルシェ718ケイマンGT4

ボディサイズ:全長4456 全幅1801 全高1269mm

ホイールベース:2484mm

車両重量:1495kg

エンジン:水平対向6気筒DOHC

総排気量:3995cc

最高出力:309kW(420ps)/7600rpm

最大トルク:420Nm(42.8kgm)/5000-6800rpm

トランスミッション:6速MT

駆動方式:RWD

サスペンション形式:前後マクファーソンストラット

タイヤサイズ(リム径):前245/35ZR20(8.5J)後295/30ZR20(11J)

最高速度:304km/h

0-100km/h加速:4.4秒

車両本体価格(税込):1293万円

 

 

【関連リンク】

・フェラーリ・ジャパン 公式サイト

http://www.ferrari.com/ja_jp/

 

・ランボルギーニ 公式サイト

https://www.lamborghini.com/jp-en

 

・ポルシェ 公式サイト

http://www.porsche.com/japan/

 

 

【関連記事】

・渡辺敏史がジャッジ! フェラーリ × ランボルギーニ × ポルシェの多気筒NAエンジンの行方 【動画】