アストンマーティン ヴァンテージ ロードスター初試乗。ハードコアなブリティッシュ・ロックを轟かせる!

公開日 : 2020/11/24 17:55 最終更新日 : 2020/11/24 17:55

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アストンマーティン ヴァンテージ ロードスターの走行シーン

Aston Martin Vantage Roadster

アストンマーティン ヴァンテージ ロードスター

 

 

美しく、獰猛に進化した最新ロードスター

 

アストンマーティンの2シータースポーツ、ヴァンテージにオープンモデルが加わった。コンパクトなキャンバスルーフを持つその姿は、ややクラシックな雰囲気も漂う。
イギリスのプレミアムブランドが放つ、まさにロードスターの名がふさわしい1台だ。

 

アストンマーティン ヴァンテージ ロードスターのフロントスタイル

ヴァンテージ ロードスターは510ps/685Nmを発揮する4.0リッターV8ツインターボを搭載。車重はクーペの60kg増しに留まった。

 

「その中身は決して“ベイビー”などではない」

 

新しいヴァンテージのオープンモデルは伝統のヴォランテではなく、「ロードスター」と呼ばれる。兄貴分のDB11やDBSに比べるとまるでマツダ ロードスターのようにコンパクトに見えるが、実際には全長4.5m級で、1.9mを超える全幅を含めてずいぶんと異なるのだが、ギュッと凝縮した塊感が強い。

 

当初はベイビー・アストンとも称されたヴァンテージだが、その中身が決して“ベイビー”などではないことはご存知の通り。特に2世代目になってからは、フロントバルクヘッドにめり込むように、いわゆるフロントミッドシップされたエンジンは、7年ほど前から提携関係にあるメルセデスAMG由来の4.0リッターV8ツインターボであり、Vバンクの間に2基のターボを収めたコンパクトなユニットながら、いかにも頑丈そうなX字型のストラットバーぎりぎりにみっちり詰め込まれている。

 

フラッグシップのDBSスーパーレッジェーラに積まれたV12ツインターボ(725ps/900Nm)ほどではないものの、510ps/685Nmのスペックはただものではない。そもそも2000万円を軽く超える値段もエントリーグレードとしてはため息が出るものである。カーボン・プロペラシャフトとトランスアクスル式の8速ATを介して後輪を駆動するパワートレインの基本構造はもちろんクーペ同様である。

 

アストンマーティン ヴァンテージ ロードスターのソフトトップ

トップの開閉は電動式。後端は固定されているため、可動部は最小限で所要時間は7秒以下。Z型に折り畳まれるので内側が汚れることもない。

 

「いま最も剽悍にして獰猛なFRスポーツカーがヴァンテージだ」

 

マツダ ロードスターのようにZ字型に折りたたまれる電動ソフトトップの開閉はあっという間に終わる。50km/h以下なら走行中でも可能というソフトトップの開閉はどちらも7秒足らず、トノカバーを持たない簡潔な機構の賜物だろう。コクピットはかなりタイトで、身体の大きな欧米人にはちょっと窮屈ではないかと思うほど、シート背後にブリーフケースを置くのも難しいぐらいだ。

 

ウインドシールドもそれほど高くなく、あるいは私の座高が高いせいか、髪の毛は風になぶられる。もう少し低く座りたいところだが、タイトな室内ゆえにバックレストを寝かせるわけにもいかないのだ。左右シートの間のバルクヘッドにボックスは備わるが、それ以外に小物入れは少ない。独立したトランクルームはそこそこ実用的な大きさで、ゴルフバッグ1個は積めるという。

 

爬虫類かあるいは猛禽類を思わせる攻撃的な見た目通り、いま最も剽悍にして獰猛なFRスポーツカーがヴァンテージだ。ソフトトップを持つロードスターであってもそれは変わりない。エレガントで優雅この上ないDB11ヴォランテに比べるとヴァンテージ・ロードスターの全長は30cmほど短く、逞しく引き締まって戦闘的な雰囲気だ。オープン化によって増えたクーペとの重量差は60kgというが、少なくとも公道上ではそれによって失ったものは感じられない。

 

アストンマーティン ヴァンテージ ロードスターのインテリア

インパネのデザインはクーペと同様だ。フロントウインドウが低いため、解放感は高い。乗員の後方にはガラス製のディフレクターが備わる。

 

「剛性感溢れるボディは不整路でもミシリとも言わない」

 

もともとオープン化に有利なアルミスペースフレーム構造を持つヴァンテージ クーペのボディはきわめて強固で骨太な手応えに満ちていた。ロールケージなどを装着すればそのままレースに使えるとさえ感じるほどの逞しさだった。ロードスターはさすがにまったく同レベルというほどではないが、その辺のセダンとは比べものにならない、剛性感溢れるボディは不整路でもミシリとも言わない。

 

四角い異形ステアリングホイールの左右スポークに備わるスイッチで、ダンピングおよびスロットルやATのプログラムを切り替え可能なのは従来通り。そのモードもスポーツ(S)が標準設定で、スポーツプラス(S+)、トラック(T)と進むにつれてより攻撃的な設定となる(ちなみにDBSはGT、S、S+の三段階)。一般的なクルマではノーマルに当たるスポーツでもはっきりと締め上げられているが、それでいながら街中や高速道路での乗り心地も決して野蛮ではない。ラフなハーシュネスを感じさせず、しかも嬉しいことにこのような低く構えた高性能車にありがちな神経質さを見せない。路面の轍や傾斜などに敏感に反応しすぎることもなく、ピタリ安定して直進することが印象的だ。

 

アストンマーティン ヴァンテージ ロードスターの走行シーン

オープンモデルでありながらも最高速度は306km/h、0-100km/h加速は3.7秒を誇り、優雅なエクステリアの印象を覆すパフォーマンスを発揮する。

 

「新たなロードスターはクーペよりもほんの少しエレガンス寄り」

 

もちろんスポーツプラス、さらにトラックへとモードを変えれば、たとえオープンモデルであっても、野性味あふれる素顔を露にする。V8ツインターボはこんな場合でもドラマチックに上り詰めて回すほどに痛快、というタイプではなく、バリバリと排気音を撒き散らしながら強大なトルクで押し切る感じだが(何しろAMG出身)、その力強さはさすがである。右足の動きが後輪に伝わるレスポンスは素晴らしく、リヤタイヤがダイレクトに右足とつながっているように感じるほど微妙なコントロールを受け付けるし、電子制御リヤLSD(Eデフ)が絶妙に働いているおかげで、少なくともドライ路面では自信を持ってパワーを解き放てる。

 

トラックモードで路面が荒れた山道に挑むと、跳ねて接地性が失われることもあるが、それでも大きく姿勢を乱さず、大入力も平気な顔で受け止める。クーペと比較すると、わずかにセッティングが大人しくなっているようだが、グッと腰を沈めた体勢でアスファルト路面を削り取るようなきわめて強力なトラクションといい、自然で正確なステアリングレスポンスといい、相変わらず後輪駆動スポーツカーのお手本と言うべき身のこなしである。

 

アストンマーティンは野性味とエレガンスが共存している稀な例だが、新たなロードスターはクーペよりもほんの少しエレガンス寄りだろう。とはいえもちろん聞こえるのはハードコアな正統派ブリティッシュ・ロックである。

 

 

REPORT/高平高輝(Koki TAKAHIRA)
PHOTO/市 健治(Kenji ICHI)

 

 

【SPECIFICATIONS】

アストンマーティン ヴァンテージ ロードスター

ボディサイズ:全長4465×全幅1942×全高1273mm
ホイールベース:2704mm
車両重量:1628kg
エンジン:V型8気筒DOHCツインターボ
総排気量:3982cc
最高出力:375kW(510ps)/6000rpm
最大トルク:685Nm(69.8kgm)/2000-5000rpm
トランスミッション:8速AT
駆動方式:RWD
サスペンション形式:前ダブルウイッシュボーン 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ:前255/40R20 後295/35R20
0-100km/h加速:3.7秒
最高速度:306km/h
車両本体価格:2159万9000円

 

 

【公式サイト】
アストンマーティン・ジャパン・リミテッド
TEL 03-5797-7281

 

 

【関連リンク】

・アストンマーティン 公式サイト
http://www.astonmartin.com/ja

 

 

【掲載雑誌】

・GENROQ  2021年1月号