新型ゴーストに見るロールス・ロイスの底力。最新サルーンに渡辺慎太郎が国内試乗!

公開日 : 2020/12/03 17:55 最終更新日 : 2020/12/03 17:55


新型ロールス・ロイス ゴーストのフロント走行イメージ

Rolls-Royce Ghost

ロールス・ロイス ゴースト

 

 

正真正銘の独自プラットフォーム

 

ロールス・ロイスの本社はイギリス・グッドウッドにあって、併設された工場で“スピリット・オブ・エクスタシー”がフロントノーズ先端に鎮座する各モデルが生産されているから、ロールス・ロイスが“英国製”であることに間違いはない。しかしロールス・ロイスはBMWグループに属しており、実はエンジンとボディはドイツ国内の工場で生産されたのち、ドーバー海峡を渡ってグッドウッドにやってくる。エンジンはBMWの工場が担当するが、ボディはミュンヘン空港からクルマで約40分のディンゴルフィングにあるロールス・ロイスの専用工場で生産されている。

 

現行のファントムがデビューした直後に、このボディ工場へ赴いた。先代のファントムはプラットフォームの一部をBMW 7シリーズと共用していたが、現行モデルからは新設計・新開発されたロールス・ロイスのオリジナルのプラットフォームであり、ロールス・ロイス初となるSUVのカリナンも新型のゴーストもこのプラットフォームを使う。そんなロールス・ロイスの骨格が誕生する瞬間がどうしても見たくて取材を申し込んだところ、快諾を得たのである。ダメ元だと思っていたし、聞けば日本人は自分ひとりだけというから、喜びもひとしおだった。

 

新型ロールス・ロイス ゴーストのサイドビュー

初のフルモデルチェンジを受け、2代目へと進化したロールス・ロイス ゴースト。現行ファントムとカリナンに続き、オールアルミの最新スペースフレーム構造「アーキテクチャー・オブ・ラグジュアリー」を採用する。

 

工場の柱みたいなサイドシル

 

ロールス・ロイスのアーキテクチャーはオールアルミ製のスペースフレーム構造となっている。厳密にはそれが3分割されていて、エンジンとフロントアクスルを取り付けるフロント部、主にキャビンに充てられるフロアパン部、そしてリヤアクスルが締結されるリヤエンドという構成だ。このスペースフレームは設計段階でファントムとカリナンにも使うことが決まっていたそうで、ロングホイールベースセダンと全高の高いSUVという設計要件の厳しい2タイプに対応させなくてはならず、設計も生産もなかなか大変だったという。

 

熟練工によるファントムのCピラーのろう付けも目が釘付けになるほど素晴らしかったけれど、思わず息を呑んだのは工場の梁か柱のように大きく太くガッチリとしたサイドシルだった。「こんなもんがボディ下の左右に走っているのか」とちょっと空恐ろしくなった。案の定、ファントムは3mを優に越すホイールベースでありながら、異様なまでに剛性感の高いボディであった。

 

新型ロールス・ロイス ゴーストのフェイシア

新型ゴーストのコンセプトは「ポスト オピュレンス(脱贅沢)」。内外装ともに華美な装飾を廃し、ミニマリズムを徹底している。

 

現代ロールスがもつ最大の美点とは

 

ゴーストは、言ってみればファントムのショートホイールベース版のような存在である。カリナンを作るよりはずっと(実際そんなに簡単ではなかっただろうけれど)簡単だったはずだ。ファントムの魅力は桁外れの静粛性や乗り心地はもちろん、実は運転が楽しいところにあると自分は思っている。

 

「運転が退屈なクルマだと、ショーファーの集中力が途切れて運転が雑になりかねません。でも運転が楽しければ、ショーファーはいつまでもステアリングを握っていたいと思ってくれるでしょう」とロールス・ロイスのトルステン・ミュラー=エトヴェシュCEOが語っていて、ファントムは本当にその通りのクルマになっていた。だから、それよりもホイールベースが短く軽いゴーストがよくないはずがないと、試乗前から確信していたのである。そしてその確信は(たまに外れることもあるけれど)現実のものとなった。

 

新型ロールス・ロイス ゴーストのフロントマスク

新型ゴーストは多くの先進テクノロジーを盛り込んだ意欲作でもある。先代ゴーストから継承したのは「アンブレラと、ボンネットの上に鎮座するスピリット・オブ・エクスタシーのみ」とロールス・ロイスは主張する。

 

先代から継いだのは「マスコットと傘だけ」

 

ロールス・ロイスの新型ゴーストはプラットフォームが新設されたので完全なるブランニューモデルで、ロールス・ロイス曰く「先代から引き継いだのはスピリット・オブ・エクスタシーとアンブレラだけ」だそうである。そもそもいにしえの時代には、「運転席に乗るならベントレー、後席に乗るならロールス・ロイス」みたいな暗黙の了解があって、英国のコーチビルダーもベントレーのストレッチモデルは基本的に制作しなかったという(もちろん例外もあった)。

 

しきたりや慣習というのは時と共に移ろいゆくもので、最近ではファントムですらオーナードライバーの比率が年々上がっているそうだ。レイスが2ドアのオーナードライバーカーなら、ゴーストはその4ドア版というポジションであると言えるかもしれない。

 

新型ロールス・ロイス ゴーストのサイドビュー。ドア開

ロールス・ロイスでは「コンパクト」といえるかもしれないが、トヨタ センチュリーを優に上回るボディサイズをもつ新型ゴースト。ロングホイールベース仕様の“エクステンデッド”もラインナップする。

 

センチュリーよりも大きなボディ

 

そうはいっても全長5545mm、全幅2000m、全高1570mm、ホイールベース3295mmで(いずれの数値も日本仕様)、最近ことのほか注目を浴びたトヨタ センチュリー(全長5335mm、全幅1930mm、全高1505mm、ホイールベース3090mm)よりずっと大きいから、もちろんショーファードリブンカーとしても十分使えるサイズである。ちなみにゴーストにもロングホイールベースの“エクステンデッド”が用意されており、これだとホイールベースは3465mm、全長は5725mmとなる。

 

エンジンは6.75リッターのV型12気筒ツインターボで最高出力571ps/5000rpm、最大トルク850Nm/1600-4250rpmを発生する。このユニットはファントムと同じだが、ファントムの最大トルクは900Nm/1700-4000rpmなので、ゴーストのほうがやや抑えられている。これはおそらく、ゴーストの車両重量のほうがファントムより約150kg軽いことを考慮したのだろう。

 

新型ロールス・ロイス ゴーストのプラナーサスペンションシステム

新型ゴーストのプラナー・サスペンション・システム。エンジニアによると「基本的には電制ダンパーで取り切れない振動を吸収すると同時に、水平方向への伝達も抑えることでボディへ振動が伝わりにくくしています。また、路面からの大きな入力に対してはゴムのダンパー(イラストの黄色部分)も振動を吸収します」とのこと。開発には4年を有したそうだ。

 

4WD+後輪操舵+先進アクティブサス

 

トランスミッションは8速ATで駆動形式は4WD。いずれもBMWのユニットで、4WDはxDriveと思われるから、前後の駆動力配分は随時可変となる。これに後輪操舵も加わるので、4輪には常にトラクションがかかりつつ操舵も担うシステムである。

 

足まわりは前後とも空気ばねと電子制御式ダンパーを備えたエアサスペンションで、形式はフロントがダブルウィッシュボーン、リヤが5リンクとなる。このダブルウィッシュボーンにはちょっとした仕掛けがあって、“アッパー・ウィッシュボーン・ダンパー”がそれである。その名の通り、ダブルウィッシュボーンのアッパーアームの上部に沿うように装着されていて、特定の周波数共振により振動を軽減するダイナミックダンパー(あるいはマスダンパー)のような役割を果たし、電制ダンパーでは吸収しきれない入力をこれで機械的に抑えると同時に、水平方向への振動の伝達も軽減しているそうだ。

 

これに加えて、前方の路面変化をカメラでスキャンして事前に電制ダンパーと空気ばねを最適化したり、ナビゲーションの道路情報を活用するなど、統合協調制御を行う。これをロールス・ロイスでは「完全に平らで水平な幾何学的平面」を意味する「プラナー」にちなんで「プラナー・サスペンション・システム」と称している。

 

新型ロールス・ロイス ゴーストのリヤシート

ロールス・ロイス基準の「静けさ」を実現したキャビンには、先進の空気清浄機能も搭載。「マイクロ環境浄化システム(Micro Environment Purification System)」は、キャビンの粒子やバクテリアのほとんどを2分以内に除去する空気ろ過機能だ。

 

エアコンの音ひとつにも覗く執念

 

ファントムやカリナンのように、ドアを閉めた瞬間からロールス・ロイスの世界に引き込まれるのはゴーストでも同じである。それまで耳にしていた辺りの音のほとんどが消えてしまう状態は、まさに下界との“ロックダウン”と言える。走り出すと、静寂の中にかすかなV12エンジンの鼓動とロードノイズが入り込んでくるものの、すぐに気にならなくなるレベルである。

 

ファントムの時には160kg以上と言われていた遮音/吸音材を含む防音材は、ゴーストでも100kg以上が使われているそうだ。その効果もあるだろうけれど、例えばエアコンの送風音が看過できなかったので、ダクトの内部を研磨して軽減するなど、わずかな音でもひとつひとつ丁寧に対処していった結果だと思う。

 

新型ロールス・ロイス ゴーストのフロント走行イメージ

アクティブ4WDや後輪操舵などを協調制御し、“期待をはるかに超える操縦性”を実現した新型ゴースト。デバイスの介入にも不自然さは一切感じられない。

 

黒子として見事に働くデバイス類

 

乗り心地はひと言で「素晴らしい」、以上である。もうちょっと適切な表現はないものかと考えたけれど、素直に素晴らしいとしか言い様がない。ばね上の共振のふわふわ、パワートレイン由来とされるひょこひょこやゆさゆさ、ばね下共振のぶるぶるはほとんど感じられない。ごく稀に、路面からの単発入力があったがそれも「ゴツン」ではなく「コツン」程度であった。

 

静粛性の高さと優れた乗り心地はそれがロールス・ロイスを名乗る以上、誰もが期待する必須の性能でありゴーストでもそれにきちんと応えている。一方で、よく曲がる操縦性はおそらく期待をはるかに超えるのではないだろうか。

 

新型ロールス・ロイス ゴーストのリヤビュー

新型ゴーストの車両価格は標準仕様が3590万円ヵら、ロングホイールベース仕様の「ゴースト エクステンデッド」が4200万円から。国内市場へのデリバリーは2021年1月からスタートする。

 

3mを超えるホイールベースとは思えないほど回頭性がいいのは、サスペンションのセッティングはもちろん、後輪操舵や4WDといった電制デバイスの絶妙なサポートによるものだ。絶妙と書いたのは、タイミングなどが完璧なので電気的に曲がっているような不自然な感じがまったくないからである。動力性能は力強く、でもあくまでもジェントル。パワーデリバリーにしてもまったく申し分ない。

 

前述のようにファントムだって運転は楽しいのだけれど、ゴーストのうほうが胸を張ってドライバーズカーと呼べる。ただ、スピリット・オブ・エクスタシーの顔に泥を塗らないよう、お行儀のいい運転作法を身につけておく必要はあると思うけど。

 

 

REPORT/渡辺慎太郎(Shintaro WATANABE)

 

 

【SPECIFICATIONS】

ロールス・ロイス ゴースト

ボディサイズ:全長5545 全幅2000 全高1570mm

ホイールベース:3295mm

車両重量:2540kg

エンジン:V型12気筒DOHC48バルブツインターボ

総排気量:6748cc

最高出力:420kW(571ps)/5000rpm

最大トルク:850Nm/1600-4250rpm

トランスミッション:8速AT

駆動方式:AWD

サスペンション形式:前ダブルウィッシュボーン/エアスプリング 後5リンク/エアスプリング

車両本体価格(税込):3590万円

 

 

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