ポルシェ、合成燃料への取り組みを加速。伝統の水平対向エンジンを未来に繋げる「eフューエル」

公開日 : 2020/12/06 11:55 最終更新日 : 2020/12/06 11:55


次世代合成燃料「eフューエル」を導入するポルシェ

チリの豊かな自然が次世代燃料をつくる

 

ポルシェは総合テクノロジー企業のシーメンスと共同し、次世代燃料「eフューエル」の開発に乗り出した。チリに大々的なプラントを建設し、カーボンニュートラルを実現する合成代替燃料の生産を行っていく。チリのエネルギー製造企業「Andes Mining & Energy」やチリの国営石油会社「ENAP」、イタリアの大手電力会社「Enel」なども参画する大々的なプロジェクトとなる。

 

ポルシェとシーメンス、関連企業でスタートする次世代燃料のプロジェクト名は「Haru Oni」。風力発電に適したチリ南部マガジャネス州で、温室効果ガス排出量の実質ゼロを目指しながら、内燃機関に使用するための燃料を大々的に生産する。本プロジェクトの実行にあたり、ドイツの連邦経済エネルギー省から約800万ユーロ(約10億円)の助成金を獲得している。

 

チリに建設される「Haru Oni」プロジェクトのeフューエル製造設備

チリに建設される「Haru Oni」プロジェクトのeフューエル製造設備。まずは2022年初頭までに13万リットルを試験的に生産するという。

 

2026年には5億リットル超を生産

 

次世代合成燃料の「eフューエル」に用いるのはグリーン水素。水素エネルギー自体を生み出すのは、シーメンスの再生可能エネルギー製造会社「シーメンス・ガメサ」の風力タービンだ。風力で稼働する電解槽を使って水を酸素と水素に分離し、二酸化炭素と組み合わせることで合成メタノールを作り出す。それを、エクソンモービルが開発したMTG(Methanol-to-Gasoline)法を用いて合成燃料を作り出すというのが一連のプロセスだ。

 

まずは試験フェーズとして2022年初頭までに13万リットルを生産し、段階的にボリュームを拡大。2024年までに5500万リットル、2026年にはおよそ5億5000万リットルの生産量を確保する計画である。

 

サーキットから量産車まで

 

この「eフューエル」の第一使用者として真っ先に手を上げたのがポルシェだ。まずはポルシェエクスペリエンスセンターで催すモータースポーツイベントでの導入からスタート。追って量産モデルにも展開していく予定であるという。本プロジェクトの実施にあたり、ポルシェは初期費用として約2000万ユーロ(約25億円)を投じている。

 

シーメンスエナジーのクリスチャン・ブルッフは語る。

 

「再生可能エネルギーは、もはや使用する土地でのみ製造するものではありません。風や太陽といった自然のリソースを大々的に享受できる土地を活用するべきです。再生可能エネルギーを地域から地域へと輸送する新しいサプライチェーンが世界中に拡大しています。エネルギーの貯蔵や物流という面で、水素は今後重要な役割を果たすことになるでしょう」

 

次世代合成燃料「eフューエル」を導入するポルシェ

現行モデルからヒストリックカーまで、内燃機関を搭載した車両を長く大切に乗り続けるために、次世代合成燃料「eフューエル」の実用化が期待される。

 

エンスージアストへの福音となるか

 

ポルシェのオリバー・ブルーメCEOも次のように説明している。

 

「電動化モデルはポルシェの最優先事項であり、eフューエルはその一助となるはずです。脱炭素化に向かうロードマップに加わる、新たな要素といえるでしょう。eフューエルは、内燃機関エンジンやプラグインハイブリッドに使用可能で、さらに既存の給油設備ネットワークも活用できるという運用上のアドバンテージがあります」

 

石油を基盤としてきた膨大なインフラを100%作り替えるには長い時間がかかるだろう。さらに、将来的にすべての自動車がEV化したとしても、飛行機や船舶、重量貨物車両の一部などは燃料油に頼らざるを得ないと言われている。そういう意味で、代替エネルギーである合成燃料の活用は脱炭素社会に向けた現実的な一歩として欠かすことのできない一本の柱といえるだろう。そしてなにより、eフューエルはクルマ愛好家にとっての福音になるかもしれない。化学的構造や基本特性がガソリンと変わらない合成燃料は、古きよき時代のヴィンテージカーにも使えるのだから。