メルセデスAMG E53 S vs BMW 540i Mスポーツ、プレミアムサルーンが直6を採用する理由とは? 【Playback GENROQ 2018】

公開日 : 2020/12/20 17:55 最終更新日 : 2020/12/20 17:55

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メルセデスAMG E53 S 4マティック+とBMW 540i xDrive Mスポーツの走行シーン

Mercedes-AMG E53 S 4MATIC+ × BMW 540i xDrive M Sport

メルセデスAMG E53 S 4マティック+ × BMW 540i xDrive Mスポーツ

 

 

直6サルーン新時代を築く2モデルを比較試乗

 

今、ドイツ勢のプレミアムブランドに直列6気筒が復活してきている。メルセデスはEクラスとCLSに新開発M256型3.0リッター直6ターボを搭載してきた。比べるは頑なに直6ターボをラインナップし続けるBMW5シリーズ。なぜ、彼らは直列6気筒にこだわり続けるのだろうか? メルセデスAMG E53 SとBMW 540i Mスポーツを試乗に連れ出し、プレミアムサルーンが直6を採用する理由を探ってみた。

 

メルセデスAMG E53 S 4マティック+とBMW 540i xDrive Mスポーツの走行シーン

メルセデスAMG E53 S 4マティック+には、メルセデスとしては約20年ぶりとなる直6エンジンを搭載。直6を復活させたメルセデスの意図を探った。

 

「新型M256型直6ターボは全部載せの最新パワートレインである」

 

増殖著しいメルセデスAMGの新シリーズは、V6の「43」とV8の「63」の間の「53」として登場した。最大の特徴は、久しぶりに復活した直列6気筒エンジンを搭載していること。しかもこの新型M256型直6ターボは、48V電源で駆動されるISG(インテグレーテッド・スターター・ジェネレーター)を備えたいわばマイルドハイブリッドユニットで(メルセデスは単にISG付きと称しているが)、その上電動スーパーチャージャーによって、ターボチャージャーが苦手な低回転域を補うという、いわば全部載せの最新パワートレインである。

 

M256型と称する新型直6ターボは、メルセデスにとってほぼ20年ぶりの直6エンジン、振り返ればW124型Eクラス等に積まれていたM104型直6以来のストレートシックスである。なぜ今になって直6が復活したかについては様々な理由があるが、何よりも効率の追求が挙げられる。

 

メルセデスAMG E53 S 4マティック+のエンジン

新開発3.0リッター直6ターボの「M256」エンジン。大型のターボを組み合わせることで最高出力435ps、最大トルク520Nmを発生する。

 

「メルセデスの決意が形になったエンジン」

 

V6ならば各バンク毎に必要なターボや触媒などが直6では少なくて済むというメリットもあるし、ガソリン4気筒(M264)だけでなく、新世代のディーゼル(OM654&OM656)とも構造を共有するモジュラーユニットという利点もあるうえに、この6気筒は今後さらに厳しくなるエミッション規制に対応するためにも必要な新型である。

 

EUでは2021年にはCO2の平均排出量が95g/kmに引き下げられ、未達成の場合は超えた分に応じてペナルティを支払わなければならない。PHVやEVはもちろんだが、現実に販売台数の多いモデルの排出量を改善すべく、できることはすべて実行しなければとても届く数値ではない。電動化されたM256型直6ターボは、メルセデスの決意が形になったものなのである。

 

メルセデスAMG E53 S 4マティック+のインテリア

最新AMGモデルに採用される「AMGパフォーマンスステアリングホイール」を装備。ステアリングから手を離さずに車両の設定を行えるタッチコントロールボタンを備える。

 

「ターボが苦手とする低回転域は電動スーパーチャージャーが担当」

 

エンジンとトランスミッションの連結部には48V電源で駆動されるISGを内蔵しているのが特徴で、これによって減速エネルギーを回収するほか、発進時などでアシストする。またウォーターポンプ、エアコンコンプレッサーなども48Vによる電動式で、必要な場合だけ効率的に作動するアダプティプ型だ。ターボが苦手とする低回転域は電動スーパーチャージャーが担当、さらに発進加速時などはモーターも加わり、排気圧が上がってからの過給はターボが担うという贅沢エンジンだ。

 

S450より大型のターボチャージャーを採用したというAMG53シリーズ用は435ps/520Nmとエンジン単体でも大幅にパワーアップしている。大径ターボを使うとターボラグが気になるところだが、それを補うのが電動スーパーチャージャーと16‌kWと250Nmを生み出すモーターである。53シリーズは「AMGスピードシフトTCT」なるトランスミッションが積まれている。こちらは9Gトロニックをベースに、より素早いシフトを可能にしたという専用品らしいが、TCT(トルク・クラッチ・トランスミッションの略)と言いながらクラッチはなくトルクコンバーター式である。

 

メルセデスAMG E53 S 4マティック+のフロントシート

シートは上質なナッパレザーを採用。サイドサポートが張り出してスポーツドライブにも備えている。0-100km/h加速4.5秒のパフォーマンスもスポーツカー並みのスペックだ。

 

「回転フィーリングは6気筒らしく滑らかだが、音はやんちゃな武闘派」

 

もっとも、穏やかに加速する際などは、カツンカツンとまるでツインクラッチ式のようなダイレクトなショックを伝えてくる。S450の直6は徹頭徹尾滑らかスムーズに回り、シフトも洗練されていかにも6気筒の美点を強調したパワートレインだが、E53用はAMGだからなのか、もっと精悍なキャラクターを打ち出しているのが特徴だ。回転フィーリングは6気筒らしく滑らかだが、音はやんちゃな武闘派という、ちょっと不思議なユニットである。

 

もちろん、演出だけでなく大パワーと駆動力可変式の4マティック+を活かした発進加速は実際にも素晴らしく、0-100km/hは4.5秒という。ちなみにライバルとして引っ張り出したBMW 540i xドライブ(以下540i)は4.8秒。ご存知かと思うが念のために付け加えると、4秒台は立派な高性能スポーツカーの数字で、4秒を切ればもうスーパースポーツの世界だ。

 

BMW 540i xDrive Mスポーツのエンジン

Mを除く現行5シリーズの頂点に君臨する540i Mスポーツ。搭載されるエンジンは環境性能と高出力(340ps/450Nm)を両立させた3.0リッター直6ツインパワーターボエンジンを搭載。

 

「E53と比べるとなおさら洗練度が際立つ540iの直6」

 

BMWも近頃はダウンサイジングユニットが主力になっているような雰囲気があるが、やはり看板は守り通してきた直6である。540iのエンジンは、BMWの最新の看板機種たるB58B30A型直6ターボ。1.5リッター3気筒から2.0リッター4気筒、そしてこの6気筒までボア・ストロークをはじめ多くの共通構造を持つモジュラーユニットである。

 

直噴バルブトロニック、ダブルVANOS、さらにはシリンダー壁のツインワイヤー・アークスプレー・コーティングなど最新メニューを盛り込み、340ps/450Nmを生み出す6気筒ターボで、変速機はよりスポーティな設定の8速ATである。低速での微妙なコントロール性と滑らかさ、全開時のシャープでパワフルな吹け上がりを併せ持ち、どんな場面でも痛痒を感じない見事なエンジンであり、E53と比べるとなおさら洗練度が際立っていた。

 

メルセデスAMG E53 S 4マティック+とBMW 540i xDrive Mスポーツのスタイリング

足まわりを硬く設定したE53は、締まっているが適度なストロークをもつ540iとは好対照。ハンドリングも「ピーキーすぎると思うほどシャープに向きを変えるE53に対して540iはリニアなターンインが大人の落ち着きを感じさせた」と筆者は印象を語る。

 

「やや演出過剰気味のAMG E53、洗練度極まる大人の味わいの540i」

 

というのも、長く走っていると段々疲れる攻撃的なサウンドもさることながら、E53のほうはたとえコンフォートモードでも時にびっくりするようなガツンという突き上げを感じるほど足まわりが硬く、締め上げられてはいるもののストローク感がある540iとはまったく性格が異なっていた。

 

ハンドリングも同様、ピーキーすぎると思うほどシャープに向きを変えるE53に対して540iはリニアなターンインが大人の落ち着きを感じさせた。M256型直6は今後さらなる展開が期待されるが、今のところクルマ全体としてはE53はやや演出過剰気味、洗練度ではBMWが明らかに上回っている。

 

 

REPORT/高平高輝(Koki TAKAHIRA)
PHOTO/田村 弥(Wataru TAMURA)

 

 

【SPECIFICATIONS】

メルセデスAMG E53 S 4マティック+

ボディサイズ:全長4950 全幅1850 全高1450mm
ホイールベース:2940mm
車両重量:1980kg
エンジン:直列6気筒DOHCターボ+ISG+電動スーパーチャージャー
総排気量:2996cc
最高出力:320kW(435ps)/6100rpm
最大トルク:520Nm(53.0kgm)/1800-5800rpm
トランスミッション:9速AT
駆動方式:AWD
サスペンション:前4リンク 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤ&ホイール:前245/35R20 後275/30R20
燃料消費率(JC08モード):10.0km/L
車両本体価格:1202万円

 

BMW 540i xDrive Mスポーツ

ボディサイズ:全長4945 全幅1870 全高1480mm
ホイールベース:2975mm
車両重量:1810kg
エンジン:直列6気筒DOHCターボ
総排気量:2997cc
最高出力:250kW(340ps)/5500rpm
最大トルク:450Nm(45.9kgm)/1380-5200rpm
トランスミッション:8速AT
駆動方式:AWD
サスペンション:前ダブルウイッシュボーン 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤ&ホイール:前245/40R19 後275/35R19
燃料消費率(JC08モード):12.5km/L
車両本体価格:1075万円

 

 

※GENROQ 2018年 12月号の記事を再構成。記事内容及びデータはすべて発行当時のものです。

 

 

【関連リンク】

・GENROQ  2018年 12月号 電子版

※雑誌版は販売終了