メルセデスAMG C 63 S クーペ最強説浮上!? 911カレラ4Sに対抗するパフォーマンスの源を探る 【Playback GENROQ 2017】

公開日 : 2021/01/08 17:55 最終更新日 : 2021/01/08 17:55

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メルセデスAMG C 63 S クーペとポルシェ911カレラ4Sの走行シーン

Mercedes-AMG C63 S Coupe × Porsche 911 Carrera 4S

メルセデスAMG C 63 S クーペ × ポルシェ911カレラ4S

 

 

意外なる相対性を雨のワインディングで体感

 

これまで存在感の薄かったCクラスクーペが俄然輝いて見える。言うまでもなくC 63 Sクーペの登場は、AMG GTだけがスポーツモデルにあらず、そんな反撃の狼煙をあげさせるのに充分なインパクトと説得力がある。ベンチマークたるポルシェ911との比較試乗の結果やいかに──。

 

メルセデスAMG C 63 S クーペとポルシェ911カレラ4Sの走行シーン

メルセデスAMGのC 63シリーズはコンパクトなセダンボディにV8エンジンを詰め込みスーパースポーツに伍するパフォーマンスを堅持してきた。新たに登場したC 63 S クーペは、これまでのC 63シリーズとは異なる仕上げがなされたと筆者は語り、スーパースポーツのベンチマークと言われるポルシェ911と比較試乗を行って実情を確認した。

 

「C 63シリーズのイメージである男性的な直線番長感がかなり薄らいだ」

 

メルセデスAMG C 63とポルシェ911カレラ。いずれ劣らぬドイツの定番モデルではあるが、各々の性格は周知の事実であり、立ち位置も違い過ぎるのであまり比較の対象になることはない。真っ向勝負となれば911カレラの相手はC 63を飛び越した境地に棲むAMG GTの方が相応しいようにも思える。だが今回の主目的は、2016年の夏に我が国でもデリバリーが開始されたメルセデスAMG C 63 Sクーペのポテンシャルをチェックすること。つまり911カレラ4Sにはドイツ的スポーツツアラーの元祖として、スパーリングパートナーを務めてもらうことになる。

 

メルセデスAMGのC 63シリーズは21世紀を代表するコンパクト・マッスルであり、暴力的な直線加速にプライドのすべてを懸けているイメージが強かった。現行モデルでもCクラスにV8を叩き込むという初代500Eが先鞭をつけたモンスター造りの方程式は踏襲されているが、クーペボディの仕上げ方にはちょっとした変化が見られる。

 

Cクラスのクーペといえば、CLKの時代から一貫して4ドアセダンのオマケのようなシルエットで済まされてきた経緯がある。だが現行のクーペは、リヤエンドの流麗な絞り込みに特徴があり、C 63シリーズのイメージである男性的な直線番長感がかなり薄らぎ、知的な女性の匂いすら漂わせている。もちろんAMGモデルなので、マッシヴなタイヤを覆うフェンダーはフロントで60mm、リヤで35mmほど拡幅されており、その結果としてボディの側面にノーマルのCクーペとは別物の抑揚が生まれ、差別化に成功している。

 

メルセデスAMG C 63 S クーペのインテリア

ステアリングギヤ比は14.1で、同じAMGでもC 43よりクイックなレシオとなっている。センターコンソールのAMGダイナミックセレクトスイッチでレースモードが選択できるのもC63 Sならでは。

 

「C 63 Sのインテリアはリアルスポーツカーと呼ぶに相応しい風格を漂わせる」

 

AMG GTに次ぐAMGのスポーツクーペを標榜するに相応しいスタイリングを得たことで、C63 Sクーペは911カレラ4の真横に置いてみてもまったく遜色がない。むしろ見慣れた911カレラのボディよりも、最新のグラマラスなメルセデスの方が俄然人目を惹くのである。

 

見た目で僅かにリードを奪ったとなれば、気になるのはC 63 Sクーペの走りである。イメージ的には男性的、直線番長から脱却しているだけに、これで走りのベクトルが同じであれば正直なところガッカリだし、もし全方位的に運動性能が高まっているとすれば911カレラや直接的なライバルたるBMWのM4あたりとも言い訳なしで勝負できる。

 

C 63 Sクーペのコクピットの基本形状はもちろん素のCクラス・クーペのそれを踏襲しているが、立体的に作り込まれたダッシュパネルと、なだらかな勾配で室内を分断しているセンターコンソールによってリアルスポーツカーと呼ぶに相応しい風格を漂わせている。

 

メルセデスAMG C 63 S クーペのエンジン

第3世代となる直噴ターボエンジン。ダウンサイジングした4.0リッターV8から700Nmもの大トルクを発生させる。Vバンク内側にターボチャージャーを配置するホットインサイドVレイアウトをとる。エンジンマウントに磁性体を封入した液体マウントを採用し、快適性とスポーツ性能を両立させた。

 

「右足に自制心を効かせながら走る限り、素のCクラスのように従順」

 

さっそくAMG謹製のM177ユニットに火を入れて、ワインディングへと走り出してみる。AMG GTとともにデビューした4.0リッターV8ツインターボエンジンだが、スペックは車種ごとに異なっている。C 63 S用ではAMG GT Sと同じ510psを発揮するが、車重の差を考えた上でトルクは50‌Nm増強され700Nmに達している。

 

濡れたワインディングで堪能するメルセデスAMG C 63 Sクーペは音の演出こそ行き届いているが、右足に自制心を効かせながら走る限り、素のCクラスのように従順で、しかしスピード域だけが格段に速い。ハナ先の重さもほとんど感じさせないし、尻軽な感じもしない。

 

かつてのC 63シリーズを支配していたマッスルカー的なイメージの根源は、V8エンジン搭載によるハナ先の重さと、ハイパワーに対してトラクションが不足することによる尻軽感にあった。そのためコーナーではアンダーステア一辺倒になり、アンダーを打破するために右足に力を込めると“手軽なドリフトマシン”へと変化してしまう。「マッスルカー」というのは、ドイツ車に対する誉め言葉ではないのだ。

 

メルセデスAMG C 63 S クーペの走行シーン

「ワインディングで実感したC 63 SクーペはFRレイアウトであることが信じられないほど徹底してトラクションを重視している」と筆者は語り、仮想ライバルに911を挙げることに不満はないと断言する。

 

「ドライ路面であれば状況はC 63 Sクーペ有利に傾くだろう」

 

ところがワインディングで実感したC 63 SクーペはFRレイアウトであることが信じられないほど徹底してトラクションを重視している。これだけトラクション確保に注力していれば、仮想ライバルとして911カレラの名を挙げる資格はある。

 

C 63 Sクーペをドライブした後のカレラ4Sは、良くも悪くもストレスフリーな乗り物だった。リヤエンジンだから、もちろんトラクションはC 63 Sクーペ以上にある。その特性をいたずらにひけらかさないように、4駆システムが巧妙に立ち回ってスピードメイクに励む。だからカレラ4Sが搭載する3.0リッター水平対向6気筒ターボが発生する420psは、C 63 Sクーペの510psに少しも劣らないのである。

 

今回のようなウエット路面ではカレラ4Sの方が早めにスロットルを開けることができ、積極的なコーナー脱出を試みることができる。このためトータルのスピードでもポルシェの勝ちかと思いきや、MTのカレラ4Sに対しC 63 Sクーペは賢いAMGスピードシフトDCTがスピードのロスを見事に補ってくれる。ドライ路面であれば、さらに状況はC 63 Sクーペ有利に傾くだろう。

 

メルセデスAMG C 63 S クーペとポルシェ911カレラ4Sのリヤスタイル

C 63シリーズが大きく重いV8エンジンをフロントベイに搭載することによるネガを克服した理由として「その勘所はV8エンジンの揺れを抑える磁性体が封入されたアクティブなエンジンマウントであり、C 63 Sクーペに標準装備されたインテリジェントな電子制御LSDにある」と結論付けた。

 

「C 63 Sクーペは直線番長改めエクスキューズなしのスポーツモデルだ」

 

史上初めてポルシェ911に対抗できるCクラスAMGとなったC 63 Sクーペ。V8エンジンをダウンサイジングし、リヤサスの設計を見直すなどして自らの弱点を克服したわけだが、その勘所はV8エンジンの揺れを抑える磁性体が封入されたアクティブなエンジンマウントであり、C 63 Sクーペに標準装備されたインテリジェントな電子制御LSDにあると感じた。

 

V8エンジンの揺れは、限界域で乗り手に恐怖感を与えるし、闇雲にロック率を高めた機械式のLSDもドリフトを演出するだけの結論に陥りがちだった。だが車体の状態に合わせて電気的にクラッチの締結を操る電制LSDは、昨今流行りのブレーキをつまむだけの簡易・仮想的なLSDとは違い、車体を前に押し出すことに長け、ドライバーのお尻にトラクションという名の大きな安心感を絶えず与え続けてくれる。

 

ワインディングにおけるスピードは互角。だが試乗後に輝いて見えたのは90psのビハインドに屈しなかったカレラ4Sではなく、むしろ340kgもの車重差がありながら、スーパースポーツに通じるドライビングの刺激を発揮したC 63 Sクーペの方だった。直線番長改めエクスキューズなしのスポーツモデル、C 63 Sクーペは新境地に踏み込んでいる。

 

 

REPORT/吉田拓生(Takuo YOSHIDA)
PHOTO/篠原晃一(Koichi SHINOHARA)

 

 

【SPECIFICATIONS】

メルセデスAMG C 63 S クーペ

ボディサイズ:全長4750 全幅1875 全高1400mm
ホイールベース:2840mm
車両重量:1850kg
エンジンタイプ:V型8気筒DOHCツインターボ
総排気量:3982cc
圧縮比:10.5
最高出力:375kW(510ps)/5500-6250rpm
最大トルク:700Nm(71.4kgm)/1750-4500rpm
トランスミッション:7速AT
駆動方式:RWD
ステアリング形式:パワーアシスト付きラック&ピニオン
サスペンション:前4リンク 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤ&ホイール:前255/35R19 後285/30R19
最高速度:250km/h(リミッター介入)
0-100km/h加速:3.9秒
燃料消費率:8.6L/100km(EU複合)
CO2排出量:200g/km(EU複合)
車両本体価格:1348万円

 

ポルシェ911カレラ4S

ボディサイズ:全長4505 全幅1880 全高1295mm
ホイールベース:2450mm
車両重量:1490kg
エンジンタイプ:水平対向6気筒DOHCツインターボ
総排気量:2981cc
圧縮比:10.0
最高出力:309kW(420ps)/6500rpm
最大トルク:500Nm(51.0kgm)/1700-5000rpm
トランスミッション:7速MT
駆動方式:AWD
ステアリング形式:パワーアシスト付きラック&ピニオン
サスペンション:前マクファーソンストラット 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤ&ホイール:前245/35ZR20 後305/30ZR20
最高速度:305km/h
0-100km/h加速:4.2秒
燃料消費率:8.9L/100km(EU複合)
CO2排出量:204g/km(EU複合)
車両本体価格:1647万円

 

 

※GENROQ 2017年 1月号の記事を再構成。記事内容及びデータはすべて発行当時のものです。

 

 

【関連リンク】

・GENROQ  2017年 1月号 電子版

※雑誌版は販売終了