スーパースポーツバトル勃発! ウラカン vs 720S vs 911GT3をシーン別にレポート:ストリート編 【Playback GENROQ 2018】

公開日 : 2021/01/10 17:55 最終更新日 : 2021/01/10 19:04

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ランボルギーニ ウラカン ペルフォルマンテとマクラーレン 720Sとポルシェ911GT3のフロントスタイル

LAMBORGHINI HURACAN PERFORMANTE × McLAREN 720S × PORSCHE 911GT3

ランボルギーニ ウラカン ペルフォルマンテ × マクラーレン 720S × ポルシェ911GT3

 

 

最新マシンの実力を試す

 

ランボルギーニ、マクラーレン、ポルシェの最新スーパースポーツが相次いで日本上陸を果たした。驚くほどの速さと扱いやすさを高次元で満たすその秘密はどこにあるのか。約800kmを共に過ごした3人のジャーナリストがステージ別に解説する。(ストリート編/ワインディング編メカニズム編

 

500psオーバーのスーパースポーツカーでも、ほとんどのステージはストリートだ。その高性能ゆえの興奮と危うさを持つマシンたちは、ストリートでどのような振る舞いを見せるのか。吉田拓生が味わう。

 

吉田拓生「現代のスーパースポーツに『ストリートの躾』は欠かせない」

 

持てる性能をフルに発揮させたければ、ストップウォッチ持参でサーキットに行くしか手段はない。だが今回のスーパースポーツ3台の評価はピークパフォーマンスのみならず、クルマとしての広範囲な性能面でも下されるべきだろう。

 

最も「控えめ」なポルシェ911GT3でも自然吸気で500ps、マクラーレン720Sに至ってはその名の通り720psにも達する。レーシングトラックで発揮されるべき圧倒的な最高出力にも大いに敬意は払うが、エンジニアの腕が発揮されるのはむしろ凶暴なまでのパワーをいなすシャシーの造り込みだろう。

 

また現代はスーパースポーツだからと言って斜め後方の死角が大きかったりチンスポイラーを擦りやすかったりといったネガが許されない時代になっている。ニュルブルクリンクのタイムで口さがないマニアたちを黙らせるのは当然として、日常の使い勝手も無視することはできない。現代のスーパースポーツに「ストリートの躾」は欠かせないのである。

 

ランボルギーニ ウラカン ペルフォルマンテの走行シーン

自然吸気の5.2リッターV10を搭載するランボルギーニ ウラカン ペルフォルマンテ。最高出力640ps/最大トルク600Nmのハイパワーをストリートで御す。

 

「ウラカン ペルフォルマンテの後方視界はすこぶる良好で高速時もストレスフリー」

 

今回の3台で最も意外だったのは、ポルシェ911GT3の後方視界だった。真一文字のリヤウイングによって空と陸が分断され、ボクの視線からだと最も気になる地平線のあたりが見えなかった。それが嫌ならウイングレスのGT3ツーリングパッケージを所望すべきということか。

 

意外ついでに記しておくと、見るからに平べったい2台、マクラーレン720Sとランボルギーニ ウラカン ペルフォルマンテの後方視界はすこぶる良好で、高速走行におけるストレスが少なかった。特に720Sはリヤクォーターの窓が有効で、車線変更も難なくこなせる。後方のみならずマクラーレンは前方視界もいい。というか良過ぎる。外から想像するよりもコクピットから見渡した視界は広くボンネットも低く、フロントスポイラーの先50cmくらいの路面が丸見えなくらい。低速ではステアリングも若干軽めなので、鼻先の質量のなさが却って心許なく感じられる。

 

ともにミッドシップレイアウトを採用するマクラーレンとランボルギーニだが、コクピットからの眺めは大きく違う。ウラカンのドライビングポジションはシートバックが起き上がって極めて常識的だが、薄くて広いダッシュパネルやなだらかに傾斜しながら個性的なスイッチを提示するセンターコンソールによって濃厚なランボ色を醸し出す。見た目はアトラクティブで、操作系は実用本位。現代ランボのクルマ造りのスタンスが、タイトなコクピットに見事に表現されているのである。

 

ズラリと並んだトグルスイッチや航空機のようなスターターボタンなど、3台の中でも最もハードな印象を受けるコクピット。センターコンソールには液晶モニターを置かず、すべてメーター内に表示させるのもランボルギーニのこだわりだ。

 

「ウラカン・ペルフォルマンテが最もスロットルを踏み込みやすい、全開率の高い1台」

 

実用本位のウラカン ペルフォルマンテだが、その「ペルフォルマンテ」な部分は、先進のエアロダイナミクスに結実している。ロードカーのエアロは150km/hを超えないと効かないなどと言われるが、ペルフォルマンテのそれは60km/h程度で走らせていても看破できる、気がする。そのあたりの速度域から一気に高まる5.2リッター自然吸気V10の雄叫びと反比例するようにアシの突き上げや振動が急激に消え、車体にある種の静寂が宿るからである。

 

冷静に640psという最高出力を考えると眩暈がしそうになるが、ウラカン ペルフォルマンテのダウンフォースは車体を常時とても強く抑えつけ、前輪への駆動力分配も積極的なのでドライバーに無用な緊張を強いない。600ps以上を誇るスーパースポーツの中では、ウラカン ペルフォルマンテが最もスロットルを踏み込みやすい、全開率の高い1台として完成しているのである。

 

緊張という意味では、エアロや4駆がつじつまを合わせてくれるウラカンより、当然のように2駆で攻め入るGT3や720Sのほうがハイプレッシャーな乗り物に違いない。

 

ポルシェ911GT3の走行シーン

スーパースポーツのベンチマークともいえるポルシェ911からはGT3をピックアップ。「今回の公道ロングドライブで最も感心させられたのは、アシの味付けだった」と筆者は語り、「PASM(可変ダンパー)を最適にして走った場合、タウンペースでギリギリ我慢できる硬さ」と評価する。

 

「これ以上何も足し引きできない絶妙なセッティングが2017年型の911GT3にはある」

 

それでも911GT3は、上位にRSが控えていることもありストリート寄りのマシンになっている。ドライ路面のスタビリティも恐ろしく高いので、十分なマージンをもって走らせれば911特有のリヤエンジンの呪縛に縛られることもない。

 

今回のミッドシップ2台になくてGT3にあるのはドライバーの背後に広がるスペースだ。ラゲッジスペースがフロントボンネット内にしかないランボとマクラーレンは目一杯頑張っても2泊3日の旅しか許容しないが、GT3なら倍はいけそうだ。

 

これまではサーキットでドライブする機会が多かった911GT3だが、今回の公道ロングドライブで最も感心させられたのは、アシの味付けだった。PASM(可変ダンパー)を最適にして走った場合、タウンペースでギリギリ我慢できる硬さでありながら、ワインディングでもギリギリのしなやかさに落ち着いている。これ以上何も足し引きできない絶妙なセッティングが2017年型の911GT3にはあるのだ。

 

マクラーレン 720Sの走行シーン

「4.0リッターまでスープアップされ無過給領域のトルクが増えたおかげで低速走行も柔軟にこなすことができる」とする一方、「だがこれらの日常性能も、720psをフル開放した時の爆発力の前では影が薄い」と、マクラーレン 720Sのスポーツ性能はストリートに収まらないと評価。

 

「ブランドの個性と現代的な躾。その折り合いはきちんとついている」

 

GT3やペルフォルマンテによるロングドライブは神経も使うが思いのほか楽しめることも理解できた。だがマクラーレンはどうだろう? 全方位的に視界が良いことは認めるが、それだってコーナーの縁石を視認したり、追い越しを仕掛けてくるライバルをチェックするための配慮ではあるまいか? 軽く40年以上の歴史を持つ911とミッドシップ・ランボに比べるとはるかに後発、しかも上位モデルの720Sは全身でスピードメイクに徹している。

 

プロアクティブ・シャシー・コントロールⅡのアシ捌きはハイドロ・シトロエンのように見事で、4.0リッターまでスープアップされ無過給領域のトルクが増えたおかげで低速走行も柔軟にこなすことができる。だがこれらの日常性能も、720psをフル開放した時の爆発力の前では影が薄い。

 

一瞬のターボラグを伴って炸裂する大パワーはカーボン車体の質量をほとんど感じさせないまま、脱兎のごとくワープする。シャシーにはまだ余力があるが、コチラは最初の一撃で白旗を掲げるしかないだろう。720Sのフルパワーは、もはや公道を超越したレベルにあるのだと実感させられた。

 

V8ターボの排気音はこれまでと同様にまったく愛想がないし、新たな意匠も好き嫌いが分かれる。性能的にもサーキット寄りなのだが、それも含めて一本筋の通ったマクラーレンのスタンスなのである。

 

今回の3台は、ブランドの個性と現代的なストリートの躾にきちんと折り合いをつけた、いずれ劣らぬスーパースポーツと言っていい。

 

マクラーレン 720Sの走行シーン

3台をストリートで走らせた筆者は「スーパースポーツは一期一会の生モノ。何を言いたいのかと言えば『買えるカネがあったら今すぐ買ったほうがいい』」と語る。

 

「買えるのなら今すぐ買ったほうがいい」

 

還暦を迎えた先達が「オレはあと何年クルマを愉しめるだろうか?」と呟く。若くして当てたIT長者だって、未来永劫にガソリンを燃やせないのだと再認識すべきである。ドイツのセダンを買うのであればあと3年待って新型が出てから乗り換えるなんていうやり方もアリだが、スーパースポーツは一期一会の生モノ。何を言いたいのかと言えば「買えるカネがあったら今すぐ買ったほうがいい」ということである。

 

今回の3台を取っかえひっかえし、800kmほど旅をしてわかったのは「案外辛い局面がない」ということである。オートマ免許で乗れる現代のスーパースポーツは、都内の渋滞もなんなくやり過ごせるし、ワインディングで十二分にマージンを持って走らせても究極のカタルシスを得ることができる。だからお年を召したヒトでも楽しめるのだけれど、モトを取るくらい愉しむにはやっぱり相当な体力を要する。「いつか!」と考えているマジメなそこのあなた、今買いましょう。

 

 

REPORT/吉田拓生(Takuo YOSHIDA)

PHOTO/小林邦寿(Kunihisa KOBAYASHI)

 

 

【SPECIFICATIONS】

ランボルギーニ ウラカン ペルフォルマンテ

ボディサイズ:全長4506 全幅1924 全高1165mm
ホイールベース:2620mm
トレッド:前1668 後1620mm
車両重量(dry):1382kg
エンジンタイプ:V型10気筒DOHC
総排気量:5204cc
最高出力:470kW(640ps)/6000rpm
最大トルク:600Nm(61.2kgm)/6500rpm
トランスミッション:7速DCT
駆動方式:AWD
サスペンション:前後ダブルウイッシュボーン
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤ&ホイール(リム幅):前245/30R20(8.5J) 後305/30R20(11J)
0-100km/h加速:2.9秒
最高速度:325km/h
燃料消費率(EU混合):13.7L/100km
車両本体価格:3416万9904円

 

マクラーレン 720S

ボディサイズ:全長4543 全幅1930 全高1196mm
ホイールベース:2670mm
トレッド:-
車両重量:1419kg
エンジンタイプ:V型8気筒DOHCツインターボ
総排気量:3994cc
最高出力:537kW(720ps)/7500rpm
最大トルク:770Nm(78.5kgm)/5500rpm
トランスミッション:7速DCT
駆動方式:RWD
サスペンション:前後ダブルウイッシュボーン
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤ&ホイール(リム幅):前245/35R19(9J) 後305/30R20(11J)
0-100km/h加速:2.9秒
最高速度:341km/h
燃料消費率(EU混合):10.7L/100km
車両本体価格:3338万3000円

 

ポルシェ911GT3

ボディサイズ:全長4562 全幅1852 全高1271mm
ホイールベース:2457mm
トレッド:前1551 後1555mm
車両重量:1430kg
エンジンタイプ:水平対向6気筒DOHC
総排気量:3996cc
最高出力:368kW(500ps)/8250rpm
最大トルク:460Nm(46.9kgm)/6000rpm
トランスミッション:7速DCT
駆動方式:RWD
サスペンション:前マクファーソンストラット 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤ&ホイール(リム幅):前245/35ZR20(9J) 後305/30ZR20(12J)
0-100km/h加速:3.4秒
最高速度:318km/h
燃料消費率(EU混合):12.7L/100km
車両本体価格:2115万円

 

 

※GENROQ 2018年 1月号の記事を再構成。記事内容及びデータはすべて発行当時のものです。

 

 

【関連リンク】

・GENROQ  2018年 1月号 電子版

※雑誌版は販売終了

 

 

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