初めてのポルシェにカイエンはアリかナシか!? スポーツSUVのパイオニアがみせる完成度を探った 【Playback GENROQ 2019】

公開日 : 2021/02/14 17:55 最終更新日 : 2021/02/14 17:55

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ポルシェ カイエン Sとカイエンの走行シーン

Porsche Cayenne S × Cayenne

ポルシェ カイエン S × カイエン

 

 

驚異の完成度

 

スポーツSUVマーケットを切り拓いたポルシェ カイエン。その先駆者もついに3代目へと進化を遂げた。今回はベースグレード「カイエン」と100ps出力を高めた「カイエン S」の2モデルを比較して、その個性を探った。

 

ポルシェ カイエン Sとカイエンの走行シーン

3世代目に進化したポルシェ カイエンシリーズ。今回は3.0リッターV6シングルターボを搭載したベーシックグレードのカイエンと、2.9リッターV6ツインターボを採用するミドルレンジのカイエン Sを比較試乗した。

 

「3代目に進化を遂げたカイエンは真のポルシェと呼べる性能を手にした」

 

ポルシェ911はもう何台も乗り継いできたから、という経験者がカイエンを選ぶなら言うことはないが、初めてのポルシェにカイエンを選ぶ人の気持ちは正直私のようなオジサン世代には理解できない。せっかくのポルシェなのに、なぜSUVにしなくてはならないのか? とどうしても思ってしまうのだ。SUVが欲しいのなら、今では他にいくらでも選択肢がある。

 

2002年にデビューした初代はもとより、10年にフルモデルチェンジした2代目も、飛ばせばもちろん高性能ながら、快適性や実用性という点では、あえてカイエンを選ぶ決定的な理由はないと考えていた。しかしながら、911もそうだったように、意地でも無理を通して道理にするのがポルシェというメーカーである。昨年モデルチェンジして3代目に生まれ変わったカイエンは、ボーヴォワールの言葉ではないが、まさしくポルシェになったと言える。

 

従来型のデザインをほぼ踏襲したボディは若干大型化されているが、ほとんどをアルミ製としたおかげでカイエン Sは約65kgも軽量化できたという。これまでも十分に幅広かったが、全幅が1983mmとほとんど2m近くにまで広がってしまったのでは、さすがに都市部での使い勝手が心配になる。もっともそれは車体の前後左右を映し出すカメラでカバーしろということかもしれない。

 

ポルシェ カイエン Sのエンジン

440ps/550Nmの2.9リッターV6ツインターボを搭載するカイエン S。両バンク間に排気マニフォールドとターボを押し込んだコンパクトなユニットだ。

 

「複雑だが、素早いターボレスポンスとコンパクトさを実現したユニット」

 

グレードと性能の順列をきちんと揃えてきたこれまでのポルシェの手法通り、3代目のカイエンのパワーユニットも今のところ3種類、明確な差をつけて用意されている。標準のカイエン用3.0リッターV6ターボ(340ps/450Nm)とカイエン S用2.9リッターV6ツインターボ(440ps/550Nm)、それにカイエンターボ用4.0リッターV8ツインターボ(550ps/770Nm)だ。カイエン用3.0リッターターボはシングルだが、カイエン S用2.9リッターはパナメーラにも搭載されている高性能版V6ツインターボである。どちらも両バンクの間に排気マニフォールドからターボまでを押し込んだために複雑だが、素早いターボレスポンスとコンパクトさを実現したユニットだ。

 

どちらもトップエンドでは若干ラフな回転フィーリングを感じるが、低回転から中回転域までの実用域では非常にスムーズで力強く、扱いやすい。トランスミッションは従来同様8速ATを採用、ただしサプライヤーはアイシンAW製からZF製に置き換えられたという。それでもシフトはキレがあり、状況によってはカツン、とまるでDCTのように鋭く変速するので、初めは本当にトルコン式かどうか疑ったほどである。

 

ポルシェ カイエン Sとカイエンの走行シーン

最高出力はポルシェ カイエン Sが440psと無印カイエンの340psを大きく上回るが、車重はカイエン Sが35kg重い。今回、Sの試乗車はオプションのエアサスとリヤアクスルステアが装着され、スポーツドライブに大きく貢献していたのが印象深い。

 

「積極的に飛ばしたいと感じるSUVは他に類を見ないと言っていい」

 

カイエン Sにはオプションのエアサスとリヤアクスルステアが装備されていたが、その効果もあってダイナミックな性能については文句をつけるところがない。飛ばしてもまったく不安ない、というレベルからもっと進んで、積極的に飛ばしたいと感じるSUVは他に類を見ないと言っていい。最近は高性能なライバルが登場してきたものの、リニアなハンドリングでは今やカイエンに一日の長がある。コーナーのイン側にスッと寄って行く自然なターンインは軽快で、しかも妙に突っ張った硬い足まわりと引き換えに得たものではなく、適切にストロークしながらも安定感は高い。その気で踏んでいけば、グイグイ曲がっていくうえに、乗り心地も直進安定性も文句なし、実に自然な身のこなしである。

 

一方、リヤ操舵システムを持たず、金属バネを備えるカイエンは、カイエン Sほどフールプルーフではなく、無理に踏めばアンダーステアが顔を覗かせるが、よりダイレクトで荷重移動に素直に応える伝統的なスポーツカーのように、コントロールしている実感が強いのが特徴だ。ただし、低速でははっきり硬めの上下動が目立つので、乗り心地に関しては速度を問わず快適なエアサスペンションにやはり軍配が上がる。従来型よりも軽くなったとはいえ、カイエン Sでは2.2トン近い車重のクルマをここまで見事にコントロールできるのはさすがだ。

 

ポルシェ カイエン Sのインテリア

パナメーラと同様のインパネデザインを採用する。センターに配される大型センターディスプレイの視認性はとても良い。

 

「インテリアは細かなスイッチがズラリと並んだ従来型よりはずいぶんとすっきりした」

 

インテリアは基本的にパナメーラ同様、センターコンソールのタッチスイッチ式コントロールが特徴だ。細かなスイッチがズラリと並んだ従来型よりはずいぶんとすっきりしたが、正確な操作のためには視線を手元のブラックパネルに落とさなければならないのがちょっと不満である。

 

またナビゲーションなどを操作するダッシュ中央のタッチスクリーンも私には使いやすいとは思えないのだが、最近のポルシェは一族挙げてこのインターフェイスを採用している。

 

ポルシェ カイエン Sとカイエンのフロントスタイル

ポルシェは性能分のエクストラをきっちり上乗せする。カイエン Sは最高速度265kn/hと0-100km/h加速5.2秒と、カイエンよりそれぞれ20km/hと1.0秒パフォーマンスを高めている。この性能差に約300万円の価値を見いだせるかがポイントだろう。

 

「例によってカイエンか、カイエン Sかという選択は悩みどころだ」

 

ローター表面がピカピカの鏡のようなPSCB(ポルシェ・サーフェスコーテッド・ブレーキ)も新型で新たに採用されたものだ。タングステンコーティングのディスクと専用キャリパーを持つブレーキは、耐摩耗性が向上したうえにブレーキダストも発生しにくいという。ただし緩制動時には踏み始めで“カックンブレーキ”になりやすく、ちょっと慣れを要するかもしれない。

 

例によってカイエンか、カイエン Sかという選択は悩みどころだ。確か初代モデルは4.5リッターV8搭載のSでも900万円を切っていたはずだが、3代目は標準のカイエンでも976万円、カイエン Sになると本体価格は1288万円となる。さらに無数のオプションを全部足した値段はカイエンで1360万円余り、Sでは何と1900万円を軽く超えてしまっている。高性能にはそれ相応の金額をいただきます、という相変わらずのポルシェ・ビジネスに乗るかどうかが最大の悩みである。

 

 

REPORT/高平高輝(Koki TAKAHIRA)
PHOTO/田村 弥(Wataru TAMURA)

 

 

【SPECIFICATIONS】

ポルシェ カイエン

ボディサイズ:全長4918 全幅1983 全高1696mm
ホイールベース:2895mm
車両重量:1985kg
エンジンタイプ:V型6気筒DOHCターボ
総排気量:2995cc
最高出力:250kW(340ps)/5300-6400rpm
最大トルク:450Nm(45.9kgm)/1340-5300rpm
トランスミッション:8速AT
駆動方式:AWD
サスペンション:前後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤ&ホイール:前255/55ZR19 後275/50ZR19
最高速度:245km/h
0-100km加速:6.2秒
燃料消費率(EU複合モード):9.2-9.0L/100km
車両本体価格:976万円

 

ポルシェ カイエン S

ボディサイズ:全長4918 全幅1983 全高1696mm
ホイールベース:2895mm
車両重量:2020kg
エンジンタイプ:V型6気筒DOHCツインターボ
総排気量:2894cc
最高出力:324kW(440ps)/5700-6700rpm
最大トルク:550Nm(56.1kgm)/1800-5500rpm
トランスミッション:8速AT
駆動方式:AWD
サスペンション:前後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤ&ホイール:前255/55ZR19 後275/50ZR19
最高速度:265km/h
0-100km加速:5.2秒
燃料消費率(EU複合モード):9.4-9.2L/100km
車両本体価格:1288万円

 

 

※GENROQ 2019年 2月号の記事を再構成。記事内容及びデータはすべて発行当時のものです。

 

 

【関連リンク】

・GENROQ  2019年 2月号 電子版

※雑誌版は販売終了