ポルシェとBMWのスーパー4ドアセダン3台を比較試乗! 悪天候下で輝いたのはタイカン、パナメーラ、M8のいずれか?

公開日 : 2021/03/01 11:55 最終更新日 : 2021/03/01 11:55

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ポルシェ タイカン ターボSとポルシェ パナメーラターボSとBMW M8 グランクーペ コンペティションの集合写真

Porsche Taycan Turbo S × Porsche Panamera Turbo S × BMW M8 Gran Coupe Competition

ポルシェ タイカン ターボS × ポルシェ パナメーラ ターボS × BMW M8 グランクーペ コンペティション

 

 

才色兼備なアスリートたち

 

最近のプレミアムブランドに欠かすことができないのが、4ドアながら美しいフォルムを持つクルマたちだ。中でもその美しいボディにスーパースポーツ並みの高性能を秘めたグレードは速さと美しさと実用性のすべてを満たす存在として人気が高い。ドイツを代表する3台のスーパー4ドアクーペを連れ出し、その速さと個性の違いをじっくりと味わってみよう。

 

ポルシェ パナメーラ ターボSとBMW M8 グランクーペ コンペティションの走行シーン

スタイリッシュなクーペボディを採用した4ドアサルーンは、欧州ブランドを中心に人気が拡大中。今回はポルシェ タイカン ターボSとポルシェ パナメーラ ターボS、そしてBMW M8 グランクーペ コンペティションの3モデルを比較試乗した。

 

「最新のハイエンド4ドアクーペのポテンシャルと哲学を推し量る」

 

妙な感じがするかもしれない。ポルシェ2台とBMW1台。もしくはガソリン車2台とEVが1台という組み合わせについて。

 

だが今回、ブランドやパワーの源はさほど重要ではない。新登場のタイカン ターボSやマイナーチェンジでSのグレード名が追加されたパナメーラ ターボSが日本の路上に放たれはじめた今、最新のハイエンド4ドアクーペのポテンシャル、そして各々の哲学を推し量ってみようというわけである。

 

本来はBMW M8 グランクーペ コンペティションに加えて、メルセデスAMG GT63S(4ドアクーペ)も入れたかった、と言えば少し納得がいくだろうか? 残念ながらタイミングが合わず、実現しなかったわけだが・・・。

 

ポルシェ パナメーラターボSのインテリア

タイカンよりも物理的スイッチが多いが、その分初見でも扱いやすいパナメーラのインテリア。タコメーターのみアナログ針で、それ以外はTFTモニターによるデジタル表示。

 

「パナメーラ ターボSが見せる滑らかな突進は、どこか新幹線に似たところがある」

 

時おり台風のような暴風雨が襲う中、我々は雨上がりの光を狙って撮影場所へと向かっていた。最初にステアリングを握ったのはパナメーラだった。まるで自分だけが静寂の中にあって、フロントガラスというスクリーンで大雨の映画を見ているよう。それくらい振動も騒音も微細で、同時にスピード感もなかった。

 

普段とまったく同じとは言わないが、リラックスしたまま快適なドライブを楽しめる。パナメーラのようなハイエンドカーの走行性能は、こういったエクストリーム・コンディションでこそ発揮されるのだと確信した。630psという最高出力はさておき、シャシーに生き物感を与える3チャンバーのエアサスや、圧倒的なスタビリティを担保するAWDシステムがストレスを消し去ってくれる。

 

以前、「パナメーラで新幹線に勝った!」と豪語していた先輩がいた。モラルはさておき、このクルマの精神性としてはそれで正しいのかもしれない。そういえばパナメーラ ターボSが見せる滑らかな突進は、どこか新幹線に似たところがある。

 

BMW M8 グランクーペ コンペティションのエンジン

BMW M8 グランクーペ コンペティションが搭載するS63型V8ツインターボはホットインサイドV方式を採用。ウェットサンプだが小型のオイルチャンバーを装備して極限状態でも安定したオイル供給が可能。

 

「パナメーラとM8グランクーペの違いはポルシェとBMWの哲学の違いだ」

 

途中のサービスエリアでM8 グランクーペに乗り換えた。625psを発揮するV8ツインターボや、5mを少し超えた全長、トルク配分を自在に変えるAWDシステムといったスペックはパナメーラ ターボSによく似ているが、実際のフィーリングはまるで異なっていた。パナメーラが仕立ての良いウールのジャケットを羽織っている感覚だとすれば、M8はアウトドア用のソフトシェルのような身軽さがある。

 

乗り心地に関しては少し硬質で振動を感じることが多いし、ロードノイズもパナメーラよりうるさい部類に入る。けれどターボのラグをはじめとするパワートレインのツキの良さや、ステアリングの初期応答の鋭さはボディサイズや最高出力を考えると驚くべきレベルで、ウエットの中央環状線でもなお「操ってやろう!」という気にさせてくれる。

 

だから今回の企画がこの2台のドライバビリティに言及したものであれば、少しミスマッチだと感じた。時計の針を30年ほど戻した場合、両者にはポルシェ928と初代M3のような性格の違いがあるからだ。これはつまり、ポルシェとBMWのブランド哲学そのものかもしれない。

 

ポルシェ タイカン ターボSとポルシェ パナメーラターボSの走行シーン

ピュアEVであるポルシェ タイカン ターボS(写真右)と、4.0リッターV8ツインターボガソリンエンジンを採用するポルシェ パナメーラ ターボS(同左)。同門でありいずれも4ドアクーペながらドライブフィールはまったく異なる。

 

「低くうずくまった姿はよく言えばストイックで、ただただ超然としている」

 

悪天候に晒された孤島のような海ほたるでピュアEVであるタイカン ターボSと落ち合った。個人的に2度目のドライブとなるタイカン自体にも興味があるし、ポルシェの4ドアクーペ同士であるパナメーラとの比較も興味深い。

 

リヤに走り書きしたような車名が掲げられているだけのタイカンターボSは思っていたよりも素っ気なかった。タイカンには1100万円台から2400万円台までの4つのグレードが用意されているが、ターボSにはその頂点を豪語するほどのオーラが感じられなかった。低くうずくまった姿はよく言えばストイックで、ただただ超然としている。

 

以前は500psのタイカンターボを試乗したのだが、その仕上がりのレベルに心底驚かされた。ポルシェとかピュアEVといった先入観を抜きにして、純粋に自動車としての動的質感に着目するならば、これ以上はないだろうと確信したほどだ。けれどタイカン1台を試乗しただけでは、なぜこのクルマがこれほど突出しているのかがわからなかった。

 

ポルシェ タイカンターボSのインテリア

ポルシェとしては初のフルデジタルメーターを採用したタイカン。エアコン吹き出し口は内部のルーバーで風向きを切り替える。パッセンジャーディスプレイはオプションだ。

 

「タイカンの加速感は、モーター自体が知能を与えられているような印象」

 

ガソリンターボ車のフル加速は、少し遅れて暴発するターボのパワーをスタビリティコントロールがなだめるようにして成立する。だが625psの最高出力を誇るタイカンのそれは、モーター自体が知能を与えられているような印象で、ハーフウェットの路面でもタイヤの空転をほとんど許さず静かに毅然と加速する。これならローンチコントロールで使える761psも許容できるはず。

 

磁石に吸い寄せられるようにしていきなり始まる加速力から推し量ると、カタログ上の260km/hという最高速が嘘っぱちに思えてくる。300km/h超えまでは一気呵成に突っ越して、350km/hはカタいように思えた。

 

タイカン ターボSのドライブを楽しんだ後、バックミラーに映る2台を見て、少しセンチメンタルな気持ちになった。今をときめく4ドアクーペの最高峰であるはずの2台が、古典的な存在に思えたのだ。

 

ポルシェ タイカンターボSのフロントラゲッジ

フロントにラゲッジスペースが用意されるのがEVならではのメリット。容量は81リットルで、リヤのラゲッジスペースは366リットルとなる。

 

「タイカンの走りを知ってしまうと他のクルマはすべて古典的に見える」

 

勘違いしてほしくないのだが、パナメーラ ターボSとM8 グランクーペ コンペティションのポテンシャルはとてつもない。慇懃なショーファーとして振るまった直後にサーキットレコードを更新できるほどの性能的な幅を確かに持っている。

 

けれど月に到達した人間が心の底から「地球を青い」と感じるように、タイカンを知ってしまうと、他のクルマはすべて古典的に見えてしまう。

 

今回はっきりしたタイカンの動的質感の中核はバッテリーを巧妙に配したことで得られたフロア剛性の高さだ。タイカンに比べると、M8やパナメーラのフロアですら、エンジンや路面からの入力を拾い、絶えず振動しているように感じられる。

 

ポルシェ タイカン ターボSとポルシェ パナメーラ ターボSとBMW M8 グランクーペ コンペティションの集合写真

試乗を通じタイカン ターボSに心酔した筆者だったが、それ故にこそパナメーラとM8の「加減速に伴うギヤチェンジのドラマや、ターボの逡巡が生み出す不規則な旋律を愛しているのだと気づかされた」と語る。

 

「4ドアクーペの可能性は疑う余地がない。しかし時代は絶えず混沌としている」

 

タイカンのポテンシャルを知ったあと、古典的であるはずのM8やパナメーラを今まで以上に好きになっている自分がいた。加減速に伴うギヤチェンジのドラマや、ターボの逡巡が生み出す不規則な旋律を愛しているのだと気づかされたのだ。

 

短い旅が終わりガソリンの2台はまだ400-500kmの航続距離を残していたが、タイカンには140kmの猶予しかなく、充足感で膨らんでいた心が少し萎んだ。4ドアクーペの可能性は疑う余地がない。しかし時代は絶えず混沌としている。

 

 

REPORT/吉田拓生(Takuo YOSHIDA)
PHOTO/小林邦寿(Kunihisa KOBAYASHI)

 

 

【SPECIFICATIONS】

ポルシェ タイカン ターボS

ボディサイズ:全長4963 全幅1966 全高1378mm
ホイールベース:2900mm
車両重量:2295kg
エンジンタイプ:モーター×2
総排気量:-
最高出力:560kW(761ps)
最大トルク:1050Nm(107kgm)
トランスミッション:前1速 後2速
駆動方式:AWD
サスペンション:前ダブルウィッシュボーン 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク(カーボンセラミック)
タイヤ&ホイール:前265/35ZR21 後305/30ZR21
最高速度:260km/h
0-100km/h加速:2.8秒
車両本体価格:2454万1000円

 

ポルシェ パナメーラターボS

ボディサイズ:全長5049 全幅1937 全高1427mm
ホイールベース:2950mm
車両重量:2080kg
エンジンタイプ:V型8気筒DOHCツインターボ
総排気量:3996cc
最高出力:463kW(630ps)/6000rpm
最大トルク:820Nm(83.6kgm)/2300-4500rpm
トランスミッション:8速DCT
駆動方式:AWD
サスペンション:前ダブルウィッシュボーン 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク(カーボンセラミック)
タイヤ&ホイール:前275/35ZR21 後325/30ZR21
最高速度:315km/h
0-100km/h加速:3.1秒
車両本体価格:2882万円

 

BMW M8 グランクーペ コンペティション

ボディサイズ:全長5105 全幅1945 全高1420mm
ホイールベース:3025mm
車両重量:2000kg
エンジンタイプ:V型8気筒DOHCツインターボ
総排気量:4394cc
最高出力:460kW(625ps)/6000rpm
最大トルク:750Nm(76.5kgm)/1800-5860rpm
トランスミッション:8速AT
駆動方式:AWD
サスペンション:前ダブルウィッシュボーン 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤ&ホイール:前275/35ZR20 後285/35ZR20
最高速度:-
0-100km/h加速:3.2秒
車両本体価格:2408万円

 

 

【問い合わせ】

ポルシェ カスタマーケアセンター
TEL 0120-846-911

 

BMWカスタマー・インタラクション・センター
TEL 0120-269-437

 

 

【関連リンク】

・ポルシェ ジャパン 公式サイト
http://www.porsche.com/japan/

 

・BMW 公式サイト
http://www.bmw.co.jp/

 

 

【掲載雑誌】

・GENROQ 2021年4月号