ブガッティ渾身のビスポーク。驚愕のペイントワークをまとった世界に1台だけのルビー色のディーヴォ

公開日 : 2021/03/11 06:30 最終更新日 : 2021/03/11 06:30

ブガッティ ディーヴォ “レディ バグ”のフロントビュー

Bugatti Divo ‘Lady Bug’

ブガッティ ディーヴォ “レディ バグ”

 

 

2年かけて生み出された優雅なてんとう虫

 

ブガッティを買う顧客のほとんどは、ビスポークプログラムを利用して自分だけの特別な仕様を注文する。とりわけ、黎明期のブガッティが手掛けてきたコーチビルディング(ファッションにおけるオートクチュールに相当する、限られた高級自動車界における架装文化)を現代に蘇らせることを目的とした「ディーヴォ」は、限定販売される40台に1台として同じものはないという。

 

そんなディーヴォのコーチビルドの一例が、こちらの「レディ バグ(てんとう虫)」。これまで見たことのないペイント技術を駆使し、およそ2年をかけて製作された世界に1台のディーヴォだ。

 

ブガッティ ディーヴォ “レディ バグ”の俯瞰目リヤビュー

“レディ バグ(てんとう虫)”の愛称がつけられた、世界で1台のブガッティ ディーヴォ。ボディに約1600個のダイヤモンドパターンを配置し、類例のない複雑な塗面を作り上げた。

 

1600個のダイヤモンドを“着る”

 

アメリカ人オーナーが注文したのは、ダイヤモンドパターンをベースにした幾何学模様をボディに施した、ルビー色のディーヴォ。特別に調色したレッドと、グラファイト(ブラック)という2色のメタリック塗料を組み合わせ、ディーヴォの美しいボディラインに合わせて複雑な柄を浮き立たせている。

 

前例のない繊細なペイントを実現するためには、グラフィックのデザインから塗装の具体的な方法、技術を構築するまで、1年半の時間を要した。ディーヴォの抑揚あふれるボディに2次元の幾何学模様を沿わせる作業は一筋縄ではいかず、顧客とCADモデラーは約1600個のダイヤモンドをシミュレーションしながらデザイン。膨大な時間をかけ、1mm単位で微細な調整を重ねてきた。

 

ブガッティ ディーヴォ “レディ バグ”の開発プロセス

“レディ バグ”開発にあたっては、まずディーヴォのプロポーションに相応しい特別な赤を調色することからスタートした。

 

白旗をあげそうになった開発陣

 

最終的なパターンが決定するまでに数週間。まずは6m長のフィルムにプリントし、テスト用の車体へと貼り付けて完成形のイメージをチェックした。ひとつのダイヤモンドすら凹んだり歪んだりすることのないように。カラー&トリム部門を率いるヨルグ・グルマーは次のように語っている。

 

「“レディ バグ”は我々にとって特別なチャレンジであったのと同時に、忘れることのできないプロジェクトとなりました。2次元のグラフィックを3次元の造形に落とし込むために、数え切れないほどのアイデアをひねり出しては失敗してきました。もうほとんど諦めかけて『顧客のお望みにお答えできそうにない』と言いそうになったくらいですよ」

 

ブガッティ ディーヴォ “レディ バグ”の開発プロセス

約1600個のダイヤモンドを、いかなる手順でどのように配置するのが理想的なのか。CADやテスト車両をもちいて、スタッフは何度もシミュレーションを繰り返した。

 

「私のコレクションの頂点といえる1台」

 

しかし、とヨルグ・グルマーは続ける。「顧客のために不可能を可能にする。そのことこそが我々を突き動かす動機であり、決して諦めないという揺るぎない信念が皆の中にあるのです」

 

チーム全体で試行錯誤を繰り返したのち、顧客のビジョンはようやく形になった。一報を受けたオーナーは大変感銘を受けたという。レディ バグのオーナーは言う。

 

「このプロジェクトの実現は、大変に刺激的なことであるのと同時に、私の夢そのものといえます。その仕上がりには、まったくもって仰天しました。このクルマは真の傑作かつ芸術作品です。そして、現在の私のコレクションにとって頂点ともいえる1台であり、これまで所有した中で最も複雑で素晴らしく完成された1台でもあります」

 

ブガッティ ディーヴォ “レディ バグ”の塗装プロセス

“レディ バグ”の塗面を作り出すために、職人たちは技術を尽くしてマスキング作業を実施。すべてのダイヤモンドパターンを配置するまでに膨大な時間を費やした。

 

本番前には“リハーサル”も実施

 

フィルム上に配置された約1600のダイヤモンドは個別に分割されており、それを転写フィルムに移し、それからボディに固定していく。ひとつひとつ漏らさず形状や角度をチェックし、必要に応じて微調整を繰り返す。気の遠くなるような作業を経て、開発エンジニアとデザイナーがようやく理想の手順を見つけることができたのが2020年初頭のこと。それからさらに、もう1台のテスト車両に“リハーサル”を行うという念の入れ用だった。

 

「お客様のクルマには1度の挑戦しか許されません。ですから、我々は最終的な作業の前にリハーサルを行うことに決めたのです。結果は完璧でした」 カスタマイゼーションの専門家、ダーク・ヒンツェはこう説明している。

 

ブガッティ ディーヴォ “レディ バグ”の塗装プロセス

ダイヤモンドパターンを配置した後、“レディ バグ”は本格的な塗装プロセスへ。塗り、マスキングを剥がし、磨き、また塗り重ねるという作業を2週間以上かけて実施。

 

1台およそ6億円の芸術品

 

すべてのダイヤモンドを配置し終えたら、数日間をかけてそれぞれが正しい向きに美しく鎮座しているかどうかを入念にチェック。必要に応じてトリミングや形状の微調整を行い、次がいよいよ実際の塗装プロセスとなる。特別色を塗り、ダイヤモンドを取り除き、クリアコートを重ね、適宜塗装面をやすりがけし、磨き上げ、リタッチし、さらに磨くという作業を繰り返す。まるで画家が一枚の絵を、ひとつの彫刻を、そして一個のジュエリーを仕上げるような繊細さで、2週間超をかけて完成に漕ぎつけた。

 

ブガッティ ディーヴォ “レディ バグ”のフロントビュー

およそ2年の時をかけて完成したブガッティ ディーヴォ “レディ バグ”は、ようやくオーナーの元へ。全40台のディーヴォは、2021年上半期にはすべて納車される予定である。

 

現代最高峰のコーチビルドの芸術、ブガッティ ディーヴォは1台500万ユーロ(約6億円、オプション除く)。“レディ バグ”をはじめ、たった40台のディーヴォは2021年上半期に幸運な注文主のもとへと届けられるという。