マクラーレン 570S スパイダー、その斬れ味はまさに日本刀の如し! 【Playback GENROQ 2018】

公開日 : 2021/03/17 17:55 最終更新日 : 2021/03/17 17:55

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マクラーレン 570S スパイダーの走行シーン

McLaren 570S Spider

マクラーレン 570S スパイダー

 

 

真剣のスパイダー

 

マクラーレンのエントリーラインナップとなるスポーツシリーズ。その第3のボディタイプとなるスパイダーがついに日本にも上陸した。エントリーとはいえ十分な実力を兼ね備えているのは言うまでもない。早速ハードトップを開け放ち、冬のワインディングで堪能した。

 

マクラーレン 570S スパイダーのサイドビュー

リトラクタブルハードトップはヘッドレスト後ろのトノカバー下に折り畳まれて収納される。実はその開閉途中に52リットルと十分な容量のラゲッジスペースが現れる。フロントの150リットルと併せると202リットルで、スパイダーでありながら実用面でも優れている。

 

「クーペと遜色ない剛性とそれに裏打ちされた走りを実現するスパイダー」

 

ワインディングの入口にさしかかったところで、570Sスパイダーの車速を40km/h以下に落として電動ルーフを開ける。すぐさま凜とした冬の空気が流れ込んでくるが、それがちょっと嬉しかったりする。ピリッと乾燥したこの時期のワインディングを走らせるとスパイダーの魅力がいっそう輝くように感じるのもあるが、すぐさま撮影できるようにルーフを開け放つ必要があった。車両を都内で受け取リ、渋滞と高速道と一般道を3時間も走ってカメラマンの待つ西伊豆にたどり着いた時には、冬至の近いこの時季らしく日が傾いていた。

 

マクラーレンのスポーツシリーズ第3弾となるスパイダーは、このクラスのスーパースポーツとしては当然かもしれないが、その気になれば一線級の速さで、しかもすぐさまオープンエアモータリングの開放感が得られるから魅力的な選択肢だ。ひと昔前のオープンモデルは剛性に難があったり、ハードな走りを求める向きにはオススメできないこともあったが、現代にあってはクーペと遜色ない剛性とそれに裏打ちされた走りを実現していることが多い。マクラーレンの代名詞とも言えるカーボンファイバー製モノコック、モノセルIIの霊験あらたかで、驚くべきことに今回のオープン化にあたり補強はされていないという。その結果、570Sと比べて乾燥重量の増加はリトラクタブルハードトップを電動化するための46kgに留められている。

 

マクラーレン 570S スパイダーのインテリア

居心地の良い室内。混み合った都心でも手足のように扱えるのは視界性能の良さもあるだろう。センターコンソールにはマクラーレンのラインナップで共通するアクティブダイナミクスコントロールがレイアウトされる。縦型10インチモニターが特徴的だ。

 

「570Sクーペとスパイダーの動力性能差は、サーキットでなければないに等しい」

 

そもそも最高出力570ps、最大トルク600Nmを発生する3.8リッターV8ターボの本領を発揮するのは難しい。以前ちょい濡れのレーシングコースでクーペの570Sに試乗する機会があったが、高出力ミッドシップを全開にさせることはできなかった。勇気はともかくスキルが足りなかったのだが、実際570Sクーペとスパイダーの動力性能差は、サーキットでなければないに等しい。実際に最高速は328km/h、0-100km/hは3.2秒と570Sクーペと同様の動力性能となっている。ちなみに燃費もNEDCで同値である。近年多くの顧客がオープンモデルを選ぶのも当然だろう。

 

ディヘドラル・ドアを斜め上に跳ね上げ、カメラマンを乗せて走り出す。可動範囲が大きなチルトとテレスコピック、さらに微調整可能な8WAYシートのおかげで理想的なドライビングポジションがとれる。

 

マクラーレン 570S スパイダーのシート

試乗車に装備されていた8WAYシートもまたマクラーレンのクルマ造りの美点。ただし、操作スイッチがシート前方内側にあるのだが、これがわかりにくいのが難点だ。ちなみにオプションでサーキット仕様のフルバケットシートも選択可能で15kgの軽量化がなされる。

 

「一般道ではスポーツモードあたりで走るのが精神衛生上いいだろう」

 

ワインディングに入ったらルーフを開けるのはもちろん、ドライブモードを変更すべきだろう。センターコンソールのアクティブダイナミクスコントロールの「アクティブ」スイッチを入れて、左のハンドリングダイヤルと右のパワートレインダイヤルをともに「ノーマル」から「スポーツ」にする。前者がダンパーとESCのセッティング、後者がシフトスケジュールや変速スピードなどDCTのセッティングが変更される。これで変速もマニュアルにすれば、気持ちよく“そこそこ”のペースでワインディングを飛ばすことができる。さらに車両の反応が鋭敏になるサーキット用の「トラック」モードも用意されるが、ハンドリングをトラックモードにすると、あわせてESCの警告ランプも点灯する(ESCは全オフにはならないが)ので、一般道ではスポーツあたりで走るのが精神衛生上いいだろう。

 

日没に間に合うようにカメラマンの求めに応じて長く続く山道を飛ばす。ステアリング裏のパドルは左右が一体となっており、右を引いてアップ、左を引けばダウン。両方同時に引くことはできない。このクリック感が良く、ついついシフトしてしまう。ペダルレイアウトは車両の中央寄りで、スポーツ走行の際にはやや重めのブレーキを左足で踏む方がしっくりくる。アクセルペダルはオルガン式でこちらもやや重く渋い。

 

マクラーレン 570S スパイダーのリヤスタイル

3.8リッターV8ツインターボは最高出力570ps/最大トルク600Nmを発生する。最高速度328km/h、0-100km/h加速3.2秒のパフォーマンスをオープンで満喫できる稀有なスーパースポーツカーだ。

 

「スパイダーであっても切れ味鋭いコーナリングは圧巻だ」

 

ともあれワインディングを長く走らせると、日本刀のごとく切れ味鋭いコーナリングは限界域こそ測りかねるが、わずかにステアリングを切った時に、あるいはわずかにブレーキに触れた時やパーシャルスロットルで長いコーナーを走る時など、その都度ドライバーに喜びを与えてくれるクルマだと感じた。撮影ポイントを次々と変えるためにハイペースで走行を続けたが、それでも音を上げる気配すらない。

 

それも当然だろう。F1コンストラクターたるマクラーレンが、乗用車の延長線上にスーパーカーを求めたのか、あるいはレーシングカーから日常乗れるスーパーカーを造ったのか、答えは明快だ。装着されるマクラーレンの承認タイヤのコルサMCの限界は遙か彼方と感じた570S クーペと同様にこのスパイダーもまたすべての期待に応えてくれるスーパーカーと言える。そのスペックも中身も竹光ではない。真剣の切れ味そのものだ。

 

 

REPORT/吉岡卓朗(Takuro YOSHIOKA)
PHOTO/小林邦寿(Kunihisa KOBAYASHI)

 

 

【SPECIFICATIONS】

マクラーレン 570S スパイダー

ボディサイズ:全長4530 全幅1930 全高1201mm
ホイールベース:2670mm
車両重量:1498kg
エンジン:V型8気筒DOHCツインターボ
総排気量:3799cc
最高出力:419kW(570ps)/7500rpm
最大トルク:600Nm(61.2kgm)/5000-6500rpm
トランスミッション:7速DCT
駆動方式:RWD
サスペンション:前後ダブルウィッシュボーン
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
ディスク径:前394 後380mm
タイヤサイズ(リム幅):前225/35R19(8J) 後285/35R20(10J)
最高速度:328km/h
0-100km/h:3.2秒
燃料消費率:10.7L/100km
車両本体価格:2898万8000円

 

 

※GENROQ 2018年 3月号の記事を再構成。記事内容及びデータはすべて発行当時のものです。

 

 

【関連リンク】

・GENROQ  2018年 3月号 電子版

※雑誌版は販売終了