「ポルシェ911(Gシリーズ)」ビッグバンパーの時代《ポルシェ図鑑》

公開日 : 2021/03/18 06:30 最終更新日 : 2021/03/18 06:30


ポルシェ911 Gシリーズ

1974 Porsche 911 Carrera

1974 ポルシェ911カレラ

 

 

911初の大幅な刷新を行ったGシリーズ

 

北米で改訂された衝突安全基準に対応するため、衝撃吸収を目的とした5マイルバンパーを装着しリデザインされたのが、通称ビッグバンパーと呼ばれる1974年以降の911シリーズである。

 

誕生以来、ホイールベースの延長、燃料噴射装置の採用(1969年)、2.2リッター・エンジンの搭載(1970年)、2.4リッター・エンジンの搭載(1972年)と改良が加えられ続けてきた911シリーズだが、1974年になって初めてそのボディスタイルに大きな変更が加えられることになった。それがビッグバンパーと呼ばれる911(Gシリーズ)だ。

 

ポルシェ911 Gシリーズ

ポルシェ・ミュージアムに展示されている1977式の911S 2.7。本国では1976年に911Sが消滅しており、1977年に日本市場でのみ911Sの名称で販売されたが出力は他と同じ165hpであった。

 

厳しい基準の5マイルバンパーをスタイリングに昇華

 

最大の特徴はアメリカ連邦自動車安全基準 (Federal Motor Vehicle Safety Standard, FMVSS) の新しい衝突安全基準に対応して前後につけられた大型の5マイルバンパーで、欧州仕様は収縮式鋼管、北米仕様は油圧ダンパーを内蔵し、衝撃を吸収する仕組みとなっていた。

 

それにあわせて前後フェンダーもリデザインされた結果、911のスタイルを損なうことなくモダナイズできたのは、無骨な5マイルバンパーのスタイリングに苦労したライバルに対しても大きなアドバンテージとなった。

 

ポルシェ911 Gシリーズ

1974年に撮影された911S 2.7。ビッグバンパーに変わった最初のモデルだ。エンジンは当初、カレラRS2.7と同じニカシルシリンダーを使用していたが、程なくアルシルシリンダーに換えられている。

 

2.7リッター水平対向6気筒は欧州と北米でスペックが異なる

 

空冷フラット6 SOHCは排気量を2687ccに拡大。スタンダードの911、911S、カレラの3種類が用意されたが、より厳しくなった排ガス規制に対応するため北米仕様はボッシュKジェトロニックを装着した専用エンジンを搭載。欧州仕様の911Sの最大出力が175hpであるのに対し、北米仕様は160hpとなるなどパフォーマンスに差がつくようになってしまった。

 

その後、1975年の北米仕様のカレラにターボのようなホエールテールを標準装備。1976年から欧州仕様のカレラに3.0リッター・エンジンを投入したほか、全モデルに亜鉛皮膜鋼板が採用されるなど、地道な改良が加えられていく。

 

ポルシェ911 Gシリーズ

180hpを発生する3.0リッター空冷フラット6 SOHC 930型ユニットに統一されることとなった、1978年の911SC。ギヤボックスは5速MTの915型が標準となった。

 

ターボ用の930型ユニットを採用しタイプ名は「930」に

 

ポルシェは1978年イヤー・モデルで911のモデルラインナップを再編。ターボ用に開発されたエンジンをベースとする2994cc空冷フラット6 SOHC 930型ユニットを搭載した911SCに統一されることとなったが、最高出力は180hpと従来の911カレラに比べ20hpほど低くなっている。またエンジンの変更に合わせて社内のタイプ名がそれまでの901型から930型に変更されたのも特徴である(よって1974年から78年までのビッグバンパー車を930と呼ぶのは正しくない)。

 

ボディはそれまでの911カレラと同じリヤ・ワイドフェンダーのついたタイプとなり、MTが915型5速に統一されたほか、ブレーキもハイドロリック・サーボ付きになるなど、更なる充実が図られていた。

 

そのほかのトピックとしては、1981年のフランクフルト・ショーで発表され大きな反響を呼んだ911ターボ・カブリオ・スタディで提案されたカブリオレ・バージョンが、1983年10月から911SCカブリオレとしてレギュラー・モデルに追加されたことが挙げられる。これにより低迷に苦しんでいた北米市場での販売が好転し、生産中止が噂されるようになっていた911のモデルライフが、さらに伸びることに繋がった。

 

ポルシェ911 Gシリーズ

911SC/RSはラリー参戦を目的に911SCをベースに開発されたホモロゲモデル。20台のみが生産されたが、ごく一部がロードバージョンとして一般顧客にも市販されている。

 

僅か20台のみホモロゲ用に生産された幻の「911SC/RS」

 

もうひとつ、911SC時代の変わり種として忘れられないのが、1983年にラリー用のホモロゲモデルとして20台のみが生産された911SC/RSだ。これはSCをベースに軽量化したターボ用のボディとターボ用のサスペンション、ブレーキを組み込んだスペシャルで、3.0リッター・エンジンは鍛造ピストン、専用カムシャフト、ボッシュ・クーゲルフィッシャー製プランジャーポンプなどの装着によりロードバージョンでも255hpにまでチューンされていた。

 

 1984年のヨーロッパ・ラリー選手権では、ロスマンズのサポートを受けたヘンリ・トイヴォネンが惜しくもチャンピオンを逃したものの、5連勝を飾るなど圧倒的とも言える強さを発揮。この活躍が再び911をレースフィールドの最前線へと呼び戻すきっかけにもなった。

 

ポルシェ911 Gシリーズ

930型ユニットを搭載し排気量が3.0リッターまで拡大された911カレラ3.0 タルガ。

 

ポルシェ911カレラ3.0タルガ

 

ポルシェ・ミュージアムの所有する1976年型911カレラ3.0タルガ。200hpを発生する930/02型エンジンを搭載。この年からタルガのロールバーがブラックアウトされ、象の耳と呼ばれる大型ドアミラーが標準となった。

 

ポルシェ911 Gシリーズ

ラリーフィールドでも911 Gシリーズは活躍。写真はマルティーニカラーをまとってサファリラリーに参戦した911SC。

 

ポルシェ911SC “Safari”

 

1978年のイースト・アフリカン・サファリ・ラリーに出場し、ビック・プレストン・ジュニアのドライブで2位入賞を果たした個体。途中まで優勝争いを演じたビョルン・ワルデガルドも4位に入っている。

 

ポルシェ911 Gシリーズ

クーペ、タルガに続いてボディラインナップに加わったカブリオレ。その伝統は現在の911シリーズにも連綿と繋がっている。

 

ポルシェ911SC カブリオレ

 

第3のボディバリエーションとして1983年から販売された911SC カブリオレ。タルガのボディシェルをベースとしながらも、ルーフすべてをソフトトップにすることで14kg軽量化されている。

 

 

TEXT & PHOTO/藤原よしお(Yoshio FUJIWARA)
COOPERATION/ポルシェ ジャパン(Porsche Japan KK)

 

 

【SPECIFICATIONS】

ポルシェ911S 2.7

年式:1974年

エンジン形式:空冷水平対向6気筒SOHC

排気量:2687cc

最高出力:175hp

最高速度:225km/h

 

 

【関連記事】

・【ポルシェ図鑑】「ポルシェ 356-001(1948)」記念すべき第1号車。

 

・【ポルシェ図鑑】「ポルシェ 356/2 クーペ(1948)」リヤエンジンを採用した試作2号車。

 

・【ポルシェ図鑑】「ポルシェ356/2 SL(1950)」初めてル・マン24時間に出場したポルシェ。

 

・【ポルシェ図鑑】「ポルシェ 356 Pre-A フェルディナント(1950)」博士へ贈られた最後の誕生日プレゼント。

 

・【ポルシェ図鑑】「ポルシェ 356 アメリカ ロードスター(1952)」北米市場向けのスパルタンなロードスター。

 

・【ポルシェ図鑑】「ポルシェ 550 / 1500RS スパイダー(1954)」ポルシェ初の純レーシングマシン。

 

・【ポルシェ図鑑】「ポルシェ356 1500 スピードスター(1955)」北米の要望で生まれた安価なスポーティモデル。

 

・【ポルシェ図鑑】「ポルシェ Typ 597 ヤークトヴァーゲン(1956)」カイエンやマカンのルーツ。

 

・【ポルシェ図鑑】「ポルシェ718 F2 Typ 547(1959)」フォーミュラカーに生まれ変わった718。

 

・【ポルシェ図鑑】「ポルシェ Typ754 T7(1959)」356と911を繋ぐ画期的なプロトタイプ。

 

・【ポルシェ図鑑】「ポルシェ356B 1600GS カレラGTL アバルト(1960)」意外なコラボレーション。

 

・【ポルシェ図鑑】「ポルシェ 356B 2000GS カレラGT(1960)」レース直系の356。

 

・【ポルシェ図鑑】「ポルシェ718 W-RS スパイダー(1962)」F1エンジンを譲り受けた718。

 

・【ポルシェ図鑑】「ポルシェ 804 F1(1962)」空冷エンジンで優勝した史上唯一のF1マシン。

 

・【ポルシェ図鑑】「ポルシェ 356B 2000GS-GT(1963)」最後のアルミボディを纏った356の最終進化形。

 

・【ポルシェ図鑑】「ポルシェ 911(1963)」水平対向6気筒RRスポーツの誕生。

 

・「ポルシェ 904 カレラ GTS(1964)」鈴鹿を震撼させたポルシェの刺客【ポルシェ図鑑】

 

・【ポルシェ図鑑】「ポルシェ912(1965)」ボトムレンジを担った911の兄弟分。

 

・「ポルシェ 906(1966)」ピエヒ時代の到来を告げるレーシングスポーツ《ポルシェ図鑑》

 

・「ポルシェ911タルガ(1967)」911的オープンエアモータリングの解釈《ポルシェ図鑑》

 

・「ポルシェ914(1969)」生まれるのが早すぎたミッドシップ《ポルシェ図鑑》

 

・「ポルシェ908(1968)」初の総合タイトルをもたらした秀作《ポルシェ図鑑》

 

・「ポルシェ917(1969)」記念すべきル・マン完全制覇を達成《ポルシェ図鑑》

 

・「ポルシェ917/30(1973)」ターボの道を切り拓いた史上最強の917《ポルシェ図鑑》

 

・「ポルシェ911カレラRS 2.7(1973)」語り継がれるナナサン・カレラの伝説《ポルシェ図鑑》