日、英、米が誇るV8クーペを徹底検証! カマロ SS vs Fタイプ SVR vs RC F【Playback GENROQ 2019】

公開日 : 2021/03/26 17:55 最終更新日 : 2021/03/26 17:55

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シボレー カマロ SS、ジャガー Fタイプ SVR、レクサス RC Fのフロントスタイル

Chevrolet Camaro SS × Jaguar F-type SVR × Lexus RC F

シボレー カマロ SS × ジャガー Fタイプ SVR × レクサス RC F

 

 

大排気量V8エンジン、魂の咆哮

 

乗るものを圧倒する強烈なパワー感と加速、そして身体を揺さぶるサウンド。V8 エンジンには、数字だけでは計れない魅力がある。その魅力の根幹を知るためにアメリカ、イギリス、日本を代表する3台のV8クーペを連れ出してみた。

 

シボレー カマロ SS、ジャガー Fタイプ SVR、レクサス RC Fの走行シーン

シボレー カマロ SS、ジャガー Fタイプ SVR、レクサス RC Fという、米英日の大排気量V8エンジンを搭載したスポーツクーペを、同じステージで比較試乗。

 

「米、英、日の3ヵ国が揃ったスポーツモデル対決。その真価を測る」

 

シボレー カマロ SS、レクサスRC F、そしてジャガー Fタイプをひとつの俎上に乗せる企画など、10年前だったら一顧だにされなかっただろう。そもそも車両価格はカマロ SS:680万円強、RC F:982万円強、Fタイプ:1834万円と3倍近い開きがあるのだ。

 

それでもこの企画が成立したのは、2017年に発売された6代目カマロが驚異的な進化を遂げ、日本勢やヨーロッパ勢をあっと驚かすクオリティとコストパフォーマンスを実現したからに他ならない。

 

最新カマロのハイパフォーマンスバージョンであるSSと私が初めて出会ったのは、いまからちょうど1年前のGOTY(GENROQ CAR OF THE YEAR)でのこと。アメリカ車の常識を打ち破るパフォーマンスの高さに打ちのめされた私は、その誌面で「走りの完成度でいえばドイツ製のよくできたスポーティクーペに肉薄する」と褒めちぎった。

 

新型が発売されて1年後の2018年秋には早くもそのマイナーチェンジ版が登場。前後のデザインが手直しを受けたほか、カマロ SSのギヤボックスはそれまでの8速ATから10速AT(!)へと進化した。今回、改めてテストしたのは、この10速ATを搭載した最新のカマロ SSである。そしてその対抗馬に選ばれたのが、同じV8エンジンをフロントに積むFタイプとRC Fだった。奇しくも米、英、日の3ヵ国が揃ったスポーツモデル対決。その比較試乗はちょい濡れの短いワインディングコースで始まった。

 

レクサス RC Fのインテリア

まるで段々畑のようなインパネで、ドライバーは目線の持って行き場に迷ってしまう。ただ3次元成型のシートは身体を隙間なくサポートしてくれて、なおかつ窮屈さも感じさせない、素晴らしい仕上がりだ。

 

「鋭い凹凸の路面にも滑らかに足まわりが追随する様はさすがレクサスだ」

 

最初にステアリングを握ったのはRC F。レクサスらしく、荒れた路面でもロードノイズが低く抑えられ、ノコギリの歯のような鋭い凹凸の路面にも滑らかに足まわりが追随する様はさすがというしかない。サスペンションは全般的に柔らかめだが、滑りやすいコンディションを軽く流す程度のペースであればロールも小さく、安定した姿勢を崩さない。

 

ステアリング、スロットル、ブレーキに対する反応が鋭すぎないところも個人的には好み。「いやいや、スポーツモデルなんだから、このレスポンスはダルでしょ」と思う方はドライビングモードをスポーツ+に切り替え、アクティブ・デフを電子制御するTDVでスラロームを選択すれば、ステアリングもスロットルもそれまでよりもはるかにビビッドに反応してくれるはずだ。

 

ただし、濡れたワインディングロードを走っていて、ドライバーの背中をそっと押してくれるような安心感がついに得られなかったのも事実。別にコーナリング中にタイヤが滑ったわけでもないが、なぜかクルマに全幅の信頼を寄せることができなかった。この点はステアリングフィールがやや乏しいこととも関係があるのかもしれない。

 

シボレー カマロ SSのインテリア

マッチョでカッコいいカマロだが、運転していると横方向の大きさとボンネットの長さを実感する。右コーナーではAピラーとドアミラーの大きさが視界を遮るのも気になる点だ。また価格が安いとはいえ、ナビの装備はぜひ欲しいところ。

 

「高い剛性とソリッドな足まわりこそがカマロ SSの研ぎ澄まされた神経系を生む」

 

続いて最新のカマロ SSに乗り込む。頑丈なボディの印象は1年前に試乗した時とまったく変わらなかった。足まわりは硬めだが、微低速域では動き出しがスムーズでこわばった印象を与えない。この高い剛性感のボディとソリッドな足まわりが相まって、タイヤの動きと接地状態を素早く、そして細大漏らさずドライバーに伝える神経系ができあがったのだ。これこそ、カマロ SSが従来のアメリカ製スポーツクーペと決定的に異なる点であり、タイヤの限界を引き出すようなコーナリングを楽しめる最大の要因といえる。

 

ただし、RC Fから乗り換えるとランフラットタイヤがときにばたつき、鉄製のジョイント部を通過する際には瞬間的に接地性が薄れることが確認された。それはごくまれにしか体験できない例外的な現象であり、これをもってしてカマロ SSを断じるのはいささか不公平というもの。とはいえ、RC Fとカマロ SSの違いを敢えて際立たせるのであれば、前者は快適性を重視した結果としてステアリングフィールが乏しく、後者はスポーツ性重視のため足まわりの動きに粗さを感じると説明するのは間違いではなかろう。

 

ジャガー Fタイプ SVRのインテリア

初期型に比べると動的質感が大きく向上したFタイプ。デビューから6年経つが、まったく古さを感じさせない。またインテリアの質感の高さはさすが価格なりのことはある。

 

「Fタイプ SVRは他の2台よりもワンランク上の洗練を感じさせる」

 

いずれにせよ、湿ったワインディングロードで2台を走らせたときに軽い不安感に襲われたのは紛れもない事実。ところがFタイプに乗り換えるとそうした印象が一掃され、揺るぎない自信を持って操ることができたのは大きな驚きだった。しかも、走り始めた直後の、タイヤがひと転がりするかどうかという段階で早くもそう感じ取っていたのだから、クルマの挙動がどうかというよりも、もっと本能的な部分で「ああ、このクルマだったら信頼できる」と直感したことは明らかだ。

 

ただし、じっくりとFタイプの走りを観察してみれば、そうした直感が単なる先入観だけではなかったことが理解できる。サスペンションの“硬さ”という面でいえば、ジャガー・ランドローバーのスペシャル・ビークル・オペレーションが仕立てたFタイプSVRはRC Fよりもカマロ SSに近いポジションにいる。ただし、おそらくはバネ下重量がより軽量で、ダンパーのセッティングが巧妙なために、ステアリングフィールとロードホールディングの双方をより高い次元でバランスさせることができたのだろう。カマロ SSと違ってランフラットタイヤを履いていないことも、Fタイプにとって有利に働いていたはずだ。

 

シボレー カマロ SS、ジャガー Fタイプ SVR、レクサス RC Fの走行シーン

シボレー カマロ SSの6.2リッターV8 OHVは最高出力453ps/最大トルク617Nmを発生。今回の3車の中では唯一スーパーチャージャーを備えた5.0リッターV8を搭載するジャガー Fタイプ SVRは最高出力575ps/最大トルク700Nm、そしてレクサス RC Fは最高出力477ps/最大トルク530Nmを発揮する5.0リッターV8を採用する。

 

「いずれも充分以上のスペックを誇るがフィーリングは三者三様だ」

 

続いて高速道路で3台の動力性能を比較すると、RC Fはここでもマイルドなキャラクターを守り抜いた。排気量5.0リッターの自然吸気ユニットは477psと十分なパワーを生み出すが、8速ATのトルコンスリップが大きめなせいか、パワーがダイレクトに後輪へと伝えられる印象が薄く、フルスロットルを試してもどこか“フワッ”と加速していく。

 

一方のカマロ SSは排気量が6.2リッターとより大きいが、最高出力は453psでRC Fには及ばない。ところがスロットルペダルを床まで踏み込むと、高速道路でもトラクションコントロールの作動を知らせる警告灯が点滅し、それこそ背中を蹴飛ばされたような加速感が味わえる。この辺は617Nmの大トルク(RC Fは530Nm)に加え、反応が鋭く、トルコンのスリップをほとんど感じさせない最新10速ATの特性に負うところが大きいはずだ。

 

3台のなかで唯一過給エンジンを積むFタイプは575ps/700Nmのパフォーマンスを誇るが、カマロ SSのような過激なダッシュ力を生み出すことはなく、より洗練された加速感を示す。さらに、Fタイプの8速ATはRC Fよりはるかにダイレクト感に富んでいるし、エンジンの感触はカマロ SSよりも一段と緻密に感じられる。言い換えれば、純粋な速さというよりもクオリティ感のある動力性能といえるだろう。

 

シボレー カマロ SS、ジャガー Fタイプ SVR、レクサス RC Fのリヤスタイル

シボレー カマロ SS、ジャガー Fタイプ SVR、レクサス RC Fのリヤスタイル

 

「価格を言い訳にしないドライビング・ダイナミクスこそ、カマロ SSの真骨頂」

 

快適性の高いハイパフォーマンスカーが欲しいならRC Fを選ぶといい。ダイナミックな走りを楽しみたいならカマロ SSがお勧めだ。ただし、Fタイプ SVRはこの2台よりもワンランク上の洗練というか質の高さを感じる。もっとも、価格が圧倒的に高いのだから、それも当然というもの。そう考えると、カマロ SSのコストパフォーマンスの高さが改めて際立つ。いや、価格を言い訳にしていない優れたドライビング・ダイナミクスこそ、カマロ SSの真骨頂というべきである。

 

 

REPORT/大谷達也(Tatsuya OTANI)
PHOTO/田村 弥(Wataru TAMURA)

 

 

【SPECIFICATIONS】

シボレー カマロ SS

ボディサイズ:全長4785 全幅1900 全高1345mm
ホイールベース:2810mm
車両重量:1710kg
エンジンタイプ:V型8気筒OHV
総排気量:6153cc
最高出力:333kW(453ps)/5700rpm
最大トルク:617Nm(62.9kgm)/4600rpm
トランスミッション:10速AT
駆動方式:RWD
サスペンション:前マクファーソンストラット 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤ&ホイール:前245/40ZR20 後275/35ZR20
0-100km/h加速:4.0秒(0-60mph)
最高速度:-
車両本体価格:680万4000円

 

ジャガー Fタイプ SVR クーペ

ボディサイズ:全長4480 全幅1925 全高1315mm
ホイールベース:2620mm
車両重量:1840kg
エンジンタイプ:V型8気筒DOHCスーパーチャージャー
総排気量:4999cc
最高出力:423kW(575ps)/6500rpm
最大トルク:700Nm(73.2kgm)/3500rpm
トランスミッション:8速AT
駆動方式:AWD
サスペンション:前後ダブルウィッシュボーン
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤ&ホイール:前265/35R20 後305/30R20
0-100km/h加速:3.7秒
最高速度:322km/h
車両本体価格:1834万円

 

レクサス RC F

ボディサイズ:全長4705 全幅1850 全高1390mm
ホイールベース:2730mm
車両重量:1790kg
エンジンタイプ:V型8気筒DOHC
総排気量:4968cc
最高出力:351kW(477ps)/7100rpm
最大トルク:530Nm(54.0kgm)/4800-5600rpm
トランスミッション:8速AT
駆動方式:RWD
サスペンション:前ダブルウィッシュボーン 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤ&ホイール:前255/35ZR19 後275/35ZR19
0-100km/h加速:-
最高速度:-
車両本体価格:982万4000円

 

 

※GENROQ 2019年 3月号の記事を再構成。記事内容及びデータはすべて発行当時のものです。

 

 

【関連リンク】

・GENROQ  2019年 3月号 電子版

※雑誌版は販売終了