最速のSUV、ベントレー ベンテイガ スピード! その懐の深さと揺るぎない価値を味わう 【Playback GENROQ 2020】

公開日 : 2021/04/02 17:55 最終更新日 : 2021/04/02 17:55

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ベントレー ベンテイガ スピードの走行シーン

Bentley Bentayga Speed

ベントレー ベンテイガ スピード

 

 

秘めたる獰猛さはスイッチひとつで顕現する

 

史上最速のベンテイガがついに登場した。6.0リッターW12ツインターボは最高出力635psを達成し、0-100km/h加速3.9秒という驚異の俊足を誇る。品の良さと獰猛性を併せ持つ「スピード」の実力とは?

 

ベントレー ベンテイガ スピードの走行シーン

プレミアムブランドのSUVを代表するベントレー ベンテイガのラインナップに、さらなるパフォーマンスアップを約束する「スピード」が追加された。

 

「ベントレーらしい極上の乗り心地とスポーツカーの走りを同時に味わえる」

 

いつの時代も極上の1台にすら満足しない人はいるものだ。21世紀のベントレーのひそみに倣ってベンテイガにもハイパフォーマンスモデルの「スピード」が登場すると予測するのは容易い。けれど実際に機関車のように大きなボディを目の当たりにすると、スピードという単語と結びつかないというのが正直なところ。

 

今回のベンテイガ スピードは、ボディカラーのインパクトもけっこうなものだった。アズール・パープルと呼ばれる華やいだ色味がほどよく主張し、夕暮れから夜へと向かっていくライトアップされた大手町の街並みにうまく溶け込んでいた。

 

ベンテイガ スピードがいくぶんシャコタンに見えるのは、フロントのエアダムやサイドシルの下に追加されたエアロパーツの効果が大きい。普通SUVはラフロードにおけるアプローチアングルやデパーチャーアングルを考慮し、ボディの下段にエアロを追加しないものだ。そんな掟を破ってまでベンテイガ スピードが手に入れたかったのは、超高速域におけるスタビリティに違いない。またルーフエンドに追加されたスポイラーもベントレーのそれとしては大型の部類で、真ん中を支柱で支えているあたりに強大なダウンフォースの存在が感じられる。

 

ベントレー ベンテイガ スピードのインテリア

インパネにアルカンターラ素材を用いることで高級感とスポーティさを両立させている。シートやドアパッドに採用されるダイヤモンドキルトが非常に優雅だ。

 

「最高速度はランボルギーニ ウルスを1km/h上回り、SUV界最速」

 

ベントレーが掲げたベンテイガ スピードの最高速はなんと306km/hにもなる。これはランボルギーニ ウルスを1km/h上回り、SUV界最速の数値となっている。

 

紫のボディに星屑のようにライトアップが反射する瀟洒な佇まいからは、300km/hオーバー、0-100km/h加速3.9秒という圧倒的なポテンシャルなど微塵も感じられないのだが、ともあれまずはゆったりと流れる首都高に紛れてみた。

 

室内で目立つのは、ステアリングやシートの中央部分にアルカンターラが奢られている点だろう。ビロードのような質感も美しいが、シートのホールド性が上がるし、ステアリングの感触もよりスポーティになる。

 

ベントレー ベンテイガ スピードのエンジン

標準モデルより27psアップの最高出力635psを誇る6.0リッターW12気筒ツインターボ。最高速度は301km/hから306km/hに向上している。

 

「スポーツモードで覚醒するベンテイガ スピード」

 

コンフォートモードで流して走っている限り、ベンテイガ スピードはまったくその本性を現さない。6.0リッターのW12エンジンは、標準モデルのそれに比べ27ps増しの635psを発揮するが、それなりにエンジンを回さないと違いは看破できまい。

 

サスペンションに関しても、低速で走る限り、標準のベンテイガとの違いは判然としなかった。「コンフォート」やベントレー推奨の「B」という2つのモードを試したのだが、なんとなくスポーティになったような気もするし、そうでもないような気もした。波のないフラットな海面近くを滑空するカモメのようにヒタヒタと進むが、それは「いつものベントレーと一緒」なのである。ベンテイガ スピードは日本市場にわずか20台だけ導入される限定車なのだが、もしかしてちょっとしたコスメティックモデルに過ぎないのか?

 

横浜ベイブリッジが見えてきた頃、ようやく道が空きはじめた。「コンフォート」モードのままスロットルを深く踏み込むと、さすがにダンピングが足りないように思えたので、一気に「スポーツ」モードを指定してみた。するとブァンッと鋭いブリッピング音を伴ってシフトダウンが完了し、ステアリング越しに伝わってくるリニアリティも急激に増した。ベンテイガ スピードが「スポーツ」モードで覚醒したのだ。

 

ベントレー ベンテイガ スピードのドライブモードスイッチ

センターコンソールに備わるドライブモード選択スイッチを操作することで、ドライブフィールは激変する。スポーツモードを選択するとロールが抑制され、減衰力が高められる。

 

「ロールの抑え込み具合が、往年のハイドロ・シトロエンのように理想的」

 

空気を切り裂くような加速は圧倒的だが、特にリヤが沈み込むようなことはない。ターボラグもシフトショックも感じさせないまま、まるでEVのようにスピードメーターの針だけが急上昇していく。

 

ベンテイガ スピードの走りの中で特に凄いと感じたのは高速コーナーだった。ステアリングがグッと重みを増し、横Gが容赦なく立ち上がり、ほとんどロールしないまま路面に吸い付くように走り抜ける。

 

最初は追加されたエアロが発生するダウンフォースなのかと思った。けれどすぐに48Vシステムで起動するベントレーダイナミックライドと高められた可変ダンパーの減衰力が、ロールを抑えつけているのだということに気づいた。なにしろ乗り心地の良さに対するロールの抑え込み具合が、往年のハイドロ・シトロエンのように、明らかに「変」というか理想的過ぎるのである。

 

ベントレー ベンテイガ スピードのリヤスタイル

ベンテイガ スピードを試乗した筆者は「巨大なSUVなのに路面にへばりつくようにコーナリングし、スポーツカーのアシと極上の乗り心地という対極にある性能をモード切替によって完璧に使い分けられる」と、その懐の深さを高く評価した。

 

「SUVに乗っているという事実をすっかり忘れそうになる」

 

フロントに追加された電動油圧のスタビライザーが、全高1750mmは下らない、豪華なインテリアを内包する上屋の重みを支える様子は芸術的ですらある。ロールが抑えられることで、車体が沈み込んでいるように感じられ、ハンドリング自体がより敏感でスポーティな状態になっているのがわかる。

 

盤石のスタビリティに気を良くして、シフトパドルでバシバシとシフトダウンを決めてコーナーを攻めはじめると、失礼ながらベントレーの、しかもSUVに乗っているという事実をすっかり忘れそうになる。こちらが「飛ばそう」と思うまでもなく、けっこうペースが上がってしまっているのだ。「スピード」とはうまいネーミングだなぁ、なんて今さらながらに感心させられた。

 

とはいえベンテイガ スピードの真価は、スポーティなコーナリングや300km/hオーバーの最高速のような尖った部分だけにあるのではない。巨大なSUVなのに路面にへばりつくようにコーナリングし、スポーツカーのアシと極上の乗り心地という対極にある性能をモード切替によって完璧に使い分けられる。それこそがベンテイガ スピードが持つ大きな振り幅と、揺るがない価値なのである。

 

 

REPORT/吉田拓生(Takuo YOSHIDA)
PHOTO/小林邦寿(Kunihisa KOBAYASHI)

 

 

【SPECIFICATIONS】
ベントレー・ベンテイガスピード
ボディサイズ:全長5150 全幅1995 全高1755mm
ホイールベース:2995mm
車両重量:2414kg
エンジン:W型12気筒DOHCツインターボ
総排気量:5945cc
最高出力:467kW(635ps)/5000-5750rpm
最大トルク:900Nm(91.8kgm)/1500-5000rpm
トランスミッション:8速AT
駆動方式:AWD
サスペンション形式:前ダブルウィッシュボーン 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ:前後285/40ZR22
車両本体価格:3000万円

 

 

※GENROQ 2020年 3月号の記事を再構成。記事内容及びデータはすべて発行当時のものです。

 

 

【関連リンク】

・GENROQ  2020年 3月号 電子版

※雑誌版は販売終了