ポルシェ911の真髄は後席に宿る? 空冷ポルシェオーナーがタイプ992を考察【Playback GENROQ 2020】

公開日 : 2021/04/26 17:55 最終更新日 : 2021/04/26 17:55

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ポルシェ911 カレラSの走行シーン

Porsche 911 Carrera S

ポルシェ911 カレラS

 

 

過去を知り、今を思う

 

多くのメディアでも語られているように、新型911の評価はすこぶる高いようだ。長い歴史を持つ911は従来のモデルとの比較論で語られることが多いのも事実。空冷最終モデルであるタイプ993を所有するジャーナリスト・山田弘樹と本誌編集長・永田元輔の2人は、タイプ992に何を感じたのだろうか。

 

ポルシェ911 カレラSの走行シーン

新型911はフロント20インチ、リヤ21インチを標準装備。試乗車のPCCBはオプションで、標準装備は350mmのスチールローターとなる。リヤのロゴは立体的なものとなり、全モデルのテールライトが左右でつながった。トレッドも広がり、見た目でもワイドさを実感する。

 

永田元輔「水冷911は空冷とは別のクルマと思っていた」

 

永田元輔(以下・永田) 僕は911が水冷になって、決して嫌いではないけれど『空冷とは別のクルマになったな』って思ったんです。万能のGTカーになった。だからよいクルマだとは思っても、個人的な興味はそれほどなかったんですよね。

 

山田弘樹(以下・山田) ポルシェは昔から911にGTを求めていたけれど、空冷時代はもっとスポーツカーに寄っていましたからね。そして僕たちも、911がスポーツカーであることに憧れていた。

 

永田 はい。でも992が登場してこの塊感とか、ステアリングの剛性感とかを感じ取ったとき、993の“あの感覚”に近くなってきたな・・・って思ったんですよ。

 

山田 戻ってきたな! って。

 

永田 そう。そしてこれは我々のような空冷乗りにとっても、喜ばしいことじゃないかと思うんです。

 

山田 それが今回のテーマですね。ポルシェの開発陣も、そこに戻そうとしている気がしますよ。

 

永田 そうなんです、このメーターのデザインとか。そこが僕としても、とても嬉しいところなんです。

 

ポルシェ911 カレラSのインテリア

空冷時代の5連丸メーターを再現したようなインパネまわりは従来からのファンにも評判が良いようだ。タコメーターのみアナログ針を残している。

 

山田弘樹「ボディのポテンシャルはすごく高い。空冷マニアも納得するはず」

 

山田 新型992、空冷ファン目線でもいいですよね!

 

永田 993を手放してまで欲しいとは思わないんですが(笑)、水冷への気持ちは大きく変わりました。まずステアリングフィールがすごくいい。手応えがビシッとしていて、狙い通りに動かせる。街中も気持ち良いけれど、山道はもっといいですよね。塊になって動いている感じ。まさに人とクルマが一体になって走る感覚です。ただ、RRらしさはあまり感じないんですよね・・・。

 

山田 後ろから強く押し出される感じはなくなりましたね。もっと高い領域ではRRの影響も出て来るんですが。とはいえFRとは明らかに違うフロントの軽さは、スーパースポーツの領域です。それでいて接地感が高いんだから、呆れてしまう。

 

永田 フロントにきちんと荷重を乗せてやって、向きを変えて、ガーンとトラクションを掛けるという乗り方は空冷と同じ。911のセオリー通りに運転してあげると、とても楽しいです。ただ993はもっとセンシティブじゃないですか? あの冷や冷や感も実は楽しくて、それが薄まってしまったのは少し残念。

 

山田 992は盤石ですからね。速度が上がるほどにその感覚は出て来るんですが、それが普通では体験できない領域になってしまったんです。普段はしなやかな足まわりのせいで意識しないけれど、このボディはものすごいポテンシャルを秘めてますよ。これでGT3が出たらどうなっちゃうんだろ!? って思います。

 

永田 GT3は楽しみですね!

 

ポルシェ911 カレラSの走行シーン

空冷ポルシェ911の最終型(タイプ993)を長年所有し続けている『GENROQ』誌の永田編集長。タイプ992は初めて欲しいと思えた水冷911だと語る。

 

永田元輔「空冷時代を感じさせる演出もいい。水冷になって、初めて欲しいと思った」

 

山田 カレラSでも十分にサーキットを走って楽しめる実力はあると思うんですけどね。この走り、空冷マニアも納得できますよね?

 

永田 納得すると思います。僕も水冷になって初めて欲しい! と思いましたから。欲を言えば、やっぱりもう少し小さいといいんですが。

 

山田 昔ポルシェは、小さくて速いクルマだったんですよね。それこそ993が現役のとき僕はハチロクに乗っていたんですが、隣に並ぶとそんなに大きさが変わらなかったのにとっても驚いた記憶があります。

 

永田 実は全幅も1730mmしかないですからね。

 

山田 それでいてボディはガッシリしていて、速い。エンジンも鋭く吹け上がる。僕たちが空冷を手放さない理由って、結局そこですよね。この小ささと速さと気持ち良さ。それに変わるモノがないんです。

 

永田 そうなんですよ。ただ、それを今求めるのは違うと思います。

 

ポルシェ911 カレラSの走行シーン

憧れていたタイプ993の空冷911を手に入れ、普段のアシとしても使っているというモータージャーナリストの山田弘樹氏。993時代より遥かに大きくなった992に対しても肯定的な意見を述べる。

 

山田弘樹「ボディの拡大は正常な進化の結果だとわかる」

 

山田 もし911が空冷サイズのまま進化を遂げていたら。これはクルマ好きの間でよく言われることですが、それも僕は違うと思うんですよ。あの小さなサイズのまま、現代のスーパースポーツたちに対抗できるのか? 今のような高性能ターボエンジンを積んで、まともに走れるのか? それって絶対無理だと思います。見栄えという点でも、他のオーナーに『911、小さくていいクルマだよね』なんて言われたくない(笑)。そこまで想像すると、今の進化が正常であるとがわかります。

 

永田 でも911がモデルチェンジする度にいつも思うんですが、ボディはでかくなっても、後席はまったく広くならないんですよ(笑)

 

山田 確かに!! このリヤシート、未だに大人は絶対に座れないですよ。なるほどそこにこそ、911のアイデンティティがあるのか。日本メーカーが911を造ったら、モデルチェンジごとに『リヤの居住性が良くなりました!』なんて言いそう。

 

永田 子供なら座れますよ(笑)。昔はそうやって使ってました。

 

ポルシェ911 カレラSのフロントスタイル

今回、ふたりの空冷911オーナーが自らの愛車と比較するため試乗したのは、3.0リッター水平対向6気筒ツインターボを採用した911 カレラS。冷却方式こそ水冷となったが、リヤアクスル後方にエンジンを懸架する「リヤエンジン・リヤ駆動」を頑なに守るなど「ポルシェ911」らしさが連綿と受け継がれていることを再認識した。

 

永田元輔「スポーツ性と実用性をこれほど高レベルで実現したクルマは他にない」

 

山田 それは理想的な911の使い方だなぁ。僕はひとり身なので、リヤスペースは荷物置きに使っていますが、容量的には十分です。これはつい最近知ったのですが、993もフロントには機内持ち込み用のスーツケースが横置きで入る。992なら縦でも入るんじゃないですか? 荷物をスマートに収納できることって、仕事をする男にとっては結構重要で、そこも911のすごいところだと実感しています。ポルシェとしてはこのスペースを維持しながら、それ以上はボディ剛性の低下につながるから広くしない。それこそが911をスポーツカーとして成立させている、伝統的な絶対条件かもしれない。いやぁ・・・話せば話すほど992が欲しくなってきちゃいましたよ。

 

永田 スポーツ性と実用性をこれほど高レベルで実現したクルマは他にないですよね。

 

 

REPORT/山田弘樹(Koki YAMADA)
PHOTO/小林邦寿(Kunihisa KOBAYASHI)

 

 

【SPECIFICATIONS】

ポルシェ911 カレラS

ボディサイズ:全長4519 全幅1852 全高1300mm
ホイールベース:2450mm
車両重量:1590kg
エンジン:水平対向6気筒DOHCツインターボ
総排気量:2981cc
最高出力:331kW(450ps)/6500rpm
最大トルク:530Nm(54.0kgm)/2300-5000rpm
トランスミッション:8速DCT
駆動方式:RWD
サスペンション形式:前マクファーソンストラット 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ:前245/35ZR20 後305/30ZR21
最高速度:308km/h
0-100km/h加速:3.7秒
車両本体価格:1696万8519円

 

 

※GENROQ 2020年 4月号の記事を再構成。記事内容及びデータはすべて発行当時のものです。

 

 

【関連リンク】

・GENROQ  2020年 4月号 電子版

※雑誌版は販売終了