旅するフェラーリ、GTC4 ルッソ。フェラーリ流グランドツーリングとの付き合い方を探る 【Playback GENROQ 2017】

公開日 : 2021/05/03 17:55 最終更新日 : 2021/05/03 17:55

AUTHOR :

フェラーリ GTC4 ルッソのフロントスタイル

Ferrari GTC4 Lusso

フェラーリ GTC4 ルッソ

 

 

ルッソの真相

 

フェラーリの最新4シーター&4WDモデル、GTC4 ルッソが遂に日本上陸を果たした。実質、FFのビックマイナーチェンジ版とはいえ、その中身は4WSなど注目すべき点は多い。着実に進化するこのグランドツアラーは果たして如何なる出来なのか。その真相に迫る。

 

フェラーリ GTC4 ルッソの走行シーン

シューティングブレークスタイルと4シーターレイアウト、そして4WDシステムを備えたフェラーリ フォー(FF)から進化を遂げ、新たにGTC4 ルッソを名乗るグランドツーリングモデル。今回はGT性能を見極めるため長距離試乗へと駆りだした。

 

「探るべきは4RM-Sによる走行性能。FFからの進化は如何なるレベルなのか」

 

今からちょうど1年前、ジューネーブ・ショーでワールドプレミアされた「フェラーリ GTC4 ルッソ」が、ようやく日本上陸を果たした。基本的には、FF(フェラーリ フォー)の進化版とはいえ、その中身は技術的な面において興味深い内容が揃っているだけに個人的にこの日が来るのを長い間待っていた。特にFFで忘れられないのは、秋田までウインタードライブした時、大雪に見舞われたにも関わらず、予想を超える走行性を体験したから、その新作となれば当然、期待は大きい。その想いもあって今回も雪国を求めて北上することにした。

 

とはいうものの、このテストカーにウインタータイヤが装着されているわけではない。従来のピレリPゼロである。決して無茶をするつもりはないが、ただ、進化した4WDシステムの4RM-Sと新たに設けられたリヤアクスルステアを試すには、多少はオーバーアクションが許されるシーンを選ぶ必要があった。そこで目的地に選んだのは、確実に除雪されているスキー場。幸いにしてこの日の前週こそ大雪に見舞われたものの、その後は気温が上昇し、ほぼドライ路面でスキー場までアクセスできる長野のとある場所を探すことができたから、早速そこにルッソのノーズを向けてスタートした。

 

フェラーリ GTC4 ルッソの走行シーン

タッチパネル式の10.25インチモニターの他に助手席には8.8インチモニターも用意(オプション)。速度計の他に走行モードやナビゲーションの指示を表示するなどエンターテイメント性の高い演出が特徴だ。

 

「フェラーリらしいとは言い難いというのが第一印象となった」

 

首都高速を抜け、中央道を経由して移動を開始したが、時間帯的に渋滞は避けられなかった。だが、こうしたゴー&ストップを繰り返すような場面でもナーバスな一面は一切見せないのは昨今のフェラーリ同様。デュアルクラッチ式の7速F1マチックも確実に進化しているとあって、微妙な速度を求められる都市部でも半クラッチ操作を巧みに繰り返す。この点は、FFよりもスムーズ感が増していると言えるだろう。

 

ただ、この時、同時に気づいたのはエキゾーストノートに対する違和感。先代よりも排気音が室内にこもりやすい。エキゾーストシステムも改良され、高い効率性とタウンユースでの使用に配慮してボリュームを控えめにした快適性重視のサウンドを作り出したとフェラーリは主張するが、少なくとも60km/h以下では、正直、疑問が残る。ハッチバックスタイルだからこうした現象は起こりやすいのだが、FFではそんな印象をもたなかったと思うと・・・、微妙である。それにV12エンジンも“眠い”印象だ。曇ったエキゾーストノートと、はっきりしない湿っぽいエンジンだからフェラーリらしいとは言い難いというのが第一印象となった。

 

フェラーリ GTC4 ルッソのエンジン

6.3リッターV12は最高出力690ps/最大トルク697Nmのハイスペックを誇る。最高速度は実に335km/h、0-100km/h加速3.4秒に及び、4RM-Sによって4WD走行をこなす。

 

「マネッティーノをスポーツモードに入れると印象は一変した」

 

しかし、そんなネガティブな面からはじまってしまったものの、この後は違った。上信越自動車道に差し掛かると目の前は徐々にクリアになっていき、ようやく高速域で試せるシーンが訪れると同時に、ステアリングに設けられたマネッティーノをスポーツモードに選択、アクセルを深く踏み込むと──。さすがはフェラーリ製V型12気筒、自然吸気ユニットである。実質、FFと同一のエンジンではあるが、燃焼室の改善と素材を見直したというピストン、そして着火性にも改良を加えたというだけあり、全体のフィーリングこそ同じものの、レスポンスは確実に鋭くなっている。

 

数値的にはパワーで30ps、トルクで14‌Nm向上と驚くほどの進化ではないが、それでも690ps&697Nmと強力。FFの加速力と比較すると“体感的”に速く感じられるようになっている。エンジン音もスポーツモード&高回転域ではバイパスバルブが解放されるとあって、フェラーリらしい“快音”が聴けるようになる。アクセル開度と実速度によっては変速スピードが素早くなるだけに、胸のすくような走りを満喫できるのだが、しかし、レーンチェンジを行うと、2つ目の疑問を抱くことになった。

 

フェラーリ GTC4 ルッソのインテリア

全体的にスポーティさが強調されたコクピット。ステアリング形状も変更され、ウインカースイッチも2段階式に改められるなど機能性が向上。

 

「高速でのレーンチェンジにおける後輪操舵に関しては、正直、違和感あり」

 

曲がり過ぎる──。GTC4 ルッソ、最大の特徴となる4RM-Sは、ギヤボックスと電子制御のEデフ、そしてサイドスリップ・コントロールに(他にダンパーも含まれる)、後輪操舵システムを組み合わせ、統合制御される仕組みだが、こうした高速でのレーンチェンジにおける後輪操舵に関しては、正直、違和感あり。低速では逆位相、高速では同位相を基本としつつも、状況によっては高速域でも反転制御を行うというのが要因かもしれない。とにかく予想を超えてノーズが入り過ぎる印象だ。

 

それは高速道路を降りて最終目的地に向かうまでのワインディングでも同じだった。除雪されているとはいえ、所々、路面にはまだ雪が残っている状況下での走行となったから、ここからさらに深くテストできるとあって真剣に向き合いながら走り続けるものの、どうも車両との対話がうまくいかない。端的にいうならリズミカルに攻められない、という印象だ。舵角とアクセル開度、さらにギヤの選択も含めて微調整しながら何度も試したが、どうしても車両との間に温度差を感じてしまう。狙ったラインよりもさらに速く、深くインをつくため、常に唐突さと付き合わされる。これには後輪操舵の他に、ステアリングのギヤ比やEデフの制御も微妙に絡んでくるから、はっきりとした要因は言い切れないものの、少なくとも高速コーナーからタイトターン、どの状況であっても同じ印象を受けたのは事実である。

 

フェラーリ GTC4 ルッソのシート

広大な面積を誇る、開放感溢れるパノラミックグラスルーフは是非とも選択したいオプション。シート形状はGTのコンセプトに相応しく適度なサポート性と快適性を両立している。後部座席の足元が16mm拡大されたのも話題だ。

 

「完全にアプローチを変えることを要求されるのがGTC4 ルッソとの付き合い方」

 

だが、距離を伸ばすにつれ、打開策を見出すこともできた。即ち、完全にアプローチを変えることを要求されるのがGTC4 ルッソとの付き合い方。いつもよりもエイペックスポイントを奥に設定し、一気にステアリングをきってターンインするよう心がければコーナーをクリアできるようになる。これは、ほぼポルシェ911の走らせ方に近いかもしれない。つまり、コンセプトこそGT=グランドツアラーと謳いつつも、コーナリングに関してはリアルスポーツカー的なアプローチを望まれるようで、本気モードで挑まないと違和感しか残らないというのが実情だろう。だから自ずと旋回速度を上げざるをえないことになる。ただし、全体的にアンダーステア傾向が見られることも付け加える必要がある。だから意外とシビアなドライビングを望まれるのは確かだ。決して悪いとは言わないが、慣れるには時間がかかりそうな仕上がりである(それでも高速でのレーンチェンジに関する疑問は残ったままだから完全に理解できたわけではないのだが)。

 

とはいえ、だからこそトラクション性能に関しては確実に向上しているのも同時にわかった。FFから受け継がれた簡易型4WDシステムのPTU(パワー・トランスファー・ユニット)は1速から4速のみ4輪駆動となるものの、その制御力は明らかにFFよりも上。時折、通過するわずかに残る雪上を走ると、フロント駆動に助けられると同時に、トラクションに関する基本性能の高さを露わにしたから、さすがは最新フェラーリだと思わせる部分もある。

 

フェラーリ GTC4 ルッソのリヤスタイル

ハンドリングやエンジンフィールなど少なからず今までのフェラーリとは異なる印象をもった筆者だが「この快適性と装備をもつなら積極的に付き合いたくなる最新のフェラーリかもしれない」と感想を漏らす。

 

「著しく向上した快適性と機能的な装備。これなら旅にも出たくなるはずだ」

 

その点で言えば、快適性能が著しい向上を見せていることも忘れてはならない。マグネティックライドの設定を見直したのだろう、段差を乗り越える時でも極力、衝撃を抑え込もうとする動きを頻繁に見せるとあって不快感はほとんど得られない。それに加え、インフォテインメントシステムが改められたのも嬉しい進化だ。贔屓目に見てもこれまでフェラーリのナビゲーションは、決して褒められるものではなかったが、ルッソになって10.25インチのフルハイビジョン、しかもタッチパネル式のモニターを採用するとあって使い勝手も抜群。目的地の検索なども含めて、最新の他車にもひけをとらないほどの高性能を誇る。

 

だから日常はもちろん、遠出する気にもなるはずだ。この快適性と装備をもつなら積極的に付き合いたくなる最新のフェラーリかもしれない。今回は、ややネガティブな印象を抱いてしまったが、これに関しては、そう遠くないうちにもう一度向き合って考えようと思っている。慣れなのか、それとも乗り手がもっと歩み寄るべきなのか・・・。検証する価値は十分にありそうだ。

 

 

REPORT/野口 優(Masaru NOGUCHI)
PHOTO/小林邦寿(Kunihisa KOBAYASHI)

 

 

【SPECIFICATIONS】

フェラーリ GTC4 ルッソ

ボディサイズ:全長4922 全幅1980 全高1383mm
ホイールベース:2990mm
車両重量:1920kg
前後重量配分:47:53
エンジン:V型12気筒DOHC48バルブ
圧縮比:13.5
ボア×ストローク:94×75.2mm
総排気量:6262cc
最高出力:507kW(690ps)/8000rpm
最大トルク697Nm(71.0kgm)/5750rpm
トランスミッション:7速DCT
駆動方式:AWD(4速迄)
サスペンション形式:前ダブルウィッシュボーン 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
ディスク径:前398×38 後360×32mm
タイヤサイズ(リム幅):前245/35ZR20(8.5J) 後295/35ZR20(10.5J)
最高速度:335km/h
0-100km/h加速:3.4秒
CO2排出量:350g/km(EU複合)
燃料消費率:15.3L/100km (EU複合)
車両本体価格:3470万円

 

 

※GENROQ 2017年 5月号の記事を再構成。記事内容及びデータはすべて発行当時のものです。

 

 

【関連リンク】

・GENROQ  2017年 5月号 電子版

※雑誌版は販売終了