「ポルシェ911カレラRSR ターボ2.14(1974)」偉大なる911ターボの祖先《ポルシェ図鑑》

公開日 : 2021/05/03 06:30 最終更新日 : 2021/05/03 06:30


ポルシェ図鑑「1974 ポルシェ911カレラRSR ターボ2.14」

1974 Porsche 911 Carrera RSR Turbo 2.14

1974 ポルシェ911カレラRSR ターボ2.14

 

 

911にターボの先鞭をつけた歴史的モデル

 

ポルシェ911カレラRSR ターボ2.14は、1974年のル・マン24時間で2位入賞を果たしたスポーツプロトタイプ。後の930ターボの礎にもなった記念碑的なマシンでもある。

 

1974年3月24日に行われたル・マン・テストデイにポルシェ・ワークスであるマルティニ・レーシングは1台の見慣れない911をエントリーさせた。その基本的なボディワークこそ911カレラRSR 3.0をベースにしていたが、リヤフェンダーは思いっきり広げられ、背後には車幅いっぱいの巨大なリヤウイングが装着されていた。

 

しかしこの“特別なRSR”最大のトピックは他にあった。なんとそのエンジンベイにはターボチャージャー付きの空冷フラット6が搭載されていたのである。

 

ポルシェ図鑑「1974 ポルシェ911カレラRSR ターボ2.14」

ポルシェ・ミュージアムに展示されている1974年型のカレラRSR 3.0。ワークスではなくプライベーターの手によって各レースに参戦。カレラRSR ターボ2.14のベースにもなった。

 

無敵を誇ったカレラRSR 3.0

 

話は2.8リッターのカレラRSRが大成功を収めていた1973年シーズン中に遡る。ヴァイザッハの研究所では911カレラRSRの更なる発展、改良作業が進められていた。その答えのひとつが、翌1974年シーズンに向けGシリーズの911をベースに3.0リッター化した空冷フラット6を搭載するグループ3マシン、911カレラRSR 3.0だ。

 

グループ3は年間1000台の生産義務が課せられていたが、すでにその資格をもつカレラRS 2.7のエヴォリューション・モデルということで、100台が製造された時点(最終的には50台のレース仕様、59台の公道仕様を製造)で公認されたカレラRSR 3.0は主にプライベーターに託され、1975年のデイトナ24時間レースで総合優勝するなど、世界中のレースで活躍する成功作となった。

 

その傍らでポルシェの技術陣はさらに先を見据えた911の開発にも着手していた。それが911カレラRSR ターボ2.14である。

 

ポルシェ図鑑「1974 ポルシェ911カレラRSR ターボ2.14」

ポルシェ・ミュージアムに常設展示されている911カレラRSR ターボ2.14。ゼッケン8はモンツァ1000kmやスパ1000km時のナンバーで、ル・マン2位入賞車は22番だった。

 

限界を迎えたNAの3.0リッター水平対向6気筒に代わる施策

 

彼らがその開発に取り組み出したのは、世界メイクス選手権のタイトルが近いうちにプロトタイプ・レーシングカーではなく、市販車ベースの改造車に懸けられるという情報を入手していたからだと言われている。

 

諸々の問題を克服して、3.0リッター化を達成していたフラット6であったが、それ以上の排気量拡大には自ずと限界が見えていた。そこでモアパワーを目指した彼らが目をつけたのが、すでに北米Can-Amシリーズで917/10、917/30に搭載され成功を収めていたターボ技術だったのである。

 

ポルシェ図鑑「1974 ポルシェ911カレラRSR ターボ2.14」

500hpのパワーを受け止める巨大なリヤウイングが特徴的なリヤビュー。徹底した軽量化の結果、ホワイトボディの重量はカレラRSR 3.0より71kgも軽く仕上がっていたという。

 

ターボ化した2.14リッター水平対向6気筒は500hpを発揮

 

当時のメイクス選手権は3.0リッター規定で行われていたため、レギュレーションで定められた過給機の係数1.4を掛けて3.0リッターに収まるようにフラット6の排気量を2142ccへとダウンし、最大過給圧1.3~1.4barのKKK製のシングルターボチャージャーが装着された。

 

その最高出力はRSR 3.0の330hpを遥かに上回る500hpを記録。その大パワーに合わせ、906のチタン製コンロッドや、917用のドライブシャフトを流用するなど各部が強化されていたが、クランクシャフトは市販の2.0リッター用がそのまま使われていたという。

 

ポルシェ図鑑「1974 ポルシェ911カレラRSR ターボ2.14」

1974年のル・マン24時間を走るカレラRSR ターボ2.14の22号車。マトラを抑えてトップを快走したものの、日曜の昼前に5速ギヤを失い2位に留まった。

 

ル・マンの活躍を礎に911ターボへの道筋を拓く

 

マトラ MS670C、アルファロメオ TT12と同じプロトタイプ・レーシングカーにカテゴライズされたカレラRSR ターボ2.14は4月のモンツァ1000kmでデビューし、幸先のいい5位入賞を飾ったほか、スパ1000kmで3位、ニュルブルクリンク1000kmでも6位と高成績を残した。

 

そして迎えたル・マン24時間には2台のカレラRSR ターボ2.14がエントリー。21号車はエンジントラブルでリタイアしてしまったが、7番グリッドからスタートしたガイス・ファン・レネップ/ヘルベルト・ミューラー組の22号車は大方の予想を裏切りトップを快走。日曜の昼前に発生したギヤボックストラブルの影響で2位入賞にとどまったものの、自信を得たポルシェはターボ化を推進。930ターボや934、935といったモデルの誕生に繋がることになる。

 

 

TEXT & PHOTO/藤原よしお(Yoshio FUJIWARA)

COOPERATION/ポルシェ ジャパン(Porsche Japan KK)

 

 

【SPECIFICATIONS】

ポルシェ911カレラRSR ターボ2.14

年式:1974年

エンジン形式:空冷水平対向6気筒SOHCターボ

排気量:2142cc

最高出力:500hp

最高速度:300km/h

 

 

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