0-62mph加速は2.8秒! エアレースシリーズ「エアスピーダー・グランプリ」実戦仕様の製造がスタート 【動画】

公開日 : 2021/05/30 12:10 最終更新日 : 2021/05/30 12:10

エアレースシリーズ「エアスピーダー・グランプリ」実戦仕様の製造がスタート

Airspeeder Mk 3

エアスピーダー Mk 3

 

 

2022年からは有人飛行仕様でのレースを開催

 

2019年のグッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードにおいて、エアレースシリーズ「エアスピーダー・グランプリ(Airspeeder Grand Prix)」は、レースに使用されるオクトコプター「エアスピーダー Mk 3」のプロトタイプを公開した。現在、2021年後半のレース開催に向けて、実戦仕様のエアスピーダー Mk 3の製造が開始された。

 

エアスピーダー Mk 3は無人ドローンとして開発されており、パイロットは遠隔操作でレースを行う。当初、2020年から新シリーズが立ち上がる予定だったが、新型コロナウイルス(COVID-19)の世界的な流行により2021年に延期。2022年には有人操縦仕様の「エアスピーダー Mk 4」による有人レースの開催も計画されている。

 

エアスピーダー・グランプリと、開発・製造を担当するアラウダ・エアロノーティクス(Alauda Aeronautics )を立ち上げたマシュー・ピアソンCEOは、現在の状況について、次のようにコメントした。

 

「黎明期のメルセデス、ベントレー、ルノーにはレーシングカーが数多く存在していました。自動車メーカーの先駆者たちはモビリティ革命を起こすために、レース用マシンが有用だと考えていたのです。エアスピーダーもまた、この哲学を誇りを持って掲げています」

 

「先進的なエアモビリティ技術の進化を加速させるためには、モータースポーツの活用が不可欠です。エアスピーダー Mk 3は、究極の性能を持つ空飛ぶ電気自動車をつくるという純粋な目的のために、何年も研究・開発やテストを行ってきました」

 

エアレースシリーズ「エアスピーダー・グランプリ」実戦仕様の製造がスタート

黎明期の自動車がそうであったように、コンペティションの世界で競うことで、技術が飛躍的に進化するとマシュー・ピアソンCEOは考えている。

 

エアモビリティの進化にはコンペティション が必要不可欠

 

エアスピーダーは、激しい競争が繰り広げられるモータースポーツを通じ、先進的なエアモビリティ革命を加速させることを目標に掲げている。黎明期の自動車も革新的な新技術を採り入れたレーシングカーによる競争を繰り広げることで、長足の進化を遂げたのは周知の事実だからだ。

 

2021年後半にも開幕する世界初のエアレースの詳細はこの夏にも発表される予定。3大陸での開催を予定している実戦に向けて、エアスピーダーの姉妹会社であるアラウダ・エアロノーティクスでは、南オーストラリアのアデレードのファクトリーにおいて10機のエアスピーダー Mk 3が製作されている。

 

「デザインに関しては、1950年代から1960年代にかけてのレーシングカーのクラシカルなフォルムを探りました。この時代は、技術的・空力的な要求に加えて、美しさが求められていました。デザイナーとして、これ以上の出発点はないでしょう。紙上のビジョンから始まったものが、空へと飛び出していくのを見るのは興奮します。私の夢はもはや私ひとりのものではなく、今では世界にインスピレーションを与える素晴らしい現実となりました」と、ピアソンCEOは付け加えた。

 

エアレースシリーズ「エアスピーダー・グランプリ」実戦仕様の製造がスタート

エアスピーダー Mk 3のフォルムは、F1マシン、航空機、ヘリコプターを融合させたもの。滑らかなラインを描く機首のデザインは、1930年代に隆盛を極めたシュナイダートロフィーのエアレーサーをイメージしたという。

 

シュナイダートロフィーの水上機のようなフォルム

 

デザインの陣頭指揮を採ったのは、英国「ロイヤル・アカデミー・オブ・アート」出身で、エアスピーダーのヘッド・オブ・デザインを務めるフェリックス・ピエロン。彼は世界初の電動エアレーサーのフォルムを考案するにあたり、パフォーマンスビークルのデザインにはつきものの制限や先入観をすべて捨て去ったという。ただ未来のエアモビリティのために、自由にペンを走らせたのだ。

 

彼が掲げたデザインコンセプトは、F1マシン、航空機、ヘリコプターの融合だった。現時点では無人ドローンとして開発されているが、2022年以降はパイロットが乗り込むため、F1マシンのようなコクピットも配置された。このコクピットには人間工学的に細心の注意が払われており、パイロットが操縦に集中できるような空間となっている。2021年に予定されている無人ドローンによる競技では、エンジニアリングチームが、機体のダイナミクスについて多くを学ぶ機会となり、貴重なデータやフィードバックがもたらされることが期待されている。

 

ピエロンは、1930年代に隆盛を極めた航空機の速度記録チャレンジ「シュナイダートロフィー」で活躍した水上機のデザインも参考にしたという。当時活躍したマッキやカーチス、特にスーパーマリン製エアレーサーの機種デザインは、エアスピーダー Mk 3のシャープなフロントセクションに採り入れられた。

 

「これは純粋なイノベーションです。私たちは、4つの車輪や四角いフレームに制約されることはありません。私たちは、空飛ぶレーシングカーという、まったく新しい美学を追求したのです。現在の自動車のようにエアカーが一般化されるには、少なくとも1世紀はかかるでしょう。美しいだけでなく、目的にかなったマシンを作るという責任を果たせることをとても誇りに思います」と、ピエロンは語る。

 

エアレースシリーズ「エアスピーダー・グランプリ」実戦仕様の製造がスタート

最高出力はアウディ SQ7に匹敵する最高出力320kWにまでパワーアップ。重量はわずか130kgに抑えられており、さらに現時点で80kg以上の重量物を持ち上げる能力が与えられている。

 

現時点で80kgの重量物を持ち上げることが可能

 

モルガン・スタンレーは、「eVTOL(電動垂直離着陸機)」の経済規模が2040年までに1.5兆ドルにまで拡大すると予測。すでにeVTOLは物流を変革し、遠隔地への医療品の提供さえも可能になった。旅客輸送の分野では「空飛ぶ電動タクシー」が大きな注目を集めており、安全で持続可能な輸送だけでなく、都市環境を渋滞から解放することが可能になる。

 

エアスピーダーは、求められる安全技術の進化を実証し、eVTOLの一般化に向けた態勢を整えることを目指している。将来の輸送手段として、バッテリー技術、騒音、様々な規制などの問題を解決するには、モータースポーツ競技による劇的な技術進化が最も近道だと考えているのだ。

 

遠隔操縦で飛行する「エアスピーダー Mk 3」は、アウディ SQ7に匹敵する最高出力320kWにまでパワーアップされており、0-62mphの加速は2.8秒、最高高度は500mを実現。SQ7の重量が2500kgであるのに対し、エアスピーダー Mk 3の重量はわずか130kgに抑えられた。現時点で80kg以上の重量物を持ち上げることが可能となっており、すでにパイロット搭乗状態でもレースが行えることを実証している。

 

従来の固定翼機やヘリコプターと比較し、驚異的なスピードでの旋回も可能。エアスピーダー Mk 3の推力重量比は「3.5」で、これは最強の戦闘攻撃機である「F-15E ストライクイーグル」の推力重量比1.2を大きく上回る。8基のローターを持つオクトコプター方式を採用したことで、急速のヘアピン旋回も可能で、さらに垂直方向への急上昇が可能となっている。

 

エアレースシリーズ「エアスピーダー・グランプリ」実戦仕様の製造がスタート

レース中にはバッテリー交換を行うピット作業も計画されており、革新的な「スライド&ロック」システムを採用したことで、その交換時間はわずか14秒にまで短縮されている。

 

わずか14秒で行われるピットでのバッテリー交換

 

エアスピーダーの技術・開発チームは、マクラーレン、トム・ウォーキンショー・レーシング、ブラバムなど、モータースポーツ関連企業出身者が数多く在籍。また、プロジェクトリーダーのブレット・ヒルは航空機分野のスペシャリストであり、「ボーイング747-8」の開発プログラムにおいて、フライトダイナミクススペシャリストとして活躍した経験を持つ。また、スタッフには民間・軍用航空分野の主要プロジェクト出身者も在籍している。

 

この強力な開発チームによって、強度と軽量化を両立した高度なカーボンファイバー構造が完成した。エアスピーダー Mk 3は、シャシーとカーボンファイバーで成形されたタブで構成。このシャシー&タブはパフォーマンスを左右するため数グラム単位で軽量化がこだわり抜かれたという。また、同時に過酷なレース環境や操縦のもとでも機体の構造的完全性を維持するため、総合的な強度が確保された。

 

バッテリーは従来のモデルから設計を徹底的に見直し、50%の重量増加で容量が90%も増加した。またこのバッテリーシステムは、地上のピットスタッフにより電力供給プロファイルを変更することが可能。例えば急旋回や急上昇など素早い操縦が要求されるコースでは、直線的なスピードが要求されるコースとは異なるパワーデリバリーカーブをチョイスすることができる。

 

エアスピーダー・グランプリは、レース中のピット作業も行われる。そのため、エンジニアは、地上におけるバッテリーの迅速な交換作業を可能にする革新的な「スライド&ロック」システムを開発した。この技術はエアスピーダー Mk 3から採用された。すでに社内における実際のピット作業テストにより、ピットストップ時間は14秒にままで短縮。F1などのピット作業と同様に、スピーディかつエキサイティングなピットストップの展開が約束されたと言えるだろう。

 

 

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